“ニューヨークのクリスマスはさぞかしロマンチックで素敵なんでしょうね…”
クリスマスが近付くと必ず日本に居る人達から聞かれる質問がこれで、時に、答えに詰まってしまう。なぜなら、ニューヨークのクリスマスの飾り付けは美しくて素敵で、町中がその間だけディズニーランドになったように輝くけれど、日本でイメージされているクリスマスとは、かなり、現実は違っているから。
ニューヨークもクリスマス頃になると、氷点下は当たり前の日が続く。もちろん、クリスマスよりももっと早く、11月下旬のThanksgiving Day(感謝祭)の頃から町はウィンターセールで賑わう。
クリスマスギフトは、日本のお歳暮のようなもので、特別な人に念入りに選ぶものから、まあこんなものでいいかと、まとめ買いしてとにかく渡してしまおうという買い物もあるところは、日米大差はないように思う。
デパートのショーウィンドーは、行列ができるほど凝ったクリスマスディスプレーを披露するし、町はクリスマス前日まで、確かにとても賑やかで派手やか。
だけど、どこにも『クリスマスまでに彼氏を見つけたい!』とか、『クリスマスまでに減量しよう!』だとか、『クリスマスまでに~~~!』というようなことは、全く見あたらないのがニューヨークと日本の大きな違い。
クリスマスはキリスト教を信仰する人達の、とても宗教的な日であり、デートの日ではない。遠く離れて暮している家族が、それぞれの両親や親戚の家に集まって、極々、身内だけで静かに過ごすのが、クリスマスの本来の姿。
それに、ニューヨークは多種多様な宗教が存在する町だから、誰も彼もがメリークリスマスとは言わない。ユダヤ人は「ハッピーハヌカ」と言って、自分達の別のお祝をする。だから、ニューヨークでは「メリークリスマス」というよりも、「ハッピーホリデー」という言い方をすることが多い。それなら、どんな信仰の人にも、また信仰を持たない人にも当てはまる挨拶だから。
約2年半ぶりに成田に降り立ち、約7年ぶりに日本でクリスマスと新年を迎えることになった私は、戸惑うことが余りにも多い。
クリスチャンでもないのに、メリークリスマスを連呼するテレビ番組に「???」と思うし、言われても、なんとなく背中がムズムズしてしまう。
それはきっと、本当のクリスマスを長年過ごして来たからだと思う。
それにしても、今年も私のところにはサンタクロースが来なかった。
毎年「どーか、私の大好きな人を届けてください」とお願いしているのに。
しかし、クリスマスの朝、枕元に、意中の人が布袋に入れられて、真っ赤なリポンなんて首に付けて置いてあったりしたら、腰を抜かしてしまうだろうか。
腰を抜かしてもいいけどなあ。一度くらい。
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