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メディアで大量に発信される医療や健康情報の真偽を見極め、 ヘルスリテラシーを高めるための具体的方法を得るための一冊。 著者は、京都大学大学院医学研究科の「健康増進・行動学分野」で 様々な医学情報の「エビデンス」を世界中の文献から収集し、 内容をチェックして評価する研究を専門とする田近亜蘭准教授。 *** ・必ず、情報の出どころ(研究機関などの情報源)を確認する。 出どころが明記されていない、あるいはよくわからない場合はその情報は信頼しない。 ・掲載されている情報のすべてが真実で、また、その後何年も有効であるとはいえない。 (p.27)これは「第1章 日本の新聞の医療情報は偏っている」の最後の部分。一見、当たり前のことが書かれているようにも思えますが、当り前のことが、きちんと書かれているところが本著の優れているところ。続く「第2章 五月病、HSP、カサンドラ症候群、自律神経失調症…それは病気なのか?」では、これらは病名ではないと指摘したうえで、各症状について説明していきます。そして「第3章 『うつ病の再発率が60%』は本当か…3つの観点で読み解く」の最後には、 ①その数値は「率」なのか、「割合」なのか。 もし「率」なら、その時間単位はどのように設定されているのか。 ②そのできごとの「基準」や「定義」が示されているか。 独自の基準を使って過大に、センセーショナルな表現になっていないか。 ③何人の規模の研究から結果を述べているのか。 小規模のデータに基づいたものではないか。 という注意すべき3観点を示しています。「率とは、一定期間内にどれくらい発生するか」「割合とは、ある時点で全体の中のどれくらいをしめているか」を表すもので、野球の「打率」は、本来は「打割合」と表現すべきものだと、著者は指摘しています。そして第4章からの表題は、次のように広告の表現規制について一言で言い表すもの。 「第4章 医療広告に『体験談』『回数無制限』『施術前後の写真』は禁止」 「第5章 健康食品やサプリメントの表示に法律規制あり」さらに「第6章 ギャンブラーの思い込み…確率、数字のトリックを見やぶる」と、「第7章 医療の『エビデンス』には6つの『レベル』がある」については、この2つの章を読むためだけにでも、本著を手にする価値があると思える部分。表面上の数字に騙されないため、その裏側に潜むトリックを知っておくことはとても大切です。「第8章 確かな医療情報は『診療ガイドライン』にあり」「第9章 『がん情報サービス』…わかりやすい公式情報はここにある」「第10章 ジャーナルに掲載の医学論文にアクセスする方法」「第11章 医療情報の『見極めかた』と『誤りを信じ込む心理』」では、信頼できる情報の在処と、そこへのアクセスの仕方が丁寧に記されています。特に第10章には、確認すべきポイントとして、 ①情報発信元はどこ? ②発信者は誰か? ③情報源は何か? ④いつの情報か? ⑤ほかの情報と比較したか? を示すと共に、心理学で立証されている、次の認知バイアスを示しています。 ・ハロー効果 ・アンカリング効果 ・単純接触効果 ・真実性錯覚効果 ・バンドワゴン効果 ・バーナム効果 ・カリギュラ効果 ・ウインザー効果 ・スノップ効果そして、第11章の締めくくりの部分には、このように記されています。 医学的、社会的に正確で、かつ自分にとって適切な情報、つまり本当のこととは、 ドラマや漫画のストーリーのような劇的な展開ではなく、 白黒がはっきりしているわけでもなく、 探している答えは、あいまいな部分を多分に残したまま、 「なんだ、けっきょくそういうことなのか」と思うところにあるでしょう。(p.197)最後にこんなことを言われてしまうと、身も蓋もないような気がしないでもないですが、実際のところは、そうなんだろうとも思います。本著は「医療情報」に接する際の姿勢について記された一冊でしたが、他分野の様々な情報に接する際にも、広く応用が利く内容だと感じました。
2025.08.31
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貫流篇に続くシリーズ第5巻。 桔梗屋買取から真澄屋が撤退し、いよいよ「五鈴屋高島店」が始動します。 奉公人が別家となった暁には、桔梗屋の名と暖簾を引き継げるようにするという 幸の言葉に、屋号と暖簾を失った者達も、心をひとつに商いに励んでいくことに。 ***幸の故郷・武庫郡津門村で母・房が急死し、妹の結は五鈴屋に引き取られることに。そして、智蔵との子を懐妊した幸は、帯地に力を入れていくことを思いつき、早速着手。しかし、月足らずで生まれた子は産声を上げることはなく、幸自身も生死の境を彷徨う。子は連福寺に葬られ、幸は智蔵の言葉によって次第に元気を取り戻していく。本店と高島店両方の蔵一杯に帯地が納まり、手代の屋敷周りにお竹と結が同行、売上げを伸ばす。しかし、真澄屋が「帯の真澄屋」という引き札を、船場を中心に大坂三郷に1万枚撒いて話題に。が、幸は孫六、治兵衛と話す中で「鯨帯」を知り、お竹や結の発想を取入れ「五鈴帯」を考案。それは、二枚の帯地で作る両面帯で、片面は鈴紋の帯地か鈴の刺繡が入った帯地になっている。一方、智蔵は筑後座に通い、人形遣い・亀三が演じるお軽に相応しい衣装の絹織を提供する。「忠臣蔵」は大人気となり、人形浄瑠璃だけでなく、歌舞伎でも大坂山風座で上演されることに。そして、お軽を演じる歌舞伎役者が、亀三のお軽の衣装と揃えたいと言い出したため、その衣装は全て五鈴屋が提供、お軽役の女形が台詞の中に「五鈴帯」の名を入れることに。そして歌舞伎「忠臣蔵」の初日、幸は更なる仕掛けを次々に繰り出す。「五鈴帯」は大評判となり、飛ぶように売れるが、またしても真澄屋が五鈴屋の真似を。しかし、「五鈴帯」の売り上げは衰えを知らず、江戸店開業に向けて動き始める。茂作の伝手で、近江屋の江戸店に左七と賢吉を送り出し、商いの様子や動きを探る。 ***紆余曲折ありながらも、五鈴屋は「浜羽二重」と「五鈴帯」を柱に着々と商いを拡大させ、江戸進出に当たり、「木綿」を用いた「太物」も「呉服」と共に扱う構想も芽生えていきます。一方、幸は娘・勁を失うという悲劇に見舞われながらも、夫・智蔵との仲をより深化させ、二人で「女名前禁止」の掟がない江戸へと思いを馳せる中、最期のページで突然の展開が……
2025.08.28
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先日、映画『九十歳。何がめでたい』を観ました。 とても楽しい作品でしたが、何と言っても草笛光子さんがスゴかった。 90歳であれだけの台詞を頭に入れ、主役を演じきられたことは本当に驚き。 本書冒頭にも、映画で演じられたエピソードがいくつか出てきます。 佐藤愛子さんの作品は、初めて読ませてもらいましたが、 本書はエッセイということもあり、「らしさ」全開の刺激に溢れた一冊です。 年を重ねるとはこういうことなんだと、文章からも行間からもひしひしと伝わってきます。 巻末の「単行本未収録集」も豪華で充実しており、読みごたえがあります。 *** 森さんは「女性が多いと会議の進行に時間がかかる」といっただけである。 それ以上に女性の存在を否定するようなことをいったのだろうか? 私は思った。 森さんの発言は経験を重ねての「実感」であろう。 森さんはそう思った。思ったからそういった。 いくら時代が変わったからといって、他人が「思った」ことが、 自分の考えとは違うからといって文句をいってもいいという常識はないだろう。(中略) 森さんは辞任した。そして1か月が経った。私はまだ釈然としない。 森さんのために釈然としないのではない。 この国の知性に対して釈然としないのである。(p.193)本書の中でも、最も繊細で刺激的な箇所ではないかと思います。そして、こういったことで、今の世の中は満ち溢れており、迂闊に発言すると、大炎上、四方八方から袋叩きにあってしまいます。「頭の中で考える」のと「実際に行動を起こす」のとでは違う、ということは重々分かってはいますが、やはり釈然としないのですよね。
2025.08.23
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「死」のメカニズムについて書かれた一冊。 著者は、監察医在職30年間に2万体の検死・解剖を行い、 死体検案書を発行してきた上野正彦さん。 それ故、実に淡々とクールに、「死」について記されています。 まず、「第1章 日常にひそむ死の危険」では、 本著のタイトル通り、「こんなことで死んでしまうのか!」という21の例を紹介。 例えば「胃痛なのに心筋梗塞で死ぬ」では、健康だった人がある日突然胃がむかついたため、 医師の診察を受け胃散の薬を処方されたのに、2~3日後に心筋梗塞で亡くなったというお話。これは、「放散痛」のためで、胃の不調は心臓の発作が胃に放散していたから。胃だけでなく、左肩だけが異常に凝っている場合は左側にある心臓の影響かも知れないし、背中の左側が痛いというのも、心臓の発作を警戒する必要があるといいます。痛い場所と悪い場所が一致しないというのは、結構多くの人が経験しているのでは?続く「第2章 生と死の境界線」では、呼吸停止や心臓停止、人間の体温の限界等を、「第3章 意外な死の真相」では、切腹や舌を噛み切って死ねるかや、死体の不思議等を、「第4章 死の医学」では、アルコールや薬物についてや、安楽死等を扱っています。。第2章の「心中は美しいのか?」では、監察医ならではのリアルな死体の様子が記されています。
2025.08.23
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「週刊文春」の2021年4月8日号から2023年4月27日号まで連載された 100のエッセイを一冊にまとめて、2023年6月10日に発行された一冊。 副題は「藤井聡太のいる日常」。 著者は、藤井聡太竜王・名人の師匠・杉本昌隆八段。 100回分のエッセイが掲載されているので、読みごたえは十分。 しかも、とても読みやすく、スイスイとページを捲り続けることが出来ます。 「走る棋士」が「ベスト・エッセイ2023」に選ばれたのも、大いに納得。 まぁ、それくらいの筆力が無ければ、週刊誌の連載なんて声がかかりませんよね。本著には、先崎学九段との対談「藤井聡太と羽生善治」が掲載されていますが、私が棋士の世界に最初に触れたのは、先崎九段がコラムを書いていた『3月のライオン』。その18巻が9月末に発行されると知り、今からワクワクしていますが、本書で、先崎九段が「週刊文春」で12年間も連載していたと知ってビックリ。話がそれてしまいましたが、100のエッセイからは、棋士の現実世界がどんなものか、実際に見たことがない私にも、しっかりと伝わってきて、とても親近感を覚えました。
2025.08.17
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前巻ラストシーンでの律子の母親の誤解は、即刻解けるが、 誕生プレゼントの2人の演奏を聴く、彼女の回想シーンは意味深長。 そして再びの「青野くんが律子の彼氏なら大歓迎だよ?」 さらに、夜道でハジメを送る律子は、自分でも思っていなかった行動に…… そんな中、期末テストに向けてのハジメの勉強を、ハルも手伝うと申し出る。 自身の気持ちも、相手の気持ちも、互いに掴み切れないハジメと律子。 そして、オケ部と合唱部の合同クリスマスコンサートに向けての練習が始まる。 その中に織り込まれる佐伯の回想シーンも、これがまた意味深長。市内の教会で開かれたコンサートは、聴く者だけでなく、演奏者にも大きな感動を与える。ただ、客席で隣り合わせたハジメと律子の母親は、今回は互いに名乗り合うこともないまま。そして年が明けての初詣、元旦生まれのハジメに、律子、ハル、佐伯、山田がプレゼント。次は3月の定期演奏会と、今年新たに創設された4月の世界ジュニアオーケストラコンクール。日本の有志の高校生達で合同オーケストラが編成され、最終的には日本代表として他国の学生オーケストラと競い合う。参加を希望する者は合同オーケストラを優先するため、定演参加は1、2曲となってしまうが、ハジメ、佐伯、ハル、山田は合同オケに参加、律子は定演に専念することに。 ***ハジメも律子の行動から、彼女のことを強く意識し始めました。さて、ハルの思いは、これからどうなっていくのでしょうか。
2025.08.16
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奔流篇に続くシリーズ第4巻。 TVドラマで言うとシーズン2に突入し、五鈴屋三代のご寮さんとなった幸が、 最も相性が良いと思われる三男・智蔵と共に、新たな商売を切り開いていく今巻。 終盤は、前巻以上にスリリングで、ワクワクする展開です。 ***庄屋・仁左衛門の言葉に誇りを著しく傷つけられた惣次は店を飛び出し、帰ってこない。惣次は呉服仲間の月行事に隠居願いを提出し、智蔵に五鈴屋を託すと告げていた。迷った末に智蔵は六代目徳兵衛を継ぐことを決意、惣次からは幸への去り状が月行事に託される。そして、幸を伴い筑後座で「曽根崎心中」を観た後、智蔵は自分の嫁になって欲しいと告げる。 何の才もない、木偶の坊の私だす。 いっそ人形になりきって、幸の思うように動かしてもらいまひょ。 遣い手の幸に思う存分、商いの知恵を絞ってもらえるように(p.89)呉服仲間の寄合は、桔梗屋の助けもあって上手く事が運び、店の者にもその旨が伝えられる。智蔵は幸、番頭・鉄助と共に波村を訪ね、仁左衛門と亮介に謝罪、手形の一件は無事解決し、幸は、亮介の母・照から機織りの際に出る「機ずね」と呼ばれる残糸を分けてもらう。そして、町内の披露目での嘲笑や侮蔑の空気も、治兵衛の言葉で一掃されるが、その夜、五鈴屋を百年続く店に、「幸、頼みましたで」の言葉を残し、富久は他界する。「浜羽二重」として五鈴屋が売り出したのは、真澄屋の手代が横流しした物との疑いがかけられ、月行事と共に、智蔵、幸、鉄助は大坂呉服仲間の会所に出向くが、産地を明かせと迫られる。幸は産地を明かすことなく、「浜羽二重」が盗品とは別物であることを証明すべく、懐から「機ずね」を取り出すと、伏見屋為右衛門が幸の言葉に嘘がないことを皆に説明する。智蔵と幸は、波村の庄屋・仁左衛門宅で、治兵衛の妻・お染の叔父・茂作と行商の契約を結び、かつて五鈴屋で奉公していた留七と伝七を、独り立ちした売り手として行商を任す。さらに、幸は筑後座で出会った人形遣いの亀三に、人形の衣装を無償で提供すると、それと同じ桑の実色の縮緬に黄檗の帯で十日間大入りの筑後座に通い続け、評判を呼ぶ。年末、呉服仲間から急な呼び出しがかかり、真澄屋による桔梗屋買い上げの件が話し合われる。真澄屋は、桔梗屋の暖簾は残すものの、店前現銀売りを始め、従来の奉公人は全て解雇すると、大坂組と天満組の統合話や、桔梗屋が既に手金を受取り使ってしまったことを絡め強腰。幸は、新たな買い上げ元が名乗り出たらどうなるかを一同に確認し、買い上げに名乗りを上げる。 ***今巻は、色々と新たな売り方を模索する幸の姿が描かれていましたが、菊栄に会うため、久宝寺橋の近く、鉄漿粉専門の紅屋新店舗も訪れました。そこで、二人で「女名前禁止」について語り合った後、菊栄が取引先への紹介文を書いて幸に渡すシーンは、とても心温まるものでした。
2025.08.15
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人気シリーズの第4巻。 「プロローグ」から「ウルフまんじゅう」までは、ひとつながりのお話。 「ゴブリンチョコエッグ」や「虹色水あめ」は良いお話で好きなんですが…… 児童小説でボリューム制限もあるでしょうから、これ以上を求めるは酷なのかも。 ***プロローグよどみが紫色の炎が揺らめく闇の中で菓子の素を作っていると、赤い水が戻ってくる。そこには、銭天堂で男の子が駄菓子を見つめ、そこに紅子が現れる光景が浮かび上がる。よどみは紅子から、その客を奪うことにした。ヤマ缶詰とずるずるあげもち水野雄太(11)は、銭天堂で紅子からテストに出てくる問題が分かる「ヤマ缶詰」を購入。しかしその後、「たたりめ堂」に導かれ、ずるをすればするほど、なまければなまけるほど、テストの点をあげられる「ずるずるあげもち」を、よどみに食べさせてもらう。その力で、雄太はテストで満点を取り続けるが、その内容を皆の前で全く説明できなかった。雄太が「ヤマ缶詰にしときゃよかった」と後悔すると、よどみが現れその力を奪い去る。ウルフまんじゅう富永洋介(11)は、ウルフまんじゅうを食べると何も怖くなくなり、これまでいじめられてきた佐々木、青山、二階堂を叩きのめし、やられたことをやり返す。さらに、3人を使って最近大人しい雄太に仕返しするが、担任の沢木先生に見つかってしまう。自分の異変に気付いた洋介は、その場から逃げ出し、紅子から説明書の内容を教えてもらう。洋介は自分の力で強くならないといけないと悟り、ウルフまんじゅうの力を放棄したのだった。眠り貯金箱と眠れませんべいウェブデザイナーの健司は、3歳年下の笹井紀子(25)から、余分な睡眠時間を貯金できる「眠り貯金箱」の話を聞くが、銭天堂は見つからず、たたりめ堂で眠れませんべいを食べる。健司は、徹夜も平気で仕事も絶好調になるが、会社が倒産して時間を持て余すように。眠れないことが苦痛で夜中に走り出して交通事故にあった健司に、紀子は注意事項を破って「眠り貯金箱」で貯めた睡眠チョコを食べさせ、自分も眠れなくして二人で夜更かしを楽しむ。ゴブリンチョコエッグ吉田真美(7)は、銭天堂でゴブリンチョコエッグを買って家来のゴブリンを手に入れる。ところが、このゴブリンは素直ではなく、前払いの報酬をけちると良い結果に繋がらない。そんな時、隣に住むおばあちゃんにタケノコの煮物をお裾分けに持って行った真美は、それをお仏壇に供えるよう頼まれ、素早くゴブリンのフィギアを仏壇の奥に隠した。それから、おばあちゃんには思いがけない幸運が次々に舞い込むようになった。虫歯あられ安室誠一(13)は、銭天堂で買った「歯磨きナッツ」で歯磨きをしなくても歯がピカピカ。新たなナッツを求めて銭天堂を探すが見つからず、よどみから「虫歯あられ」をもらう。それは誰かに食べさせると、自分の虫歯を移すことが出来るあられで、誠一の虫歯は消える。そんなあられを気になる樹里に手渡すと、暗闇に放り出され契約違反とよどみに怒られる。我に返った誠一の歯は、1本残らずなくなっていた。虹色水あめデッサン教室に通う等々力まどか(17)は、銭天堂で心が奇麗になる「虹色水あめ」を購入。一方、最高の友人で最高のライバルと思っていた百合子はよどみの「デッサン汁粉」を食べ、周囲の人の絵の才能を吸い取って急速にデッサンが上達、まどかにも悪意を向けるように。ところが、まどかの側で「虹色水あめ」の美しさに心を奪われると、よどみが現れ激怒。「虹色水あめ」を奪おうとするよどみを紅子が押しとどめ、百合子はまどかに救われる。エピローグ紅子がよどみに菓子勝負の終結を持ち掛けるが、よどみは受け入れず立ち去る。
2025.08.14
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コンクール当日、リハを終え、3年生たちが客席から見守る中をステージへ。 バッカナールの演奏と共に、羽鳥、立花、そして佐久間の この日のステージに至るまでの葛藤の日々が描かれていく。 特に、佐久間と筒井は、中学校で立花を支えてやれなかったことを激しく後悔。 その思いを、今回のコンクールに向けて行動で示し続け、この日の演奏に繋げた。 そこから発せられる「怒り」のパワーは凄まじく、聴くもの全てを圧倒。 そして、「今大会最優秀賞は…千葉県立海幕高等学校!」のアナウンス。 閉幕後、滝本は明日から練習に参加しないことを謝罪、全部員が快く送り出す。ハルはハジメと一緒に楽器屋へ、その後食事へ行くが、そこに現れたのは篠崎加奈。中学生の頃、いじめていたハルに、篠崎は一緒にいた友人と共に昼食を奢れと強要。制止しようとしたハジメにも憎まれ口を叩き、さらに律子の不登校にまで言及。度重なる無礼に対し謝罪を要求するハジメの迫力に屈し、篠崎は謝罪して立ち去る。何もできなかった中学生の頃の自分、それが本当の自分だと自らを責めるハルに、ハジメは、高校生になったハルの良いところを次々に挙げ、今のハルが本当のハルだと励ます。一方、ハジメは律子が母親の誕生日にプレゼントする演奏を指導、代わりに勉強を教えてもらう。誕生日当日、律子の家を訪ねると、律子の母親からは次の言葉が。 こんな良い子が律子の彼氏なら大歓迎よ! ***罪作りなハジメですが、本人には全くその自覚がないようで……どう転んでも、誰かが涙することになりそうです。
2025.08.13
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早瀬篇に続くシリーズ第3巻。 形ばかりでなく、真の意味で五鈴屋のご寮さんとなった幸が、 ドラマより格段に印象の良い惣次と共に、その商才を発揮し始める今巻。 しかし、終盤にはそんな幸せ気分が一気に吹き飛んでしまう急展開が…… *** 「あんたを嫁にしたら、私はもっと強うなれるやろ。 どうや、五鈴屋の、五代目徳兵衛の嫁になってくれへんか」(p.23)呉服仲間の了承を得た後、四代目の時より盛大に祝言、祝宴が行われ、夫婦の契りも交わされる。惣次は幸に、5年のうちに江戸へ出店してみせると宣言し、それに向けて改革を断行。年一度の大節季払いを五節季払いに改めるだけでなく、番頭と手代に割り当てを命じた。そして、幸の言葉を受けて智蔵に助言を仰ぎ、浮世草子に五鈴屋の宣伝を掲載する。改革は順調に進み、幸は富久の言葉から屋号を書き入れた番傘を作ることを思いつく。それを聞いた惣次は100張を発注、初雪が降る日に店の者がその傘を差して歩くと大評判に。さらに、幸の言葉から、生糸の産地・江州を絹織の産地に育てることを思いつく。一方、大阪屈指の米問屋・米忠からの婚礼品の注文は、その経営が危ういと知ると手を引く。以後、惣次は長期に渡って何度も江州に足を運び、波村を羽二重の産地として蘇らせ、それを五鈴屋で一手に売って大店にするという壮大なプロジェクトの下地を築いていく。ところが、本両替・山崎屋が分散、惣次が山崎屋の手形を全て波村への貸付に回していたため、幸はすぐ波村へ出発して釈明するよう進言するが、惣次に左頬を張られ蔵の壁に叩きつけられる。後日、波村の中庄亮介と庄屋の仁左衛門らが五鈴屋を訪れ惣次を糾弾、約定破棄を言い渡す。幸は、詫びを伝えると共に、自らの胸の内に秘めていた波村を縮緬の産地に育てることを提案、そして、そうなるまで五鈴屋で支援させてもらいたいと願い出る。それを受け、仁左衛門は幸が店主となるなら取引を継続しても良いと告げる。 ***これまでにない緊迫感溢れる、スリリングなシーンで今巻は終了。ただ、私が今巻で最も印象深かったのは、TVドラマでは描かれてなかった次のエピソード。幸は偶然再会した菊栄から、便利な鉄漿粉を紅屋が一手に扱うようになり、その鉄漿粉を広めるため、これから芝居小屋の座長に会いに行くのだと聞かされます。そして後日、富久と共に歌舞伎を観に出かけた幸は、舞台上で役者が話す台詞に驚愕。そこでは、腰元が嬉しげに「紅屋の鉄漿粉」の紙包みを客席に向けて見せびらかしていました。 「幸は五鈴屋を、私は紅屋を、陰で盛り立てて必ず栄えさせまひょな。 呉服に小間物は付き物だす。 いつか、一緒に何ぞ出来る日が来るよう、必ずその日ぃが来るようにしまひょ」(p.126)これも、きっと前もっての伏線を張っているに違いありません。幸と菊栄が力を合わせるお話が、今からとても楽しみです。
2025.08.12
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『水鏡推理Ⅵ クロノスタシス』以来、何と8年ぶりの続巻。 発行が講談社から角川に移ったので、 角川から改訂完全版が発行されつつありますが、 私はそれらは既読として、今巻から先を継続して読んでいくことに。 今巻の正式タイトルは『水鏡推理Ⅶ ソヴリン・メディスン』 「sovereign」は「統治者、支配者」、「medicine」は「治療薬」といった意味ですが、 さて、その意味するところは何なのか? その辺りも気にしながら、読み進めていきましょう。 ***報道番組コメンテーターやNHKアナウンサー、大相撲力士、フィギュアスケート選手、人気アイドル、プロ野球選手等々、コロナに罹患した著名人たちが、成清医科大付属病院で、開発段階のコロナ特効薬・リキュアA7を使用してたちまち回復。しかし、これは未承認薬であることから、病院は使用に対し慎重かつ真摯な姿勢を崩さなかった。科学技術・学術政策局研究環境課、研究公正推進室の水鏡瑞希は、先輩の瀬岐智紀と共に成清医科大付属病院へ薬剤サンプルと試験データ、化学構造情報などを受取りに行くことに。しかし、その前に病院の薬剤部薬剤研究課の田邊明彦から、気になる情報がもたらされる。それは、治験担当医・碓井弘幸が個人的にサンプル等を持ち出そうとしていたという内容。病院に出向くと、厚労省・佐久間英里子と医療系投資ファンド運用責任者・奥薗久司が現れ、結局4人が研究室前室で、研究員らにより運び込まれたデータ書類や試験管を確認することに。ところが、誰も気付かぬうちに箱の中の書類一式と試験管の中身が消え去ってしまう。そして、箱の中に唯一残されたメモ用紙には、次のように記されていた。 大変申しわけありません。薬剤とデータ一式、拝借いたします。 碓井弘幸 ***この後、瑞希と瀬岐は碓井の後を追いますが、意外な人物に辿り着くことに。さらに、リキュアA7とは一体何だったのか、薬剤とデータ一式は何故消えたのか、そして、この一連の出来事は、何者によって仕組まれたことなのかを解き明かしていきます。やはり『オリエント急行の殺人』ぐらいは、読んでおかないとダメですよね…
2025.08.11
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人気シリーズの第3巻。 今巻から銭天堂・紅子に対抗心を燃やす「たたりめ堂」のよどみが登場。 プロローグでは、早速若い男を呼び止め、わら人形焼きを食べさせます。 その後日談が「獏ばくもなか」で描かれ、さらに「エピローグ」へと続きます。 ***プロローグ「銭天堂」の壁をすりぬけて出てきた虫を目にもとまらぬ早業でつかまえた7歳位の少女。赤い彼岸花が一面に描かれた黒い着物、濃い紫色のおかっぱ髪、びっくりするほど白い肌。老婆のようにしわがれた声で若い男を呼び止め、その手を取るとある光景が浮かんでくる。それは、先輩社員が男の失敗を注意したり、代わりに上司に謝罪したりしているところ。「あんたあいつが憎いんだね」と尋ねると、男は「……ああ、憎い」と目を見開いた。獏ばくもなか4歳の娘・真理恵が悪夢にうなされ入院中の横手信孝(34)は、バスで病院に向かう途上、車中で紅子と出会い銭天堂に立ち寄ると、獏ばくもなかと逆襲ジンジャエールがあった。信孝は獏ばくもなかを購入し、それを食べた真理恵は、良い夢を見ながらぐっすりと眠る。その頃、信孝の会社では後輩社員の綿貫が七転八倒、金色の化け物に襲われると叫んでいた。娘を呪っていたものの正体に信孝は気付くが、綿貫はやがて会社を辞めてしまった。留守電でんシール井口智美(10)は、携帯電話を入手して最初は有頂天だったが、やがて対応に疲れるように。そこで、銭天堂で留守電でんシールを購入し、それを携帯電話に貼って対応を全て任せる。ある日、友人のさやかが帰宅していないと母親に聞かされ、留守電でんシールに確認すると、さやかは東京のカフェで雑誌の編集者と打ち合わせをすると言っていたと分かる。智美は、さやかの居場所を探してもらうと、シールが消滅するのを承知の上で探してもらう。絵馬せんべい 明日から3年生になる西谷勝(9)は、出張営業中の銭天堂で絵馬せんべいを購入すると、しょうゆペンで「あかりと同じクラスに、由香とは違うクラスになれますように」と書く。絵馬を神社で奉納したものの、翌日、由香は1組、あかりは2組、勝は3組になっていた。勝は紅子に文句を言うため銭天堂があった神社に行くが、そこで由香に出くわす。紅子は、客同士の願い事が重なって反発し、効果がなかったと詫び、二人に代金を返却する。しわとり梅干し孫の真子に「お顔しわしわだね」と言われた岡村雪江(68)は、しわとり梅干しを購入。ただし、一度にたくさん食べるとしわ逆流が起きるので、1日に数粒が限度との注意書き。さらに、しわ逆流が起きたときは、一つだけ入っている赤い梅干を誰かに食べさせると、そのしわが食べた人に移ると、びんのふたの裏側に記されていた。しわくちゃになった雪絵は、真子をさらおうとした若い男の口に赤い梅干を押し込んだ。兄弟だんご中村明(11)は、4人兄弟の一番上で、お兄ちゃんだからといつも我慢を強いられる。そこで、兄弟だんごを買って食べると末っ子になることに成功、以後かわいがられるように。ところが日が経つにつれ居心地が悪くなり、元に戻ろうと銭天堂を探すが見つからない。そんな時、長兄になった光が銭天堂でかりんとうを買ってきたので、明はそれを食べつくす。しかし、それは日替わりで役割が入れ替わる「かりんとうばん」だった。ミイラムネダイエットにはまっている小暮悠里(15)は、銭天堂でミイラムネを購入して飲む。ところが、途中で飲むことを止められなくなり、限度を超えて飲んだためミイラ化が始まる。そこに妹の桜子がやってきて、瓶の底に書かれた番号に電話をかけると紅子に繋がる。桜子は、その指示に従って「もとどおりの薬」をつくり、姉の体にぶっかける。棺桶に封印され2000年の眠りにつく寸前に助けてもらった悠里は、生活態度を改めた。エピローグ紅子が「たたりめ堂」のよどみと言葉を交わす。よどみが不幸虫を材料に作った「わら人形焼き」と、それを食べた男の顛末が判明、二人の菓子勝負が始まる。
2025.08.10
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副題は「メディアが報道しない多文化共生、移民推進の真実」。 著者は、フリーランスのジャーナリスト石井孝明さんで、 雁屋哲さんや香山リカさん、辛淑玉さんに対するコメントが騒動に発展、 本著が扱うクルド人問題でも、先日埼玉県鶴ヶ島市議会議員に提訴されました。 本著を含め、私たちはメディアを通じて様々な情報に触れることが出来ますが、 それらの真偽を、全て自分自身の手で確かめることは不可能です。 ただ、それらの情報を入手前から拒絶してしまっては、一歩も真実には近づけません。 ですから、間違いなく本著も読む価値のある一冊だと思います。本著には、クルド人が引き起こす問題で、埼玉県民が苦しむ様子が記されています。しかし、本著を読んだだけで終わるのではなく、さらに様々な別角度の情報を入手し続けることで、初めて自分なりの判断を形成し、この問題について発言する資格が得られるのだと思います。
2025.08.09
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人気シリーズの第2巻。 前巻のお話の中でも、エンディングが特に印象的だった「カリスマボンボン」。 その主人公・北島典行が、今巻「しっぺがえしメンコ」で思わぬ形で再登場。 前回にもまして、さらに悲惨な運命を辿ることに…… ***怪盗ロールパンこそどろの江城秀元(46)は、銭天堂で買った怪盗ロールパンを食べる。そして、何を盗んでも自分の仕業だと誰も気付かなくなると、警察署に挑戦状を送りつけ、厳重な警備の中、宝石店で狙った獲物を盗むように。ところが、博物館でロシア王族のものだったという王冠を盗んだとき、捕まってしまう。逮捕したのは伝説の刑事・三河で、銭天堂でヒーロー刑事プリンを買って食べていた。ドクターラムネキット楠本千里(5)は、銭天堂で買ったドクターラムネキットの中から白衣を取り出して着用、黒ぶちメガネの指示に従って母親に黄色のラムネを飲ませると、たちどころに頭痛が治る。以後、千里は町内で次々に病人やけが人を治していくが、面白くないのは町医者・犬丸忠志。千里が花園商店街野球チームに用意した元気ドリンクをすり替え、相手チームに渡すが、それは元気がありあまってる人が飲むと、逆に力が萎え切ってしまうものだった。お稲荷せんべい 野田早苗(12)は、銭天堂で買ったお稲荷せんべいを食べる。すると、おみくじキーホルダーを使って、お告げを聞くことが出来るように。早苗は、バスケットゴールが落下することを言い当てると、以後占いで大人気に。その力を他人に与えたくない早苗は、お告げに逆らって銭天堂を探しまわり、銭転堂を見つけ出すが、そこで買った巫女缶の中に飲み込まれてしまう。ミュージックスナックピアノのレッスンが嫌な立花響(10)は、紅子からミュージックスナックを買って食べる。すると、ピアノの前に座っただけで指が勝手に動き出し、見事な「トルコ行進曲」を演奏。またたくまに有名人になった響は、コンクールでシューマンの「幻想曲」を弾くことに。ところが、食べたスナックはモーツァルト風味のものだったので、指が全く動かない。響は、紅子が持つシューマン風味を断り、消し消しガムで起きてしまったことを消し去った。しっぺがえしメンコ探偵社の社員・長谷川大輝(42)は、北島という男の依頼で銭天堂の紅子を探していた。長谷川は紅子が中身を補充していたカプセルトイでしっぺがえしメンコを引き当てると、白いメンコに腹立たしい客・北島の名前を書き込んで、悪魔のメンコでひっくり返す。すると、テレビから北島が自動車事故を起こしたというニュースが流れてくる。それは、以前紅子からカリスマボンボンを買った元美容師・北島典行だった。おもてなしティー一人暮らしの有馬みどり(43)は、とても寂しくてたまらない時がある。ところが、銭天堂で買ったおもてなしティーをお客さん用のカップに注ぐと、次々にその時にふさわしい人が現れ、みどりの心を癒してくれる。そして、最後の一杯を注いだ時、現れたのは小学生の頃自分をいじめていた同級生・ゴッチ。その大好きなケーキ屋さんの店長の口から、思いもかけなかった真相が語られる。
2025.08.09
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コンクールが迫る中、体育祭が行われ、騎馬戦の大将になったハジメは、 精鋭メンバー3人による騎馬が敵から逃げ回り勝利を収める。 一方、部活対抗リレーでは、立花、律子、羽鳥、東金とバトンを繋ぎ、 トップでアンカーの筒井がスタートするも、競り負けて僅差の2位に終わる。 そして、コンクールまで1カ月を切り、ブロック練習が始まる。 管・弦・打楽器全てのパートが少人数で混ざり合い、A、B、Cの3グループに分かれて練習。 ハジメと相合傘で帰る姿を町井と平良に見られたことで、秘めた思いに気付かれたハルは、 そのことについての捉え方を改め、2人だけで一緒に楽器屋に行きたいとハジメに告げる。潮凪北中学校管弦楽部は金賞連続獲得の強豪校で、原田、佐久間を引き継いで立花が部長に。しかし、顧問が産休に入って立花の気合は空回り、部員を委縮させ銅賞に終わっていた。律子が立花からそのことを聞いた後、二人で練習していると佐久間がリズムをとってくれる。律子には相変わらず厳しい言葉を投げかける立花から、夜にはツンデレ・メールが届いた。発熱で練習を欠席したハジメは、佐伯からの電話で反省会で佐久間が発言しなかったと知る。後日、ハジメからまたしても激しい非難の声をぶつけられた佐久間は、 自分の意見が言える人 言えない人がいる。 実際僕にはこれだけ言えるくせに… みんなの前になると途端に黙り込むタイプでしょ?そして次回のミーティング、誰も意見を発しない中、ハジメは自分の考えを述べる。帰途、電車で隣り合わせた佐久間から、 時間がないんだからさ、 君はこれからAブロックのコンマスとして ガンガン皆を引っ張るつもりでやるんだよ? でもまあ… 今日は割と良かったけどね。 ***嫌味たっぷりの佐久間の本性が垣間見えた第8巻でした。でも、これのスタイルで、中学校の時は部長をやり切れたのかな?
2025.08.09
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源流篇に続くシリーズ第2巻。 すでにTVドラマは見ているので、お話の展開は分かっているのですが、 それでも、ドラマでは描かれていない部分もあって、読んでいて楽しい! ドラマ同様、もやもやした気分を引きずらない展開がとても良いですね。 ***幸が富久の言葉に従って一緒に北野村に出かけると、そこには津門村の彦太夫と母・房の姿が。治兵衛によって全てが整えられたその場で、幸は4代目徳兵衛の後添えになると知らされる。翌日、徳兵衛、惣次、治兵衛、富久がその件で話し合うが、徳兵衛が富久に暴力を振るい、さらにそれを押し留めた治兵衛を振り解くと、治兵衛は頭を押さえ畳に倒れ込んでしまう。医師に言葉や半身の自由を奪われる卒中風と診断され、五鈴屋を去ることになった治兵衛は、富久と共に後添えを幸とすることを徳兵衛に納得させると、幸にも自らの思いを伝える。覚悟を決めた幸は、富久と共に呉服仲間の寄合に出向くも、答えられない試問ばかりが続くが、幸が「商売往来」を一言一句間違えずに暗唱したことで、皆から後添えとして了承される。祝言後、徳兵衛は幸に、月の障りもない身体のうちは自分の目の届かぬ所で寝るよう言い放ち、町内への祝儀銀も出さないので、幸が富久と共に部屋見舞いに回っても手酷い扱いを受ける。しかし、治兵衛を訪ね、新たに番頭となった鉄助から色々教えてもらっていると伝えると、治兵衛は、次のように語る。 知恵は、何もないところからは生まれしまへん。 知識、いう蓄えがあってこそ、絞りだせるんが知恵だすのや。 商いの知恵だけやない。 生き抜くためのどんな知恵も、そないして生まれる、と私は思うてます。 せやさかい、盛大に知識を身につけなはれ(p.133)後日、惣次が上得意客のため苦労して入手した明石縮の上物を、徳兵衛が他者に譲渡してしまう。幸は惣次の指示に従って、南船場の店前現銀売の呉服店で明石縮の反物を銀60匁で購入すると、惣次に店前現銀売の店と掛け売りの店との商いの方法の違いについて尋ねる。さらにそのことを治兵衛に尋ねると、惣次の屋敷売りに一度同行させてもらうよう助言される。そして、遂に惣次の屋敷売りに同行する機会を得た幸は、惣次と治兵衛の -現銀売りと掛け売りでは、客の層が違うからや -物の売れ方、考え方が、江戸と大坂ではそれだけ違う、言うことだすという言葉を思い出すと共に、惣次の商人としての心構えや根底にある思いやりに気付かされる。惣次は、蔵の反物で売れ残ったものを、誓文払い限定で店先現銀売することを提案して実行。これが大成功を収めるが、徳兵衛は保管した銀貨を持ち出そうとする現場を押さえられてしまう。その際、散らばった銀貨を拾い集める手代たちに「猫糞するんやないで」と言い放ったことから、手代の留七と伝七は店主に愛想をつかし、五鈴屋を去って行った。年が明けて、治兵衛の息子・賢輔が丁稚奉公に上がり、さらに2年余の年月を経て、大坂一の呉服商・伏見屋為右衛門の末娘の婿養子に惣次を迎えたいという話が持ち上がる。ところが、酩酊したまま新町廓の呼屋を出た徳兵衛が堤から転落、そのまま帰らぬ人に。惣次は、幸を五鈴屋のご寮さんとして正式に迎えることが、5代目襲名の条件と富久に告げる。 ***町内の世話役たちが、徳兵衛が祝儀銀を納めないため下女扱いされ続ける幸のことを、「人妻らしいに帯は前で結ぶくせしてから、歯は鉄漿もなしに白いままだすやろ? ぐいち(ちぐはぐ)で、何や鵺(ぬえ)のようだすがな」と噂し合っていたことから、「私、鵺ですから」と言った幸に、惣次が「あんたが鵺なら私かて鵺や」と返します。このやりとりでもわかるように、幸と惣次の関係性は、ドラマで描かれていた以上に奥深いものがありました。相手に対する評価は双方ともにかなり高いものだと推測され、これなら、二人が婚姻に至るのも大いに納得です。次巻では、二人が力を合わせ、五鈴屋再建に向けて動き始めます。
2025.08.03
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