真っ白な街＜後編＞ | 夢の中へ…

真っ白な街　　　　＜後編＞

真っ白な街_後編_

みゅーは虹の橋を架ける場所を心の中で
ただ、それだけを思っていました
空は、指輪をカンバスにそっとあて、みゅーの手を握りました

…すると…

ゆっくりと色が動き出したのです
キラキラと輝きながら
カンバスから抜け出したのです

目を閉じて一生懸命心の中で虹の行き先を思っていたみゅーに
空は、優しい声で言いました

「色…付いたよ…みゅーが思った所に…
　　　　綺麗に架け橋になって光ってるよ」

みゅーは空の言葉を聞いて
泪がこぼれ落ちるのを止めることができませんでした

『私…』

その後は言葉になりませんでした
そんな、みゅーが愛おしくそっと抱きしめた空には
みゅーの気持ちがよくわかりました
震えてるるみゅーの肩…
空は心の中で思いました

「このまま、ここにいてほしい…
　　　　こんな素直なみゅーを手放したくない…」と…

空は、ポケットの中から小さな小瓶を取り出し
こぼれ落ちる、みゅーの泪を１粒１粒拾い集めました
素直な心の泪だから…
逢えなくなっても忘れないように…
そして空は耳元で囁きました

「みゅー…忘れないで欲しい…僕のことを」

「ここには、みゅーの作った色があることを…」

みゅーは空の胸に顔を埋め小さくうなずきました

２人が出逢ってまだ数時間しか経っていないのに
惹かれ合う２人…
しかし、別れの時間はゆっくりとやってきました
陽が落ち
みゅーの心の中で誰かが呼んでいる声が聞こえてきました

『温かい時間をありがとう…』

『私は…この世界にいることはできない…』

『空…また…逢えるよね？忘れないよ…ずっと…』

「僕は、この街に色を付けたら必ず逢いにくるよ」

「それまで、待っていてくれるかい？」

「必ず、僕は、みゅーを探し出すから…」

空は、みゅーを「ギュー」と、抱きしめました
そして、２人は手を繋ぎ
空の塗った“空”の下を歩き
ピンクに染まったベンチ前までやってきました
初めて出逢った公園に…

何処から来たのかわからない
入り口も出口もわからない真っ白な街

「また、逢おうね」

噴水の前で約束をした２人の前に
虹の橋が架かりました

『ここにして良かった…
　　　　噴水を見るたびに空を思い出せるから…』

みゅーが心に想って飛ばした色は、噴水の中だったのです

２人が別れを惜しんでいると
噴水の中の虹が、みゅーの足下まで伸びてきました
虹は、橋になり、みゅーを乗せて噴水の中に吸い込まれていきました
みゅーと空は、笑顔で手を振り約束を胸に
離ればなれになってしまいました
空は、部屋に戻ると
街の中に色を付け始めました

早く色を付けて、みゅーに会わなければ…
しかし、あわてることなく
１つ１つの色に心を込めて
１つ１つの色に思いを込めて
空は一生懸命塗りました

その頃みゅーは…

教会の中で、目を覚ましました
夢の中の出来事だと思い
素敵な夢を見せてくれた神父様に、お礼を言い家路をたどりました

みゅーの見ていた夢は…
教会に入ってきた時の、みゅーの姿が
あまりに淋しそうで神父様が使った取って置きの魔法だったのです
心優しい女の子を元気ににするための魔法
何故、神父様が魔法を使えたのか？
それは…
神父様は妖精だったのです
オトナになるにつれて妖精の仕事は出来なくなり
人間界に降りてきて、人々に幸せを与えにやってきたのでした

そんな不思議なことがあってから数年が経ちました

不思議な出来事があってからのみゅーは
少しずつ明るくなり、たくさんの友達もできました
大学生になり毎日楽しく過ごしていました
空に出逢ったことは１日も忘れたことはありません

そんなある日のこと…

キャンパスの階段から足を踏み外し転がり落ちそうになったみゅー
落ちる寸前に、誰かがみゅーの身体を支えたのです
みゅーはその人の胸の中に顔を埋めるように抱きかかえられ
助かったのです

『あ・・・・・』

みゅーは、この人と前に何処かで出会っていると…
とっさに思いました

『あたたかい胸…』

みゅーを抱きかかえた人が耳元でそっと囁きました

「みゅー…逢いたかったよ…」

『そ…そら…？？？』

『あなた…空なの？？？』

「そう…逢いたかったよ…みゅー」

「約束どおり、みゅーに逢いにきたんだ」

「みゅー残した泪で、この街の色を全部塗り終わったんだ」

『この街…の色…？？？』

「そうさ、ここは、真っ白な街だったんだよ」

驚いているみゅー…

『ここが…真っ白な街…』

そんなみゅーに空は、ニッコリ笑って

「今、最後の色が塗り終わったとこだよ
　　早く逢いたくて…みゅーの笑顔がみたくて急いできたんだ」

「みゅーに見せたいところがあるんだ」

そう言うと、前と同じようにみゅーの手を取り歩き出しました

みゅーの手を引いてやってきたところ…
そこは、見慣れた場所…
いつもは、何気なく通り過ぎていた、キャンパスの中庭だったのです
白いベンチに噴水…
ここを通るたびに空を思い出し
辛いことや哀しい事があるとここにきて空と話しをしていた場所

みゅーは、胸がいっぱいになり
何も言えないまま、泪の粒を落としていました
さっきまで、白かったベンチは、あの時と同じピンク
さっきまで、普通の噴水だったのに、虹の色に輝いている噴水

みゅーの泪をそっと拭って空は…

「ここは、２人の出逢った場所だから最後に色を付けたんだよ」

「みゅーが帰った後に、泪に願いを込めて色を消しておいたんだ」

みゅーはまだ信じられませんでした
あの、真っ白で、色のない街にずっと居た自分が…
そして、夢だと思っていた空が、本当に居たことに…

みゅーと空…
惹かれ合い、引き離されしていた２人…
空は誓います

「２度とみゅーの手を離さないと」

みゅーは誓います

『ずっと…一緒にいると…』

＋＋真っ白だから…＋＋

これから色を付ければいい
１度塗ってしまった色も
哀しい泪と嬉しい泪を混ぜ合わせれば
見えなくすることができる…

真っ白だから…
ゆっくり染めてゆけばいい

あなたの色と私の色に…

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