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発達障害診断、視線の動きで数値化 大阪大など治験へ発達障害の診断の迅速・的確化に向け、対象者の視線の動きから障害の可能性を数値化する診断補助機器の開発を、大阪大などの研究チームが企業と共同で進めている。発達障害は早期発見が重要とされながら専門医が少ないため、診断には時間がかかっているのが現状。補助機器で測定すれば短時間で客観的な指標が得られ、対象者の障害特性に対する周囲の理解が深まる利点もある。来年4月からの臨床試験(治験)実施を目指し、2年後をめどに実用化させたい考えだ。使用されるのは、映像を映すモニターと視線を追跡するカメラが一体化した視線計測器「ゲイズファインダー」。大阪大などの研究者でつくる「大阪大学大学院連合小児発達学研究科」と映像機器メーカー「JVCケンウッド」が平成24年から共同開発に取り組んでいる。27年からは医療機器として使用するためのプロジェクトを始めた。 治験に入るのはゲイズファインダーを用いて発達障害の一つ「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の診断を補助するプログラム。ASDのある人は、人の顔や物を見る際に特有の注視パターンがあることから、対象者に約2分間画像を眺めてもらい、視線の動きを分析。ASDの可能性を数値で示す。治験の対象は5~17歳だが、正確性が担保されれば対象年齢が下がる可能性もある。別の発達障害「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」向けのプログラムも開発中という。 発達障害の診断は現在、専門医が複数の診断基準を用いながら対象者の言動や保護者らの話に基づいて行うため2~3時間かかるほか、ばらつきも生じやすい。専門医は全国で数百人と少なく、診断待ちに拍車をかけているのが実情だ。補助機器による測定で客観的な数値が得られれば診断時間の短縮が図れ、専門医でなくてもある程度の判断が可能となる。さらに研究チームが重視するのは、測定結果を関係者にフィードバックできる点だ。視線の可視化により、どのようなものに対象者の目が向きやすいかといった障害特性を周囲も認識でき、日常生活での困りごとを緩和するための対応がとりやすくなる。 開発者の一人で大阪大学大学院連合小児発達学研究科の片山泰一教授は「重要なのは幼い頃に特性を認識すること。『人と違う視点』を大事にしながら、社会で損をしないための必要な対応につなげてほしい」としている。[産経新聞]視線の動きで診断の数値化。時代も随分と進化してきましたね。☆彡
2018.11.30
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発達障害 亡き息子の夢継ぐ 障害児専用クライミングジム 埼玉でオープン障害のある子どもに利用対象を絞ったクライミングジムが先月、埼玉県鴻巣市にオープンした。地元の主婦弓田祐代(さちよ)さん(51)が自宅の車庫を改装して人工壁を設置。発達障害のあった亡き長男の「子どもにクライミングの楽しさを伝えたい」との遺志を継ぎ、親子で安心して遊べる場を目指す。 車庫内のジムには、無数の突起物が付いた高さ二・八メートルの人工壁が三方向を囲むようにそびえる。床には軟らかいマットが敷かれ、利用者はロープを付けずに突起を使って壁を登る。 猿やヘビの絵が描かれた大型突起や、乗り物の形をした小型突起が目立つ。見た目はかわいいが、壁が大きく反り返った部分もある本格派だ。弓田さんは「親子で楽しめるようにした。親御さんも格好良いところを見せてほしい」と笑う。 ジムの名前は「KSK’S(ケースケズ) ROCK(ロック) CRAFT(クラフト)」。昨年五月、交通事故の後遺症のため二十四歳で亡くなった長男渓介(けいすけ)さんの名前から取った。 幼い頃から高い所に上がるのが大好きだった渓介さん。小学五年で近隣の体育館にあった人工壁で初めてクライミングを体験すると、すぐにとりこになった。 車庫内にジムの原型となる人工壁を造り、練習に励んだ。栃木県のクライミングジムにも通って腕を磨き、小六で全国大会七位に。その後もクライミング漬けの日々が続いた。 発達障害のあった渓介さんは他人とのコミュニケーションに苦労する場面もあったが、クライミングの実力を付ける中で周囲に認められ、多くの仲間ができた。「子どもたちにクライミングの楽しさを伝える」との夢も抱くようになった。 「息子はクライミングに助けられた」と考えていた弓田さん。不慮の事故で渓介さんを失った後、すぐにジム開設の準備を始めた。 渓介さんに障害があったことに加え、知り合いの障害児の母親たちから「子どもを思い切り遊ばせられる場所がない」という声も聞いていた。ジムを「障害児専用」にするのは自然な流れだった。弓田さんの願いは「親子で安心して遊べ、親が肩の荷を下ろしてもらえる場所であること」だ。 発達障害や知的障害に限らず、身体障害の子どもも受け入れている。利用は完全予約制。料金は一時間で未就学児千五百円、小学生以上二千円。問い合わせは弓田さん=電090(6516)5162=へ。[東京新聞]自宅の車庫を改造したクライミングジム。多くの方の利用を願いたいですね。☆彡
2018.11.29
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ローマ法王、母の手逃れた自閉症児の「自由」たたえる【11月29日 AFP】バチカン(ローマ法王庁)で28日、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王(Pope Francis)による週例の一般謁見(えっけん)の際、アルゼンチン人の男の子が法王と遊ぼうと母親の手を逃れ、壇上に飛び出す出来事があった。法王は「彼は自由だ」と述べ、参列者らに対し、「われわれは皆、神の前で自由であるべきだ」と語った。 イタリアメディアによると、男の子の母親が謝罪し、この子が自閉症であることを伝えたところ、法王は居合わせた参列者らに「この子は話すことができない。口が利けない」と述べ、「だが彼は意思を伝え、自らを表現する方法を知っている」と続けた。 さらに法王は「それだけではない。彼は自由だ。その自由に手に負えない面はあっても、自由なのだ」と語った。 手袋をしたスイス衛兵の手を引っ張り、法王の椅子の裏で遊ぶ男の子に、法王は「キスをしておくれ」と語り掛け、母親が息子を捕まえようと駆け寄ると、男の子の好きにさせるよう促した。 さらに法王は「われわれは皆、自らに問うべきだ。自分が神の前で同じだけ自由でいるか、と。われわれは皆、子どもが父の前にいる子どもと同じように、神の前で自由であるべきなのだ」と述べた。 法王が「この子が話せるよう、ご加護を願おう」と呼び掛けると、参列した約7000人の信者から喝采が沸き起こった。 法王は男の子と同じアルゼンチンの出身。(c)AFPまるで法王に導かれたようなできごと。ご加護が得られて良かったですね。☆彡
2018.11.28
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発達障害なのに「愛情不足」の烙印… 子育てに悩んだある主婦が伝えたいこと発達障害の息子(13)とその傾向がある娘(8)。2人の子育てを経てある主婦がたどり着いたのは、同じ境遇にある親たちが支え会える居場所づくりだった。静岡県に住む加藤照美さん(41)が4年前にフェイスブックで立ち上げた非公開グループ「発達障害の子を持つ親の会~話してみませんか?~」には、いまでは約8000人が集う。今年、コミュニティリーダーを支援するためフェイスブックがトレーニングやサポート、資金提供を行う「フェイスブック コミュニティ リーダーシップ プログラム」で、日本から唯一の受賞者に選ばれた。加藤さんが発信するのは「障害ではなく個性として認めてほしい」という親たちの声だ。<こんな朝食を作ってみました><想像の斜め上をいく子どもの言動に笑ってしまった><診断を聞いて泣いた><子どもが暴れて家の窓ガラスを割ってしまった> 加藤さんが運営するグループでは、日々の投稿が10件ほど、多い日ではコメントを含めて100件以上のやり取りがされている。書き込まれる内容は子どもの食事や学校選び、友達とのトラブルなど多岐にわたる。春になると卒業や入学の報告も飛び交うという。「互いに支え合うということをみなさんがやってくださっていて、安全な場所なら吐露したいこと、聞きたいことがたくさんあるんだろうなと思います」加藤さん一家 そう話す加藤さん自身も子どもたちの個性と向き合い、それに合わせた付き合い方を試行錯誤してきた。子どもが中学生になってから理解できるようになった言動もある。いまでは凸凹のある子との接し方を学ぶペアレント・トレーニングの講座も開く加藤さんも、支えてくれる人も無く、情報さえ遮断し「子育ては苦行だ」と思っていた時期があったという。 最初に"違和感"を持ったのは、上の子を出産してから2、3日目だった。産院の部屋で休んでいても「赤ちゃんが泣いているので授乳に来てください」と呼ばれる回数が明らかに他の子より多かった。自宅に戻っても授乳間隔が1時間も空かず、グズグズと泣き続ける状態が1歳ごろまで続いた。地域の子どもたちが集まる支援センターや育児サークルに行っても、息子だけ円陣の中心にいたり、癇癪を起こして泣き止まなくなったり……。居づらさと行き帰りの大変さから足が遠のいた。離乳食もほとんど口にせず、幼児食になっても極端に偏食だった。家で口にするのはフライドポテトとうどん、唐揚げ、人参とブロッコリーだけ。手作りの野菜のポタージュやふりかけは好んで食べてくれることもあったが、何度も食事を床に投げ付けられ、泣き崩れたこともあった。 子育ての専門家から「少し距離を取ってみたら」とアドバイスを受け、保育園に通わせてパートで働き始めたが2歳のころ。でも生活は好転しなかった。息子は夕方に迎えてから2時間は泣き続け、寝かしつけにも2時間かかり、夜中も2~3時間おきに起きて泣き叫んだ。これ以上何ができるのかわからず、臨床心理士に相談したのが3歳のころだった。「とにかく、どうすれば彼に通じるように話ができるか、どうすれば生活をスムーズにできるかを知りたくて、『このままだと虐待してしまいそう。発達障害ではないですか?』と聞いたんです。でも専門家の間でもまだその言葉を知らない人もいる時期で、『愛情を注いでください』と言われました。絶望しました」 専門家の"診断"は「愛情不足」。発達障害は否定されたのだからと、関連する情報を遮断し、みんなと同じことができるはずだと息子を責め、自分自身も責めた。親子ともにつらい時期だった。加藤さんと長男。「この時期のことは、数年経った後に息子に謝りました。しんどいことは今もありますが、理解できることが増えています」と話すそれを抜け出せたのは、理解してくれる人の存在があったからだ。小学校に入って、教師やスクールカウンセラーが理解してくれ、仕事で寝に帰るだけだった夫も転職し、子育てに協力してくれるようになった。小学1年の冬に改めてADHD(注意欠陥・多動性障害)とアスペルガーという診断を受け、夫婦でペアレント・トレーニングを受けた。そこで出会った親同士で話していると愚痴で終わらず、前向きな気持になれた。 友人づてで、子育てに困っている地域の人の相談を受けたことをきっかけに、困っている人もはもっといるかもしれないとフェイスブックで「発達障害の子を持つ親の会」、地域で「道しるべの会」を立ち上げた。ここ数年で発達障害について、知られるようになった。しかし、差別を感じることもまだまだあるという。「子どもたちを見ていると、小学校低学年ぐらいまでは凸凹のある子に対しても『あの子はいつもそうだよ』と当たり前のように受け入れています。それが大きくなると大人たちの偏見によって、差別する子が出てきたりするんです。"障害"というと重く受け止めたり、手伝ってあげなきゃと考えたりすることもあると思いますが、個性として認識してほしいなと思っています。 誰しも新しい職場で緊張して、慣れるまで時間がかかりますが、それが人より長かったり、丁寧な説明が必要だったりするので、それによって困るシーンが出てくるだけなんです」「道しるべの会」で定期的に開催しているお茶会で(※写真の一部を加工しています)凸凹ある子たちがいやすいように環境を整えていことは、実は多くのメリットがあると加藤さんは言う。 例えば、ある公立小学校では、黒板の脇にある時間割や掲示物を、授業中だけカーテンで隠すようにしたところ、クラスみんなが授業に集中できるようになった。加藤さんの息子が通った学校でも、教師が授業中に机の上をプロジェクターで映し、教科書のページやノートの起き方などを目で見てわかるようにしたら、座って授業を受けられるようになり、減らしていた宿題も「みんなと同じ量をやる」と言うようになったという。 いままさに子育てに悩んでいる親たちに伝えたいことは? 加藤さんに、そう聞くと「自分ができたことに◯を付ける意識を持ってほしい」と、力を込めた。「先日もフェイスブックのグループで、スーパーで子どもが騒いでしまって、周囲の人に『静かにさせろ』と怒られたという投稿があり、自分が悪かった、次からできるだけ子どもを連れずに買い物に行こうと思うと書かれていました。私も当時、自分にずっと×を付けていましたし、ペアレント・トレーニングに来る方も自分の失敗やできなかったことをたくさん挙げます。でも1日の中でやれていることもいっぱいあるはず。 ご飯を作りたくないと思ったけど、子どものためと思って作ったり、朝、起きたくなくても、子どもの支度をしなきゃと起きたりする日がありますよね? 自分1人だったらやらなかった、子どものために頑張っていることは、一つひとつに◯を付けていいと思います。それはどの親もみんなそう。そして、子どもの個性も認めてあげられたらいいのかなと私は思います」(AERA dot.編集部)フェイスブック コミュニティ リーダーシップ プログラム の受賞者は46カ国から115人。先日、アメリカで開かれた研修や交流イベントに参加した加藤さん(後列右から2人目)。「全員が自分の望みを高すぎるほどの位置に置いていて、私も無謀なことを望んでいるような感覚がなくなった」と話す。今後はオンラインでのグループ運営と、地域活動を一つにまとめ、更にニーズに合った活動を提供することを目指して活動するという(提供:フェイスブック ジャパン)[AERAdot.]子育ては10人10色、育児で親も育てられますね。351万アクセス達成しております。いつもご訪問にコメント感謝です。☆彡
2018.11.27
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発達障害「多様性の受容」では終わらない~障害理解のその先へ~「発達障害」広がる理解? オリンピック・パラリンピックに向けて、障害理解を促進するムーブメントが盛り上がりを見せています。東京都オリンピック・パラリンピック準備局は、2020年に向けた東京都の取り組みとして、「オリンピック・パラリンピック教育を通じた人材育成と、多様性を尊重する共生社会づくり」をテーマの一つに掲げ、「教育を通じた障害者への理解促進」を明記しています。 「2020年に向けた東京都の取組ー大会後のレガシーを見据えて」 一口に「障害」と言っても様々なものがありますが、その中の一つである「発達障害」は最近よく耳にするのではないでしょうか。NHKでは、発達障害プロジェクトが企画され、子供向けから大人向けまで、今月は実に多くの発達障害特集が放送されているので、目にされた方も多いのではないでしょうか。「NHKが本気を出すとすごい」と業界ではかなり話題です。 NHK発達障害特集「発達障害って何だろう?」「発達障害」という言葉は聞いたことがあるけれど、実際どういう特徴があるのか、どう接すれば良いのか分からない、というのが多くの方の感覚でしょうから、このような啓発のムーブメントはとても意義深いです。 特集のトップページに掲載されている「発達障害って何?」の項目では、イラスト付きでとても分かりやすく、簡潔に障害の特徴が説明されていますので、是非見てみてください。 発達障害って何?それでも分かりにくい「発達障害」 特集の中でも紹介されていましたが、子育て中の保護者で、「我が子を発達障害ではないかと疑ったことがある」人は実に29%にものぼるそうです。明確な診断には至っていない「グレーゾーン」と言われる子たちを含めても、実際には発達障害の発症率は7~10%程度ですから、実際の発症率の3倍もの保護者がその可能性を疑っていることになります。それだけ「発達障害」という言葉が広く知られてきたといえる一方で、「発達障害」という言葉が一人歩きして、その実際が捉えにくいために、何でも発達障害に当てはめられてしまうという現状もあるようです。 NHKの粋を集めた素晴らしい企画を、広く一般の人たちが見て、それでも最後にこんな疑問が湧くのではないでしょうか。 「で、どういう人たちなの?」 「で、どう接すればいいの?」これは、実際本当に難しい問題です。状態像が多様すぎるのです。 確実なのは「存在する」ということ ただ、確実に言えることは、端から見て気付きにくいけれど、「普通」しか知らないと想像もつかないような困り感を抱えている子や、想像もつかない大変な根気や労力を必要とする育児に向き合っている人たちが一定数いるということです。 ですから、社会の側に求められる「理解」というのは、そういう想像力を持って色んな子供達や保護者を見守る姿勢と、そういう親子が近くにいたら、「大丈夫だよ」とかいう気休めでも「かわいそう」という同情でもなく、深いリスペクトを持って関わることではないかと思います。 筆者は、これまで沢山の障害があるお子さんとそのご家族に会ってきましたが、実感として、そういう親子は決して「かわいそう」ではありません。ただ、とてもとても「大変」であることは事実です。今の世の中では、まだまだ障害への理解も寛容さも足りない中で、向き合うことには大変な葛藤があります(これは、ご家族自身の意識も含め、社会の側が変わるべきところだと思います)。それに加え、情報過多な一方で、具体的かつ有効な支援の情報は、医療機関や相談機関などを含めても非常にばらつきがあり、運や保護者自身の情報収集能力に左右される面も大きい。「具体的な支援」の中には、保護者自身が新しいことを学んだり、一般的な子育てにプラスアルファで手間をかけなければならないことも非常に多いのです。 筆者自身は、現在のところ障害当事者ではなく、障害がある子を育てているわけでもありません。それなのに、人生をかけて発達障害がある人の支援をするのはなぜですか?と聞かれることが時々あります。私の答えは、「葛藤を抱えながらもこの大変さに向き合い、努力をして成長していく親子に深いリスペクトを抱き、感銘を受けたから」です。人一人の人生を変えるほど、発達障害と向き合う親子は偉大です。そんなことは望んでいない、普通でよかったのに、と思うご家族もいるかもしれませんが、偉大であることは確かなのです。 こういう背景を踏まえて、障害のある人もない人も互いに尊重し支え合うことで、みんながオープンに社会参加できる世の中になれば、障害が障害でなくなるケースも増えるかもしれません。これは、「ダイバーシティ」「多様性の受容」あるいは「心のバリアフリー」などとしても語られることが多く、世間で注目を集めているとても素晴らしい考え方です。社会の側には、本当にこれが求められます。 支援現場での「多様性の受容」「障害は個性」におぼえる違和感 一方で、もう少し近くで、密に障害がある当事者と関わる立場の人がいます。厳密には、それも「社会」に含まれるのですが、「療育支援」という文脈で関わる立場です。 発達障害がある子どもたちへの専門的な支援の現場で、「障害を個性と捉えてのびのび育てましょう」という側面ばかりが強調されると、あまりに支援が大雑把になるリスクがあり、これにはいつも違和感をおぼえます。 発達障害とは異なりますが、分かりやすい例として、ヘレン・ケラーと、その家庭教師のアン・サリヴァンの話は有名でしょう。「目が見えない」「耳が聴こえない」「話せない」という三重苦を抱えるヘレン・ケラーは、サリヴァンの根気強い教育によって、指文字を覚え、物に名前があることを覚え、口の中を触って動きを覚えることで言葉を話すことさえ身につけていきます。二人の感動的な姿を描いた戯曲「奇跡の人」は世界中で上演されています。 ヘレン・ケラーとは異なりますが、「視力に問題はないが、見ることが苦手」「聴力に問題はないが、聴くことが苦手」「呼吸器や口腔に問題はないが、話すことが苦手」な子供達が、発達障害がある子たちの中には大勢います。そして、その程度や特徴は実に様々なのです。 ヘレン・ケラーは、潜在的に、指文字を覚えたり、物に名前があることを理解したり、点字を読んで深い知識を身につける力がありました。しかし、マジョリティー(「定型発達」といわれる人たち)が作り上げた子育てと教育制度の中で、その障害を「多様性」「個性」と捉えて理解されただけでは、そのような素晴らしい力を発揮するのは難しかったのではないでしょうか。 家族や教師、療育を担当する人を含め、発達障害がある子供達と密に関わり、発達支援や教育を行う立場の人に本当に求められるのは、緻密な発達状況の見立てと、その子が本来持っている力を発揮するために必要なことを学べる専門的でパーソナライズされた具体的な支援なのです。 支援現場の抱える課題 とても言いにくいことですが、この専門的で個々の発達に特化した療育支援は、全国でもなかなか受けることができません。それは、この領域がまだまだ研究途上で、研究的に有効な支援が行政のトップダウンで現場に浸透するほど確立されていないこと、個々に対しての支援が必要でも、通所施設などはスタッフの配置や施設のキャパシティの問題で、集団療育をメインとせざるを得ない(集団療育にはもちろん良さがあるが、個人の発達を緻密に促進する効果は薄い)こと、現場の研修制度が整っていないため、実践は一人一人の支援者の経験や勘に基づいて行われるケースが多いことなど、様々な理由があります。 ヘレン・ケラーを「奇跡の人」たらしめたサリヴァン先生も、また「奇跡の人」であり、130年以上が経過した現在も、支援は非常に属人的と言えるのかもしれません。 障害理解のその先へ と、現状を悲観するのは簡単ですが、毎年1万人以上の支援を必要とする子供たちが生まれてきます。 そんな中、全国各地の既存の支援機関で、子供達一人一人の発達に即した具体的なプログラムを提供し、その成果を集結して支援者や保護者同士が学び合う動きが始まっています。 国立研究開発法人科学技術振興機構という国の研究機関の「研究開発成果実装支援プログラム」(通称RISTEX)の研究助成を得て、全国各地の機関がネットワークを作り、研究的成果に基づきシステム化された個別支援のプログラムを地域で提供するプロジェクトが進んでいます。 「エビデンスに基づいて保護者とともに取り組む発達障害児の早期療育モデルの実装プロジェクト」 その途中経過と成果報告会が、12月2日(日)、慶應義塾大学三田キャンパスで開催されます。全国から、このプロジェクトに参加する機関の代表者が集結し、成果報告を行う貴重な機会です。慶應義塾大学と厚生労働省、筆者も所属するNPO法人のタッグにより実現したシンポジウムで、入場料は無料。エビデンスに基づく早期療育モデルが描く未来 Vol.2 親子の幸せを科学する地域療育の挑戦 「発達障害」という言葉の浸透に伴い、当事者や家族の抱える困難が、親の躾や育て方のせいではないという理解は徐々に広がってきました。周囲の理解やちょっとした工夫により、生きやすくなる人は確かにいます。 しかし、理解だけでは不十分なケースも多いのは事実です。支援の現場がより専門性を高め、一人一人の子供の特徴に合った支援が受けられ、誰もが持てる力を本当に発揮できる世の中になってほしいと願います。 障害理解のその先の支援について、ご興味を持たれた方は、是非イベントに足を運んでみてください。竹内弓乃特定非営利活動法人ADDS共同代表/臨床心理士1984年生まれ。香川県出身。慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業、同大学大学院修士課程修了、横浜国立大学大学院修士課程修了。臨床心理士。大学1年時、自閉症がある男の子とその母親との出会いをきっかけに、家庭療育(治療・教育)をサポートする学生セラピストとして活動を始めました。子どもたちの大きな成長と保護者の底力に魅せられ、発達障害児の支援に没頭。臨床経験を積みながら、大学院にて発達心理学と応用行動分析を学び、仲間とともに2009年ADDSを設立しました。「日本中の発達障害がある子とその家族へ、早期に適切な支援が届く社会」の実現を目指し、保護者トレーニングや支援者育成、普及啓発に取り組んでいます。[Yahooニュース]それぞれのニーズにあった支援はまだなかなか確立はできないまでも、気づきに経験を連ねてより充実した支援体制が整いつつありますね。☆彡
2018.11.26
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クリスティン・バーネット 訳:永峯 涼『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』大丈夫。――魔法の言葉が、自閉症児を12歳の物理数学者に変えた『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』二〇〇〇年以降、わが国の司法、福祉、医療、教育、心理など臨床関係の学会、研究会において、かつてないほど「自閉症、発達障害」がテーマとして取り上げられ、一大ブームとも言うべき様相を呈した。そればかりか、TVや週刊誌においても「発達障害」に関する特集が盛んに組まれ、社会的な注目を集め、「片づけられない女」「アスペのにおいがする」といった言葉が人々の間で飛び交っている。 実は、一九六〇年代前後にも同様の波があった。半世紀という歳月をはさんでわが国で起きた自閉症ブーム。何が違っているのだろうか。六〇年前の波は学会という狭い領域における研究者間の論争(牧田―平井論争)であった。 だが、新しい波は当事者たちの登場によって、そのうねりが始まった。一九八六年に、テンプル・グランディンが「我、自閉症に生まれて」を著し自閉症者として初めて著書を世に問い、九二年にドナ・ウィリアムズが「自閉症だったわたしへ」を発表し、世界的なベストセラーになった。 以後、グニラ・ガーランド、ウェンディ・ローソン、リアン・ホリデー・ウィリー、わが国では、森口もりぐち奈緒美なおみ、泉いずみ流星りゅうせい、成澤なりさわ達哉たつや、藤家ふじいえ寛子ひろこ、ニキ・リンコ、東田ひがしだ直樹なおきなど数多くの自閉症者による著書が出版された。こうした当事者の自叙伝によって、自閉症者の内面の世界が世間に知られるようになった。こうした当事者、もしくはその家族による手記や自叙伝が社会に与えたインパクトは極めて大きなものがあった。本著はその系譜につながるものである。 このような当事者や家族による自叙伝は、一九四三年にレオ・カナーが「自閉症」の概念を提起するに至るまでの長い、そしてそれ以降の自閉症研究に新しい光をあてるものである。それと同時に、一部の専門家や研究者による研究調査や治療療育でなく、当事者やその家族による研究や実践、療育、あるいは専門家と当事者との対等な対話が今後一段と高まっていく可能性を示すものであると考えられる。 さて、自閉症研究における「精神病」概念の混乱、用語の不統一の時代に、カナーの「早期幼児自閉症」の概念が出現する。この概念の出現が画期的であったのは、当時の自閉症研究が「スキゾフレニア」(統合失調症)の傘のもとで行われ、クレペリンの「早発性痴呆」あるいはブロイラーの「スキゾフレニア」の概念を一層拡大させるものであったからだ。 カナーがそうした立場から脱したのは、ドイツから移住し、アメリカ医学界主流から離れたところに身を置いていたことが影響していると考えられる。同様の事情は、カナーの論文が世に出た翌年に発表したものの、長く光が当たらなかったハンス・アスペルガーにも言えることで、革新的な出来事は周縁部分から起こるという証左であろうか。 一九三〇年代に主流であった「スキゾフレニア」類似の精神病という概念を前に、「かなり類似性が見られるにもかかわらず、この病態は今まで知られている他の児童期のスキゾフレニアのすべてと多くの点で異なっている」とカナーは確信をもって書いた。これらの子どもは生まれつきの情緒的交流の障碍しょうがいであるというのがカナーの主張であった。「子どもの知的潜在能力は基本的障碍によって覆われているだけである」と子どもの示す知的ひらめきを強調し、精神薄弱とも違うことに、カナーは気づいていた。 その意味では、彼の記載した第一番目の症例であるドナルドの診察がその自閉症概念の確立に役立った。ドナルドは一歳で多くの曲を歌え、二歳前に多くの人と家の名前を言え、二十三番の讃美歌と長老派の二十五もの教義問答の質問と答えを覚えた。その一方で、フライパン回しなどを好み、それを妨げられるとかんしゃくを起こし、一人でいることを好み、人々に無関心であった。オウム返しに話し、代名詞の逆転現象を示し、字義どおりに言葉を用いて、その意味では柔軟性が欠けていた。だが、その後ドナルドは大学を卒業し、地方銀行に勤務し、出納係として働いた。いまでいうと「高機能自閉症」なのであろう。 アスペルガーは「これらの子どもは何においても自発的に想像することができ、そして独自のものしかありえない」「自発的精神病質は知的障碍がないかぎり、ほとんど皆が就労に成功し、その多くは知的な高度の専門的職業、または高い地位についているのは内心驚くほどである」とその特性を述べている。 そして、自身が自閉症児の母親である、英国のローナ・ウィングの提唱による「スペクトラム(連続体)」概念の登場によって、カナーとアスペルガーの間にブリッジがかけられ、定型発達者に至るまで一本の連続体で結ばれていくことになる。 さて、本著の主人公であるジェイクは、サヴァン症候群の人物で、映画「レインマン」のモデルとなったキム・ピークと同様、特異な才能を見せ、「ヒューマン・カメラ」や「カレンダー計算」が可能である。 実は、複数の自閉症児たちと暮らす私も、こうした「ヒューマン・カメラ」や「カレンダー計算」、「複雑な暗算」をやすやすとこなす少年たちを発見することがある。あるいは、一度だけ耳にした音楽をピアノ演奏で再現する姿を見て驚かされる。 しかもジェイクの場合、そうした異能の特性にとどまらず、九歳で大学に入学し、相対性理論に取り組み、十二歳で物理学の問題を解き、その解答が一流専門誌に掲載されるのである。 こうしたジェイクの変貌をもたらしたものはなんであろうか。それは、本著の著者である、母親のクリスティン・バーネットの存在であることは疑いない。クリスティンはジェイクの観察を丁寧に行い、専門家が指し示す療育方針とは別に、PECSと名付けられたカードを利用して、コミュニケーションスキルを磨き、毛糸を利用して作品を作らせるなど、「あらゆる場面にトレーニングを忍び込ませるよう工夫」(84頁)をした。 エリック・ショプラーは、自閉性障害に対するTEACCHプログラムのなかで、自閉症者が視覚優位であることに着目し、「視覚的な情報提示」を中心とした構造化を提案し、「親が家庭における治療教育者になる」(四つのモデル)ことを柱としていることを考えるとき、クリスティンの存在とこうした取り組みが大きな光を放っていることは言うまでもない。 自閉症児の親が悲嘆にくれ、意思疎通の困難に絶望し、気がついたら手をあげていたという例も少なくない。自閉症の子どもの七十から八十%が精神発達遅滞を合併しており、誰もがジェイクのように才能を開花させるわけではない。また、誰もがクリスティンになれるわけではない。ジェイクを一つの極とするなら、もう一つの極には「強度行動障害」と診断されるような子どもたちがいる。 もちろん、クリスティン自身もジェイクの自閉症という事実を突きつけられたとき、「あふれる涙で前が見えなくなり」「路肩に車をとめ、運転席に座ったまま激しく泣く」(47頁)のだった。そして、「自閉症」だと確定診断を受けたとき、「完全に打ちのめされ(中略)一晩中一睡もできませんでした」(54―55頁)。それは、自閉症児の親が必ず遭遇する壁である。悲嘆、絶望、不安、怒りなどの内面に立ちはだかる大きな心理的な壁に親たちは突き当たるのである。 だが、そのクリスティンには夫のマイケルや祖父のヘンリーがいて、コミュニティーがあった。大きな影響力を有していたヘンリーが節くれだったゴツゴツした手をかさね、まっすぐに彼女の目を見て言った言葉、「大丈夫だよ、クリスティン。ジェイクは大丈夫だよ」(65頁)が彼女の背中を押す。「大丈夫」。一歩前進する勇気を与える言葉である。私自身が子どもたちの親に、そして私自身に折々に言う言葉である。 何より、「ジェイクの可能性を――それが何であろうとも――フルに引き出すために、必要なことは何だってやる」(16頁)という絶望と悲嘆の壁を乗り越えた、クリスティンの決意があった。愛情に裏打ちされた子どもへの丁寧な観察を通じて、「楽しい経験に満ちた毎日」の重要性、「できないことでなくできることに注目する」(98頁)ことがいかに子どもの発達保障の上で大事であるかを知るのである。その後のジェイクの才能の開花には息をのむような驚きの連続である。神様からのギフトに違いないと思わせるものがある。 そして、一層の感動は、クリスティンが近隣の自閉症児の受け入れを決めるくだりである。この時点で、クリスティンはジェイクの親であることにとどまらず、「社会的親」へと昇華していったのである。実は、自閉症児の親たちにも子どもの養育と工夫を楽しみ、それを他の親たちや専門家と共有しようとする一群の親たちがいる。クリスティンもそうした「社会的親」への門の扉を力強く開け放ったひとりなのである。 そして、「リトル・ライト(小さな光)」と命名されたプログラムのもと、ローレン、エリオット、ジェニー、クレア、ジェロードなどの「見込みなし」とされた子どもが、次々と才能を開花させる子どもが熱中していることをどんどん伸ばすようにしてやれば、どの子も期待をはるかに上回る結果を出す」(124―125頁)というクリスティンの信念と工夫がもたらしたものであった。「レベル二の出来事にはレベル二のリアクションをしなさい」という痛みを表現する指導(193頁)では、期せずして「デジタル的指示」という自閉症児にわかりやすい適切な表現が使われている。 言うまでもなく、自閉症の子どもは能力の「揺らぎ」のある凸凹ちゃんである。できないことに焦点をあてる(リスク管理モデル)のでなく、できることに、興味・関心のあることに光をあてて支援する、生活を組み立てていくこと(長期基盤モデル)が重要であることをここで私たちはあらためて学ぶのである。 私が主宰運営する土井どいホームにやって来た子どもたちも、まさにローレン、エリオット、ジェニー、クレア、ジェロードなどと同じく「見込みなし」とされた子どもたちである。社会性(対人交渉)やコミュニケーションの質の障碍、想像力の欠如といった三つ組みの問題を共通して抱え、周囲からの適切な理解と支援が得られなかったために、自尊感情が著しく低下してやってくる。被害的な認知の固定化を起こしていることも少なくない。 そのほかにも、発達性協調運動障害(不器用)、学習障害、相貌そうぼう失認などの困難も抱えている。とりわけ、感覚過敏(鈍麻)の問題は、彼らの生活を一層困難にしている。こうした困難を周囲が理解しないために、本人は不安に陥り、それが「こだわり」となって表れてくると考えられる。 そればかりか、不適切な養育など持続的なストレスがかかると、幻聴などの精神症状をみせることさえある。その結果、入院したり、時には少年院などに送致され、そこでもお手上げとなって土井ホームにやってくる子どもも少なくない。 こうした子どもが抱える困難を暮らしの中で観察し、その特性を理解し、環境を整えること、特に刺激を減らす配慮をし、見通しのよい毎日のスケジュールにすることで、子どもは際立って落ち着いてくる。 大事なことは、日々の暮らしの中で子どものトレーニングを行うことである。様々な工夫を暮らしの要素に溶け込ませておくことである。子どもに家事のお手伝いをさせることによって、「ありがとう」「たすかったよ」「じょうずになったね」という魔法の言葉を繰り返しかけることで自尊感情が高まる。食後の何気ない会話の時間を持つことで、興味のある「へび」の話しかしなかった子どもが異なる分野の話題を提供するようになる。 このような取り組みで確実に子どもたちは成長し、愛着を持ち始める。食後に、私たち夫婦や妹の背後に回って肩を揉もうとし、本来人への関心の薄いはずの子どもたちが私たちの誕生日や記念日にプレゼントをするのはその紛れもない証拠である。 「自閉症の子どもの魂ってなんてピュアなの」「私は自閉症の子どもとともに暮らし、その子たちを見守り見守られて人生を終えたい」と語る妻にこうした子どもたちが各地から迎えられ、そのまなざしのもとに暮らしている。そうした暮らしを送っている私たち夫婦も本著を読みながら共感と感動の波に幾度となく心を揺さぶられ、時には心の底から突き上げる感動に涙を抑えることができなかった。本著は自閉症児とその家族による傑出した自叙伝として、今後長く読み継がれる本になるであろう。 本著を読むあなたが、あなた自身の中にいる「クリスティン」に出会うことを切に願う。そして、祖父ヘンリーのように、再度自分自身に力強く言おう。「大丈夫だよ」[カドブン]ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい (角川文庫) [ クリスティン・バーネット ]とても的を得た内容の書物ですね。☆彡
2018.11.25
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「もしかして発達障害…?」と思ったら――きちんと向き合うために理解しておきたいこと「発達障害」という言葉はよく聞くものの、果たしてちゃんと理解できているでしょうか。どんな症状があるのか知っておきたい、自分の子どもを調べたいけれど何から始めたらいいのかわからない、という人におすすめしたいのが『発達障害がよくわかる本』(本田秀夫:監修/講談社)です。 本書は、イラストを多用しながら発達障害についてわかりやすく解説している、いわば発達障害の入門書です。もしお子さんに発達障害の可能性があるとしたら、これからどんな手順で対応していけばいいのか、保育園や学校などでどう対応してもらうべきなのか、公的な支援はどれくらい受けられるのか、そういった親の気になるテーマが盛り込まれています。発達障害にはいくつかの種類がありますが、近年診断されることが増えているという、2つ以上の発達障害が重複しているケースについて、くわしく書かれていることも特徴です。[ダ・ヴィンチニュース]発達障害がよくわかる本 (健康ライブラリー) [ 本田 秀夫 ]本田先生の本なら分かりやすいでしょうね。☄
2018.11.24
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発達障害や終末期ケアの研究者育成 姫路大が博士課程 姫路大学(兵庫県姫路市大塩町)は来春、大学院に発達障害や終末期ケアなどの研究者を育成する博士課程を新設すると発表した。同大によると、博士課程は大学院の看護学研究科に設置する。博士課程の専門分野は、発達障害や重度心身障害者(児)と保護者らへの支援▽成人の終末期ケアや「クオリティー・オブ・ライフ」(生活の質)の向上の研究など。入学定員は3人で、修業年数は3年。出願資格は修士の学位か、同等の学力がある人など。出願期間は12月4日から来年1月28日までで、試験日は同2月2日。 同大は来年秋に「看護学研究センター」(仮称)を開設する準備も進めている。発達障害児のケアや免疫を強めるとされる「笑い」の効用など看護学での幅広い研究を進める。 副学長で、看護学研究科長の牛尾禮子教授は「最近、発達障害児をかかえ、対応に悩む保護者が多い。博士課程や研究センターの開設などを通じて、看護学を地域への貢献につなげたい」と話している。問い合わせは姫路大の設置準備室(079・247・7306)。看護学の専門家を育て、地域社会への貢献を目指すという。同大は来年秋に「看護学研究センター」(仮称)を開設する準備も進めている。発達障害児のケアや免疫を強めるとされる「笑い」の効用など看護学での幅広い研究を進める。 副学長で、看護学研究科長の牛尾禮子教授は「最近、発達障害児をかかえ、対応に悩む保護者が多い。博士課程や研究センターの開設などを通じて、看護学を地域への貢献につなげたい」と話している。問い合わせは姫路大の設置準備室(079・247・7306)。[朝日デジタル]とても素晴らしい取り組みでも、入学定員3名とは、かなり狭き門ですね。☄
2018.11.23
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発達障害、親子で治療 接し方指導など相乗効果も 「じっとしていられない」「注意力が欠ける」といった症状がある注意欠如・多動症(ADHD)など、発達障害の改善に親子で取り組む試みが注目されている。親が子への接し方を体系的に学ぶ「ペアレントトレーニング」を試みるクリニックもある。また子どもの親が「大人の発達障害」と診断されるケースが少なくなく、親子が並行して治療を受けることで相乗効果が期待できる。茨城県つくば市にある発達障害専門の医院「筑波こどものこころクリニック」。子どもたちが親や家族に連れられて関東一円や遠方からも通院している。学校やかかりつけの小児科医からの紹介や、本やインターネットの知識で子どもの発達障害を心配して訪ねてくる親も多い。クリニックでは火曜日の午前、発達障害の子どもの保護者が数人集まって「ペアレントトレーニング」のグループ講習を受けている。心理士が講師となって、子どもの好ましい行動や好ましくない行動の見分け方、褒め方のコツ、効果的な指示の出し方といった子どもへの接し方を実例を通じて学んでいく。講習はベーシックコース、アドバンスコースそれぞれ6回ずつ。同クリニックがこうした試みを始めたのは「家族が子どもの過ごしやすい環境を整え、症状を緩和するような接し方を実践することが、治療効果を上げることにつながる」(院長の鈴木直光医師)ためだ。医師など専門家で組織する日本ペアレント・トレーニング研究会も発足。トレーニングの普及を目的に、自治体や医療関係者向けの研修などに取り組んでいる。ADHDのほか、他者とコミュニケーションを取ることが苦手な自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害は、脳の働きの偏りが原因とされ、遺伝要因が強いと考えられている。鈴木医師によると、クリニックに来た子どもの家族についてヒアリングすると、親の片方ないしは両方がいわゆる「大人の発達障害」と判断されるケースが半数以上に上り、親子がそろって治療を受けるケースが増えているという。両親ともに発達障害が疑われる場合、典型的なのは、「父親が自己中心的な性格のASD、母親がADHDの中での不注意タイプという組み合わせ」(鈴木医師)だという。こうした家庭では、父親が妻や子にイライラを募らせて暴力を振るうなど問題を抱えていることも多い。子どもの治療を進める上でもマイナスとなる。「子どもの治療と並行して、親にも発達障害の治療を受けてもらうことを勧めている」(鈴木医師)という。親子で並行して発達障害の治療に取り組むやり方は様々だが、ADHDを対象とする薬物治療が行われることが多い。「発達障害の代表的な症状であるADHDとASDの2つは密接に関連しており、この濃淡の違いが個々の症状として表れている」(鈴木医師)日本では2012年から、子どもだけでなく成人のADHDの薬物治療ができるようになった。ADHDを主体に治療することで発達障害の諸症状を緩和できる可能性が高いという。同クリニックは、ADHDとASDの症状を併せ持つ親子約20組を対象に、親子で並行して治療に取り組んだ結果をまとめている。親側では子に怒鳴ったりたたいたりするようなネガティブな関わりが減り、子を褒めたり認めてあげるようなポジティブな関与が増えたという。◇ ◇ ◇■音楽療法なども注意欠如・多動症(ADHD)は、年齢や発達の水準からみて不相応な「多動性」「衝動性」「不注意」の3つの症状が特徴だ。子どもの場合、教室でじっと座っていられなかったり整理整頓が苦手といった症状、大人の場合は仕事でケアレスミスが多いなどの症状が代表的だ。有病率は子どもが約5%、成人で約2.5%とされる。ADHDの症状は加齢とともに緩和することが多いが、就職や子育てなど生活環境の変化がきっかけで症状が悪化するケースもある。治療は薬物治療と非薬物治療に分けられる。薬物治療では日本では小児向けが3種類、成人向けが2種類ある。非薬物では音楽に合わせて体を動かす音楽療法や怒りなどの感情をコントロールする方法を学ぶプログラムなどがある。[日本経済新聞]より進歩したプログラムができたのですね。とても興味深い内容です。☄
2018.11.22
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読みやすいマンガ、知的障害者と探求 困惑の縦線やめたマンガは読みやすいと思われているけど、本当? 大学の研究者やマンガ家らがこんな疑問から、マンガに触れる機会が少ない知的障害者や外国人らが楽しく読めるマンガを研究し、本にまとめた。表現方法が違う様々なマンガを知的障害者40人に読んでもらった結果、浮かび上がった「読みやすいマンガ」とは――。 「障害のある人たちに向けた LLマンガへの招待 はたして『マンガはわかりやすい』のか」を出したのは、大和大(大阪府吹田市)保健医療学部の藤澤和子教授、京都精華大(京都市)マンガ学部の吉村和真教授、都留泰作教授らで作る「LLマンガ研究会」。LLとはスウェーデン語で「やさしく読める」の略語だ。 スウェーデンでは知的障害がある人や外国人に読みやすい工夫がされた「LLブック」の出版が盛んだ。特別支援教育などが専門の藤澤教授は日本でも普及させようと活動しており、LLブックのマンガ版を作れないかと、マンガを専門とする吉村教授、都留教授らと研究会を立ち上げた。 研究会代表の吉村教授によると、マンガは誰でも読めるものと思われがちだが、コマをどの順番で読むのかといった決まりや、感情などを線や擬態語で伝えるなどのマンガ独特の表現があり、読むには「マンガリテラシー」が必要だ。マンガに接する機会が少ない外国人や知的障害者には読むのが難しいケースがあるにもかかわらず、吉村教授は「多くの人は自然にリテラシーを身につけているので、読めない人の存在に気付かない」と説明する。 研究会では、どういう表現ならリテラシーが少なくても理解しやすいかを議論した。コマ割りやせりふなどを変えた数種類のマンガを作って40人の知的障害者に読んでもらい、一人ずつ聞き取り調査して理解の壁になった点を把握した。 そこから「単純なコマ割りを心がけ、一つのコマに多くの出来事を盛り込まない」「困惑や焦りを表現する顔の縦線といった、マンガ特有の記号表現を控える」「それぞれの吹き出しがどのキャラクターから発せられているか明確にし、ナレーションの使用は避ける」などのガイドラインを作った。同じストーリーで難易度を変えた複数のマンガを作っておけば、よりマンガを楽しめる可能性が広がるとも指摘。ガイドを踏まえ、難易度を変えて描き分けたマンガも掲載した。 吉村教授は「障害がある人が読みやすいマンガづくりを考えることは、健常者の視点の見つめ直し、ひいては共生社会づくりにつながる。マンガとは何か、新たなマンガ表現とは何かなど、研究を通して様々なことが見えてきた」と話す。B5判180ページ。樹村房刊。2200円(税別)。問い合わせは同社(03・3868・7321)へ。[朝日デジタル]確かに漫画を楽しめるのも、その経験を積み重ねの結果なんでしょうね。☄
2018.11.21
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「道草」 障害者の暮らし知って 県内での上映呼び掛け 来年2月全国公開 仙台で試写会 /宮城 知的障害のある人たちが、訪問介護を受けながら自立した生活を送る様子を描いたドキュメンタリー映画「道草」の試写会が11日、仙台市内であった。映画は来年2月に全国公開予定だが、県内での上映場所が確保できていない。関係者たちは「多くの人に障害者の新しい暮らし方を知ってもらいたい」と呼びかけた。 同作は、自閉症や重度の知的障害のある人たちが「重度訪問介護制度」を受けながら、親元や施設、病院を離… この記事は有料記事です。[毎日新聞]上映会場が確保できればいいですね。☄ 「
2018.11.20
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NHKで放送開始!2分アニメシリーズ「ふつうってなんだろう?」が描く発達障害の人の世界発達障害の感じ方の違いや生きづらさを、2分間で伝えるアニメ2018年11月にNHKで放映がスタートした2分アニメシリーズ「ふつうってなんだろう?」。毎回当事者が登場し、自身の体験を元に発達障害のある人の感覚の違いやそこから起きる軋轢について、アニメーションで伝える番組です。NHKでは11月中旬から「発達障害キャンペーン」が始まりました。このアニメーションはそのキャンペーンの一つとして11日からスタート。総合テレビとEテレで随時放送予定です。発達障害のある人の困りごとをアニメで表現番組では、特性からの困りごとや生きづらさを抱えながら、前向きに生きる発達障害当事者が自分にとっての「ふつう」とは何かを語ります。その一人が落語家の柳家花緑さん。11日から始まった第1回では、文字を読むのが苦手という花緑さんが、学校での勉強は苦手だったけれど、耳から覚えた噺を語る落語家になった今、子どもたちに伝えたいこととは…?また普段の生活でも外出先で、さまざまな刺激を感じてしまうというフミヤさん。「ほかの人と感覚が違う」感覚過敏などの特性で悩んできました。一体、フミヤさんはどんな風に刺激を感じているのか、アニメーションならではの映像と音で描きます。アニメを制作するのは新進気鋭のクリエイターたち。毎回違う作風も、発達障害のある人の多様な世界を表現するのにぴったりです。「ふつうってなんだろう?」から始まる発達障害のある人の感じ方や行動は、定型発達の人とは違うこともあります。同じ発達障害のある人でも、その特性によって一人ひとり、多様で独特な感じ方をしています。そのことで、生きづらさを感じることもあるでしょう。ですが、違うことで生まれる摩擦を描くこのアニメシリーズを見ることで、「私にとっての「ふつう」は、誰かの「ふつう」とは違うかもしれない。」そんな風にも思えてきます。そして感じ方に「ふつう」も優劣もない、あるのは一人ひとりの違いだけ…。もしその違いから軋轢が生まれるとしたら、それを知った私たちには何かできることはあるのでしょうか? 多様な人の感じ方やその人の困りごとを2分間という短い映像で見せてくれる「ふつうってなんだろう?」。発達障害のある人の、一人ひとりの声から、違いのバリエーションや困っていることも人それぞれと知ることもできます。ぜひ多様な世界の見方を、アニメーションを通じて、家族や周りの人と覗いて見てください。 総合テレビとで随時放送予定。番組詳細は以下のリンクからご確認ください。https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_810.html2分アニメシリーズ「ふつうってなんだろう?」健康ch 2分のアニメシリーズ、NHKならではですね。☄
2018.11.19
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エディ・レッドメイン、「ファンタビ」で演じるニュートは「自閉症スペクトラム障害」を持っているとの持論を告白 エディ・レッドメイン(36)が、自身が映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズで演じるニュート・スキャマンダーは、自閉症スペクトラム障害を持っているとの持論を明かした。エディ・レッドメイン演じるニュートは、非常にシャイで遠慮がち、他人とのアイコンタクトを避ける人物で、これらのことからファンの一部は、「彼は自閉症なのではないか」と考える要因となっていた。このことをインタビューで尋ねられたレッドメイン自身も、DigitalSpyに対し、彼自身もニュートは「アスペルガー」だと考えていることを認めている。 「一作目の撮影時、初めてジョー(原作者J・K・ローリング)にキャラクターの説明を詳しく聞いたとき……たとえば彼の歩き方や、視線の動かし方、アイコンタクトについて聞かされたとき、そのことも話題になったんだ」 「ぼくは、彼がアスペルガー症候群を持っていると思っている。(自閉症が初めて報告された)1940年代以前が舞台だから、彼がそう診断されたわけじゃない。でもその要素はあるよ」 近年の映画には、自閉症を持つキャラクターの活躍が描かれる機会も多い。古くは「レインマン」(1988)にてダスティン・ホフマンがコミュニケーションに難はあるものの、数学の天才というキャラクターを好演。最近では今年公開の「ザ・プレデター」や、昨年公開の映画「パワーレンジャー」にも自閉症キャラクターが登場している。 [tvGroove]エディ・レッドメインWENN.com(同サイトより)最近の医学の進歩で、障害名が広まり、こういう現象も増えてきそうですね。350万アクセス達成しております。いつもご訪問にコメント感謝です。☄
2018.11.18
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自閉症の娘と生きる家族の物語「ムーちゃんと手をつないで」1巻 みなと鈴「ムーちゃんと手をつないで~自閉症の娘(キミ)が教えてくれたこと~」1巻が、本日11月16日に発売された。本作はある夫婦と自閉症の女の子・ムーちゃんという家族を描いた物語。ムーちゃんは同年代の子供が喋る年齢になってもなかなか言葉を話さず、親が名前を呼んでも振り向かない。「ほかの子供より少し成長が遅いだけ」と思っていた両親だったが、ムーちゃんが自閉症かもしれないとわかったとき、夫婦の関係にも変化が訪れ……。エレガンスイブ(秋田書店)に連載中の本作は、実際に自閉症の子供を持つみなと自身の経験をもとに描かれている。単行本には医療ライター・赤沼美里が知的障害などについて綴ったコラムも収められた。[マイナビニュース]ムーちゃんと手をつないで(1) 自閉症の娘が教えてくれたこと (秋田レディースコミックスDX) [ みなと鈴 ]新たな単行本の連載が始まりましたね。育児しながらのお仕事、素晴らしいですね。☄
2018.11.17
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婚活がうまくいかないのは発達障害のせい!? 成功率をあげる“マニュアル化”する方法結婚できない人が増えつつある。内閣府が公表する「未婚化の進行」(2015年)を見ると、30歳から34歳の、男性の約2人に1人(47.1%)が、女性の約3人に1人(34.6%)が未婚だそうだ。未婚率は上昇傾向にあるという。 ひと昔前は見合いや社内恋愛で、大勢が結婚に至った。しかしその文化が消え去った現代は、結婚が人生のハードなイベントに分類されつつあり、なかには恋愛さえも難しい人が出てきた。『発達障害と結婚』(吉濱ツトム/イースト・プレス)は、特に結婚がハードになるであろう、発達障害を抱える人々へ向けた婚活指南書だ。著者は、自身もそれに苦しんだ経験を持つ「発達障害カウンセラー」の吉濱ツトムさん。本書より、幸せになる方法を少しだけのぞいてみたい。■日本人の発達障害の中で、男性に最も多いのがアスペルガー症候群 そもそもなぜ発達障害を抱えると非モテになってしまうのだろうか。吉濱さんによると、日本人の発達障害の中で、男性に最も多いのがアスペルガー症候群。彼らは真面目で勉強家でマニュアル通りに動くのは得意だが、基本的にコミュニケーションが苦手で、相手の心を察することを苦手とする。そのため初めて会う異性と上手に雑談できない。相手のことを知ろうと、まるで尋問のように質問攻めにしてしまうことも。彼らは知能が高く純粋で優しい気質を持っているのだが、それが伝わる前に異性から“落第” の烙印を押されてしまうのだ。異性と手軽に出会える街コンや婚活アプリなどが活況だが、アスペルガー症候群を抱える人々にとって恋愛は難易度が高いという。 もちろん結婚の困難は女性でも起こりうる。本書ではあるADHDの女性の事例を紹介している。保険のセールスレディーとして働く和美さん(仮名:32歳)は泣きそうな顔で吉濱さんに相談した。デートをすると、彼氏が突然怒り出してしまうというのだ。「この前のデートのとき、新宿の星乃珈琲に行ったんです。星乃珈琲ってスフレパンケーキが有名で、二段重ねにしたいんだけど、吉濱先生が糖質を控えろっておっしゃるから、デートのときは一段を二人で分けてるんです。で、パンケーキを食べているときに(以下、省略)」 よく女性の話はあちこちに飛び、要点が分からないというが、ADHDを抱える女性はこの傾向が顕著になるという。話の主題に関係ない周辺情報ばかりを詳細に話す。話の主語が頻繁に入れ替わる上に、その主語を省略して話すこともあるので、相手はうんざりして怒り出してしまうのだ。彼女は毎回このパターンでフラれてしまうそうだ。■婚活を行う人たちは発達障害を抱えている割合が高い? 吉濱さんによると、発達障害を抱える人々には他にも様々な共通点があるという。姿勢やしぐさに癖がある、自慢とネガティブな話題が多い、相手にむやみやたらと連絡して困惑させてしまう、テンションがおかしい…。 婚活を経験した人は、こういった人々に出くわした体験があるはずだ。ワイワイ盛り上がる街コン会場の片隅で、なぜか浮いている人がいる…。婚活アプリで知り合った異性から奇妙な連絡がいくつも届く…。 前述の通り、発達障害は誰かとコミュニケーションを取ることが苦手なため、恋愛に乗り遅れてしまう。そこで最後の希望を求めて婚活市場に乗り出す。したがって吉濱さん曰く、婚活を行う人たちは発達障害を抱えている割合が高い傾向にあるそうだ。 では、どうすれば異性と付き合って結婚できるのか。吉濱さんは、本気で努力すれば発達障害でも恋愛や結婚を楽しめると請け合う。その方法を次でご紹介したい。■異性との接し方を“マニュアル化”する そもそも恋愛を体験した経験が少ない場合、大切なのは場数。とにかく女性と出会い、会話を重ね、デートに出かけるのだ。吉濱さんは“試行回数を増やす”ことを本書で勧めている。また、アスペルガー症候群は物事をマニュアル化するのが得意なので、異性との接し方を“マニュアル化”すると、成功する確率を高められるという。 また、恋愛は小手先のテクニックが重要になる。初対面の異性と接するときは相手に安心感を抱かせることが大事だ。そのテクニックの1つに、相手の心を開かせる「オープナー」がある。相手に安心感を与え、会話のきっかけをつかむため、「お店の場所、分かりましたか?」「この前話した○○どうですか?」など、2人が会話に入りやすい言葉を投げてみよう。 ちなみに本書では、発達障害同士の“恋愛の相性”も紹介している。一例を挙げれば、受動型アスペルガー同士の相性が良いそうだ。 しかしそれを知るためには、まず自身が発達障害かどうか、どの発達障害でどれだけの程度か知る必要がある。本書ではそれを見分ける40個の問診があるので、気になる方はぜひ参考にしてほしい。「昔は良かった」という聞き飽きた言葉がある。しかし昨今の経済状況や恋愛事情を考えると、本当に昔は良かったのかもしれない。伸び続ける経済成長によって収入や将来に不安がなく、さらに見合いや社内恋愛によって結婚もかなり高い確率でできた。 価値観の多様化やコンプライアンスの高まりで救われた人々も多いだろうが、それによって失われた良き文化もある。結婚できない人が増えたことは、その象徴なのかもしれない…。[ダ・ヴィンチニュース]発達障害と結婚 (イースト新書) [ 吉濱ツトム ]決して結婚が全てではないしても、やはり少子化の要因にはなっているのでしょうね。☄
2018.11.16
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ダウン症児は「不幸な子ども」なのか? 出生前診断は「不良な子孫の出生を防止する」優生思想と背中合わせ最近の報道で、旧優生保護法によって強制的に不妊手術を受けた人が、国家賠償訴訟を起こしていることが伝えられています。この問題に対しては、障害者の人権に関心を持つ人たちから、20年も前から抗議の声が上げられていました。今になって広く報道されているのは、問題が訴訟という形に発展したからです。旧優生保護法のもと約1万6500人に強制不妊手術1948年に制定された優生保護法は、主に二つの特徴がありました。一つは、条件付きで人工妊娠中絶を認めたことです。戦後の日本は、満州国の崩壊や東南アジアからの軍人の引き揚げによって、爆発的に人口が増加していました。これを抑制する手段として、人工妊娠中絶が解禁されたのです。その当時、中絶が合法化された国は世界的にまだ少なかったため、日本は「中絶大国」との汚名を浴びせられましたが、これは昔の話です。そしてもう一つの特徴が、「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止すること」を目的に、精神疾患の人や知的障害者、遺伝性疾患がある人に対する強制不妊手術が法に定められたことです。この法律が廃止になったのは96年です。つい最近のことです。この法律によって、およそ84万5000件の不妊手術が行われました。そしてそのうちの約1万6500人が、本人の同意を得ない強制手術だったとされています。ナチスの蛮行後、世界は優生思想との決別へ向かったが…優生思想とは元々、人の遺伝構造を改良することで人類の進歩を促そうという思想です。平たく言えば、優秀な人間をどんどん増やしていくという考え方です。これを「積極的優生思想」と言いますが、現実にはそういうことはできません。そこで、代わって出てきた考え方が、「消極的優生思想」です。これは、「劣った人」を少なくしていこうという考え方です。劣った人にカッコを付けたのは、もちろん偏見に基づいているからです。イギリスで生まれた優生思想は、海を渡り、戦前のアメリカで発展します。当時のアメリカは、欧州から移民を大量に受け入れていました。アメリカは、「劣った人」が国内で増えることを抑制するため、移民には家系図を作って「劣った人」をあぶり出しました。そして、その「劣った人」に対して不妊手術を行いました。アメリカの「消極的優生思想」は、ヨーロッパ大陸に再上陸します。そして最悪の形で広がります。ナチスドイツの思想です。ナチスは精神障害者や知的障害者を隔離し、拘束し、殺害しますが、やがてそれは、ユダヤ人を丸ごと虐殺するという人類史上最悪の悲劇につながります。 戦後時間を経て、ナチスの蛮行が徐々に明らかになると、世界は優生思想と少しずつ決別する方向へと向かいます。しかし、優生思想は完全に消えたわけではありませんでした。「不良な子孫の出生を防止」するために、ターゲットが、大人から胎児へと変わっていったのです。兵庫で展開された「不幸な子どもの生まれない運動」68年、日本に羊水検査が導入されました。羊水を採取し、胎児の染色体分析をする検査です。判別する対象は、ダウン症です。そして70年前後には、兵庫県などで「不幸な子どもの生まれない運動」が展開され、羊水検査に助成がおこなわれました。この事実は、生まれる前にダウン症を診断する出生前診断には、優生思想が背中合わせとなっていることを示しています。なお、「不幸な子どもの生まれない運動」は、障害者団体の強い抗議にあって頓挫しました。 なぜ、ダウン症が昔も今も、出生前診断の標的になるのでしょうか? 日本ダウン症協会の玉井邦夫代表理事は、それは「彼らが立派に生きるから」と答えています。確かにそうでしょう。また、こうも言えるでしょう。「ダウン症なら染色体分析によって出生前診断が可能だから、検査の対象になるのだ」と。つまり、「ダウン症の子たちを社会の中でどう育てるか」を議論する前に、「ダウン症なら診断して中絶できるから、出生前診断の対象にしよう」という逆立ちした考え方が、そこにあります。思わぬ発見から、ダウン症の胎児診断が可能にダウン症とは異なりますが、英国のスコットランドでは長年、無脳症や二分脊椎の赤ちゃんが異常に多く生まれてくることに、医師たちが頭を悩ませていました。二分脊椎(脊髄髄膜瘤(りゅう))は、小児外科医が手術しても、その後の回復が大変悪く、「選択的治療中止」が英国で議論された病気です。生まれてきた赤ちゃんを手術しないで見殺しにするのは、さすがに倫理的に問題が大きいため、英国では「何とか出生前に診断をつけたい」と考えられるようになりました。まだ、超音波による検査が十分に発達していなかった頃です。 すると、ある時、羊水を採取してAFP(α-胎児性たんぱく)を測定してみると、無脳症や二分脊椎の胎児ではAFP値が上昇していることが見いだされました。やがてデータが蓄積し、羊水を採取しなくても、無脳症や二分脊椎の場合は、妊婦から採血して調べられる血清AFPの値も高いことが分かってきました。 妊婦の血液検査で二分脊椎の予測がつくようになった時、思わぬことが起こりました。ダウン症の赤ちゃんを身ごもった妊婦も、血清AFPが高かったのです。これが、「母体血清マーカー診断」の始まりです。今から40年以上も前のことです。妊婦の採血だけでダウン症を診断しようとする動きは、ここから徐々に始まり、現在の新型出生前診断にまでつながっています。 このような発見が、私たちの社会を幸せにしているのか、不幸にしているのかは、人によって大きく意見が分かれるでしょう。ただ、出生前診断の出発点に、優生思想が大きく影響していることを、忘れてはいけないでしょう。(松永正訓 小児外科医)[yomiDr.]出生の様々な経緯の中で、医学も進歩とともに考えてゆかないといけないこと、実に難しいですね。☄
2018.11.15
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同性愛者、ダウン症、自閉症 「違い」受け入れ豊かに 「いろとりどりの親子」17日から上映同性愛者、ダウン症、自閉症など、親とは違う価値観や個性を持った子どもがいる家族の在り方を伝える米国のドキュメンタリー映画「いろとりどりの親子」が、17日から日本で公開される。親子が困難を乗り越えて、互いの「違い」を受け入れる姿を通じ、多様性のある社会を訴える作品として話題になっている。 米作家アンドリュー・ソロモンさんが十年にわたって、価値観や個性の違いに葛藤を抱えて暮らす三百組以上の親子を取材したベストセラー本が原作。ドキュメンタリーが専門のレイチェル・ドレッツィン監督が制作した。映画には六組の家族が登場し、親がいろいろな治療を試みたり、過保護に育てたりするものの、子どもはありのままの自分を受け入れ、仲間との出会いを通じて社会とつながっていく様子に迫っている。 同性愛者であるソロモンさんの家族も登場する。ソロモンさんの母親は、息子が同性愛者という事実を受け入れられないまま亡くなった。そのことでソロモンさんもうつ病になって苦しんだ末、父親と和解する姿を伝える。「親の愛はずっと存在し、幸せの形は無限にある」と話す。 今月七日、国会内で開かれた試写会には、自民党の野田聖子衆院予算委員長ら国会議員が参加した。 作品は九十三分。十七日からの上映は東京都新宿区の新宿武蔵野館など。以降は全国で順次公開される。問い合わせは配給会社ロングライド=電03(6264)4113=へ。◆レイチェル・ドレッツィン監督に聞く 多様化、政治も追い付いて 「いろとりどりの親子」の上映に合わせて来日したレイチェル・ドレッツィン監督に聞いた。 -撮影のきっかけは。 「原作を読み、登場人物の人間性にひかれ、映画化したいと強く思った。登場する家族とは撮影に入る前から頻繁に会い、時間をかけて信頼関係を築いた」 -何を訴えたいか。 「私たちは障害を否定的にとらえ、不幸と思い込みがち。自分と全く違う外見や行動をとる人が近くにいると最初は気まずく感じたりするが、相手をよく知れば、想像以上に共通点があることに気づく。人は多様性と違いによって豊かになる、ということを明白にしたかった」 -自身の生活にも変化をもたらしたか。 「三人のティーンエージャーの母として、親がすべき最善のことは、彼らをありのままの姿でいさせることだと再確認した。彼らをコントロールしたいという願望を手放して気持ちがすっきりした。この映画は、その助けになった」 -日本の印象は。 「想像と違った。米国と比べて民族的には多様性が少ないと思うが、滞在中、私が会った人たちは排外主義を憂い、多様性を重視して社会を変えようとしている。取り組んでいる課題は同じだと感じた」 -世界に広がる排外主義の流れをどう思うか。 「社会が多様化するとそれに対する抵抗感も大きくなる。世界がどの方向へ行くのかは分からないが、一つ言えるのは、時計の針は戻せない。政治システムが現状に追い付くことを願う」 [東京新聞]Far from the Tree: Parents, Children, and the Search for Identity FAR FROM THE TREE [ Andrew Solomon ]まだ和訳本が出ていないようです。試写会に国会議員が参加、社会を動かす一歩になればいいですね。☄
2018.11.14
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バリアフリーな料理本…知的障害者自立の助け、ふりがな・イラスト・写真多用知的障害のある人が料理に挑戦できるよう工夫された「たのしい、わかりやすい 料理の本」が出版された。発行したのは、知的障害者やその家族らで作る全国組織「全国手をつなぐ育成会連合会」。調理技術を身に付け、自立生活の実現につなげてほしいという思いが込められている。 知的障害者は大人になっても家族と同居したり施設で暮らしたりと、常に保護される環境にいることが多かった。しかし近年、生活支援や差別解消、雇用促進などの法律が整備され、障害者が自立生活を選べる環境が整ってきた。 「自立生活には料理の知識が欠かせないが、調理経験がない人も少なくない」と同会会長の久保厚子さん。市販の料理本で学ぼうとしても、一定の知識があることを前提に書かれ、手順を示す写真が省略されているなど、理解が難しいことも多かったという。「自立を目指す20~30歳代が作りたくなる本を作ろう」と人気の料理研究家、枝元なほみさんにレシピを依頼。炊き込みご飯やみそ汁、ハンバーグ、フレンチトーストなど約30のメニューを紹介した。全ての漢字にふりがなをつけ、野菜の切り方は調理の途中でも確認しやすいよう、本の冒頭にまとめた。米の研ぎ方を細かな手順ごとに写真で示すなど、イラストと写真を多用して理解を促している。久保さんは「調理の楽しさと自分で作った料理のおいしさを知ってもらいたい。1人で料理するのが難しい人は、家族や支援者と作ってみてほしい」と期待する。 A4判変型、48ページ。税別1000円。購入の申し込みは、日本発達障害連盟に ウェブサイト からか、ファクス(03・5814・0393)で。[yomiDr.]一冊あれば重宝しそうですね。☄
2018.11.13
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発達障害 10代が思い語る ◆渋谷、中高生ら50人参加 発達障害について悩む10代に向けたイベント「ハッタツトーク」が10日、東京都渋谷区の朝日新聞メディアラボで開かれた。朝日新聞と発達障害ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」との共催。中高生や保護者ら約50人が参加した。 ゲストは、コーヒー焙煎(ばい・せん)士の岩野響さん(16)とYouTubeなどで発達障害について発信する彩乃さん(29)、発達障害の人たちを支援するNPO法人の代表池田誠さん(41)。3人はいずれも、アスペルガー症候群や注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断を受けた。 イベントでは、3人が小中学生のころの悩みや今の生活について紹介。10代のグループと保護者のグループに分かれて意見交換する時間もあり、10代の間では「自分のことは理解しているし、そこまでマイナスと思っていない」などと話し合っていた。ADHDと診断された都内の私立高校2年の女子生徒(17)は「自分と同じような境遇の子と話せてよかった」と明るい表情だった。[朝日デジタル]親子揃って参加して分ち合えるイベント、珍しいですね。☄
2018.11.12
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映画「MMRワクチン告発」日本の配給会社が公開中止を発表MMRワクチン(麻疹・おたふく風邪・風疹の混合ワクチン)と自閉症の発症を関連づける内容が批判されていたドキュメンタリー映画『MMRワクチン告発』の公開中止を、日本の配給元・ユナイテッドピープル株式会社が発表した。 配給元は「医療の専門家でない立場で、難しい分野の映画を取り扱うにあたり、それなりのリサーチはしておりましたが、足りませんでした」とコメントしている。【BuzzFeed Japan Medical / 朽木誠一郎】映画は元医師のアンドリュー・ウェイクフィールド氏が監督。同氏が「米国疾病対策センターがMMRワクチンと自閉症の関連性を示すデータを隠蔽している」という内部告発を受けた生物学者に協力し、調査を行う、という内容だった。 一方、ウェイクフィールド氏は過去に「子どもへのMMRワクチンの予防接種が自閉症の症状を引き起こす」という論文を発表するも、利益相反行為や、患者のデータ・病歴が大幅に書き換えられたり、捏造されたりしていた疑惑が発覚。ウェイクフィールド氏は医師免許を取り消され、論文が掲載された『ランセット』は論文を撤回している。このような背景があり、日本での上映にも、医療関係者などから批判が集中していた。 同作の公式サイトによれば、もともと「MMRワクチンと自閉症の因果関係の有無について科学的な証明がなされていないことを承知」した上で、映画の主張に「合理性がある」としていた。 映画には「アジアでもMMRワクチンの使用による影響の可能性を連想させる使い方」で、「日本でも自閉症と診断される人の数も右肩上がりに増加している様子のグラフが紹介されるシーン」があったという。しかし、同社代表の関根健次氏は、写真の利用についてのトラブルをきっかけに、同氏の同社への説明に「疑念を抱いた」。そして、「多数の文献に目を通し、複数の専門家や厚生労働省を含む機関にヒアリング」した結果、ウェイクフィールド氏の主張に矛盾が生じ、「本作の劇場公開は適切ではないと判断し、劇場公開を取りやめる決断」をしたと説明。 関根氏は公開中止の判断について、以下のようにコメントしている。“事実確認が遅かったのではないかと指摘されれば、その通りです。医療の専門家でない立場で、難しい分野の映画を取り扱うにあたり、それなりのリサーチはしておりましたが、足りませんでした。”『MMRワクチン告発』(原題『Vaxxed: From Cover-Up to Catastrophe』)は、2016年のトライベッカ映画祭でも、上映が差し止められていた。チケットの購入者には、劇場や購入元サイト、ユナイテッドピープル株式会社から代金が返金される。ユナイテッドピープル株式会社は「本映画の配給そのものから手を引き、速やかに制作元との契約を解除」するが、劇場公開を前提としたジャパンプレミアは「一度限りの上映会」に変更し、11月12日に開催。 「本作公開中止になった上記理由を説明する機会を作るためにも」、映画プロデューサーのデル・ビッグツリー氏が講演するとしている。[YahooJAPANニュース]製作費を思うと、やはり初動の調査が足りなかったのが残念ですね。☄
2018.11.11
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発達障害の子どもの生きる指針に 親に求められる「一貫性」の大切さ発達障害の子が親に求める「ただ1つのこと」発達障害やグレーゾーンの子の子育てで悩む人が多いなか、当事者たちの成功体験、失敗体験を聞く機会は少ないのが実情です。ADD(注意欠陥障害)がありながらも芸能界で活躍するモデル栗原類さんの母で、その経験を著書『ブレない子育て』にまとめた栗原泉さん。そして、自身の親の呪縛から自立を果たした借金玉さん(著書に『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』がある)。2人に、親と子、それぞれの立場から、発達障害の子どもが親に求めることについて、語り合ってもらいました。「なぜ」を教えず叱る日本、「問題解決」するアメリカ借金玉:先日テレビの撮影の現場にお伺いしたとき、栗原類さんと少しだけごあいさつしました。そのとき、とても折り目正しくあいさつされている姿や、振る舞いにとても驚かされました。とても23歳の発達障害者とは思えない。僕があのような礼儀作法を身に付けられたのは、ようやく30歳を過ぎてからです。栗原泉:あの子は社会で働きはじめたのも早かったですからね。「周りの人を気遣うこと」「目上の人はもちろんキャリアのある周囲の人たちに敬意を払うこと」「一緒に仕事していただけることに感謝すること」。その一つひとつが「なぜ」大事なのか、小さい頃から繰り返し説明して理解させてきました。理由を示さず頭ごなしに「礼儀正しくしなさい」と言っても伝わらないけど「敬意を持ちなさい」と目的を伝えれば理解できるんです。発達障害の子の子育ては、伝え方も重要です。借金玉:僕は自分の本の中で、「会社に入ったらまずその部族の掟をキャッチしろ」と書いているんですが、その起点になっているのは自分の家族という部族の掟がわからなかったからなんです。しかも、親が言う「正しさ」の意味を理解できず、「自分が悪いんだ」と思って病んでしまった。結果、そのまま社会に出た20代は非常に苦労しました。栗原さんのように、親が「正しさの理由」を一つひとつ説明してくれたら理解できたと思うんですが。栗原:類はアメリカの学校を出たので、日本とアメリカの学校教育の違いも大きいと思います。向こうは、人との距離の取り方を小さい頃から教える文化がありますから。たとえば、学校の授業に誰かが遅刻してきたら、日本では先生も生徒もその子を責めたり叱ったりしますが、アメリカは「遅れてきてそのぶん授業が受けられなかったのは、その子の責任で、ほかの子に何も影響はないわけだから他人が口出しすべき問題ではない」という指導を徹底しているんですね。みんな仲が良いことを前提にしていること自体おかしい借金玉:みんなと同じことをやらないとずるいとか、人として失格とか、そういう文化が日本の学校教育にはありますからね。周りと足並みをそろえるのが苦手な発達障害者にとっては特にきついと思います。僕は小学校・中学校とほぼ不登校でしたが、学校のそういう文化が自分に全く合っていなかったという部分が大きいです。馴染めなかったですね。栗原泉さん(撮影:尾形文繁)栗原:価値観や考え方が違う人間が30、40人もいるクラスで、みんな仲が良いことを前提にしていること自体おかしいんですよね。40人中数人でも嫌な思いをしている子どもがいる状況で行う教育は、その時点で失敗していると思います。みんな仲良くないことを前提にするところからはじめたほうがいい。借金玉:アメリカは多民族国家で、多様性を重視しているためか、先生が必要以上に感情的な介入をしないのもいいと思います。栗原:子ども同士が殴り合いのけんかしたときも、日本では本人同士に謝らせて、親同士も頭を下げますよね。でもアメリカでは親に謝らせないんです。謝ってしまうとそこで終了してしまうので。冷静に事態を把握しないと、次に同じようなことが起きないための問題解決になりませんからね。当事者同士が謝り合っても受け入れられるとは限らないので、先生がそれぞれ問題解決に向けた対応をしてくれるわけです。借金玉:日本の学校の先生はボスですからね。とりあえず叱るという「儀式」に持っていく。栗原:それで双方に謝らせて「ハイ、おしまい」というやり方ですよね。何がけんかの原因で、どうすればけんかにならずにすんだのか、先生が理解させてお互いに受け入れさせる文化や環境づくりがされていないのです。発達障害の子がいちばん苦しむ、“一貫性のない親”借金玉:僕は、自分の親や学校が間違った教育をしなければこんなにつらい思いをせずにすんだのに……という思いがあるので、栗原さんに育てられた類さんがうらやましいです。子どものことを考えて、間違っていると思ったら、一般常識に対しても「ノー」と言ったり、類さんのことを抑え込もうとしてくる周囲を押し返したりもしている。たとえ周囲に理解されなくても、自分が子どもにとって必要だと思ったことを貫く、信念と強さがありますよね。発達障害の子どもの立場から言わせてもらうと、それがいちばんありがたいですから。栗原:私の場合、自分自身の両親が反面教師になっているんです。子どもの頃はいくつも習い事をして塾にも通いましたけど、親は月謝を払うだけで私には無関心。進級状況や成績表を見てダメ出しするだけでしたから。勉強はできたので中学受験もする気満々だったのに、親の勝手な判断で受験させてもらえずハシゴを外されて。思いつきやそのときの気持ちで物を言う“お気持ちモンスター”みたいな親だったので、その都度、混乱しました。社会常識もまったく教えてもらえず、どう行動したらいいのかわかりませんでした。借金玉:状況は僕も似ているかもしれません。僕の父親は、社会によく適応していて、発達障害とは無縁の人だったんです。だから僕には、とにかく「普通」であることを求めてきた。父親からすると、僕の考えていることがまったくわからなくて怖かったんだと思います。でもそれは僕も同じでした。怒られても暴力を振るわれても、「なぜそれをされるか」がわからないんです。だから、ボタンを押すとランダムにいろんなタイプの「ダメ出し」が出てくる恐怖がつねにありました。何が大変だったって、親に「一貫性」がないことがいちばん大変でしたね。栗原:発達障害者にとって、「一貫性」や「整合性」がないのはいちばんつらいですよね。それがあれば、なんとか前に進めるけれども、なければどうしていいのかわからなくなるので。私は、親からは社会常識を何も教えてもらえませんでしたが、唯一与えられたのは本でした。頭ごなしに「読め、読め」と言われてお金をもらって文学の本を買って読んだりしましたけど、出てくるのは人格破壊者や社会不適応者ばかり。物語としては面白かったけれど、将来どうやって生きていけばいいのかは、ますますわからなくなりました。それなのに親からは、「勉強しろ、いい大学へ行け」と言われて、「勉強する気を失わせたのはあなたたちじゃないの?」と思っていましたね。本を読めというなら、子どもが読んだ本について親も話して共有しなければ教育ではないと思うんです。子どもの生きる指針にならなければ、何の意味もないので。借金玉:僕も家に文学全集がありました! 三島由紀夫を読んでも僕の親が望むような正しい生き方は学べないですけどね(笑)。あるとき、実は僕以外誰もちゃんと読んでないことに気づきました。親からは「まじめにやれ。正しくあれ。勉強しろ」と言われ続けましたけど、正しいってどういうことなのか、なぜ勉強しなければいけないのか、誰も教えてくれなかった。結局、地元の北海道を飛び出して自分で進むべき道を探しました。結果的に本が好きになって文章を書く仕事につながったことは感謝すべきですかね。子どもが何を求めているのか、見極めた進路選択を借金玉:そういう意味で学校選びは大事ですよね。僕は早稲田大学に入って、だいぶ居心地がよくなりました。あの大学は日本人は多くても多民族社会で、年齢も経験も宗教も派閥もバラバラでしたから。教授や先生も、監督やボスではなく知恵を与えてくれる存在だったのがありがたかったです。栗原:類が通っていた高校も単位制で、自由度の高い学校だったので、すごく楽しそうでしたよ。一応クラスはあるんですが、自分が好きな授業や行事を選んで単位を取ることができたので。借金玉:僕もそういう学校に行きたかったです。高校はさっさと辞めて自分で勉強すればよかったと今となっては後悔しています。精神科通いをもう少し減らせたかもしれない。最近、「学校に行けない、辛い」という中高校生からよく相談を受けるんですが、「行かなくていいよ」と答えています。発達障害の二次障害であるうつを発症してしまう前に、「学校に行くのが普通」という世間の一般常識を全部外して、自分が何を求めているのか考えた上で環境を最適化したほうがいいです。ただ、一方で「その代わり学習は自力で何とかする必要がある」と言わねばならないのが辛いところですが。栗原:発達障害であればなおさら、子どもが何を求めているのかを親が見極めて導いてあげなければいけないのに、そうできていないケースが圧倒的に多いように思います。子どもが自分自身で考えるのは大変ですからね。借金玉:子どもは何もわからないので、どんな能力を身に付ければどんな働き方の可能性があるのか教えてほしいんですよね。僕は長男で、「公務員になるしか生きる道はない」という家庭で育ったので、北海道でずっと絶望していました。あのまま公務員か教師にでもなっていたら、おそらく生きていけなかったと思います。実際初めて勤めたお堅い職場は勤まらなかったですしね。栗原:私は、社会に出たら絶対に働かなきゃいけないことはわかっていたけれど、会社員にも公務員にもなりたくなくて。社会に出る直前に、フリーランスという働き方があることに気がついたからまだよかったですけど。たとえ親が自分と違っていても、なぜそういう価値観や考え方をするのか言葉で説明してくれれば理解できるんですよね。でも何の説明もなく、自分が言うことがすべてで正しいと思わせたい親が多すぎる。そういうふうに縛り付けておきながら、子どもが大人になって不幸になっても、「それはお前の責任だ」と言われたらたまったもんじゃないですよ。親のエゴを外して、その子どもの個性に合う教育はどういうものなのか、そこから考えていけば、発達障害があるなしに関係なく、適切な方向へ導いてあげられると思います。[livedoorNEWS]一貫性を貫く、教育には不可欠ですね。349万アクセス達成しております。いつもご訪問にコメント感謝です。☄
2018.11.10
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青森)知的障害の娘が自宅に「放火」 判決に母の思いは 昨年6月に西目屋村の住宅で起きた火事で、自室のベッドに火をつけたとして知的障害のある30代女性が現住建造物等放火の罪に問われた裁判員裁判の判決公判が5日、青森地裁であった。懲役3年執行猶予4年(求刑懲役5年)の判決に、逮捕以来自分を責め続けてきた母親(62)が、苦しい胸の内を明かした。 判決などによると、女性は昨年6月5日午後、自宅2階の自室ベッドに、1階の仏壇にあったマッチで点火。けが人はいなかったが、2階の一部が焼けた。 女性は当時、朝起きられないことを理由に就労支援施設を休んでおり、日中は自宅で一人きり。施設を休み続けていることへの不安と、自分をかまってくれない両親への不満を抱えていた。その日の昼過ぎ、テレビの時代劇で不審火の映像を見て、自分が毎朝起きられずにいるベッドを燃やしてしまおうと思いついた。 公判で弁護側は、女性はベッドだけを燃やすつもりで、建物にまで燃え移るとは認識していなかったと主張。知的障害のある女性が、火がベッドから燃え移る危険性を認識できたかどうかが争点となった。 だが判決は、女性が日頃ガスコンロを使っていたことや、そもそもマッチでベッドに火をつけようとしたことから、「火の基本的性質について何ら知識を得ていなかったとは考え難い」。古玉正紀裁判長は「犯行の大部分は正常な心理によって引き起こされた」としながらも「動機の形成過程に知能障害の影響があった」として、執行猶予付きの判決を言い渡した。「私の気を引くため」自分を責める母親 母親は判決後、朝日新聞の取材に「ひとまず執行猶予がついてよかった」と安堵(あんど)の表情を見せた。 事件当日、自宅近くで仕事をしていた母親は、黒煙を見て慌てて自宅へ駆けつけた。隣家に駆け込んでいた女性は「マッチで火をつけた」と泣き出したという。 仕事で夜まで帰宅できず、自宅にこもる女性をかまってあげられなかった。「私の気を引きたかったのだろう。可哀想なことをした」。娘を許し、再び元の生活に戻るはずだったが、火事の2日後に女性は逮捕された。 それから1年半。「この長い時間は私への刑なのかと考えるようになった」と母親は話す。万引きをしてはいけないことなどは教えてきたが、「物に火をつけてはいけないとは教えなかった。自分を責めずにはいられない」。 母親は女性の今後を心配している。「この先私がいなくなったら、誰が娘を見てくれるのか」。女性の面倒を見てくれる施設を、今も探し続けている。 知的障害者の犯罪抑止支援に詳しい聖マリアンナ医科大学の安藤久美子准教授(司法精神医学)は、知的障害者の不安やストレスのはけ口を、家族や通所する施設の職員が見つけてあげることで「事件を未然に防ぐことができる」と話す。「障害者の家族だけでなく、社会全体で支えることが大切です」[朝日デジタル]何はともあれ、命が助かって良かったですね。☄
2018.11.09
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知的障害者の暮らし…支援の輪 親が元気なうちに知的障害のある子どもの親にとって、自分が死んだ後、残された子どもの暮らしがどうなるのか、心配は尽きない。親が元気なうちに、安心して地域で暮らし続けられるよう備える取り組みを紹介する。ダウン症で心臓病がある岡本真理さん(45)は、横浜市内のマンションで母親の美知子さん(71)と2人で暮らす。週2日、作業所で織物を織り、日常で感じたことをつづった新聞「マリタイムス」を2か月に1回発行している。 真理さんには3年前から、成年後見制度に基づく保佐人が付いている。小遣いの管理や福祉サービスの利用手続きなどを、母親に代わって手伝ってもらうためだ。美知子さんは「私が元気なうちに、娘を見守る人たちの輪を引き継いでくれるキーパーソンを決めておきたかった」と打ち明ける。 保佐人を務めるのは、後見業務を担う認定NPO法人「よこはま成年後見つばさ」(横浜市)。所属する社会福祉士の根岸満恵さん(62)が担当し、毎月1回、自宅を訪ねる。 知的障害者の支援期間は長いため、個人ではなく法人が保佐人を務めることで、担当者の交代や情報の蓄積で継続的に支えることができるメリットがある。■役割分担表を作成 美知子さんは、真理さんが生後8か月の時に夫と別れた。特別支援学校の教員として働きながら、一人娘を育ててきた。59歳で退職後、「娘が一人になっても、楽しく暮らせるように準備をしなければ」と考えるようになった。 しかし、どんな準備をすればよいのか分からず、焦りばかりが募った。障害者の母親仲間に不安を打ち明けると、みな同じ思いだった。その一人が、重度の知的障害のある長男(32)を育ててきた根岸さんだった。 岡本さん親子は2012年4月から、根岸さんを中心にNPO法人の支援を受け、真理さんの将来の暮らしを考える検討会を毎月1回、自宅で開いた。誰に何を手助けしてもらっているか書きだし、将来は誰に担ってもらうのがよいか話し合い、役割分担表を作った。 ホームヘルパーの利用調整など、多岐にわたり母親に支えられている現実に、真理さんは「母さんがいないと困る」と不安を口にしたという。■母親の負担も軽減 そんな中、根岸さんから成年後見制度について繰り返し説明を受けた真理さんは、次第に「支援者が増えて、母の負担が減れば、長生きしてくれる」と期待感を持つようになった。15年6月、NPO法人を保佐人の候補として横浜家庭裁判所に利用を申し立てた。 親族以外が後見人らに選ばれた場合、選任後に初めて障害者本人に会うケースも多いが、根岸さんは相談から申し立てまで3年に及ぶ検討会を通じ、信頼関係を深めていた。民生委員やボランティアなど支援者との顔合わせも重ねており、「チームで真理さんの暮らしを支えたい」と話す。 真理さんは今では、母親ではなく根岸さんを頼る場面も多い。「タブレット端末を買いたい」と相談を受けた根岸さんは、購入を手伝った。真理さんは「頼りにしています」と照れくさそうに語る。 美知子さんの負担も減った。週2回、真理さんを車で作業所に送迎していたが、根岸さんが送迎サービスを利用できるように調整した。美知子さんは「娘の将来を一人で考えなくてもいい。徐々に引き継いでいけるので、ホッとしている」と話す。<成年後見制度> 認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を支援するため、家庭裁判所が選んだ後見人らが、本人に代わって預貯金や不動産などの財産管理、福祉サービスの利用契約などを行う制度。本人や家族らが申し立て、家裁が本人の判断能力に応じて後見人、保佐人、補助人のいずれかを選任する。日常の買い物程度は一人でできるが、金銭の貸し借りなど重要な財産行為はできない場合に保佐人がつく。 親が元気なうちに、子どもがお金や暮らしに困らないように準備するための相談窓口(相談室)も広がりつつある。 社会福祉法人「大分県社会福祉事業団」は17年1月、県内6か所に相談室を設置。相談員が、話を聞きながら課題を整理し、自治体の福祉担当課や連携する司法書士などの専門家などを紹介する。 知的障害のある20歳代の娘の財産管理などで相談に訪れた60歳代の女性には、ファイナンシャルプランナーを紹介。「何をすればよいか見通しが持てた」と喜ばれたという。 東京都世田谷区に事務所を構え、「親なきあと」相談室を主宰する行政書士の渡部伸さん(57)は、「漠然とした不安を受け止めて、適切な行政の窓口や支援者につなぐ水先案内人が各地域に必要だ」と話す。渡部さんの呼びかけでNPO法人や行政書士などの専門職が開設した相談室は全国に約40か所ある。[yomiDr.]個人ではなく法人が保佐人を務める、とても有意義ですね。☄
2018.11.08
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知的障害の男性、職場いじめで退職 「幼稚園児以下」「バカでもできる」と暴言も障害者雇用に力を入れる企業が少しずつ増え始め、社会で活躍する障害者も多い。スーパーマーケット「いなげや」で勤務していた知的障害のある男性(28)が指導役の女性従業員から職場いじめに遭い、退職を余儀なくされたとして会社などを訴えた裁判で、6日に和解が成立していたことがわかった。■「あんたの仕事は幼稚園児以下」報道によれば、2008年に障害者雇用枠で採用が決まった男性は、指導係のパート女性従業員から「あんたの仕事は幼稚園児以下」「バカでもできる」などのパワハラを受けたという。女性従業員から家族に向けて書かれた連絡ノートには「前日にやったことはどの程度記憶していられるのでしょうか」などと記されていたとのこと。男性はパワハラを我慢して耐え続け、家族も支援団体に何度も連絡をとっていたようだ。また、男性は水泳の知的障害者の国体でメダルを獲得するほどの実力をもっているが、職場ではその水泳に打ち込むことも非難されていたという。■「現場の丸投げ」を指摘する声もパワハラ、そして障害者差別ともいえる指導係の発言の数々。報道を受け、『Yahoo!ニュース』やツイッターでは指導係の女性に対する怒りの声が相次いだ。中には「もうここの商品は買わない!」と宣言するユーザーも見受けられた。障害者雇用の問題は決して簡単なものではなく、現場で働く人々が指導に困ることもあるという。だからこそ企業は、指導係に丸投げするのではなく、しっかりとバックアップする体制をつくるべきとの声もあがっている。「難しいよね 専門の知識がある人ならまだしも、なんの知識もない人が、他の仕事をしながらやるのは特に これは、指導者になってしまった人もある意味勉強しないといけないし、会社がバックアップしないといけない」「企業が障害者を雇用するのは大変素晴らしい。が、雇用した後に現場に丸投げするからこのような事が起こると思う。それは障害者に限らず老人の雇用も同じ。現場の人間は障害者の方に対する接し方や教え方を何も学んでない状態で丸投げされる場合が多い」■パワハラを受けている人は…しらべぇ編集部が全国20~60代の有職者の男女251名を対象に「職場でのパワハラ」について調査したところ、16.3%が「現在、職場で『パワハラ』を受けていると感じる」と回答。6人に1人がパワハラに悩んでいることを考えれば、かなり多い割合だといえるだろう。(ニュースサイトしらべぇ)障害者の雇用率ばかり目が向けられるが、雇用された人たちが働きやすい環境を目指すことも大切だ。(文/しらべぇ編集部・鳩麦エスプレッソ)【調査概要】方法:インターネットリサーチ「Qzoo」調査期間:2014年5月19日(月)~5月20日(火)対象:全国20代~60代の有職者の男女計251名[@nifty ニュース]以前にも取り上げていた事案、何はともあれ、和解が成立して良かったですね。☄
2018.11.07
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ADHDを治療するビデオゲームが登場。自閉症、うつ病の治療にも有効かADHD(注意欠陥/多動性障害)とは不注意、多動性、衝動性の3つを中心的な症状とする発達障害だ。本人はこのような特性があることで日常生活に困難をきたしており、周囲の理解や適切な治療が必要となる。大人の場合も子どもの場合も、ADHDの治療法は大きく分けて、心理社会的アプローチと薬物治療の2種類がある。心理社会的アプローチとは、対人関係能力や社会性を身につけるトレーニングを行ったり、医師やカウンセラーの指導のもと生活環境を改善したりする治療法だ。薬物治療では主に神経伝達物質を増やす働きのある薬を服用し、症状をコントロールすることを目的としている。現状ではこれらがADHD治療の2本柱だが、今後新しい治療法が確立されるかもしれない。アメリカの会社Akili Interactive Labsは、ビデオゲームを使った治療法の開発を進めている。これは子どもを対象にした治療法で、認知障害やそれに伴う症状を改善することを目的としている。前頭前皮質を活性化させるため、感覚刺激を与えたり運動反応を測定したりするのが特徴だ。すでに申請における主要な試験を終え、後はFDA(米食品医薬品局)に認可されれば、従来の薬と同じように患者に処方することが可能になる。同社のサイトにビデオゲームの具体的な内容は書かれていないが、ジャンルはアクションゲームで、患者がゲームに没頭することが治療になるそうだ。300人以上の子どもを対象に行った実験によると、このゲームで遊んだ子は他のゲームで遊んだ子と比べて、注意力を測るテストで断然良い結果を出したという。このゲームは患者のレベルに合わせた難易度になるよう自動的に調整され、いわば子ども達がパーソナライズされた治療を受けることができる。同社はADHDだけでなく、他の障害や疾患を治療するゲームも開発している。これらはまだ申請における主要な試験の段階に至っていないが、ASD(自閉症スペクトラム障害)、MDD(大うつ病性障害)、そしてMS(多発性硬化症)の治療を目的とした臨床研究が進められている。同社はこういったゲームを用いる治療を「デジタル治療」と呼び、ヘルスケアのありように変化を起こすべく活動している。ADHDと違い、ASDの治療薬は現時点では存在しない。ADHDかと思いきやASDの特性を持ち合わせていることにも気づき、しかも最近はうつ傾向まである、という事態はよくあることで、診断名にこだわらず個別の状況に合わせた治療を行うことが大切だ。そんな「私」という病の治療に、ゲームが一役買うことを期待したい。[ideasforgood]ゲームに没頭しながら症状が軽減できれば一石二鳥ですね。☄
2018.11.06
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尾木氏「偏見なくなるきっかけ」小島慶子の記事言及尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏(71)が、元TBSアナウンサーでエッセイストの小島慶子(46)が40歳を過ぎてADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されたと公表して反響を呼んでいることに触れ、「発達障害への偏見 差別的意識なくなるきっかけになってくれないかしらと思います」と期待した。小島は今年7月、「日経DUAL」で連載中のコラムで、主治医から軽度のADHDと診断されたと公表していたが、3日更新のツイッターに同記事をあらためて添付したところ、大きな反響を呼んだ。尾木氏は6日、「発達障害への偏見なくなるといいね」のタイトルでブログを更新。ネット上では小島が偏見を受けてしまうのではと心配する声もあがっているが、「逆に発達障害への偏見 差別的意識なくなるきっかけになってくれないかしらと思います!」とつづった。また、発達障害については「顔違うように」個人差が大きいことを説明した上で、「脳の個性として理解してその人の良さを生かしていけば素敵な仕事も出来る 素敵な人になるんだってこと 自然に受け入れる小さなきっかけになって欲しいなと思います!」と願った。[日刊スポーツ][BLOGOS] より有名人ほど、何か公表すれば話題になりますね。敢えて公表しなくとも、人間みんな弱みや欠点はあるものですね。☄
2018.11.05
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うまく人と話せない子に……ルール教え、ほめて伸ばす学習塾自分の気持ちを表現することが苦手だったり、うまくコミュニケーションを取れなかったりする子どもたちでも、人と一緒に練習を積み重ねていけば、必ず変わっていくことができます。発達障害や知的障害のある子どもたちが、コミュニケーションの取り方を訓練できる学習塾があります。コミュニケーションの取り方を訓練 「あなたはかき氷を食べています。『でも』でつながる文章を考えて」 コミュニケーション学習塾「ジョブサU18」では、接続詞に続く文章を作ってスピーチの練習をします。東京都立川市の立川南口教室に通う高1の大塚竜輝さん(16)は、「でも、食べ終わったあとのゴミ箱までの距離は500㍍以上あります」と答えました。接続詞は「つまり」「そして」と、次々と与えられ、文章を作っていきます。 ジョブサでは、自分の気持ちを表現する方法や、周りの人とのコミュニケーションの取り方を、五つの段階に分けて訓練します。周りの状況を把握し、話したい内容を文章にします。その文章を、さらに会話を考えて適した言葉に置き換えます。相手の反応を想像してから、勇気を出して話します……。集団ルールも学ぶ 大塚さんは小さいときから、電車の名前や聞いた話をすぐに覚え、一度聞いた曲をそのままピアノで演奏できました。ただ、自分の気持ちを言葉で表現することは苦手でした。中学はフリースクールに通って1対1で学び、同世代の子との交流はあまりありませんでした。今も習い続けるピアノの先生の勧めもあり、昨年6月からジョブサに通っています。高校は、自分のスタイルに合わせて登校日数を選べる通信制の学校に進みました。 授業はまず、体操で身体をほぐし、声を出す練習から始めます。グループで学習し、カードゲームなどの遊びを通して、集団ルールも学びます。大塚さんはジョブサに通うようになってから、家で初めて友だちの話をするようになりました。困ったことも口に出せるようになってきました。「気持ちが落ち着いてきた。滑舌も良くなった」と笑って話してくれました。「成長する力を必ず持っている」 運営する「ロクマル」(本社・東京都千代田区)は現在、札幌市から千葉県船橋市や千葉市など全国10カ所でこうした塾を展開しています。うまく会話ができずにいじめられるなど、傷ついた経験を持っている生徒が多く、少人数のグループで勉強することで、安心して話ができる環境を作ることを心がけています。一方的に自分の話ばかりしてしまう子には、「人が話すときは待つ」というルールを伝え、待てたときにはその都度ほめます。ほめられる経験が増えると、自分の番を待てるようになるといいます。 高倉秀穂社長(48)は「ダメだと指導するのではなく、先生が笑顔で話を聞くことで、子どもの心が満たされて余裕が出来てきます」と話します。 コミュニケーション力が伸びれば、学習や就労支援にもつながります。「子どもは成長する力を必ず持っています。ただ、スピードに差があるだけ。ゆっくりでも良いんだという安心感を与えたいです」【関連リンク】凸凹の輝く教育(朝日新聞デジタル) 何事も満遍なくできる子を評価しがちな学校や社会の中で、凸凹の輝く教育を探っていく連載です。[withnews]学校でなかなか溶け込めない部分を、こういう場所で克服できればいいですね。☄
2018.11.04
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本日開園!国内6園目、練馬区初となる「障害児保育園ヘレン」。 医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害児などに保育を提供 重い障害があったり、胃ろうや酸素吸入などの医療的なケアを必要とするお子さんを長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」。新しく「障害児保育園ヘレン中村橋」が練馬区に本日開園し、入園式が行われました。本日11月1日(木)、東京都練馬区に「障害児保育園ヘレン中村橋」がオープンしました。障害児保育園ヘレンは、重い障害や、日中胃ろうや酸素吸入など医療的なケアを必要とするために地域の保育園でお預かりが難しいお子さんを、長時間保育する施設です。フローレンスでは2014年から都内に5園展開し、本施設は6園目となります。 「障害児保育園ヘレン中村橋」では、保育スタッフと看護スタッフ、リハビリスタッフが協力し、最大で15人のお子さんに保育と療育を提供します。たくさんの方々の支援でできた障害児保育園 障害者支援に力を入れる練馬区が、中村橋区民センター1階を提供して下さり開設が実現した「障害児保育園ヘレン中村橋」。同施設内には、心身障害者福祉センター/中村橋地域包括支援センター/区民館があり、障害のある方やお年寄り、子育て世代など地域住民の憩いの場となっています。 感覚を刺激し子どもたちをリラックスさせる「スヌーズレン」も寄付によるものヘレン中村橋園児 初めての活動また、開設や医療福祉車両の購入などに係る費用約5000万円は、合同会社西友をはじめとするたくさんの企業、個人の方からのご寄付によるものです。 先月10月18日には開設式典と施設内覧会を行いました。練馬区長、区議会議長、教育長をはじめ、合同会社西友、寄付者の皆さま、地域関係者の方々、メディアなど、約90名が施設を訪れました。開設式典(10月18日) 前川燿男 練馬区長練馬区長 前川燿男氏は、「ヘレン中村橋は、障害児の保護者の皆様から開園を強く望まれていた施設である。開設にご尽力いただいたNPO法人フローレンスをはじめとする関係者の皆様には心から感謝申し上げる。地域の皆様と交流を進め、地域に開かれた施設となるよう運営を期待している。」とお祝いの言葉を下さいました。 合同会社西友 臼井裕美子さん福祉送迎車両を寄贈した合同会社西友の企業コミュニケーション部臼井裕美子さんは、「2011年からフローレンスを支援している。西友は、全ての人が社会に参加できる”ダイバーシティ&インクルージョン”を大切にしており、障害があっても保育を受けられ、障害児を育てる親御さんがいきいきと仕事を続けられる社会を目指すフローレンスの活動に今後も期待したい。」と力強く応援して下さいました。多くの方々の「たくさんの親子を支えたい」という思いによって、障害児保育園ヘレン中村橋は新しいスタートを切ることができました。どんなお子さんも、保育を受けられる世の中に医療的ケア児を医療の面でケアをする人員を配置したり、設備を整えるための制度が不十分なため、多くの一般的な保育園では、重症心身障害児や医療的ケア児のお預かりが難しいのが現状です。そうした背景で保育園や幼稚園に通うことができない医療的ケア児は、現在東京都内に200人程度います。また、医療的ケア児を子育て中の母親の常勤雇用率は、わずか5%と言われています。(フローレンス調べ)。障害児保育園ヘレン経堂フローレンスの「障害児保育園ヘレン」では、これまで東京都内5園(荻窪、巣鴨、東雲、経堂、初台)で、のべ55人の障害や医療的ケアのあるお子さんをお預かりしてきました。フローレンスは、重症心身障害児や医療的ケア児があたりまえに保育を受けることができる社会を実現すべく、障害児保育園ヘレン、障害児訪問保育アニーのふたつの事業を運営しています。フローレンスは「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現に向けて、引き続き活動をしてまいります。 【障害児保育園ヘレン中村橋 概要】 住所:東京都練馬区貫井一丁目9番1号 中村橋区民センター内 運営事業者:認定NPO法人フローレンス事業内容:児童福祉法に基づく児童発達支援および居宅訪問型保育。保育スタッフと看護スタッフ、リハビリスタッフが協力し、重度の障害や医療的ケアを理由に保育園等に通園が困難な子どもを預かり、療育と保育を行う。 対象:重症心身障害児(注1)、医療的ケア児(注2)など(注1)重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態にある子どものこと(注2)人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児 定員:15名 支援時間:概ね午前8時から午後6時まで障害児保育園ヘレンHPhttps://helen-hoiku.jp/認定NPO法人フローレンスhttps://florence.or.jp/ [PRTIMES]少子化でもなかなか進まない分野での保育提供。徐々に広まってきていますね。☄
2018.11.03
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発達障害を隠したまま入社 トラブル多発で部署を転々発達障害を隠して入社、男に直面した困難とは? トラブル続きで部署を転々と昨年から大きな話題になっている「大人の発達障害」。SPA!で特集を組んだところ「自分もそうかもしれない」「知人が驚くほど当てはまる」と反響があった。発達障害の当事者たちは、その特性から職場でさまざまな困難に直面している。彼らが経験してきた仕事上のトラブルを聞いた。◆「上司にケンカを売ったことも」“衝動性”が対人トラブルを生む 中学生の頃から自分に違和感があったものの「それが障害のせいだとは思ってもみなかった」という木島正志さん(仮名・33歳)。ADHDと診断されたのは、就活中の大学4年時のことだったという。「最初は就活のプレッシャーによるうつ病だと思っていたので、発達障害という診断結果は正直、意外でした。人によっては発達障害の二次障害でうつの症状が出たりするのですが、自分はそちらが強かったみたいです」 大学卒業後、IT企業に発達障害の診断を伏せたまま入社するも、人間関係でトラブルがたびたび起きるという。「ほとんどが衝動的な行動でのトラブルが多いです。私がいちばん仕事を進めているのに、自分ばかりアレコレ言われる。進んでない人は何も言われないんです。それに不満を感じて、上司にケンカを売ってしまった。大問題になりますよね。その仕事はもちろん外されました」 それからも衝動的な行動が原因で部署を転々とした。「別の業務でも半年くらいはうまくいっていたんですが、徐々に仕事の量が増えてきて。プレッシャーに弱いんで、上司に納期について相談したら高圧的な対応をされて、またやらかしてしまいました」 木島さんは自身の特性をわかりつつも、衝動的に”爆発”してしまう自分への対策に苦慮しているという。「私の場合はテンパりやすいというか、焦る状況にならないように努力することで、逆にテンパるんです。今でも対人トラブルは多いけど、根気が必要な仕事で成果を出せるのが評価されているようで研究開発の部門に配属されています。こだわりが悪い方向にいくと追い詰められて爆発するので、自分を制御するのが一苦労ですよ」[livedoorNEWS]自分のことをうまくコントロールできれば、道も拓けてきますね。☄
2018.11.02
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発達障害の息子と教育者の母、17年の葛藤 「普通」からドロップアウトしても幸せはつかめる近年、発達障害の子どもが増えているという。「10人に1人が発達障害」と指摘する専門家もいる。現在、母親と暮らす18歳の勇太君も、「発達障害」と診断された1人だ。 「TOTO C48SR」。勇太君は、トイレの便器で水が流れる音を聞くと、トイレのメーカーと型番をぴたりと当てる。絶対音感を持ち、何十種類ものトイレの水流を聞き分けているのだ。勇太君には、こうした非凡な才能と、治ることのない「自閉症」という障害が共存する。生きづらさを抱える勇太君を育ててきたのが、母であり、幼児教育のプロでもある立石美津子さんだった。しかし、立石さんが求める「理想の子育て」と勇太君の「自閉症」は、時に激しくぶつかってきたという。 そんな母子の歴史を、医師で作家の松永正訓さんが一冊の本にまとめた。9月に上梓された「発達障害に生まれて」(中央公論新社)では、息子の障害をなかなか受容できなかった母の苦悩や、発達障害だったからこそ知ることができた世界が、つぶさに描かれている。母子はどうやって「普通の子」になろうとする子育てから自由になれたのか。松永さんに聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香) ●デパートのすべてのトイレの便器を記憶——勇太君は「発達障害」の中でも、知能障害をともなう自閉症とのことですが、表紙の写真を見ると、本書でも書かれている通り、まるで若い修行僧のような佇まいですね。 「勇太君に会う前、写真で何度も顔を見ていましたが、とても理知的に見えます。立石さんに取材をお願いした理由は、彼の風貌に惹かれたこともありました。実際に会ってみると、ある意味、普通の17歳であり、同時に知的な遅れがあることもわかります。 自閉症は、『他人との社会的関係の形成の困難さ』『言葉の発達の遅れ』『興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害』と定義されています。勇太君も他の人に関心が持てません。僕が自宅にお客さんとして訪ねても、興味を持たずに普段通りに過ごします。パソコンで、トイレの水が流れる動画をずっと見たり、部屋の端から端まで走ったりしています」 ——勇太君は小学高学年の頃から、トイレに愛着を見せるようになったそうですね。デパートに行くと、個室に入って便器を観察する。それをすべてのフロアのすべてのトイレで行う。次第にメーカーと型番に興味を示し、便器の型を暗記して、帰宅してからその日見た便器をすべて書き出す…。すごい記憶力です。 しかし、トイレの中でも、自宅のトイレやTOTOのショールームのトイレには興味がないと書かれていました。公衆トイレでないとダメなのはなぜなのでしょう。 「そうした強い『こだわり』を持つことが自閉症なのでしょうね」 ●英才教育をしていた我が子、たった1分で「自閉症」と診断——この本は、勇太君が自閉症と診断されるところから始まっています。立石さんは、幼児教育のプロフェッショナルですから、当然のように我が子にすべての愛情を注いで育て、英才教育もほどこします。生後3カ月から、1日10冊もの絵本を読み聞かせし、漢字カードや算数の教材用カードまで見せて育てています。どうやって、自閉症であることがわかったのでしょうか。「勇太君の場合は、言葉の遅れがありました。2歳3カ月で保育園に入りますが、他の子は団体行動ができるのに、勇太君は部屋の隅で寝そべる。いつまでも、言葉も出ない。一方で、自宅では国旗や時刻表などの数字に強い関心を示して、世界地図のパズルをたちまち完成させてしまう。そうしたアンバランスがありました。2歳4カ月の頃、食物アレルギーの定期受診していたアレルギー科の主治医に言葉が出ないことを相談したところ、こころの診療部の受診を勧められ、そこで会った医師に1分もしないうちに『お子さんは自閉症ですね』と言われます」——「ちょっと変わった子だな」ぐらいに感じていた我が子が、突然「自閉症ですね」と医師に言われたら、母親としてはかなりショックだったのではないかと思います。「立石さんは特別支援学校の教員資格を持ち、支援学校での実習で自閉症の子たちと触れ合った経験もありました。自分の子どもを自閉症とはとても思えなかったのです。『違います』と言いましたが、その医師は『自閉症にはいろいろなタイプのお子さんがいるからね。この子は絶対に自閉症』ときっぱり話しました」●「自閉症ではない」と診断を求め、1年かかって5つの病院を訪ね歩く——最初、立石さんは医師を信用せず、別の診断を求めてドクターショッピングに走ったという話は、胸に迫りました。「発達障害に限らず、子どもの持つ色々な障害の受容はとても難しく、時間がかかるものです。10年経っても、20年経っても、受け入れられない親もいます。でも僕は、それはまだ受容の途中なんだと理解しています。あと10年経ったら、受け入れることができるかもしれない。医師は、親を否定するのではなく、待ってあげることが大事だというのが僕の考え方です」——受容には、どのようなプロセスがあるのでしょうか。「最初は、否認です。立石さんの場合は、『この診断は間違っている』と考えました。受け入れられず、病院で泣きながら『こんな子じゃなかったらよかった!』と叫びます。少し落ち着くと、今度は怒りがわいてくる。立石さんは、言葉が遅いのは耳が悪いせいだと考えて、耳鼻科に行きます。2カ所で診てもらっても、耳に異常はありませんでした。では、なぜしゃべらないのか。自閉症以外の理由があるのかもしれないと考え、今度は他の児童精神科を受診することにしました。結局、3カ所も回ることになります。これら5つの病院を回るだけで、1年もかかる。1年かかっても、『自閉症ではない』とはどこも言ってくれないわけです。そこでやっと、自閉症であることを認めて、最初に診断してくれた医師のところに戻ります。しかし、それは本当の意味での受容ではありません」●「普通の子」にするために、月10万円かけて療育——自閉症であると認めることは、ゴールではなく、プロセスにすぎないわけですね。「精神科医のエリザベス・キューブラー=ロスは、死を受け入れるまでのプロセスを5段階にわけています。最初は事実に対する『否認』、次に理不尽に対する『怒り』、そして『取引』です。立石さんも、自閉症をなんとか治す方法を模索して、奔走します。療育を受けさせれば、『普通の子』になるんじゃないか。勇太君は、週に2回の施設に通うようになります。その一つは、月10万円もかかるようなところです。しかし、いくら熱心に療育をしても、知能障害も自閉症も治ることはありません。病気ではなく障害ですから」——療育のためにも一生懸命、働く。育児と仕事で疲れている中、勇太君は家の中でドスンドスンと激しくソファから飛び降りる。パニックも繰り返し起こして大暴れする。ついには、住んでいたマンションの住人から苦情を受けて、引っ越しせざるを得なくなったというお話は、子育て中の親としてつらかったです。●鉄格子の入院病棟で少年と出会い、「受容」へ「立石さんもどん底まで落ちて、抑うつ状態になりました。『取引』でも回避できないとわかって訪れるのが、『抑うつ』です。つらい日々が続いていましたが、勇太君が年長になった時に、療育で訪れた病院の入院病棟である少年と出会います。その部屋には窓の内側に鉄格子がはめられていました。窓をのぞくと、白い部屋の中に小学4年生ぐらいの男の子がパジャマを着て立っています。椅子やベッドからはベルトがぶら下がっていて、すぐに身体拘束するものだとわかりました。どういう病気で入院しているのかわかりませんが、もしかしたら、自閉症の二次障害かもしれないと立石さんは思いました。二次障害とは、もとの障害に適切に対応しないため、ストレスが高まって、うつ病や強迫性障害などの心の障害を引き起こしたり、不登校や家庭内暴力、自殺などの問題行動につながることです」——勇太君を「普通の子」にしようとしたことがストレスになって、将来、二次障害になるのでは、と心配されたのですね。「立石さんは、強い衝撃を受けました。そして、無理をしても健常児にはならないのだから、過度な期待をやめようと。子どもを変えるのではなく、親である自分が変わらないと、将来、もっと恐ろしいことがやってくるんだ、と考えました。この体験が、真の『受容』につながりました」 ●「箸が使えない」「世界の半数以上の国が手で食べる文化よ」——立石さんの場合、保育園では健常児と比べてしまい孤独感を持ってしまいましたが、インターネットで「東京都自閉症協会」を探し、親の会に参加したことも良い影響だったようにみえます。「自分の子どもに障害があった場合、今、目の前にある障害しか見えません。でも、親の会には、同様の子どもを10年、20年と育てているベテランの人たちがいます。『この先どうなるのだろう』と未来が不安になったとしても、先輩たちが教えてくれます。これは医師ではなく、親同士でなければ難しいことです」——勇太君が5歳になっても箸を使わず、手づかみで食べることがあるのを気にした立石さんは、親の会に相談します。すると、ベテランの母親は「世界の半数以上の国が食事を手で食べる文化なのよ。手をきれいに洗っていれば、手で食べたって何も問題ないんじゃない?」と答える話がありました。健常者の視点ではなく、自閉症の子どもの目を通して広い世界を知る。発想の転換に驚きました。「単一な中に、学ぶものは何もないです。多様な中に学びがある。多様性が非常に大事だと思います。価値観が唯一な世界は、何の進歩もありません」 ●子どもの発達障害を診断できる医師は少ない——勇太君のような発達障害の子どもたちを取り巻く環境をどう思いましたか?「医師にとって、自閉症の診断はとても難しいものです。きちんと診断できる医師は、精神科医の中で子どもを専門にしている人。もう一方は、小児科医の中で心の問題を専門にしている人。両方とも、とても少ないのです。東京と地方でも、事情は違うと思います。東京は確かに医師の数が多いのですが、診断を希望する親も多いので、予約は常に6カ月待ち、長ければ1年待ちという話もよく聞きます。発達障害なのか、そうじゃないのか。はっきりしない場合は、医療機関にかかってない子も多い。病院に行こうとしても、半年待ちですと言われれば、そこまで待てないから様子を見ようと…。そうして見過ごされる発達障害の子どもが多いと言われています。 しかし、医療にとって大事なのは、正しい診断です。正しい診断の上に、正しい治療がある。診断が間違っていると、すべてが崩れます」 ●「大人の発達障害」の背景に子ども時代の「見過ごし」——最近、大人の発達障害が社会問題となっています。その背景には、幼少期に正しい診断を受けられなかったということがあるのでしょうか。 「明らかな知能障害がある自閉症の子の場合は、どこかで親も医師も気づきます。しかし、知能障害のない場合は、医療機関にかかっていない可能性があり、生きづらさを抱えたまま大人になってしまいます。人の心がわからない、空気が読めない、こだわりが強すぎる。友達ができずに、いじめられ、親や学校の先生には叱られ……。そういう人生をずっと生きていくと、大きなストレスとなって、二次障害を起こす場合があります。そういう子どもが実は多いと言われていて、逆の面からいうと、統合失調症やうつ病の患者さんは、実はもともと発達障害だったのを見過ごされて今に至っていているかもしれません。一次障害から二次障害へ、という考え方もありますが、発達障害と二次障害は大きなスペクトラムを作っていて、地続きになっているという精神科医の先生もいますね。 精神医学はまだまだわからないことが多いです。人の心って、本当に難しいんですよね」 ●『普通』から脱落してしまい、生きづらさを抱えている人へ——勇太君と立石さん母子の物語を通して、とても勇気付けられました。生きづらさを抱えている人たちへのヒントになりそうです。 「自閉症だとか、発達障害だとか関係なくても、生きづらさを抱えている子がとても多いです。我々は誰でも全員が『普通』であることにこだわりますが、不登校だったり、勉強が苦手だったりする子はいくらでもいます。『普通』から脱落せざるを得ないことは、とても多いです。 でも、たとえ『普通』から脱落しても、人は生きていかなければなりません。脱落してしまったら、人生はみじめでつらいものになると考えるよりも、『普通』じゃなくても何か目標を持つことができれば、充実した人生だと思います。勇太君親子は普通じゃない生き方をしていますが、自閉症でも健常者でも、そこで悲観することなく、幸福をつかみとることはきっとできます」 【松永正訓(まつなが・ただし)さんプロフィール】 1961年東京生まれ。1987年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。2013年、「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」(小学館)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「呼吸器の子」(現代書館)、「子どもの危険な病気のサインがわかる本」(講談社)、「小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと」(中公文庫)「子どもの病気 常識のウソ」(中公新書ラクレ)など。 (弁護士ドットコムニュース)[ORICON NEWS]発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年 (単行本) [ 松永正訓 ]ごく普通に育って欲しいという思惑とは別に、子どもは千差万別。育児にはいかに教科書がないかということでしょうね。☄
2018.11.01
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