蒼い空、藍い海

蒼い空、藍い海

暴れん坊さんより30万打ゲット記念



『嫉妬する兄様』でリクしましたが、見事に応えてくださいました。
帰省や、パソのトラブルで忙しい中、ありがとうございました♪
十分に兄様の胸中に萌えさせていただきましたよvvv



兄様、いじめちゃってごめんね。

私、やっぱりSなのかしら・・・(笑)






「泥眼(でいがん)」

能楽において使われる面だ。 一見美しい女の面だが眼に金泥が塗られている。


その意味は・・・・・「品の良い美女の嫉妬に狂う様」・・・・。




一護との戦い及び裏切り者市丸から受けた傷は、さしもの白哉にも暫くの強制的な療養を命じられるほどだった。

四番隊の治療により、傷こそなんとか繋がっているが、治療にも限界がある。
術でふさいでいる傷が安定するまでは、当然ながら養生が必要なのだ。

しかしながら、白哉は傷を負った2日後には、当然のように隊の職務に復帰しようとしたため、四番隊隊長、卯ノ花裂の「絶対安静1週間」という、強制的な措置を受けていた。

それならと、副官の恋次に命じて持ち込ませようとした書類は、早々に卯ノ花に見つかり没収。
「そうなさるだろうと、思っておりました・・。

・・・治療にご協力をいただけないなら、絶対安静の期間を延ばさざるをえません。
そうですね・・。2週間程度にでもいたしましょうか・・?」

流石の白哉もお手上げである。

そして、病室には仕事に関係のない本のみを数冊持ち込む事を許可されるという具合だった。


部下の恋次は時間が許す限り、病室に付き添おうと思っているようだが、隊を空にするわけにもいかない。
白哉が一人で病室にいる時間も多かった。

現在機能しなくなっている中央四十六室。
体制を逆手に取って、野望を達成しようとした藍染。
そして、その体制そのものと戦った一護。
その一護によって、結果的に救われたルキア。

これから、我々はどう動くべきなのか。
そして、自分はどうあるべきなのか。

考える事は多い。


今回の件で、自分の取った行動が誤っていたとは思わない。
誤ったのは判断だ。
異常な命令に、疑問を抱きつつも、その是非を問おうとしなかった自分の判断にある。

その為にただ一人遺された家族を殺そうとまでした。


ただ一人の義妹を・・。



考え込んでいた時だ。窓の外から見知った声がした。

「お!ルキアじゃねえか!もう外歩いて大丈夫なのかよ。」

一護だ。背骨を残して腹を斬られていた筈なのに、もう歩いている。
あの男の生命力と回復力は常軌を逸している。


「貴様こそ、傷はどうした。」

答えたのは妹のルキアだ。
心的ストレスで随分衰弱していたようだが、もう外出を許される程度に回復したようだ。
元気そうな姿に、内心安心する白哉である。

「ああ。織姫があらかた治してくれたからな。
もう、普通に動くくらいのことは出来っぜ?」
「そうか。それはよかった。」

「オマエこそ、藍染の霊圧で一人で歩けも出来なかったのに大丈夫か?」
「・・・貴様こそ、藍染にやられてヘバっておったぞ?
踏まれたカエルにでもなったかと心配しておったところだ。」
「なんだと!オマエなんて首輪をひっぱられて無理やり散歩させられてた犬みたいだったぜ?!」
「なにを~~!このカエル男め!」
「散歩犬!!」


・・・・下らぬ会話だ。

だが、白哉はルキアの打ち解けた様子に驚いていた。
表情豊かに笑い、そして怒る様子。

年相応のまだ少し幼ささえ見せていた。

『・・・私には、緊張した顔しか見せぬのにな・・。』
自嘲にも似た想いが胸をよぎる。

ただ一人遺された家族、ルキアは白哉の顔を見るや、顔を強張らせ、背伸びした口調で朽木家の一員にふさわしい者であるべくあろうとする。
伝わるのは、緊張、畏怖・・・そして「自らへの卑下」。


『ルキアは・・このような表情もすることができるのだな・・。』
ルキアは、心の壁の奥の本当の自分をそうそう出す事のできる者ではない。

一護が破ったのだろう。
ルキアの・・・心の壁を・・。


そう・・私の掟を守ろうとする決意を砕いたあの力で。


あの奔放なる心の剣で砕いたのであろう。


この私の・・・何重にも廻らされている壁を突き破り、この私が一旦下した決意を変えさせた、あの奔放なる剣ならば、ルキアの壁を壊すことなど造作もないことであろう。

・・いや・・それだけではあるまい。

あの男はこれからも他の者の壁を壊して進むに違いない。

あの男とは・・・そういう男だ・・。
壁を壊し、中にある本心を引きずり出してこう言うのだ。
「・・ホントのオマエはこれだろ?!隠すな!」と。



私には見せぬ笑顔を、一護に見せる、ルキア。

・・・『兄の私にも見せぬ顔を、一護には見せるルキア』。


私に振るった剣を、私だけではなく、ルキアにも振るう一護。

・・・・『この私の壁を破った事など、忘れたかのように他の者に接する一護』。


不意に腹の底を何かどす黒い物が湧いてくるのを感じる。

・・・なんだ?この感情は。


何故、あの二人をみてこのような感情を抱かねばならぬのだ・・?
ただ談笑しているだけにすぎぬ。
なのに、何故このような想いをせねばならぬのだ・・・。


『コノ私ニ見セヌ顔ヲ、人ニ見セテハ、ナラヌ。・・・ソウ、誰ニモ。』

『コノ私ヲ、他ノ者ト、同列ニ思ウ事ナド、許サヌ。
コノ私ガ、貴様ヲ特別視スル以上、貴様モ私ヲ特別ト考エルベキダ。』




・・・・・黙れ・・・・!!!



・・・暫しの沈黙。
気がつけば、読んでいた書物に指の跡が、くっきりついていた。



ふと、屋敷にある現世で使われていたという、古い能面が頭をよぎる。

女の面だ。泥眼と言われている。
位の高い女だという。そして美しい女なのだそうだ。

普通の女の面と違うところは眼だ。
眼に金泥が塗られている。

眼だけが鈍く光を反射し、平静でない事を知らしているのだそうだ。



鈍く光る眼は『嫉妬』の象徴。


能では、更に嫉妬が強くなっていく3段階の面がある。
最も知られているのは、般若であろう。




・・・・下らぬ。
この私に嫉妬などと言う感情など、あってはならぬ。


正一位である朽木家の当主が、嫉妬される存在でこそあれ、嫉妬するなどあってはならぬ。





・・やはり私は少し疲れているようだ。
このような事に考えが及ぶなど・・。
卯ノ花隊長が休養を強制したのは正解だったな。





だが・・・・・・危険な男だ、あの男は。


此度の働きには感謝しよう。
しかし、やはり人間と我らは相容れぬもの。


近づきすぎるは・・・・仇となる。
もう暫くすれば、一護たち旅禍にも現世へ返される事となろう。
そうすれば、もう会う事もあるまい。


近づけてはならぬ。私にも、そして出来ればルキアにもだ。



これ以上、私の領域を乱すことはあってはならぬ。


そう。・・・これ以上は。





なんちゃって。


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