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「何を言っとるんだ。ここまで来て帰れるか。行くぞ。」あたるは怒って、歩き出した。「ダーリン待って。あのお爺さんの話を聞いたほうが良いっちゃ。」とラムは止めたが、「当日のキャンセル料は100%だぞ。5人で5万円。誰が払うんだ?」と言って、あたるは山道をどんどん歩いて行ってしまった。仕方なく、メガネ、しのぶ、面堂もそれに続く。しばらく歩くと、あたるが「腹減った。もう1時じゃないか。弁当食おう。」と言って、リュックを地面に置いた。そして、レジャーシートを敷きながら、「おい。ラム。弁当出せ。」と言った。「はい。ダーリン。」ラムは二段の重箱の弁当をボストンバッグから取り出して、レジャーシートの上に並べた。「うわー。美味しそうだな。ラムさん料理得意なんですね。」と面堂が言った。重箱の一段目には玉子焼き、唐揚げ、タコさんウインナー、プチトマト、二段目にはおにぎりが入っていた。「おにぎりの具は梅干しとシャケだっちゃ。」ラムは得意そうに言った。「おにぎりの具が2種類もあるなんて豪勢ですね。このタコさんウインナーも足が6本もある。」メガネは感激しているようだった。「いただきます!」5人が食べようとしたまさにその時だった。キエーキエー!と不気味な鳥の鳴き声が聞こえた。一同が上を見上げると、目玉の大きなカラスのような黒い鳥が何羽も現れ、上空をクルクル回って飛んでいた。「あの鳥は何?気味が悪いわ。面堂さん怖い!」しのぶが面堂に抱きついた。「大丈夫ですよ。しのぶさん僕がついてますから。」面堂は箸を置いて、鳥をキリッとした顔つきで見た。しかし、あたるは唐揚げとおにぎりをがっついて食べていた。キエーキエー!鳥が急降下して、弁当を奪い取り、おにぎりをくわえて飛んで行った。「あー!何をする!返せ!」あたるが鳥を捕まえようとすると、鳥たちが攻撃してきた。「キャー!」「わー!」みんな鳥から逃げて走り出したが、鳥が追いかけてくる。5人は山の中を数十分走ると、古城のような洋館が見えてきた。「ひとまず、ここに避難しよう。」とメガネが言った。洋館の扉を叩くと、重い音を立てて扉は内側から開かれた。すると中に、執事風の初老の男性と若いメイドが立っていた。「いらっしゃいませ。諸星様でございますね。お待ちしておりました。」 (続く)
2022年10月12日
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電車を降りると、そこは見渡す限りの田舎だった。「辺鄙なところだな。」と面堂終太郎は言った。「おい。あたる。本当にこの駅で合ってるんだろうな?貸別荘があるようなリゾート地に見えないぞ。大丈夫か?」とメガネは言った。「大丈夫。大丈夫。ちゃんとチラシに書いてある駅で降りたから。えっと、貸別荘は・・・この駅から歩いて2時間だ。」「バスはないの?」しのぶが不安そうに聞いた。「あることはあるがな。日に2本しか走っとらんのだ。次のバスは夕方だから歩いたほうが早い。」とあたるは言った。「何!2時間も歩けと言うのか?ヘリを呼ぼう。最初から面堂家のヘリで行けば良かったんだ。」と面堂が言うと、ラムは「うちハイキングがしたいっちゃ。2時間くらいなら歩いても平気だっちゃ。」と言った。「おまえは飛んどるがな。」とあたるは言ったが、面堂は「ラムさんがそう言うなら。僕もハイキングがしたいと思ってたんです。」と言って、歩き出した。「面堂さん。」としのぶが追いかける。「うちダーリンが手配してくれた旅行を楽しみにしてたから、朝早く起きて、お弁当を作ってきたっちゃよ。途中で休憩して食べれば大丈夫だっちゃ。」「ラムさん。何とけなげな。」メガネが感動して泣いていると、あたるとラムはさっさと行ってしまった。「ラムさん!」と言って、メガネがラムを追いかけた。田んぼと畑ばかりの村里を抜けて、駅から30分ほど歩くと、5人は山道にたどり着いた。山の入り口には5キロと書いた小さな矢印の看板が立ててあった。「あと5キロ。この山道を登って行けば貸別荘に着くな。ラム。腹減らないか?弁当食おうぜ。」とあたるが言うと、しのぶは「ここで食べるの?」と嫌そうに言った。「もっと景色の良い所で食べたほうがいいんじゃないのか?」と面堂は言った。「さっきから、こっちをじっと見てる気味の悪い爺さんがいるぞ。」とメガネが言った。「え⁉どこ?」とあたるが辺りを見回すと、カカシのように畑の中に立っていた農夫がいつの間にか寄って来て、こう言った。「皆の者、行ってはならぬ。今夜が満月だという事を忘れてはならぬ。満月の夜には死人が出る。命が惜しくば、山に入ってはならぬ。帰るのじゃ。」 (続く)
2022年10月09日
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