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紫色の月光
第三話「最強の欠陥品のダーインスレイヴ」
カイトはナックの動きに注意していた。
先ほど彼が言ったように、ナック達「アンチジーン」は作られたときから超高性能なのだ。しかも、その強さが変わるわけではない。
それは、生まれた後の訓練や人生次第で強くなったり弱くなったりする、カイト達「ジーン」との圧倒的な違いである。何より、彼等は生まれた時点では他の人間と比べて身体能力が少しいい程度である。
しかし、それだけでは勝敗を決する物とはいえない。
何故なら、最初で劣っていれば、巻き返してやれば良いからだ。
「俺は六歳の時から戦いの人生を送ってきたんだ………最初の性能だけでどうこう出来ると思うんじゃないぞ!」
カイトは高速の動きで迫ってくるナックを、更に上回る高速のスピードで迎撃する。
迎撃の手段は何の小細工も無い左ストレートだ。
その一撃がナックの顔面にめり込んだ瞬間、ナックは再び吹き飛んだ。
「最初から油断してしまったお前の負けだ。――――――死んでしまえ」
カイトは容赦しない。そのまま右足でナックの側頭部にハイキックを繰り出す。
鈍い音が部屋に鳴り響くと、ナックはまたしても吹っ飛ばされる。
「が――――――!」
ナックは壁に叩きつけられると、そのままドサリと床に倒れこんだ。
アンチジーンとして高い能力を『作られたとき』から有していた彼にとっては耐えがたい屈辱だろう。
何故なら、今の彼はまるで虫けら同然だったからだ。
「くそ………欠陥品の貴様如きに……!」
「その欠陥品に傷めつけられる気分はどうかな?」
カイトはナックのすぐ目の前にいた。もう目で彼の動きを追おうとすることすら叶わないのだ。
「そう、俺はジーンの中でも最強に設定されつつも、それと同時に欠陥品である。何と言っても――――――」
カイトは真紅の刀をナックに向ける。
「後、三年も生きられそうにないからな」
瞬間、ナックの両手がカイトに襲い掛かった。
しかし、カイトは後ろに跳ぶことによってこれを回避する。
「そいつが………お前の能力か?」
カイトの視界の中には男がいる。ナックと言う男が、ただ一人だけ存在している。
しかし、その両手は異形だった。
先ほどまで肌色だった両手が、緑色の蛇になっていたのだ。
「獣化型能力の応用か……!」
獣化型とは、その名のとおりに動物に変化する事が出来る能力のことを言う。
簡単に言うと、その動物に変身する事によって自身の身体能力を更に上げるのだ。
「しかも…………変化した後は蛇手男と来るか。流石に初めてのパターンだな」
「電気と再生能力の二重能力を誇る最強の欠陥品。ならば、俺が完成品らしい所を見せてやる」
「来て見ろよ…………切り刻んでやる!」
ネオヴァイサーガは剣を横に薙ぎ、リオンを横一文字に両断する。
その一撃だけで破壊されてしまったリオンは周囲に爆風を巻き起こすが、ネオヴァイサーガはそれをお構い無しに突っ切っていく。
そしてそれを追うように一つの巨大な影も爆風の中を行く。
グルンガスト参式である。
「くっ! 速い!」
ゼンガーはこれまで出会ったことが無いスピードの持ち主を追いかけていた。
装甲やパワーならこちらが圧倒しているが、スピードは向こうが圧倒していた。
今まで様々な強敵を相手に戦ってきたが、こんな敵は見たことが無かった。最初から向こうはこちらを相手にしていないのだ。
「まさか追いつくことすら出来ないとは………!」
先ほどからネオヴァイサーガは全くゼンガーの相手をしない。いや、正確に言えば、避けているのだ。
それはスバルやユイの戦闘技術ではゼンガーの様な強敵と戦っても、敗北するだろう、と言うカイトの理論から来た言いつけだった。
(決して、グルンガストとゼンガー相手には戦うな、か)
スバルはカイトと違って戦い慣れているのではない。彼の今までの戦闘訓練は全てカイトによってなされたものだ。そのカイトが、戦うな、と言ったのだから彼は戦う事が出来ない。彼にとってカイトとは兄であり、尊敬する対象でもある。
「こう見えても、スピードだけなら自信があるんでね!」
ネオヴァイサーガは更に加速してグルンガスト参式との距離を離す。
その加速は異常と言ってもよかった。ネオヴァイサーガとグルンガスト参式の距離は先ほどから縮まるどころかどんどん離されている。
「くっ………! 速すぎる!」
そのスピードはグルンガスト参式では追いつけない。いや、例え別の機体に乗っていたとしてもあのスピードには追いつけなかっただろう。
しかし、だからと言ってあの機体を野放しにしておくわけには行かない。
「何とか………何とかできないのか?」
そんなゼンガーの目に、コロニーの外壁が映った。そしてそこにはヒュッケバインとアシュセイヴァーが戦っている光景を見ることが出来た。
そして、そこに向かうネオヴァイサーガの姿も。
アシュセイヴァーはガンレイピアでヒュッケバインの五体を狙う。
しかし、ヒュッケバインはそれを回避した後、フォトンライフルを構える。
「喰らえ!」
しかし、フォトンライフルのトリガーを引こうとした瞬間、ライフルの銃口がいきなり分かれた。斬られているのだ。
それを行ったのはネオヴァイサーガである。
スバルはアシュセイヴァーを見た瞬間、真っ先に援護に向かって飛んできたのだ。
そんな彼のもとに、ユイから通信が来た。
「時間まで後何分?」
「19分!」
時間と言うのは、彼等の機体が有するようになった高性能ステルス機能、その使用時間の事である。
システムXを取り外して、その代わりとでも言わんばかりに取り入れられたのだ。
彼等は、時間がきたらその機能を使って逃げるように指示されている。無論、カイトにだ。何故、今使いながら戦わないかと言うと、戦いながらその機能を使うと消費エネルギーが膨大すぎて戦闘に支障が生じる可能性があるからだ。
「で、兄さんは!?」
「今頃、中でデータ消去をしているはず。私達は邪魔になるような面子を排除するの」
「了解!」
そのカイトが今、邪魔な面子の一人と戦っている、とは二人は思っても見ない事である。
カイトは真紅の刀を振るいながらナックの双蛇の攻撃を回避している。
その蛇は不規則な動きをして、カイトに凶悪な毒牙を向ける。
しかし、カイトは刀の切っ先を、ナックではなく両手の蛇へと向けていた。
「その蛇がキングコブラだが普通の蛇だがは知らんが、俺の邪魔をするんなら―――――」
カイトは高速のスピードでナックに迫る。そしてそのまま刀を右手の蛇の口内に叩き込む。
「殺す!」
その刀身は皮膚を突き破り、ナックに言葉にならない痛みを与えた。
「がああああああああああっ!」
室内にナックの叫びがこだます。しかし、カイトはそれでも攻撃を止める事は無い。
右手の蛇の口内から刀を引き抜いたと同時、赤い鮮血が噴出し始めた。
「トドメ!」
カイトはナックの顔面に刀を叩き込むべく、踏み込んだ。
その後は横薙ぎにぶった切るなり、そのまま突くなり、好きにするだけだ。
しかし、それを行う右手に絡み付いてくる物があった。ナックの左手の蛇である。
それは右腕を強く縛りつけ、そのまま骨を砕くかのような力で襲い掛かってきた。
「そのまま腕を粉砕してやる!」
「出来るか!? こいつの強度は並じゃ無いぞ!」
カイトが叫んだ瞬間、ナックは見た。
それは機械の腕。普通の肉の腕と違い、硬さを誇る鋼鉄の腕である。今まではカイトが着ていた長袖と手袋のせいで分からなかったが、今はその袖が捲れているのでよく分かる。
「これは―――――!」
「シャドウミラー戦での戦利品って所だ! 正直、欲しくは無かったけどな!」
カイトは空いている左手の拳で力一杯ナックの顔面を殴った。
それと同時、右腕に絡み付いていた蛇の力が緩みだし、ナックがよろけた。
「がっ…………!」
ナックはよろけながらも体勢を整えようとする。しかし、彼の目の前には既に刀を振り上げているカイトの姿があった。
「その手も使えなくしてやるよ」
刀身が、ナックの左肩に叩き込まれた。
エイジは壁に叩きつけられていた。
先ほどからアキナにこてんぱんにされているのである。それはエイジにとっては屈辱的な物でしかない。
「うわっ!?」
エイジがその声に反応したのと同時、シデンが隣にぶっ飛ばされてきた。
どうやら、彼もアキナに叩きのめされてしまったようだ。
「痛たた…………いやぁ、小柄な割には凄い強いねぇ」
「お前は緊張感が無ぇな」
「いやいや、率直な感想を述べているだけだよ。――――――それにしても、カイちゃんは何時の間にこんな可愛いアマゾネスを仲間にしたんだろうね?」
「アマゾネス、ねぇ」
その言葉に当てはめるにはあまりにも小柄でロリだよなぁ、とエイジは思った。
そして、シデンの言葉に対する答えを自然と返していた。
「少なくとも、シャドウミラー戦の後―――――1年前にはいなかったな」
「じゃあ、行方不明になった後に知り合ったのかな?」
「そうなるな」
だとすると、どんなにドラマチックな出会いだったんだろうか、とエイジは思った。
しかし、実際はそんなドラマの様な感動的なストーリーでは無い。
単に、カイト達が捕まっていたコロニーに侵入して、彼等を救い出した。
その時が初対面である。その後はカイトが積極的に前に出て戦ってきたのだから、自然に彼女が彼の後ろに付いて行く。何時の間にかそういう型が出来上がっていたのだ。
そうやって同じように、軍に研究サンプルとして捕らえられていったジーンを開放していった。
カイトは仲間たちの中でも一番信頼があった。
メンバーの中でも、総合的に強いのは彼だし、家事一般も普通にこなしてしまう彼は何時の間にか仲間たちの中の大黒柱的な存在になっていたのだ。
何時しか、彼は仲間たちの間からこう呼ばれていた。「リーダー」と。
それはアキナも例外ではなかった。
それぞれが生まれつき、超個性的な能力を与えられているジーン。その中で一番初めに作られたカイトは正に『長男』的な存在こと「頼れるお兄ちゃん」になってしまったのだ。
最初は、リーダーって呼ぶな、と言っていたカイトなのだが、自然にそれを受け入れるようになっていた。
要は、単に素直じゃないのだ。
幼い頃、ハゲタカと呼ばれた殺人犯だった彼は他人とのコミュニケーションが苦手だったのだ。
「あの時のリーダーは可愛かったな。顔を真っ赤にしちゃって」
アキナは悪戯っぽい笑みを浮かべながら自身がぶっ飛ばした二人を見る。
彼女はジーンナンバー3。ナンバーの数字が少なければ少ないほど強いと言う設定があり、尚且つ鍛錬次第で幾らでも強くなれるジーンの中では強者に入る方である。
彼女の能力は、カイトの様に派手な電撃で無ければ、再生能力でもない。かと言ってナックの様に獣化するのではない。
彼女の能力は今、エイジとシデンに使っている物である。
それは肉体強化だ。
普通なら仲間たちの中でも最弱な彼女なのだが、ちょっと集中しただけでたちまち仲間たちの中でも最強の位置に躍り出るのだ。
「さぁて、お二人さんは随分と痛めつけられています。どぉしましょう」
アキナの声に二人は身を振るわせる。
はっきり言って、二人がかりでもこの少女は倒せないだろう。二人の思考は見事にシンクロしていた。
「はい、ではリーダーからの任務を見事こなしたので、このまま帰りますねー」
「……………………はい?」
その意外すぎる言葉を聞いた二人はしばし唖然としてしまった。それはアキナが笑顔でカイトに合流しに行って、その姿が見えなくなるところまで続いた。まるで、時間が止まったかのようである。
「そういえば………あの馬鹿、『死なない程度に』とかホザイテやがったな」
エイジが呟くように言うのと同時、止まっていた時が動き始めた。
「やっぱ優しくなったよ、彼は。―――――ほんの少しだけ、ね」
シデンが続いて言うと、彼等二人は身を起こした。
床にドサリと左腕と大量の血が落ちる。
しかし、その腕は人間の左腕とは言えなかった。何故なら、それは巨大な蛇だったからだ。
「良く切れるな。この刀」
その左腕を叩き落した張本人は、落とされた者の目の前にいた。
彼は全身黒い服装で、黒の手袋を両手にはめていた。
そして、その闇のように深い黒の瞳は真っ直ぐ自分の真紅の刀を見つめていた。
「一応、名前があるんだよ、これ。『紅蓮血鳥』って言うんだ。――――あ、因みに命名したのは俺じゃないぞ。こいつの作り主だ」
カイトはナックを睨みつける。最早戦う術が無いナックを、静かに睨みつけた。
「貴様等は楽には殺さないぞ。――――痛みを感じながら死んでいけ」
カイトは紅蓮血鳥をナックの両足に突き刺した。そしてそのまま問答無用でナックの身体に刻んでいく。
「―――――――」
ナックは声にならない叫びをあげる。しかし、カイトは右手を止めなかった。
「何を言ってるんだ? 貴様等もやったんだろう? 俺と同じ事を、貴様等は仲間たちにやったんだ…………」
その言葉には明らかに殺意と憎しみが渦巻いていた。
「お前等はお遊びのつもりだったんだろうが、俺はよーく覚えているぞ。お前等はホセを殺して、カルロを殺して、リーガルを殺して、そしてボスを殺してしまった」
カイトは一旦、刀を突き刺すのを止めた。
しかし、ややあってから再びやり始める。
「憶えているだろ? お前がカルロにやった事だ。――――あいつはクソ生意気なガキだったが、マジメで、いい奴だったよ。――――知ってるか? あいつはお前に殺された日、13歳の誕生日だったんだ」
そこまで言うと、カイトは刀を閉まった。
「俺からの誕生日プレゼントは………遅くなったが、仇をとる、くらいしか出来ない。済まん、カルロ。今度、皆でケーキを食べようって言ったのにな」
カイトが呟くように言ったと同時、背後から元気な声が聞こえてきた。それは重々しい空気を一気に吹き飛ばすくらいの元気の良さだった。
「リーダー! ミッションコンプリート! 死なない程度に痛みつけておいたよー!」
「………ご苦労さん。――――そろそろ時間だけど、あいつ等無事だろうな」
カイトはアキナのほうに振り向くと、早足で部屋を出た。
部屋に残っている物は、データを抹消されたコンピュータとアンチジーンの1人の死にかけの姿である。
「動けないだろう? これからお前がカルロを殺した時の場面を再現してやる。ギャラリーが大勢いる中でな」
コロニーの外壁では、スバルとユイの二人が悪戦苦闘中だった。
そこいらの機動兵器とは性能の差で有利であるが、二人はまだ操作系に完全に慣れたわけではなかった。
そして何より、数が多すぎる。
「シュミレーションで、もっと敵機の数が多い方がよかったかしら!?」
アシュセイヴァーのハルバートランチャーが吼える。
放たれた閃光は近づいてくるリオンやガーリオンを一撃で抹消する。
「こっちも、何か射撃武装が欲しいところだね!」
ネオヴァイサーガは戦艦のブリッジに向かって剣を差し込んだ。
まるで豆腐に刺し込んだ包丁のようにキレイに入ったそれは、そのまま戦艦の機能を奪って爆発させた。
「時間は!?」
「後、5分!」
2人はお互いに近づき合っていた。
いざと言う時のために、お互いに対処する事が出来るようにしなければならないと思ったのだろう。
「………ところで、グルンガストにヒュッケバインは?」
その二体は要注意の機体だった。特にグルンガストに乗っているゼンガーはそのパイロットとしての技術が凄まじい。間違いなく、この戦いの中にいる者達の中でナンバー1だろう。
しかし、そのゼンガーが乗っているはずのグルンガスト参式がいない。
先ほどから、突然姿を消してしまったのだ。まるで幽霊のようである。
「グルンガストは破壊力と防御力はこっちの比じゃないわ。いなくなったなら好都合よ」
しかしユイは言ったのと同時、こちらに急接近してくる機体を見つけた。
最初はグルンガストか、ヒュッケバインのどちらかではないかと思って構えた二人だったが、その正体は、
「ガーリオン!」
かなりのスピードでやってくるそれは正にガーリオンそのものである。
その右手には、恐らく臨時で装備されたのであろうコールドメタルナイフが握られている。
「俺が行く、アシュセイヴァーはヒュッケバインとグルンガストに集中しておいて!」
「わかったわ」
ネオヴァイサーガは加速する。向かう先にいるのはガーリオン。彼の獲物だ。
しかし、この時のスバルには想像も出来なかった。
逆に、自分が獲物になろうとは―――――
「一意専心! 受けよ、我が一撃を!!」
「げっ!? 何でゼンガーがガーリオンに乗ってるんだよ!?」
それは彼にとってはあまりに意外すぎた出来事であった。
要注意人物であるゼンガー・ゾンボルトは、何時の間にかガーリオンに乗り換えていたのだ。
そして、気付いた時にはもう遅い。ガーリオンの機動性に任せた渾身の一撃によりネオヴァイサーガは一瞬で行動不能に陥ってしまった。
「くそっ! 動け、動けよヴァイサーガ!」
しかし、ネオヴァイサーガは動こうとはしない。
それを見たゼンガーは、ネオヴァイサーガを回収した。
「ふえ~、凄い………あんな接近戦、私じゃできないわね」
先ほどのぶつかり合いを見ていたリーザの感想がそれだった。
彼女は接近戦が得意ではなかった。と言って苦手なわけではない。しかし、彼女は射撃が大得意なのだ。そのせいか、何時の間にか接近戦に得意だ、と言う認識が無くなっていたのだ。
「さて、一体確保した訳だから、もう一体………」
アシュセイヴァーに目を向けた彼女は、そこである光景を見た。
アシュセイヴァーの後方のJ2コロニー。その外壁を突き破って、漆黒の機体が姿を現したのだ。
「邪眼発動。全システム問題なし」
「リーダー、あれ!」
漆黒の機体で外壁を突き破ったカイトは、コクピットの空きスペースにいるアキナが指差した方向を見る。
それはネオヴァイサーガがガーリオンによって回収されている光景だった。
「スバル…………もたなかったか! ユイ、お前は撤退しろ!」
「でも、スバルは―――――」
「後でどうにかする。今はこの場を切り抜けるほうが先だ! 大丈夫、あいつだって俺の弟なんだ」
アシュセイヴァーはそれを聞くと、姿を消していった。命令どおり、撤退したのだ。
「さぁて、それじゃあ行こうか。『ダーインスレイヴ・ダークネス』!」
コロニー内部から脱出したエイジとシデンは見た。背中に翼を持つ漆黒の機体を。
それはシャドウミラーとの戦いの時にも見た事がある。
カイトの左目の邪眼の闇の力によって強化されたヒュッケバインそっくりなのだ。
「あれも闇の力で強化された機体なのか………?」
『正確に言うと、闇の力で補った機体だな』
エイジの疑問に割って入る声があった。その声はJ3コロニーのときのように合成音であり、声だけでは男なのか女なのかわからない。
しかし、エイジとシデンは既にその正体を知っていた。
『こいつはな。元々は『ダーインスレイヴ』って言う新型機だったんだ。未完成のな。その時のままだったら翼なんか無いんだが、今回の襲撃に使いたかったから、臨時で無理矢理完成品にした』
つまり、あれはダーインスレイヴでありながらダーインスレイヴとは異質な物になってしまったのだ。
カイトがイメージした代物に出来上がっているのだろう。常に戦いの中で育っていったカイトの想像力の結晶が、ここにいるのだ。
『では、起動テストに付き合ってもらおうか』
次の瞬間、ダーインスレイヴの翼が展開された。
カイトの視界の中には無数の機動兵器と戦艦があった。
その中にはソウルサーガ、アークブレイダー、ヒュッケバインの姿もある。
「相手に不足なし!」
ダーインスレイヴの右掌にブラックホールの様な黒い渦が出現した。その中からひょっこりと銃身が出現する。
ダーインスレイヴはそれを素早く取り出すと、引き金を引いた。
銃口に黒い光が集まっていき、一気に放出される。
放たれた黒い光はそのまま真っ直ぐガーリオンのコクピットを貫いた。
その光景に思わず目を奪われてしまったパイロットが乗ったリオンも、それから数秒としないうちにコクピットを貫かれた。
「お次はコイツだ!」
ダーインスレイヴは銃身を放り投げると、今度は腰部に装備されている柄を両手に取り出した。それはビームソード系の武器の柄である。
「ダークソード………!」
柄から生えたビームソードの色は黒である。闇の様な漆黒のビームソードを両手に持ってダーインスレイヴは機動兵器の群れに突っ込んでいく。
その突っ込んでくる黒色を好機と見たのか、リオンやガーリオンを始めとした軍所属の機体が一斉に攻撃を開始した。
しかし、放たれたビームや弾丸はダーインスレイヴの目の前に現れた黒い壁により、次々と弾かれていった。
「あのヒュッケバインと同じ………大抵の攻撃を無効化するバリヤーか!?」
その防御力の高さは、共に戦った事がある者ならば誰もが知っていた。
そこいらの普通のライフルやビームソードでは、あの黒い壁は破れない。
「それなら!」
ソウルサーガは焔宝剣を抜き、そのままダーインスレイヴに向かい自ら突っ込んでいった。
「来るか! エイジ」
「勝負だ、カイト!」
二本の黒いビームソードと、焔宝剣がぶつかり合う。それは辺りに火花を撒き散らし、互いに一歩も譲らない一撃である。
「この…………!」
「行け―! リーダー、やっちまえー!」
「ええい、横で騒ぐな!!」
「お前等緊張感をもう少し学べ!」
「お前に学べと言われる日が来るとは思わなかったぞ」
このやり取りは一気に彼等の緊張感を溶かしてしまった。
その時である。
「エイジ、下がって!」
シデンの声が響いた。
ソウルサーガはそれに応じて後退し、ダーインスレイヴはそのままの位置にいる。
「バスターランチャー!?」
「行くよ……!」
アークブレイダーの手にはバスターランチャーが握られている。それはエネルギー消費の問題で3発しか撃てないが、黒の壁を破るには十分な威力を誇っていた。
「ちぃっ………フェザーブラスター展開」
ダーインスレイヴの背中の二翼がアークブレイダーに向いた。
その左右の翼の中からそれぞれ姿を現したのはビームランチャーである。
「また凄い物作っちゃって!」
アークブレイダーのバスターランチャーが吼えた。
それと同時、左右のフェザーブラスターが吼える。
右翼から発射された光がバスターランチャーの光とぶつかった。
それだけで二つの力は相殺されてしまう。
しかし、残った左翼のフェザーブラスターはそのままコロニーの外壁を突き破り、簡単に貫通してしまった。
「じゃあ…………これから始めるよ、カルロ。遅くなったが、俺からの誕生日プレゼントだ。――――ヘルゲート、展開」
カイトはそういうと、ダーインスレイヴの胸部を展開させる。
そこから出現したのは、巨大な銃身である。
「我が闇を力として食らい、敵を討て!」
銃口に光が集う。その量は先ほどの銃の比ではない。
それを見たアークブレイダーとソウルサーガは撤退を始めた。それを追いかけるようにヒュッケバインの姿もある。
「ありゃあ………かなりヤバイぞ」
「うん。今回は………彼の勝ちだね。何だか複雑な気分だよ」
「ちょっと、少尉! 置いていかないで下さいよ!」
三人がフィティングに向かって移動を開始した時、ダーインスレイヴの胸部の光は更に強まっていった。
「インフェルノ・スマッシャー! 発射!」
胸部に集った巨大な光がダーインスレイヴから離れていく。
それはJ2コロニーに向かって真っ直ぐ進んでいく。進路を妨げる物は何も無い。
「命中だな」
その言葉の通り、光は命中した。
それはJ2コロニーを飲み込んで、破壊していき、終いには跡形もなく消滅させてしまった。
「アンチジーンナンバー10、ナック。お前がカルロを殺したのと同じ方法でお前を殺してやったぞ…………これで、後9人」
カイトの目はまだいる9人の敵を睨みつけている。
その9人の目的は自分達を消す事だ。
ならば、
「殺される前に、貴様等全員殺してやる。もう、仲間を死なせやしない」
第四話「愉快な家族」
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