Dolly&Dolis

Dolly&Dolis

2013.07.13
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 2004年に発売された「九怨」は平安時代を舞台にした異色のホラーアクションゲーム。メジャーなタイトルに埋もれて知名度はいまひとつながら、他の作品にかぶらない個性は大きく評価したいところです。

 内容は二人の女性キャラクターを使って魑魅魍魎が棲む屋敷を探索するというもの。陰陽の術を使って物の怪を倒しながら屋敷に隠された謎を解いていきます。
 幽霊じゃなくて魑魅魍魎? 陰陽術で戦えるなら怖くないんじゃないの、なんて思ってしまいますが、実際にプレイすると心臓鷲掴みのホラー演出に思わず声を上げてしまうほど。

 恐怖シーンについてはかなり細かく作り込まれているので、現代人に馴染みの薄い時代設定やキャラクターであっても怖さを身近に感じられると思います。
 ほとんどのホラーゲームは廃村、廃病院など聞いただけで想像がつくホラースポットが舞台ですが、それはプレイヤーの原体験に呼びかけるから怖いんですよね。子供の頃はやけに田舎の日本家屋が怖く感じものです。病院なんて大人になっても怖い。

 九怨の場合はまるで我々の感覚と接点のない寝殿造りのお屋敷を歩き回るわけですから、求められるハードルが高いわけです。ただ広い屋敷がこれほど怖いのは暗闇の描写の巧いからでしょう。電気のない真っ暗な夜、自分の周りだけをぼんやりと照らす灯りの心細さといったらありません。

 和風ホラーにしてはめずらしくスプラッター表現が多いのもこのゲームの特徴。屋敷のいたるところに目を覆いたくなるような惨劇の痕跡が。床に広がる生々しい血のうえを通ると血で捺した主人公の足跡がつく、なんていう細かい表現にちょっと感動します。平安時代の雅なイメージにスプラッターは似合わないような気もしますが、赤が印象的な九怨のおどろおどろしい世界には血の色が映えます。


 世界観を壊さないセーブ方法が考えられているのはいいけれど、セーブ回数に制限があることをわずらわしく感じるかも。
 また、ムービーシーンの口が動かないのは非常に淋しいです。私は主人公よりも化け物の造型を眺めているほうが好きなのでいいとして、ふつうのプレイヤーは主人公に愛着を持つはず。

 ストーリーについてもいろいろと粗がありますが、タイトルの「九怨」の意味するものがおぞましくてよかったです。そもそもなんでわざわざ化け物がいる屋敷を夜中に探索するんだというツッコミを入れつつ、物語の謎が知りたくてつい引き込まれてしまいます。

 探索の途中で時おり姿をあらわす双子が歌う、「はしぞろえ」
 この不気味なわらべ歌が妙に耳に残ります。本編にほとんどBGMがないので、どこからかはしぞろえの歌が聞こえてきた時の怖いこと。怖いこと。

 他のゲームにはない魅力もたくさんあるのに続編もなく終わってしまったのは残念。出てくるものが幽霊でもゾンビでもなく魍魎の類であったり、有名な陰陽師が女性キャラクターなっていたりするのでとっつきにくい印象があることは確か。私も発売当初は設定を聞いて抵抗を感じましたもの。でも陰陽師ブームもとうに過ぎた今となってはそれほど問題はないような。

 ジャケットは坂東眞砂子「四国」の文庫版表紙でもおなじみの智内兄助氏。ゲーム本編のキャラではなく智内さんの絵をバーンと持ってくるところが「古伝降霊術 百物語」なみに大胆です。
 ゲームのコンセプト、「妖麗耽美」「怪談恐怖」をあらわしているそうですが、九怨に妖麗耽美なところなんてありましたっけ……?
 登場キャラはたしかに美形ですけど、あの血まみれの景色はスプラッターというのじゃないでしょうか。いろんな意味で気になるコンセプトです。




PS2九怨「はしぞろえ」






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Last updated  2013.07.13 21:32:16


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