あい・らぶ・いんそん

葛藤6



鳴り続ける携帯を手に握ったまま、片手でソフィアの腕をつかむと、

恐ろしい形相でイヌクが言った。

「スジョンに何かあったら・・おまえを殺す」

ソフィアは急に恐ろしくなった。

「あなたを愛しているのよ・・」

震える声でソフィアが言うと、イヌクが詰め寄った。

「良いから早くスジョンの居場所を教えろ!」

ソフィアはそれでも顔を背けて言った。

「あの女さえいなければ・・あなただってもう苦しむこともないじゃない」

携帯が鳴りやんだ。

スジョンの事が急に恐ろしく心配でたまらなくなったイヌクは、ソフィアに

懇願した。

「頼む・・・おまえの望みを叶えてやる・・だから早く教えろ」

イヌクの体が震えていた。



イヌクはサムに連絡をとって、ソフィアのマンションに向かった。


スジョンが気がつくと、暗いベッドルームに寝かされていた。

何があったのか暫く思い出せない。

そして車に連れ込まれた事を思い出すと、慌てて起きあがりドアを開け

ようとしたが、隣の部屋で話をしている男の声がかすかに聞こえた。

「今更何を言っているんだ・・金?もう金だけの問題じゃねえよ」

そして、静かになったかと思うと足音が近づいてきた。

スジョンは恐ろしくてドアを押さえた。

「何をしてる・・」

と言うと、その男はドアを一気に蹴りあけた。その勢いでスジョンは倒

れ込むと男がにやりと笑いながら覆い被さってきた。

スジョンは必死に声を上げながら逃げ回った。手に当たるものすべてを

男めがけて投げつけ、逃げだそうともがいた。

しかし男に足を掴まれ、また倒れ込んでしまった。

「いい女だな・・・」

スジョンのブラウスを引きちぎり、不気味に笑った。

それでも暴れるスジョンを殴りつけ、両手を押さえ込んだ。

「誰か・・助けて」

無理矢理キスをする男の唇を噛んだ。男は少しひるんで、唇の血を舐め

るとスジョンを睨みつけて言った。

「たまらねぇな・・」

スジョンはじりじりと、部屋の片隅に追い込まれて行った。

「おもしれぇ」

男はスジョンを力一杯抱き寄せた。

「やめてぇ」

イヌクがソフィアの部屋のドアを勢い良く開けると、スジョンの叫ぶ声

が聞こえ、イヌクはすぐに寝室のドアを開けた。

驚いて男が振り返ると、イヌクが言った。

「やめろ」

すると男は

「ちっ」

と舌打ちをして、いきなりスジョンの腕をねじ上げて立ち上がらせ、ナ

イフをスジョンの首筋に当てた。

「そこをどけ」

スジョンは恐怖に顔をゆがめ、頬には幾筋もの涙が伝っていた。

「金ならやる・・好きなだけ。だからその女を放せ」

すると男は、フンと鼻で笑った。

「もう金じゃないさ。こんな上玉、俺様にしたらもう一生拝めねえよ。

この女が欲しいだけだ。」

イヌクが飛びかかろうとすると、ナイフをスジョンの首にいっそう近づ

けた。

イヌクは出口を開けた。

男はスジョンの首にナイフを付けたまま、少しずつ後ずさりしながら出口

に向かった。

そのときドアの近くで身をひそめていたサムが、いきなり後ろから男の

腕を押さえつけた。ナイフが床に落ちスジョンが倒れ込んだ。

怒りに震えるイヌクが、狂ったように男に殴りかかった。

いつまでもいつまでも男を殴り続け、見かねてサムが止めに入った。

「彼女を・・」

イヌクはサムに促された。

「そいつを連れていけ・・・」

サムは、男を連れだした。

「スジョン・・・」

イヌクが近づいてスジョンを抱き起こそうとすると、スジョンは狂った

ように逃げまどった。

「助けて・・・助けて・・」

大声を張り上げ、叫び声をあげ、イヌクは近づくことさえできなかった。

部屋の片隅に膝を抱えて座り込み、ただ震えて泣いている。

長く美しいスジョンの髪の乱れが、痛々しかった。

イヌクが近づこうとすれば泣きわめいて逃げまどう・・・一晩中、それを

繰り返すばかりだった。

部屋の片隅で震えながらうずくまるスジョンを、イヌクはただ・・・見守

ることしかできずにいた。


スジョンの携帯には、何度もジェミンから電話が入っていた。

イヌクはじっと、スジョンの携帯を見つめた。

(おまえならスジョンを助けられるのか?)

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