どうしてあの時、
私の体は動こうとしなかったのだろう。
もうそれが最後かもしれないということに
気付かないままに。
もうあれが最後だったって気付いた時は、
なにもかもが変化していた。
飛行機のアナウンスはいつもと同じようにカッコよく告げる。
"Welcome to New York."
わたしは遠くからこの町に帰って来るのが好き。
ニューヨークにはニューヨークの空気の味があって、
JFKのラウンジのドアを抜けて、タクシー乗り場に向かうまで、
わたしはその空気を胸一杯に吸い込む。
わたしは少しずつ、息を吹き返す。
だけれど
わたしにはニューヨークよりももっと、帰りたい時間がある。
それが不可能なら不可能なほど、想いは深く壊れやすくなる。
そして、わたしは言葉をなくしてしまう。
愛しき時に。
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