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体臭は年齢によって変化する」
「体臭は年齢によって変化する」
私たちの身のまわりには殺菌作用のあるハンドソープや、体臭や部屋のにおいを消し去る消臭剤、抗菌剤が配合された日用品などがあふれています。若い男性が脂取り紙で顔の脂を拭き取る光景が、テレビのニュースで流れるほどです。「日常生活で気になる体臭」のアンケート調査でも、口臭についで「中高年特有のにおい」が第2位に挙げられています。こうしたアンケート結果をみても、いわゆる“おやじ臭”と呼ばれる中高年特有のにおいが敬遠されがちであることがわかります。ラッシュ時の電車などの人混みの中では、なおさらかもしれません。体臭は、体質や体調、さらには食事の内容や入浴の回数などの生活習慣によって変わってきますし、年齢によっても変化します。赤ちゃんには赤ちゃん特有のミルク臭いにおいがあり、小・中・高校生の世代には汗と脂が混じり合ったような成長期に特有の体臭があります。この中高年特有の体臭成分は、「ノネナール」と呼ばれる不飽和アルデヒドの一種で、青臭いにおいと脂臭いにおいを併せもっています。ノネナールの特徴は、20歳代や30歳代ではほとんど検出されず、男女ともに40歳をすぎたころから体臭に含まれるようになり、その量が多くなるにしたがって体臭を悪化させることです。これが中高年特有の体臭の正体で、「加齢臭」と命名されました。皮脂の中に若いころにはほとんど存在しなかった「9-ヘキサデセン酸(パルミトオレイン酸)」という脂肪酸が増加してきます。さらに、中高年の人の皮脂は酸化分解されやすいこともわかり、皮脂中に含まれる9-ヘキサデセン酸が酸化されたり、皮膚の常在菌によって分解されることでノネナールが発生するのです。加齢臭の正体が判明したことで、ノネナールの生成を抑制する抗酸化剤や抗菌薬剤などを配合したボディー用シャンプーやローション、パウダー、消臭スプレーなどが開発されています。また、加齢臭を分解したり、軽減する繊維も登場しました。近いうちにこの素材を使った肌着やシーツも商品化されるといいます。
「目の疲れを招くパソコンやテレビ」
パソコンで作業をしていると目がショボショボする、夕方になると文字がかすんで見えるなどの目の疲れ(眼精疲労)を訴える人が増えています。いちばんの原因は、読書やパソコン作業に代表される近くのものを長い時間見続けるという生活形態にあります。近くものに焦点を合わせるときには、ピントを合わせる役割をしている毛様体筋が収縮して水晶体(レンズ)を膨らませます。長い時間読書をしたり、パソコンで作業を行うと、毛様体筋は緊張し続けることになり、そのことが目の疲れとなって現れるのです。眼精疲労のもう一つの原因として、目の表面(角膜)が乾いた状態になるドライアイがあげられます。涙は目の表面に1/50mmという非常に薄い膜をつくり、目を保護すると同時に栄養分を補給しています。涙腺から分泌された涙は、無意識のうちにしているまばたき(1分間に20回前後)によって角膜全体へと広がります。ところが、パソコンの画面を凝視しているとまばたきは半分以下に減り、目が乾いた状態になってしまいます。また、正面を向いた状態より上目づかいのほうが涙の蒸発が多いので、パソコンやテレビの画面を見上げて見ているとより多くの涙が蒸発してしまいます。パソコン作業をしているときには、意識的にまばたきをするのもドライアイを防ぐ方法といえますが、作業に集中しているとそれもなかなか難しいものです。そこで、不足した涙の成分を補う涙液タイプの目薬を常備しておくことをおすすめします。できれば防腐剤の入っていない1回ごとの使い切りタイプがいいでしょう。それでも目の疲れがとれないときには、充血やかすみ目、かゆみといった症状に合った目薬を使うようにしましょう。目の疲れを感じたら、とにかく目を閉じて休めることが大切です。そのときに、簡単なマッサージをして目の周辺の血行をよくすると、意外と目の疲れがやわらぎます。マッサージのやり方は、左右の手のひらをこすり合わせて指を温めてから、人さし指、中指、薬指を閉じたまぶたに軽く当てます。心地よく感じる強さでまぶたを10秒間押して5秒間離します。これを5~10回繰り返してください。次に手のひらで目の周囲を包んで温めます。もう一度手のひらをこすり合わせて温めて、親指以外の4本の指の腹をこめかみに当てて、円を描くようにやさしくマッサージします。
「歯周病は心筋梗塞などのリスクを高める」
歯周病の人は健康な歯茎の人に比べて、心筋梗塞(こうそく)を引き起こすリスクが約2.8倍高いことが判明したのです。また、肺炎やぜんそく、咽(いん)頭炎などの呼吸器疾患を起こしやすくなったり、血糖値のコントロールが困難になり結果として糖尿病を悪化させることになるといいます。さらに女性の場合、早産のリスクが実に約7.5倍にもなることがわかっています。歯周病菌が血流に乗って全身に運ばれたり、のどから気管を経由して肺に吸い込まれることで、いろいろな悪さをするのです。例えば、血流によって運ばれる間に血管壁に付着して炎症を起こし、喫煙や肥満、高コレステロール、高血圧などのリスクと合わさって動脈硬化のリスクを高めます。このように、歯周病は口の中の病気にとどまらず、全身の健康に重大な影響を及ぼす危険性があるのです。心臓病が死因の第2位、糖尿病患者とその予備軍が約1300万人にのぼるといわれる日本にとって、こうした歯周病の脅威は決して“対岸の火事”ではありません。日本では「80歳で20本の歯を残そう」という“8020運動”が厚生労働省と日本歯科医師会によって推進されていますが、同省が実施した「平成5年歯科疾患実態調査報告」によると、実際には80歳で20本以上の歯が残っている人は10%程度にすぎず、平均では5本しか残っていないというのが実状です。失う歯の本数が急増するのは55歳をすぎるころからですが、50歳代の終わりには平均8本以上が失われてしまいます。そして、歯を失う原因は、40歳以降では60%以上が歯周病によるものなのです。歯周病は、よほど悪くならない限り痛みや違和感などの危険信号をほとんど出さないことから“サイレントアーミー(沈黙の軍団)”といわれ、気づいたときには取り返しのつかない状態に陥っているケースが多々あります。 歯周病は、歯を支えている歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨など)が、口の中にすみ着いている細菌の感染によって炎症を起こしたり、破壊される感染症です。 歯周病の原因は、歯周病菌とその分泌物でできたプラーク(歯垢)です。歯垢(こう)には歯周病の原因菌となる細菌(歯周病菌)が大量にいて(1mgに10億)、食べ物のカスや唾液に含まれるタンパク質をエサにしてどんどん繁殖します。この歯垢が歯と歯肉の境目に付着すると、歯周病菌は毒素を出して歯肉に炎症を起こします。これが歯肉炎で、歯肉が赤く腫(は)れたり、歯を磨くと歯肉から出血するようになります。歯肉炎が進むと、歯と歯肉の間にすき間(歯周ポケット)ができ、歯垢や歯石(歯垢が石のように硬くなった状態)がたまりやすくなり、やがて歯肉の内部にある歯根膜や歯槽骨まで破壊されてしまう歯周炎に進行します。歯肉が化膿(のう)して血や膿(うみ)が出ると同時に、歯槽骨がさらに破壊されて歯を支えきれなくなり、ついには歯が抜けてしまいます。 食事のあとには必ず丹念に歯を磨き歯垢(こう)をためないことが、歯周病のなによりの予防法です。「歯磨きをしているのに歯周病になってしまった」という人は、正しい歯磨きをしていなかったのでしょう。歯周病予防の歯磨きのポイントは、歯と歯肉の境目を重点的にブラッシングすることです。唾液には口の中の細菌のバランスをコントロールする働きがあり、歯周病菌の増殖を抑えて歯周病を予防するのに大いに役立ちます。めん類などをよく噛まずに飲み込んだり、ハンバーグのような柔らかいものばかり食べていると、あまり唾液は分泌されません。豆類や玄米など歯ごたえのある食べ物を積極的に食べるようにして、よく噛んで十分に唾液を分泌させるように心がけよう。
「現代人は噛む回数が減っている」
最近の若者の顔は中高年世代に比べて、面長で顎(あご)のラインがほっそりしていると思いませんか。この違いの一端は、食事の内容の変化にあるようです。ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフード、口の中に入れると溶けてしまうほど柔らかな肉、ケーキ、プリンなど、あまり噛まなくても飲み込めてしまう食品や料理が私たちの食生活の中に増えていて、噛むという大切な動作を確実に減らしています。ある調査によると、今から2000年近く前の弥生時代には、1食あたり約4000回噛んでいたそうです。ところが、現代では約600回まで減っているというのです。わずか半世紀ほど前に比べても半分以下にまで減少しています。「噛む回数が減ったからといって、それほど問題はないのでは…」と思うかもしれませんが、すでに子供や若者にいくつかの弊害が出てきています。例えば、今の子供たちはハンバーグやカレーライスなどの柔らかい食事を好むことから顎があまり発達せず、狭いスペースに永久歯が生えるために歯並びが悪くなり、虫歯の原因となりがちです。また、噛む回数が減ることで、歯や歯を支える歯周組織(歯肉、歯根膜、歯層骨など)の血流が悪くなったり、歯垢がたまりやすくなって歯周病にかかりやすくなります。事実、中高年以降の病気といわれていた歯周病が20歳代の若年層にも増えてきています。きれいな歯並びや歯周病の予防以外にも、よく噛むということが健康を保つうえで実にたくさんの役割を果たしています。噛めば噛むほど唾液が出てきますが、この唾液にはいろいろな力が秘められています。その1つが、唾液に含まれる消化酵素です。デンプンを消化するアミラーゼやタンパク質を消化するプロテアーゼなどの酵素が食物とよく混ざることで、胃や腸での消化を補助しています。さらに、よく噛むことで胃液や膵液といった消化液の分泌を促し、消化・吸収をスムーズにするといわれています。唾液の働きはそれだけではありません。唾液の中に含まれるペルオキシダーゼ、リゾチーム、ラクトフェリンには抗菌作用があり、口の中を清潔に保ったり、口臭を防ぎます。唾液の分泌は年齢とともに減ってきますから、年を取れば取るほどよく噛んで唾液を十分に分泌させる必要があるのです。また、日本咀嚼(そしゃく)学会の報告によると、唾液の中にはパロチンという物質や神経成長因子であるNGFが含まれていて、老化防止の働きかけをするといわれています。噛めば噛むほど、脳の血管は拡張して血液の流れがよくなり活性化されるのです。さらに、ある実験では、食べ物を噛むことによって記憶中枢の機能を促進する化学物質が増えるという結果が得られているといいます。よく噛むことは、脳の老化防止にもつながるというわけです。 よく噛むことのもう1つのメリットは肥満の防止です。よく噛んで時間をかけて食事をすると、その間にブドウ糖が血液中に増えて血糖値が上がります。そうすると、脳の満腹中枢が刺激されて「おなかいっぱいになったから、食べるのをやめなさい」という指令を出します。つまり、時間をかけてよく噛んで食べることで、少ない食事量でも満腹感を得られ、肥満を予防できます。逆に、時間がないからといってよく噛まずに早食いになると、血糖値が上がり満腹感を感じるまでにたくさん食べてしまうことになるのです。このようによく噛むことには、さまざまな効用があり、お金のかからない健康法といえます。古代人並とはいきませんが、食べ物を口に入れたら30回は噛む習慣を身につけたいものです。
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