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『荒井食堂』
作文2
ヴィエリチカは1250年頃から1950年代まで稼動してた世界で有数の岩塩採掘場。1978年にユネスコの世界遺産に指定されている。迷ってはいけないとグループになって採掘場の中へと案内された。本当に長い長い木製の階段をいつまでも降りていく。下まで降りきるとひんやりとした空間に出た。ガイドブックで知ってはいたが、本当に床も壁も、周り全てが塩で出来ている。エスペラントでの解説を聞きながら採掘場内を見学をしていると、一緒にいたAleksejが突如、「お腹が空いた」とポケットからトマトを取り出し囓り始めた。「周りは塩だらけなのだから、塩付けて食べてみな」と言うと、何やら壁に指をすりつけて塩を採掘し始めた。この採掘場はまだ稼働しているらしい。心の中で「本当にやるのか」とつぶやいたが、トマトに取りたての塩を振りかけて食べてみた感想は「Tre bongsta!!」とのこと。彼の満面の笑みを見て、私も少し真似してみたかった。気に入ったのか、途中でアレクセイは暇を見つけては壁に指を付けて塩をなめていた。彼は長時間どのように潰さずにトマトをポケットに入れていたのか。現地では当たり前のように見ていたのだが、日本に帰ってからとても気になった。
ヴィエリチカ岩塩採掘所内には何故か日本のコーナーがあり、日本刀が飾ってあった。Aleksejに刀を振る真似をして遊んでいたら、参加者の女性の方に、一緒に日本刀の前で写真を撮ってほしいと頼まれた。とにかくそんなことがあった。その後、その女性には何度か写真を撮らせて欲しいと頼まれた。変なヤツが居たと帰ったら友人に見せるのだろうか。
楽しかったヴィエリチカを後に、バスはクラクフの街へ向けて走り出した。
ヴァベル城の大聖堂や、ヴァベル城旧王宮、龍の像、旧市庁舎、聖マリア教会を訪れた。聖マリア教会に入り、頭上を見上げると、そこには美しいステンドグラスが輝いていた。慣れない環境で、色々と歩き回りすこし疲れていた心だったが、この時スーッと安らいだ。奇麗でかつ堂々とした教会は心に響くものがあった。街の広場にはたくさん鳩。たまに群れて飛び立つ光景はクラクフの街に似合っていた。美しい広場から鳩がザッと飛んでいく光景は、どこかの絵本の中に出てきそうだった。本当に来て良かったと実感した時でもある。
美しかったクラクフの街を後に、バスはKongresejo へ向けて走り出した。
帰りのバスは、乗ってみるなり、車内がものすごく暑かった。冷房がまったくついてなく、窓も開かない。開いているのは天井のほんの小さなサンルーフだけだった。もしかしたらエアコンの冷風が出るのではないかと皆して風口をくるくると回していた。その光景を後ろから見ていてほほえましかったのだが、本当に暑く、しばらくして私も風口へと手を伸ばしたのは言うまでも無い。引き続き帰りの大半の時間を蒸し暑い車内で過ごした。来ていたTシャツはビッショビショになっていたが、とにかくここは耐えてるしかない。しばらくすると、運転手と何やら話すひとりの人がいる。で、その後にエアコンがついた。車内には歓喜の声。今まで本当に何だったのだろうか。とにかくそんなことがバス内で起きた。本当にこの旅では色々なことが起きる。
暑い車内で汗をかいたので、Amasiogxejoに戻るなりすぐにシャワーを浴びた。ふと気がつくとシャンプーの後にコンディショナーを使う自分がいた。というのも、あまりにシャワー室が汚いので、今まではシャンプーで頭を洗い、身体をサッと洗ったらシャワー室から逃げるように脱出していた。ここでも環境へ適応してきたようだった。別に髪は短いので、コンディショナーは使わなくても良いのだが。ゆとりが生まれたということだろう。
IJKでは「はじめて」の体験が多かった。寝袋生活もはじめて。意外と快適でグッスリと眠れる。ある日、暑いと感じたらしく寝袋から半分はみ出し、朝起きたら隣のマットレスまで移動していたこともあった。だが、朝晩が涼しいザコパネでは寝袋は暖かかった。
また、はじめてのことはこれだけではない。朝食にお米にイチゴジャムみたいのが掛かっている食べ物が出てきた時もある。何かの間違えだと思っていたが、お皿によそるおばちゃんの表情は本気のようだった。出された食事は残さないで食べるというのが小さな頃からの私のポリシーなのだが、ついにザコパネで終わった。何が起きるか分からないのが旅の醍醐味である。その辺の味はたっぶり良く味わったと思う。ちなみに食事には何度か丸ごとのリンゴがお皿に載って出てきた。
Kongresejoでは、なんだか見覚えのあるTシャツを着た人がいた。良く見ると、3月に韓国を訪れた際にお世話になったS-ro Lim sung wooだった。見覚えのあるTシャツはその時に彼からお土産としてもらったTシャツだった。どうりで見覚えがあるはずである。sung wooは自慢げにとっても辛いカップラーメンの「辛ラーメン」を持っていた。頼んで少し分けてもららうことになり、別室のお湯のある部屋へ行った。沸ききっていないお湯をラーメンに注いだsung wooは一緒に参加していた少年に文句を言われていた。そんな彼、今回はお父さんになっていた。半年前に訪韓した際、奥さんのお腹の中にお子さんがいたが、ここ最近で生まれたとの話を聞いた。本当に月日は早いものである。
皆でラーメンを食べていると、自然とエスペラントの歌を歌い始めた。歌声が聞こえたのか、ラーメンの匂いにつられたのか。次から次へと人が集まってくる。で、集まったみんなで一緒に歌を歌った。それにしても、IJKではスポーツでも、歌でも、とにかく何かしていると、人が集まってくる。みんな楽しい事には興味があり、近くに人がいれば一緒になって遊ぶ事が多かった。途中参加も当たり前で、すぐに仲良しになる。
夜にはダンスがあり、ふと周りを見れば、手を繋いだり、肩を組んだりしながら踊っている。私はダンスというものをかつて踊ったことが無かったが、遠い海外に来てしまえば別に恥じらいも無いので、経験だと思い踊っておいた。
その他、IJKではインターネットを用いた無料電話の「Skype」で知り合った韓国人のS-ro LEE jung kee氏ともお会いすることが出来た。彼は韓国の大学で働いており、韓国で多くの人にエスペラントを教えている。Jung keeとはSkypeで会話をしたり、チャットをしたり。時には会話中の写真をメールで送ってもらったりした。「会場で会いましょう」と前々から約束してたが、本当にお会いする事ができて嬉しかった。彼とは会場では会うたびにお互い手を振り合っていた。何故だろうか。
Kongresejoの端には体育館があり、何気なく入ってみると近くでバレーボールをしていた女の子2人と男の子1人に「一緒に遊ぼう」と誘われた。バレーボールは得意なので、一緒にやってみることに。人のことは言えないが、少し太った女の子はあまり上手ではなく、ボールを渡してもなかなか返ってこないし、返ってきてもすごい方向へボールが飛んでいった。あっちこっちボールを取りに走り回ることとなった。
おかげでお腹が空き、はじめて一人でザコパネの街を歩いて軽食をとることに。街の大通りには多くの観光客がいるのだがアジア系の人はまったくいない。美味しそうにケバブを歩きながら食べている人を見かけたので、私も食べたくなり、お店を探して入ってみた。一番安いケバブのメニューがあったので、注文したら何やら店員が早口なポーランド語らしき言葉で色々と言ってくる。まったく分からないので、「とにかくこれだ」という感じで言うと、お皿に野菜とお肉が乗っただけのものが出てきた。テイクアウトしたいというジェスチャーをしていたので、「この値段ではパンが無いよ」とでも言っていたに違いない。確かに安いはずだった。なんだか中途半端な食事になってしまった。ケバブを歩きながら食べるという夢ははかなく消えた。
がっかりしながらも、少しお腹を満たし、Amasiogxejoへ帰った。走り回ったバレーボールでは汗をかいたのでシャワーを浴びることに。シャワー室へ向かうと、クラクフの街を案内してくれたAdam Wilkus氏が先に並んでいた。彼には街を丁寧に案内して頂いたり、親切にも街の案内パンフレットを頂いたりした。今でも紙袋にたくさんのパンフレットを持っている彼の姿が目に浮かぶ。たくさん持っていた理由は、ポーランド語の他に、英語版など、何種類かに翻訳されたパンフレットがあったから。エスペラントの翻訳は無かったが、自分の住む街を少しでも多くの人に知ってもらいたかったのだろう。AdamはSkypeを知っていたので、お互いのSkype名を教え合ったりしながらシャワーの待ち時間を過ごした。そんなAdam、シャワーを浴びに入っていったらすぐに出てきた。最初の一言が「水だった」と言っていた。頭まで濡れていたのでよく水なのに我慢してシャワーを浴びたなと思う。サッパリしてから寝たかった私も心を決めて入ったが、本当に冷たい水。しかし、日頃のおこないはあまり良くないのだが、幸運にも途中からシャワーがお湯になった。
8月7日がIJKの最終日なのだが、Aleksejは6日の夜9時に帰るという。駅までの距離は2キロちょっと。一緒に駅まで行くことにした。荷物が重そうなので手伝うと言ったのだが頑なに自分で持つという。自分のことは自分でしたいようだった。けれども、途中でやはり重く感じたのか、一緒に持って欲しいと言い出した。小さな体には大きすぎる荷物だった。もちろんそれに気づいていたので私は一緒に来た。Aleksejは駅に着くなり、「ちょっと待ってて」と言い残し、列車の時刻表を見に行った。一度戻って来たが、まだどの電車か分からないようだった。また見に行き、今度はちゃんとどの列車に乗るか分かったようだ。強く握手をして、別れを惜しんで抱き合った。最後に一緒に写真も撮った。またいつか会おうと、再会を約束して笑顔で送り出した。列車に向かって歩き出す後ろ姿は、とても小さくもあり、強くも見えた。帰り道、一緒に車のメーカーの名前を言ったり、立っているポールを冗談交じりに避けながら歩いた道。今までのことを考えながら、一人でAmasiogxejoへ向け歩いた。一緒へ駅へ向かう途中、Aleksejが川の橋で立ち止まり、財布からコインを取り出すと川へと投げていた。帰り道、その橋の上で立ち止まってみると、コインの音がまだ聞こえるようだった。私には弟はいないが、弟がいるとしたらこんな感じなのだろう。別れるときに一緒に撮った写真は、今も大切に持っている。
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