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著者は、松永クリニック小児科・小児外科の医師・松永正訓さん。 千葉大学医学部付属病院小児外科に教室員(医局員)として19年間在籍するも、 40歳時に解離性脳動脈瘤を発症、大学病院の勤務継続が困難になってしまいます。 その後の新たな職場探しは困難を極め、最終的に開業医を目指すことに。 解離性脳動脈瘤に対する医療的対応や、新たな職場探しに奔走する姿、 さらには、開業に至るまでの詳細な道のりに関する記述はリアリティーに満ち溢れ、 強く胸に迫ってくるものがあります。 著者自身もかなり自信を持っておられるようですが、相当な筆力の持ち主です。開業後のエピソードや裏話も興味深いものばかりで、頁を捲る手が止まりません。また、著者の思いや考え、人となりがしっかりと伝わってきて、感動すら覚えます。 ぼくは、受診した子どもが人生で初めての風邪だった場合、 「風邪とはなにか」「風邪薬の役割は何か」「自宅でできるケアは何か」 「どういうものが再診した方がいい危険なサインか」をみっちり説明している。 これは結構時間がかかるが、 一般の人に対する教育という意味でも大事だと思っている。(p.166) 最終的には医師の実力で、そのクリニックのレベルは決まる。 立派な医療機器に惹かれてクリニックを受診しても、 やがて患者はその医師の真の力を自然と知ることになるだろう。 はっきり言って、小児科は聴診器一本あれば、 ほとんど100%の医療を行うことができる。(p.168) 患者を「見て」「触る」ことは医者にとって基本であり、 必須のことだと若い医師には口を酸っぱくして言いたい。(p.211)読んでいて、気持ちがスキっとするような一冊でした。ぜひ、一読を!
2024.03.29
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昨年5月に19巻を読んで以来、久々のシリーズ読書。 本著が刊行されたのは昨年10月だったのですが、 読むのが少し遅くなってしまいました。 偶然ですが、先日読んだ『異邦人』も京都を舞台とするお話でした。 ***「プロローグ」では、京都国立博物館がインターンを募集。葵は、清貴のアドバイスでマネージメントを専門分野に選択して応募、採用されることに。「第1章 バースデー滋賀散策」では、葵が清貴の誕生日祝に琵琶湖畔ペンション宿泊券を贈呈。二人は宿に向かう途上、車で滋賀各地を巡り、延暦寺では円生に遭遇。長浜の『黒壁ガラス館』では、清貴の後輩が教員を務める高校の生徒たちがワイングラスを破損、本当のことを話さない生徒たちへの聞き取りに、清貴も立ち合うことになります。「掌編 探りの視線」では、ボランティア・サークル『京もっと』の篠田康平が『蔵』を訪れ、葵に京都の町を案内して欲しいと言い寄るも、清貴にあっさりと撃退されてしまいます。「第2章 華麗なる舞台の裏側」では、秋人主演の演劇が京都南座で上演されることになり、その最終稽古に原作者の相笠くりすが訪れるもSNS上で騒ぎが勃発、清貴が即刻解決します。「おまけ」は、秋人と清貴が『ボトルキャップチャレンジ』に挑むお話です。「第3章 神のまにまに」では、京博副館長・栗城祐希による葵へのインターン指導が始まり、期間中に、『エジプト風広間』で黒木塔子のピアノリサイタルが開かれると聞かされます。また、終業後に訪れたギャラリーでは『ギャラリー・ストーカー』撃退場面を目の当たりに。一方、イーリンから、円生の作品が香港の内覧会に展示されているとの連絡を受けた清貴は、小松と共に会場の『M+』に向かい、菊川史郎、平雅風太と行動を共にしている円生に接触。史郎はジウ氏の下に戻り、葵は清貴の元カノ・塔子を一蹴して3週間のインターンを終えます。そして、円生は葵への想いを清算し、葵と一緒に清貴らとの食事会に参加することに。「エピローグ」では、和気あいあいとした食事会を終えた葵が、清貴に大学卒業後にサリーの所へ行くと宣言、その前に結婚して欲しいと伝えます。 ***今巻は、円生が画家としての大きな一歩を踏み出すと共に、葵と清貴の未来が見えてきました。次回は、清貴が税理士事務で実務経験を積むお話になるのでしょうか?円生とイーリンの今後も楽しみです。
2024.03.24
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副題は『誰も言えなかった「真実」』。 ジャーナリストの鳥集徹さんが、南日本ヘルスリサーチラボ代表・森田洋之さん、 こだま病院理事長・児玉慎一郎さん、長尾クリニック名誉院長・長尾和宏さん、 ルネクリニック東京院院長・和田秀樹さん、 たかぎクリニック院長・高木俊介さんに対し、 それぞれに行ったインタビューを取りまとめた一冊。鳥集徹さんは、『コロナワクチン 失敗の本質』『薬害 コロナワクチン後遺症』の著者、森田洋之さんは、『日本の医療の不都合な真実』の著者、児玉慎一郎さんは、『走る外科医のつぶやき コロナ禍の出口を求めて2021』の著者、長尾和宏さんは、『薬のやめどき 』』『コロナ禍の9割は情報災害』の著者、和田秀樹さんは、『テレビの大罪』『80歳の壁』の著者、高木俊介さんは、『危機の時代の精神医療』の著者。血圧、ポリファーマシー、食生活、認知症、抗精神病薬、入院、新薬、副作用、ブースター接種、メディア、後遺症、オンライン診察、減薬、優先順位、降圧薬、インスリン、やめどき、薬ゼロ、薬害、糖尿病、病名、エビデンス至上主義、等々、インタビューの中で頻出する言葉が多数ありました。そして、改めて気付かされたのは、医師にも様々な立ち位置があり、それぞれに思いや考えがあること。それらの医師たちの言葉をどのように受け止め、理解するか、そして、それらをいかに自らの行動に反映させていくか。自らの生き方や、生命そのものに直結する問題だけに、なかなかに難しいです。
2024.03.23
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東日本大震災原発事故が発生し、出産を控えた篁菜穂は東京を離れ京都へ。 そして、新門前通の「美のやま画廊」で、白根樹の作品『青葉』に出合う。 一方、菜穂の夫・一輝が専務を務める 銀座の老舗画廊「たかむら画廊」は、 父である社長・篁智昭のビジネスパートナーの裏切りによって経営破綻の危機に。 一輝は、有吉美術館館長・有吉克子に、館の目玉作品モネの『水連』売却を要請、 菜穂との結婚前から自分に秋波を送り続けてくる義母を、ジュニア・スイートへと誘う。 有吉美術館副館長である菜穂は、自分に秘密裏に進められた売却話にショックを受けるが、 以後、重鎮画家・志村照山の愛弟子である白根樹の創作支援に、一層力を入れるのだった。 ***川端康成の『古都』を手本としたと言われるこの作品は、京都の四季を丁寧に描きつつ、美術を核に据えた人間模様もしっかりと描いていきます。「なぜ、こんな良作を、今まで読まず放置したままにしていたの?」と思いながら、マハさんの大ファンである私は、頁を捲り続けていたのでした。しかし、白根樹と志村照山との間に起こった事件が明らかになり、さらに、篁菜穂と白根樹との関係も明らかになったあたりから、少々違和感が。こんな最終盤になって……物語の収め方って難しいな、と改めて思いました。
2024.03.17
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副題は「愛国と神話の日本近現代史」。 「『戦前』とは何だったのか?」について、 神話と国威発揚との関係を通じ、その正体に迫ろうとする一冊。 著者は、評論家・近現代史研究者の辻田真佐憲さん。 *** 戦前といっても切り口はいくらでもあるが、 本書では、日本神話からアプローチすることにした。 すなわち、大日本帝国を 「神話に基礎づけられ、神話に活力を与えられた神話国家」と定義したうえで、 戦前を5つの神話にもとづく物語に批判的に整理した。 その物語とは、「原点回帰と言う罠」「特別な国という罠」「祖先より代々という罠」 「世界最古という罠」「ネタがベタになるという罠」の5つである。(p.276)「原点回帰という罠」は「第1章 古代日本を取り戻す-明治維新と神武天皇リバイバル」に、「特別な国という罠」は「第2章 特別な国であるべし-憲法と道徳は天照大神より」に、「祖先より代々という罠」は「第3章 三韓征伐を再現せよ-神裔たちの日清・日露戦争」に、「世界最古という罠」は「第4章 天皇は万国の大君である-天地開闢から世界征服へ」に、「ネタがベタになるという罠」は「第5章 米英を撃ちてし止まむ-八紘一宇と大東亜戦争」に、それぞれ記されており、どれもこれもたいへん興味深い内容ばかり。個人的には、特に第3章で多くの新しい発見や気付きが得られ、勉強になりました。 このような物語を否定するのはたやすい。 神武創業の実態は西洋化だったし、 日本人が昔から特別に忠孝を大事にしていたわけでもない。 もとより日本より古い文明はいくらでもあるし、 日本の神々が世界をつくった云々は荒唐無稽というしかない。(p.276)著者は「第6章 教養としての戦前-新しい国民的物語のために」において、このように述べたうえで、次のように続けていきます。 そもそも他人に満点を求める人間自身が満点だった例などみたことがない。 現実的な落としどころは、 日本は6割5分ぐらいよくやったというところにあるのではないか。 日本は問題とされる行動をしたけれども、 全体的にみれば欧米列強の侵略に対抗して近代化・国民化を成し遂げた。 だから、過去の誤りを認めながら、今後よりよい国をつくっていこう。 こういう立場であれば、多少不利な資料が発掘されても、動ずることがない。 たしかに戦前の物語にはいくらでも欠点が指摘できる。 だがそれで植民地化の危機をまぬかれることができたのだから、 一定の評価は与えられてしかるべきだろう。 ただ、それを不可侵にしてしまうとネタがベタになる危険があるので、 35点を引いたわけである。(p.286)冷静かつニュートラルな指摘で、とても共感できる記述。物語の重要性についても、本書全体を通じて伝わってきました。
2024.03.17
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「シャングリラ」は、同級生・井上らにいじめられる17歳の江那友樹視点のお話。 小惑星が地球に衝突、壊滅的被害を受けると分かって世間が大混乱する中、 Locoのライブが行われる東京ドームに、井上らと共に向かった藤森雪絵を追う。 彼女に襲い掛かった危機は防いだものの、その後絶体絶命の状況に陥ってしまう。 「パーフェクトワールド」は、依頼に従い人を殺めた40歳の目力信士視点のお話。 昔逃げられた女・静香を探し出すと、彼女と共に広島から車で息子のいる新横浜駅を目指す。 途中、大阪の蕎麦屋でトラブルに見舞われるも、新横浜駅では静香の息子を危機から救い出し、 さらに、宗教団体幹部の暴挙阻止にも成功、静香から友樹が自分の実の息子だと聞かされる。「エルドラド」は、惚れた男に我が子を殺させないために逃げた40歳の江那静香視点のお話。雪絵が、小惑星衝突の日に大阪で行われるLocoのライブに行きたいと言ったことから、信士、静香、友樹も行動を共にすることになり、大阪の蕎麦屋で4人の生活が始まる。ライブまでの1ヶ月、これまでの日々をそれぞれに振り返り、確かめながら過ごしていく。「いまわのきわ」は、大阪で中学生の頃からバンド活動を始めた29歳の山田路子視点のお話。高校2年生時にスカウトされアイドル・桜庭美咲としてデビューするも19歳で契約解除。その後、プロデューサー・イズミの後押しでLocoとして歌姫の座に昇りつめるも……そして、ツアーファイナルが行われている大阪の上空に、大小の光が落下してきた。 ***『わたしの美しい庭』と同様、次々に視点が変化しく展開ですが、「エルドラド」まで、私は伊坂さんの作品を読んでいるような感覚でページを捲っていました。(巻末掲載の新井素子さんとの対談に『週末のフール』のことが出てきたのでビックリ!)最後の「いまわのきわ」は、凪良さんらしさで溢れていますね。
2024.03.10
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鑽仰礼を終え、玲琳たちは入れ替わり解消を図ろうとするが、 皇帝が雛女の道術使用を疑い、隠密部隊に雛宮内監視を命じていた。 そこで、城外での入れ替わり解消を敢行すべく、玲琳と莉莉、慧月と景彰、 そして、冬雪と景行、辰宇の三手に分かれ、待ち合わせ場所の酒房を目指す。 尭明と合流した玲琳と莉莉は、酒房でトラブルに巻き込まれ賭場「三界楽」へ、 慧月と景彰は、宝飾品を扱う悪質露店でトラブルに巻き込まれ、その元締めのもとへ、 冬雪と景行は、旅籠の1階酒房でトラブルを解決後、鳩を追って馬を駆る、 辰宇は、途中出会った雲嵐からの話で隠密部隊の動きに気付き、茶楼から鳩を追う。そして、「三界楽」に全員が集合すると、玲琳はその巨悪の全貌を確認。それは、賭場でいかさまを働いて、民に莫大な借金をこしらえさせ、借金のかたとして巻き上げた金品を、露店で違法に売りさばき、柄の悪い用心棒を雇って、声を上げさせぬよう民を弾圧し、攫った娘に茶楼で身売りを強要していた、というものだった。 ***宮中の深慮遠謀渦巻く、いつものドロドロとした展開も面白いのですが、今回の城外での冒険活劇も、スカッとするものばかりでとても楽しめました。結局、入れ替わりは1か月後の鎮魂祭で尭明が祈る際まで見合わせることになりましたが、謎の男・丹(隠密部隊の一員?)の動きが気になりますね。
2024.03.03
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