あい・らぶ・いんそん

再会10



スジョンは意を決したように、イヌクの腕をふりほどき 

「どういうことですか?」

とイヌクを睨んで聞いた。

イヌクはそれに答えず

「気が強いのは、変わっていないな」

と言いながら、優しくスジョンの頬を指でなでた。

「帰らせて」

スジョンはバッグを手にして帰りかけたが、イヌクが腕を強くつかんで
もう一度スジョンを抱きしめた。

「やっと会えたんだ・・・。3年もかかったよ」

イヌクは静かに目を閉じてスジョンを抱きしめると、その頬に涙が伝った。

「少しで良い・・・時間をくれないか」

イヌクはスジョンをソファに座らせ、テーブルにセットされているワイン
をグラスに注いだ。

イヌクの涙を見て、スジョンの心が張り裂けそうに痛んだ。イヌクを裏

切った過去が、いつも胸の奥底に渦巻いていた。今の自分が幸せであれ

ばあるほど、イヌクへの罪深さに胸が押しつぶされそうだった。

「ごめんなさい・・・本当に、ごめんなさい。」

スジョンの頬にも幾筋もの涙が流れた。

その姿を見て、イヌクが悲しそうに笑った。

「あの日も、おまえはそう言った・・・」

あの日・・・それは、ジェミンに心を残してきたと、言ったときのこ
とだった。

苦しみを紛らわすようにワインを飲み干して、イヌクが言った。

「俺はあの日以来、何故おまえを手放したのかと・・・ずっと後悔し

てきたよ。おまえが幸せになってくれれば、それで良いと思っていた。

いつかはおまえを忘れられるだろうと・・・。だが、時が経てば経つ

ほど、おまえが恋しくてたまらなくなってくる。会えないと知れば知

るほど、苦しみに身を焦がされる。この腕の中にいたおまえを、夢の

中でさえ捜し回っていたよ。毎日眠ることさえ恐れ、生きているのが

辛かった・・。あのときいっそジェミンに撃たれていたら・・・何度

そう思ったことかわからない。俺がどれだけおまえを愛しているのか

・・・おまえを失って初めて気付いた」

イヌクはまたワインをグラスに注いだ。

スジョンはじっと耐えていた。

物語を語るかのようにイヌクが言った。

「バリにいた頃、寂しくて鳥を飼ったことがあった。ある日鳥かごが

壊れて、鳥は飛んでいった・・・おまえのように・・。しかし、翌朝

その鳥は窓辺で鳴いていた。俺を呼ぶかのように・・・鳴いていた」

小さなため息をひとつついて続けた。

「俺は考えた・・・なれない鳥でさえ一緒にいれば俺を頼りに帰って

くる。たとえおまえに嫌われていても、おまえをこの腕にずっと抱い

ていれば、いつかは俺を頼りにしてくれたかもしれないと・・」

そしてワインを飲み干して、イヌクが声を押し殺すように言った。

「わかるか?この苦しみが・・」

スジョンは身をかたくした。

「そして、それ以来俺は考えた・・欲しいものは、最後まで手放すも

のじゃないと。そして、欲しいものはどんな手段をつかってでも、手

に入れようと・・・決めたんだ。」

イヌクは立ち上がって窓辺に立ち、夜空を見上げて言った。

「今の俺は、昔の俺じゃない。ジェミンを思うように動かせる。イギ

リスに行かせたようにな」

静かに笑うイヌクを見て、スジョンに旋律が走った。体のふるえを止
めることができなかった。

「お願い・・彼を苦しめないで。あなたを裏切ったのは私だわ。だか
ら・・・お願い・・・あの人を・・苦しめないで」

スジョンは、すがる思いでイヌクを見つめて言った。

「あいつを苦しめるな?」

イヌクは、静かに目を閉じて天を仰いで泣いた。

「俺はこの3年間・・・ずっと苦しんできた」

愛再び~葛藤1へ


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