★☆自分の木の下☆★

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10.最終決戦


「さぁーッて!とうとう夜が明けようとするこの記念すべき日、記念すべき体育大会の競技もラストになりました!」
『うおー!!!』
 生徒会長の叫びに、感極まった生徒達も叫び返した。
「ここで皆さんにお知らせがあります。行方不明になっていた放送部の一人が、南門近く、ごみ置き場のごみ箱の中に、ぼろ雑巾のように捨てられているのを通りすがりの生徒が見つけました! 彼は気絶して大分弱っていたが、大事には至っていない。今は、満員御礼状態の保健室で寝ている。誰がやったかは大体予想がつくが、犯人は反省することー!」
 総司と茜が、舌打ちをした。
「あと、教頭先生の入れ歯も見つかりました! それではラストは提案者、校長先生に最後の競技のカツラの煮込み添え、カツラとり騎馬戦のルール説明をしてもらいますー! 校長~」
「はぁ~い☆」
 声を聞くまで誰もその人物が校長だと気付かなかった。宇宙服を着た妖しい四人組がいるな……とは思っていたが。アルマゲドンを思い出す服装だ。オレンジ色が暗い中でも目立つ。今から隕石へと爆弾を仕掛けに向かうのだろうか。
その妖しい四人組の中から一人が手を振りながら進み出た。顔が隠れているので表情が解らないが、少々歩みが弾んでいることから嬉々として歩いてことは分かる。白い布袋を掲げている。
後ろに控えていた校長の家臣? の三人が奥からでかいスピーカーを持ち出してきた。マイクも持たず、校長が話し出す。

『とぅとぅ最後だー!』

ビリビリと空気が振動した。生徒達が痛そうに耳を押さえる。どうやら服の中にマイク装備らしいが、スピーカーの拡大音量がでか過ぎた。慌てて校長の謎の家臣達が音量を調整した。見計らってまた校長が話し出す。

『この競技で、勝ち組みが決まると言っていい。てゆうかー……1位以外はみんな100点以下でしょー? 先生、あまりの低さにちょっとビックリなわけよー。この最後の競技は時間内に立ってさえいれば、グループに付き100点入るから誰が優勝するか分からないよー。その代わり騎馬が崩れた時点で-20点。騎馬戦は下三人、上一人のグループ。男女は別にね。そして、上に乗る人はかつらをつけること~。校長から応援グッズとしてー……この私作成、《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 玉》をグループごとにプレゼントー!! もうダメだって時、ピンチの時に、ムカツク敵に向かってこの玉を投げつけろー! 何か奇跡がおこるかも?!』

校長は白袋の中から赤や黄色や黒色の球体をいくつか取り出して見せた。少し大きいサイズの玉は、なんだか禍禍しい。
その後は、各クラス代表がカツラと謎の玉が入った袋を貰いに行き、生徒達は一旦テントに戻った。用意をしたらまたグランドに出ることになっている。
「緑のアフロに、バカ殿……くそッ、これは取られやすいな」
 総司が舌打ちをして忌々しそうに袋からかつらを取り出していく。白い袋には、赤い文字で大きく“福袋”と書いてある。
「そうだねー。でも、オールバックとバーコードおやじと丸坊主はいい感じだよ……。ん?この髪型は何か見たことあるなぁ……」
 優雅が一つの黒いかつらに注目した。それを見た茜がポンっと手を叩いた。
「それ、サザエさんの髪型じゃない? それにこの派手なのはセーラームーンじゃん? とすると、もしかしたらその丸坊主は……」
「かつお君~」
 茜に変わり椿が嬉しそうに手を上げながら答えた。
 校長から貰った袋の中には、実に様様なかつらが入っていた。それらを物色している四人に対し、鈴菜と浩也は謎の校長アイテムを手に相談していた。
「嫌な予感がしますね、この玉は」
 浩也が、朝日が昇り始め、オレンジ色に染まってきた山々をバックに《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 赤玉》をかざした。
「どう考えてもあの校長の罠としか思えないわね。でも、……私達が使わなくてもどうせ他のクラスが絶対投げるし、防ぎ様が無いのが事実……」
 鈴菜は緑色の玉を浩也の手に押し付けると、これからチーム分けします! と声を張り上げ、次々にチームの名前を言っていった。
「……一番前に藤堂君、後ろに佐々木君と田辺君、そして上に優雅が乗って。そしてー、このグループは是非とも勝って欲しいはね。一番前に総司、後ろに体系のいい大江君と藤田君。上に浩也」
「私は重いですよ? もっと小さい身軽な人を選んだ方がー……」
「いいのよ、この三人だったら十分大丈夫。前の総司が睨みつけて、浩也が背中のあれでかつらを取っていけば早いでしょ」
「確かにそうだな、仕方ない。俺が前になるから浩也、お前上になれ」
 総司が悶えるジャクレに首輪を付けながら言った。首輪についている鎖の先には、地面に釘が打ってあり、硬く固定してあった。ほっといたら、いつの間にか総司の懐に潜入しようとするのだ。
「総司もいいのね? じゃあ次はー……」
 鈴菜が的確にチームを組ませ、全部が決まった。上に乗る人は、茜や椿、他にも委員長などがいた。鈴菜も上だった。







「さぁー、始まります! 最後の競技、かつらの煮込み添え! 本当にじつに様様なかつらがいるようです! 日が昇り、ライトが無くても明るくなりました。二日に渡った体育大会。最後になんでも券片手に笑うのは一体誰なのでしょう! さて、この見事なドラの合図と共にスタートです!」

生徒会長が、自分の背丈もあるドラを命一杯鳴らした。重い鈍い音と共に、騎馬達が一斉に走る。生徒会長の解説が続く。

「あー! 凄いです、凄いです! 正に戦場ですね。落ちたら点数引かれるぞー……おおーと?! 凄い勢いでかつらをむしり取りながら走っているグループがいるぞ! 上にいるのは………青桐茜だー! まるで鞄を取っていくプロのスリみたいに次々とゲットしていく!! どこでそんな手さばきを覚えたのか! しかし、他の人も負けてはいません! 今、かつらが入り混じり、物凄く煮込まれている状態なのか! おや? あの一年は何で逃げているのか……ああー! 最強のグループを発見しました!! 林浩也と総司のグループだ! 総司の物凄いプレッシャーに皆逃げていきます。さすが俺の従兄弟! しかも上の林浩也が持っているのは……見間違いじゃなければ、刀だあぁぁ!! 刀で次々かつらを刺しては奪っていっています! もはや憲法も無視です。この勝負、本命は三年E組か?! ……ん? 校長、何をしているのですか?」

 叫ぶ生徒会長の横で、校長が袋から沢山の黒い玉を出している。
「何やら校長が怪しい黒い玉を取り出しました! しかも……またまた見間違いじゃなければ、どくろマークが書いてあります! ああ、ふりかぶって~……投げたー……!!!!」
黒い玉が空中を飛んでいき、地面に落ちた瞬間、凄まじい破壊力を持って、生徒達を爆風が襲った。
「何てことでしょう、爆弾だあーあああ!」






「何だ! この爆発音は?!」
「これは………どうやら爆弾のようです!」
 総司が叫んだ後直ぐに、上にいる浩也が刀を一括しながら叫んだ。悲鳴の中、生徒会長の声が微かに聞こえる。どうやら爆弾を使ったのは校長らしい。
 前方で、爆弾とは違うピンクの煙が漂っていた。きっと、もうあの校長の謎の玉を使う人たちが出てきたのだろう。総司と浩也の騎馬は、慌てて方向転換した。何故か、ピンクの煙の中でごつい男が二人抱き合っていたが、見なかったふり。
「くそッ! 校長め……殺す気か!」
「やばいですね………とにかく早く終わらすように頑張りましょう」
 玉の中に何が入っているのかしらないが、あらゆる意味でヤバイ。
浩也は総司と話しながらも、次々と刀でかつらを奪っていく。奪ったかつらは、総司の持っている袋に入れる」
 また一つ、浩也が前方にいた騎馬から赤いアフロのかつらを取った。ついでとばかりに総司が足で蹴ろうとする。
「よっと」
「うわッ!!」
 敵の騎馬の前にいた男子生徒が悲鳴を上げてすぐ、そのお腹に総司の足がめり込み、騎馬は崩れ落ちた。その間も浩也は、右にいるグループのかつらを首尾よく取っていた。
 総司が不敵な笑顔で見つめる中、蹴られた男子学生が、甲高く叫んだ。そして、あの、《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 玉》を総浩也に投げつけた。
「浩也! どうにかしろ!!!」
 騎馬を組んでいる為に動けない総司が、かつらを取っていてまだ気付いてない浩也に叫ぶ。浩也が見た時、既に《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 玉》は浩也の直ぐ前に来ていた。
 浩也の目が鋭く光った。息をする間もなく、向かってくる緑色の玉に、鋭い一筋を入れる。
 パカッと《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 玉》が空中で真っ二つに切れた。緑色の煙が噴出し、総司と浩也の騎馬は完全に緑色の煙に包囲された。
「こら! 切ってどーする! 切って!」
 総司が怒鳴る。あッと浩也が間の抜けた叫びをあげた。
「すみません! 懐に敵が飛び込んで来たら切るという習性が………」
「習性って……アホか!!! く……ッ。何だこの煙は、とにかく逃げるぞ」
 進もうと足に力を入れるが、反対に足の力が抜けた。倒れそうになるのを必死で我慢する。浩也が刀を落とした。四人共、体全体が小刻みに震えていた。
「な……なに……?!」
「こ……これは……。痺れ薬……?!」
 総司と浩也のグループは崩れ落ちた。







 青桐茜は、知らない三年女子と取っ組み合っていた。この生徒は非常にしぶとい。
「あたしにー……! 勝てるとでもー……思ってんのー!!!!」
 茜が隙を見て、見事に相手のかつらを奪った。
「はっは~ん! あたしの勝ちね! 日頃のスリで鍛えた手つき、甘く見ないでよねー!」
「スリ??」
「あ、ち……違う違う! スリじゃなくて………スリランカ! スリランカを略したの。スリランカで古くから伝わるこの手さばき、どーよ!!」
 茜が慌てて言い直した。舌を出すと、相手が舌打ちした。
「あんたむかつくのよ!」
「知らないわよ、そんなこと! くやしかったら取りかえしてみればー?」
「クッ……! あんたの何もかもが気に食わないのよ! それに、いつも総司君の近くでうろちょろと!」
「は?! してないし!!」
 茜がビックリして叫ぶ。しかしキレた相手は聞いてない。
「これでもくらえ!」
 投げ出したるは《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 玉》。それは見事に茜のおでこにあたり、二つに割れた。黒い粒が飛び出す。
「ぐえーくしょん! ぐえー!!!!!!! こ……これは、コショウ?!」
 茜は、涙目でよくもっ! と叫んだが、その声は大きい爆発音によって消された。瞬き一つの間に、目の前の叫ぶべき相手が爆弾で吹き飛んでいた。えッと驚き、視界の先を見ると、向こうからこちらに向けて黒い爆弾を投げつけようとしている宇宙服姿の校長先生。
「う……そ……?!」


 三秒後、茜はふっとんだ。








 ごくりと生徒会長は唾を飲み込んだ。
 運動場は、今や校長が放った爆弾による、黒い煙と、《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 赤玉》を放った生徒達による赤や黄色や紫や緑の煙で満ちていた。
 立って騎馬を組めている生徒は殆どいない。残っていても、煙を吸って今にも倒れそうなのばっかだ。隣では、一通り爆弾を投げ終わったのか、校長が満足そうに袋をたたんでいた。後ろ姿はオレンジ色のドラえもんという感じだ。
「校長……《最後の腹いせ、死ぬ前に敵をやっつけよぅー! 赤玉》は一体何が入っているのですか?」
「ん? いいのでコショウとか強力接着剤。ダメなので、痺れ薬とか、ほれ薬とか睡眠ガスとか手作りサリンとかだよ」
「サリン?!」
 いや、まてまてまて驚くな。別にあの恐怖のサリンなどと決め付けてはいけない。あくまで手作りなのだ。きっとサリンらしき物体なのだろう。それで言うなら惚れ薬だってきっと………。
 生徒会長は生唾を飲んだ。今や避難していた自分の所まで気味の悪いカラフルな煙が漂って来ている。今立っている場所は運動場の一番端で、これ以上逃げられない所だ。
 風が強く吹いて、緑色の煙が向かってくる。生徒会長は、慌てて息を止めた。そんな生徒会長の肩を宇宙服姿の校長がポンッと叩いた。
「肌からも体内に染みてはいってくるよ」
 正にそうだった。生徒会長は自分の体が地面に倒れるのを感じた。近くにいた先生達も倒れていく。
「ふふ……だから、わしはこんな服装なんだよ」
 宇宙服程、安全なものはないだろう。そう思いながら生徒会長の意識は薄れていった。頭の中で校長が発する言葉がもうろうと回っている。
「生徒は誰一人残ってないねー……ということは、-二十点×一杯で、全クラス0.点。全クラス同点だ。優しい校長はちゃんとこういう時の為に同点の景品を用意しといたから安心したまえ。校長室にちゃんと人数分あるよ、校長直筆キスマーク入りサインが☆」
「な……何て卑怯な………」
 そこで生徒会長の意識は途切れた。
 校長が唯一立っている宇宙服姿の残り三人に手招きをした。
「さぁ、頑張った生徒諸君を体育館にしいてある布団まで運ぼう」







「帰ってきたー……」
 閑静な住宅街の一軒の前で、嬉しそうに青年は呟いて、入ろうと一歩進んだ。が、足元でぐにゅっと変なものを踏みつけてしまい、何かの死骸かと、慌てて一歩下がり、月明かりの下目を凝らしめて足元を見た。
「ん? なんや、こいつら。人の家の玄関の前で……」
 大きな荷物を背中に背負い込んだ金髪の青年、井上晴貴は、自分の家の玄関の前で倒れている男二人組みを訝しげに見た。
 見たことあるジャージは、久しく行っていない自分の学校のものだ。その服はボロボロになっていて、二人が折り重なるように倒れ込んでいる。
 上にいるスキンヘッド君は、晴貴に踏みつけられて気付いたのか、震える指を晴貴の方に伸ばしながら何事か呟いている。下のスポーツ刈り君は、気絶しているのかまったく動かない。
 何と言っているのか、晴貴はしゃがみこんで聞いてみた。
「た……たま……卵を……」
「は?」
 聞き返そうとしたが、しかしそのまま、スキンヘッド君は気絶してしまった。しかたなく晴貴は、二人をかるがる肩にかけると――(荷物がでかいので、ほぼ荷物の上に乗っかった状態になった)――チャイムを押してから、家の玄関を開け、鍵を開けて玄関に入った。
 とたんに電気が付き、奥から女性がかけて来る。
「ハルちゃん、帰ってきたの?! 一体何ヶ月迷子になっていたの~、心配したじゃない」
 晴貴は、荷物を玄関に置くと、自分の母親に向かって、嬉しそうに笑った。
「迷子ちゃうって。ちょっとばかし修行の旅に行っててん~」
 そして、体操服姿の気絶者二人組みを背負って、家の中に入っていく。
「こいつらは適当に寝かしとくから、朝起きたら卵を一杯食わしたってくれ」
「たまご?」
 母親が晴貴が帰ってきたことに嬉しそうに笑いながら、首を傾げた。
「ああ、何やら卵が食いたくて食いたくてしかたないらしーは、この二人……新しい卵病でも流行ってんのか? 俺はブラックリストメンバーに会いたくて会いたくて仕方ないけどな!!!」
 晴貴は布団を敷きだす母親を見ながら、『愛しのメドレー・今日も俺は茜色の夕日を見つめる』を歌った。

                                                                     ≪ララ≫↑


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【作者一言:ララ】
 あー……どんどん現実離れしていきますね(。。:)まぁ、ブラリスだから仕方が無いと言う事で。
 長い長い運動会編が終わりました。次は禁断の恋のお話ですv 総司と○の……!! これをきっかけに恋愛話に入っていきますよ!……きっと。






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