邪念の山じゃ

邪念の山じゃ

嫌われ者



とても暖かい春の日に、僕は生まれました。
一生懸命に卵を破り、他の兄弟たちと一緒に出てきました。
初めて見るものすべてが大きすぎて、僕は恐怖を感じたけれど、それでも広い世界がうれしくて仕方がなかったことを覚えています。

巣の作り方は教わりませんでした。
けれどなんとなくでわかったのです。自分が何をしたらいいのか。
だから僕は少しぐしゃぐしゃだけど、ちゃんとした家を作ることができたのです。

自分の家に初めて餌がかかった時の喜びは忘れられません。
半透明の、きらきら輝く糸でぐるぐるまきにして、長い時間をかけて食べました。
自分の力で手に入れたご飯は、とってもおいしかったです。

夏になりました。
このころ、僕は自分がとても小さいということに気がつきました。
けれどそんなことはどうでもいい。
僕はただ餌が飛び込んでくるのを待っているだけだし、餌はこんなにたくさんいる。

秋。少しずつ寒くなってきました。
なんだか餌が少なくなってきた気がします。
せっかくかかった獲物を、他の蜘蛛にとられてしまうことがありました。
僕は悔しくてしかたありません。
自分の弱さや小ささを恨み、必死で空腹に耐えました。

冬です。
いつものように家でじっとしていた僕を、見ているやつがいました。
そいつは大きな大きな翼を広げ、空を飛び回っていました。
いいなぁ、僕も空をとべたら、高いところから下を見て虫を探せるのになぁ。
そう思いました。
でもそいつは僕が今思ったことを、もう実行に移していたようです。
だんだん近づいてくるやつが怖くなって、僕は近くの木の陰に逃げ込みました。
間一髪、そいつは僕の家を破壊して、どこかへ行ってしまいました。

寒さがとても厳しくなってきました。
なかなか耐え難いのです。
そんなとき、僕は光を見ました。
その光はとても暖かそうで、僕は光の中に入っていきました。

思った通り、中はとても暖かかったです。
けれど今まで見たこともないような大きな生き物がたくさんいてびっくりしました。

ここは居心地がいいです。
小さい虫だったらたくさんいるし、何よりも暖かかったんです。
しかしある夜僕が壁に張り付いていると、甲高い声が聞こえました。
え!?なにが起こったの??
大きな生き物は僕を見て、変なものを持ってきました。
僕は直感でやばいと思い逃げ出しました。
変なものから霧が飛び出します。
僕の近くにいたハエが、はらりと床に落ちて行きました。

僕は必死で逃げました。
けれど思いっきり息を吸い込んだときに、少しだけ霧を吸い込んでしまいました。
とてつもない苦しみです。
苦しくて苦しくてしかたがありません。
あの大きな生き物は、何のためにこんなことをしたのでしょう?
彼らは僕を食べません。
彼らが食べるのはお肉と植物です。
僕のことは食べないのです。

だったら、こんなことをして何の意味があるのでしょう?
無闇に生き物を殺して、楽しいのでしょうか?
僕が何をしたのでしょう?

答えはわかりませんでした。
あのハエは死んでしまいました。
僕はほんの少しだったので助かったみたいです。
けれど足が1本とれてしまいました。
この場所に昔から住んでいる蜘蛛に聞いたところ、大きな生き物は人間というものであるとしりました。
「どうして人間は生き物を殺すのですか?食べる訳でもないのに・・・。」
僕は尋ねました。
「意味なんてないのさ。あいつらはそういう奴らだよ。
この世には数え切れないほどの生き物がいる。けれど、自分の身が危険にさらされたわけでもなく、空腹で餌として食べる訳でもなく、なんの意味も持たずに生き物を殺すのは・・・・・・・・人間だけなんだよ。」

それを聞いてぼくは酷く恐ろしくなり、光から離れました。
人間はいつでも、僕をみたら殺しにくる!!!
そんな恐怖にとりつかれていました。

そとにはふわふわの雪が降っています。
寒さと空腹で死んでしまいそうでした。
けれど僕は耐えました。
待っていたらきっと餌がくる・・・。

やっとすこし暖かくなり始めたころ、久々に僕の家に獲物がかかりました。
大きな蝶々です。
うれしくて、僕は蝶にかぶりつこうとしました。そのとき・・・・・
「やめろ!!!!!」
僕のすれすれの場所を石が飛んで行って、僕の家に穴を開けました。
もう一つ石が飛んできて、蝶々を空へ放しました。
ああ!
「イヤな奴め!気持ち悪い!!!」
そういって、一人の人間が木の枝で僕の家をぐしゃぐしゃに壊して、僕を地面に叩きつけました。
放された蝶々は人間の周りをひらひらと飛び、まるでありがとうといっているようです。
・・・・・綺麗だな・・・・・・・。
青の空と白い雲を背中に、泣きたいくらいに綺麗な蝶が、それはそれは優雅に飛んでいました。
少し暖かくなり始めた、春の日のことです。

僕は3つの足を失いました。
叩きつけられた時に、どこかへいってしまいました。
なんで?人間は蝶を助けたつもりでしょうか。
人間はどうしてそんなことをするのでしょう。
人間には関係のないことなのに!
だったら僕も助けてよ!!!

春。多くの蜘蛛は子孫を残すために雌と交尾をし、子供を作ります。
けれど僕にはできません。
僕には足が4つしかありません。
雌にはとうてい受け入れられないのです。

僕は木の根元に丸くなりました。
そして目をつぶります。




暖かな日差しが木の根本にまで差し込みます。
さわやかな風にのって、人間の子供たちの明るい声が聞こえます。
美しい蝶々が空を舞い、かわいらしい花々に立ち止まります。


季節は夏になり、秋になり、冬になり、また春が来ました。
毎年少しずつ違う景色のなかで、

蜘蛛だけは、そのまま。











後書き??
何が書きたいのか意味不明です。いや、書きたかったことはあるんだけどね。
もともと蜘蛛は結構好きだったから、それを主人公にしたかったのと、
一番書きたかったのはやっぱ人間は何の意味もなく生き物を殺すってとこだよなぁ。
考えてみると、人間以外の生き物って無闇に殺したりとか、ないでしょ。
人間が生き物を殺すのって、すごく簡単なんだよね。センポーもよくアリがいたら溺れさせたり、ゴキブリ退治したり。でも、簡単だからいっぱい殺しちゃうのはおかしいと思う。
お腹いっぱいのライオンと一緒にいても、ライオンはお腹いっぱいだから私たちを食べないんだよ。
気持ちわるいから、取り合えず殺しとこうとか、ないんだよ。
それってすごいと思う。
ほんとに人間だけなんだなぁ、気持ち悪いとか、そんな簡単な理由で簡単に生き物が殺せちゃうのは・・・。

なんか怖いね・・・・・。

でもまぁセンポーは殺しまくってます。蚊なんてしょっちゅうだね!
だからこんな偉そうには言えないんだけど、まぁこれはセンポーが突然思ったこと。
気にしてくれたらうれしい。


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