おとぼけ香港生活から脱皮

おとぼけ香港生活から脱皮

「25・Dec・1996」


私と彼は出会った。

友達とよく行っていた
居酒屋のマスターに頼んで
コンパを開いてもらったのだ。

年頃の女が
一人クリスマスを過ごのは
なんとも虚しい限りである。

そんな寂しさも吹き飛ばす如く
マスターに頼んだのだった。

「デブ、ハゲ、ちびのどれがいい?」と
マスターが聞いた。
コンパを開く前からそんなこと言って笑いをとる。
これはきっとマスターの笑いのセンスなのだと
信じて疑わなかったのだが
25日、当日現れた3人は
本当に
将来的にハゲそうな
私より背の低い
ジャンパーなしでも暑そうなジャージ姿のデブ
3人が揃ったのだ。

私達女の子3人は少々顔を引きつらせ
マスターおごりのシャンパンで乾杯した。

マスターが言ったまんまの3人が揃い
私は「今日が楽しければいいや~がはははは~~」のつもりで
人のグラスのシャンパンまで飲み干し
前半から快調に飛ばしていた私は
1時間もしないうちから
既に記憶を無くしていたほどだ。


記憶にあるのは
彼と私の兄が同級生であり
そのことで私は馬鹿にされ
1本電話をかければ5万円入ってくると
彼の自慢話を聞かされ
席替えで隣に彼が座り
テーブルの上で灯るロウソクを彼がひっくり返し
私のスカートに蝋がこびりついてしまった
それくらいしか覚えていない。

そこで彼と何を話したかなんて
全然覚えちゃいないのだ。

2次会のスナックでカラオケをし
彼の歌っている所に乱入し
2人して「ラストクリスマス」を歌い
友達とパフィーの「アジアの純真」を
歌ったっていた時に
彼は私に恋心を抱いた。(と後から聞いた)

そんな私達が付き合い始めるが
彼は台湾、香港、日本を行き来する。
日本を旅立つと2ヶ月は帰ってこなかった。
その間にも私達は手紙やFAXを
送ったりしていたのだが
そんな折、
「出会った日に出会った場所で再び会おう」と
いう手紙を彼からもらい連絡が途絶えた。

'97年12月25日、もらった手紙のように
私はマスターの店にいた。
彼と出会った時と同じワンピースを着て。
髪型だけが月日の流れを変えていた。
出会った時と同じように
新鮮な気持ちで再び会いたかったのだ。
彼が今どこにいるかもわからない。
でも、心のどこかで何かを賭けていた。
彼は来る、と。
入り口の扉が開くたび
私の心が小躍りし、緊張したが
彼は現れない。
時々、マスターが私に気を使って
話しかけてくれるが
女1人客は珍しく
話しかけるマスターにも緊張が走った。
1時間経ち、3時間経ち、
時間も遅くなったので勘定を済まし
店を出たのだった。

マスターの店の閉店後
誰もいない店に「ジジジ・・・」と1通のFAXが届いた。
彼からの私宛のFAXだった。

「メリークリスマス!

僕達はこの日にここで出会ったんだね。
僕はここにいるよ。
そして、僕は君を愛している。永遠に。」

後日、
何ヶ月も連絡を途絶えていた彼からの
英文で書かれたこの手紙を受け取り
彼も私と同じ気持ちだったのだと
私は一人涙したのだった。



毎年クリスマスのこの日になると
'96の今日を思い出す。


そして、その彼はというと今、
私の隣にいる。


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