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副題は『プロ野球名選手「最後の1年」』。 かつてプロ野球選手として大活躍した24人の名選手の現役時代と、 そのラストイヤーに焦点を当てた一冊。 王貞治から始まって、落合博満、長嶋一茂、古田敦也、水野雄二、原辰徳、 石毛宏典、中畑清、掛布雅之、江川卓、田淵幸一、清原和博、桑田真澄、 村田兆治、駒田徳広、定岡正二、西本聖、山本浩二、渡辺久信、ランディ・バース、 ウォーレン・クロマティ、秋山幸二、門田博光、長嶋茂雄という豪華な顔ぶれ。まだ現役を退くにはもったいないような成績を残しながら引退した選手もいれば、誰の目にも、もう限界だと思われるまで頑張り抜いた選手もいました。また、本当に理不尽な引退の仕方を迫られた選手もいれば、こうしてその記録を振り返ることで、改めてその凄さに気付かされる選手もいました。 ***さて、私が本著の中で最もハッとさせられたのは、次の文章。 過去とは美化された嘘である。(p.3)なるほど……と頷くしかない、見事なフレーズですね。そして、最も心に引っかかったのは、門田選手について記された箇所に出てきた次の文章。 JR東海のCM”ホームタウン・エクスプレス”では、 山下達郎の『クリスマス・イブ』が流れる中、 当時15歳の深津絵里が遠距離恋愛中の彼氏を待つ女の子を瑞々しく演じきり、 これ以降クリスマスはカップルで過ごすイメージが定着する。山下達郎さんの『クリスマス・イブ』は、つい先日、「週間シングルTOP100入り連続年数」記録を35年連続に更新したばかり。そして、深津絵里さんは、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の主役として先週から登場、18歳の少女を違和感なく演じているところです。さらに、門田選手が社会人野球時代に在籍していたクラレ岡山は、『カムカムエヴリバディ』で村上虹郎さん演じる雉真勇が、岡山で立ち上げた社会人野球チームのモデルになったとも言われています。この現在進行形の共通項が、今年5月に発行された書籍に一気に登場し、驚愕です。
2021.12.30
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『「超二流」という言葉は、 私の尊敬する三原脩監督が作り出したものだ。』(p.6) 本著「まえがき」の冒頭の一節です。 「超二流」、何と魅力的な言葉でしょうか。 『だが、確かに一流にはなれないけれど、 「超二流」ならば努力次第で誰しもなることができるのだ。』(p.7) これも、本著「まえがき」の中の一節。 もちろん、プロ球団に入れる才能や素質があることが大前提。 ただ、よく「長所を伸ばして欠点を補う」などと言うけれど、これは間違いだ。 確かに長所を伸ばして引き出してあげれば、全て上手くいくことはある。 ただ、それはあくまでも結果論だ。 いくらいいところがあっても、欠点を直さないと往々にして長所を邪魔してしまう。 だから、まず欠点を直す。 最低限、直す。 それを第一に考えるべきだと思う。(p.85)人によっていろいろな考え方があると思いますが、私は、野村さんの言わんとしているところは良く分かります。 日本人は何かと「自主性が足りない」と言われるが、 この「自主性」を勘違いして「自分勝手」に行動する者も多いのが事実だ。 自主的に考えて、素直な心で、壁に挑む。 そんな姿勢でいることが、時に最高の結果をもたらすことがある。(p.90)これも良く分かります。「自主性がある」と「聞く耳を持たない」とは、全くの別物です。 要は「結果」は自分がコントロールすることができない、 後からついてくるもの、と割り切る覚悟が必要なのだ。 「未来」の事象だから、それについてあれこれ考えてもしょうがない。 そこでおのずと大事になってくるのが、 その結果に至るまでの「プロセス」ということになる。 要は「今できることを正しくやる」ということだ。(p.137)先日読んだ『寂聴 九十七歳の遺言』で述べられていることと、相通じるものがあると感じました。
2020.03.22
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序章こそ、イニエスタ自身がイニエスタ自身について語った内容ですが、 それ以降は、イニエスタに関わった人たちがイニエスタについて語った内容。 これを自伝と呼んで良いのかどうかはともかく、 イニエスタの人となりが浮かび上がってくる一冊であることは間違いないです。 アンドレスは伝説的な選手の1人だ。 なぜなら、彼はスペースと時間の関係を完全にマスターしているからだ。 どの瞬間でも自分の位置を把握している。 中盤で無数の相手に囲まれているときでも、必ず最良のプレーを選択できる。 常にタイミングと位置を把握しているんだ。 さらに、相手を突き放す独特の能力も持っている。 引き離して止まり、また引き離しては止まる。 彼のような選手はめったにいない。(p.159)これは、バルサの元監督、ペップ・グアルディオラの言葉。2009年と2011年にバルサがチャンピオンズリーグ優勝を果たした時の監督で、その2009年の準決勝で放たれたのが、イニエスタの伝説の右足シュート。そんなイニエスタのプレーを日本で見ることが出来るとは、何と幸せなことでしょう!!
2020.03.14
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今年のプロ野球ペナントレースは、 セ・リーグは広島、パ・リーグは西武が制し、 日本シリーズは、パ・リーグ2位のソフトバンクが制した。 いずれも、根本さんがその土台を築いたチームばかりである。 もちろん、根本さんの遺産だけで、今年の結果を掴み取ったわけではない。 広島は、赤ヘル旋風後に長期低迷期を経ての、現在の黄金期であるし、 西武も、今年は久々の優勝である。 常勝チームとして存続し続けているのは、ソフトバンクだけだろう。そのソフトバンク、前身のダイエーの監督を、根本さん以後務めたのは、王貞治さん、秋山幸二さん、工藤公康さんの3人だけである。秋山さんも工藤さんも共に、西武からダイエーへと移籍してきた経歴を持つ。当然、そこには根本さんの意向が大きく働いていたことは疑いようがない。本著には、その工藤さんのものを始め、22の証言が掲載されている。それらの証言から、根本さんの人となりが、鮮やかに浮かび上がって来る。証言するのは、元プロ野球選手や監督、コーチがほとんどだが、そうではない人たちも混ざっている。中でも興味深いのは、瀬戸山隆三さん。1988年より福岡ダイエーホークスに出向後、球団総務課長、球団代表、球団本部長を歴任。2004年からは、千葉ロッテの球団代表、球団社長、取締役顧問を歴任。2012年より、オリックスの執行役員球団本部長補佐、球団本部長、顧問を歴任している。パ・リーグ3球団で要職を務めたという稀有な人物だが、この人物に、根本さんが大きな影響を及ぼしている。こうやって見て行くと、根本さんの教えというのは、プロ野球界の隅々まで大きく広がっていることが分かる。プロ野球選手としては、一流とは言えなかったため、マスコミがスポットを当てて扱うことが、ほとんどない人物だが、その遺したものの大きさでいうと、他の追随を許さぬものがある。プロ野球というものに興味がある方にとっては、必読の書ではなかろうか。
2018.12.30
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男子400mハードルの日本記録保持者で、 2001年のエドモントン大会、2005年のヘルシンキ大会で、 世界陸上銅メダルを獲得し、 2000年のシドニー、2004年のアテネ、2008年の北京と、 オリンピック3大会連続出場を果たした為末大さんの著作。 *** 「100メートルを諦めたのは、勝ちたかったからだ」 「勝つことに執着していたから、勝てないと思った100メートルを諦めた」 「勝つことを諦めたくないから、勝てる見込みのない100メートルを諦めて、 400メートルハードルという勝てるフィールドに変えた」(p.30)「諦めるとは『終わる』とか『逃げる』ことではない」という、本著の中に一貫して流れる、為末さんの「考え方」です。ターニングポイントで、前を向いて冷静に一歩を踏み出すことが出来るか、それとも、惰性でそのままズルズル流されていってしまうか、その差は大きいです。 アスリートの場合でも、 競技場では諦めずに続けることが勝ちだったかもしれないが、 一歩競技場を出て人生をトータルで考えたときに、 ただ諦めずにがんばることが 本当に勝っていることになるのかどうかはわからない。(p.131)「諦める」ことは難しい。それは、これまで頑張って来た自分のことを、否定することになってしまうと感じてしまうからです。そこで、なぜ「諦める」のか、その理由を前向きにとらえることが必要になってきます。 人生とはこうしたトレードオフの積み重ねである。 スポーツでのランキングを上げるようと粘ることが、 別の人生の可能性のランキングを下げてしまうこともある。 このジレンマを解決するには、自分のなかにおける優先順位を決めるしかない。 自分にとって一番大切なランキングは何かを決めるのだ。(p.133)深いです。アスリートにとっては、最も切実な問題かもしれません。そして、アスリート以外の人にとっても、同じようなことは常につきまといます。だからこそ、私たちの胸に深く沁み込んでくるのです。 誰もが知っている「いい会社」から内定をもらえなくて意気消沈している学生には、 こんな言葉をかけたいと思う。 「あなたが就職した先に描いている大きな目的は何だろう。 それはランキング上位の会社に入らないと実現できないことなのか」(p.139)本当にそうだと思います。自分にとって何が大切なのか。それを実現する手立ては、たった一つではなく、他にも色々とあるはず。それを真剣に考え、適切に選択していくことで、初めて道は開けるのです。「自分のなかにおける優先順位を決める」。これは、そう簡単なことではありません。しかし、これをその時々にしっかりと定めておかないと、行き当たりばったりで、後悔だらけの人生になるのかも。
2018.12.09
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サッカーの試合において、ディフェンスの選手が脚光を浴びることは、 オフェンスの選手たちに比べると、そうそうない。 中でも、センターバック(CB)は、かなり控えめなポジション。 ゴールキーパーの方が、ずっと目立ってる気がします。 本著の著者は、鹿島や名古屋、京都だけでなく、 全日本でも活躍した名CBの秋田豊氏。 以前読んだ『宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術』の著者で、 ガンバやヴィッセル、ザルツブルグで活躍した宮本氏とは、違ったタイプ。第1章が、いきなり「ヘディング」というところが、いかにも秋田氏。そこに記された極意は、このポジションの神髄を知るには必読の内容。続く第2章は「CBの守備・攻撃」で、ポジショニングやFWとの駆け引き、スライディングやクロス対応、ビルドアップ、セットプレーときめ細かい。 もし、ゴールに一番近い相手選手がフリーでいるのなら、 自分のマークを離しても、その選手を消しに行くべきだ。 そうした危ない箇所をすばやく察知する力がある選手は、 危機管理能力が高いと言える。 しかし、いまはそういった選手が少なくなっている。 「中央を突破されても、自分はサイドの選手をマークしているから……」 そう言って真ん中の危ない選手を消そうとしない光景は、Jリーグでもよく見られる。 確かに、それは別の選手のミスだ。 しかし、CBであるならば、 チームの失点の全責任を負うくらいの気概を持ってプレーしてほしい。(p.130)そして、第3章は「組織的守備」、第4章は「メンタル」という構成ですが、CBに求められるものが、しっかりと伝わってきます。サッカーが、いかに頭を使わねばならないものか(ヘディングだけでなく思考も)、改めて、思い知らされました。 ハイプレスを行うときは、FCバルセロナのような切り替えの早さが必要だ。 さらに、バルサは、攻撃のときから意図的に一人ひとりの距離を狭く、 近くしながらパスを繋いでいる。 つねにパスコースをつくる意図だけでなく、 奪われたときもすぐにボールに対してアタックできるように、 多くの選手が距離を近くしてプレーしている。 ただし、もし切り替えが遅くなったときは一気にピンチを招く。 前に人数をかけている分、後ろには大きなスペースができているからだ。(p.170)まさに、我が愛するチームの失点パターン。そのチームでCBを務めるということは、本当に大変なことです。
2018.05.27
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「スカウト」といえば、優秀な人材の発掘や勧誘、引き抜きをすること。 だから、そういった「優れた資質を持つ選手たちをどうやって集めてくるか」 ということについて書かれたものだと思っていたら、全く違いました。 無知でした……お恥ずかしい限り。 「スカウト」には、斥候とか偵察という意味もあり、 「先乗りスカウト」は、スポーツにおける対戦相手の戦力調査、分析を意味します。 日本のプロ野球では「先乗りスコアラー」と呼んでいますが、 こちらの方が、私にはなじみ深い言葉で、ピンときます。著者の小野さんは、日本代表のコーチやサンフレッチェ広島、ロアッソ熊本 で監督を務めこともある方。そんな小野さんは、日本代表スカウティングの第一人者でもあり、アトランタ五輪やフランスワールドカップでは、世界の強豪チームを徹底分析しました。そのアトランタ五輪についてはChapter4で、フランスワールドカップについてはChapter5で、どのようなスカウティングが実際に行われ、試合に臨んでいたかが明かされています。当時を知る人には、あの頃の舞台裏を知ることが出来る貴重な内容。 ***Chapter2の「スカウティング術のノウハウ」では、システムやプレースタイル、攻守のパターン、セットプレーやキーマン、選手個々の能力のどこを見るのかが示されており、これらの情報を元に、ゲームプランがたてられていくことが分かります。まず、システムでは、フォーメーション(4-4-2、3-5-2、4-2-3-1…etc)や、トップの配置(1トップ、2トップ、3トップ…etc)を、プレースタイルでは、ポゼッションプレーかダイレクトプレーかや、得点や失点のパターンを分析します。攻撃・守備の中心選手については、チームの中心として攻撃を組み立てるプレーメーカー、得点能力の高いプゴールゲッターや、ラインをコントロールするDFリーダー、絶妙なコンビネーションを持つホットラインを把握します。攻撃パターンについては、ビルドアップの方法や、スペースクリエイト、カウンターのパターン、サイドの使い方とクロスの傾向を分析。守備パターンについては、守備のスタイル(フォアチェック、リトリート…etc)、プレッシングのかけ方、アウトサイドとボランチをどの選手が見るのか、最終ラインの人数は何人で、ボール中心の守りか、ゴール中心の守りか、スペースをいかに埋めるかが中心か、人と人を中心の守りかを分析。さらに、高さへの対応やGKとDFの連携、DFのウィークポイントを確認。選手個人の能力については、身体能力(身長、体重、体の強さ、ヘディングの高さ)、オンザボールとオフザボール時のスピード(ドリブル、ランニング)とテクニック(ボールコントロール、パスの精度・質、キックの正確性)、判断力(ボールを受けた時とオフザボール時)、利き足と利き足依存度、メンタリティを確認。セットプレーでの攻撃については、キッカーの蹴り足と球質、トリックプレーのパターン、スペースの作り方を、セットプレーでの守備については、壁の作り方やカウンターの狙い方、GKの守備範囲、ポジション取りを確認します。これらについて、気にしながら試合を見ることが出来るようになれば、サッカー観戦者としては、かなりレベルが高いと言えるんじゃないかな。 ***そして、Chapter3の「サッカーを”観る眼”を鍛えよ」では、試合が進行する中で、どのようにベンチが対処し、選手に関わっていくかが示されています。これも、舞台裏を知ることが出来る内容で、とても興味深いものでした。
2016.09.22
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副題は「トータルフットボールとは何か」。 ポジションにこだわらない、全員攻撃全員守備。 新鮮で先進的、チーム全体が美しく躍動し、攻撃的で技巧的。 活発で見応えのある、監督やファンにとって理想のサッカー。 最初のトータルフットボールのチームだったと言われる 30年代のオーストリアは、ワールドカップで優勝出来なかった。 50年代のハンガリーも、74年のオランダも、決勝で敗れた。 82年のブラジルは、ベスト4にも残れなかった。本著では、各時代で戦術がどのように変遷していったかが記されている。ゾーンディフェンス、プレッシング、オフサイドトラップ、そして、ローテーションアタック。74年のオランダ・オレンジ軍団や、80年代末のACミランに共通する戦術。58年にワールドカップで優勝したブラジルは、当時支配的だったWMシステムではなく、4-2-4。70年のブラジルは4-3-3だが、4人の10番を併用。ペレ、トスタン、ジェルソン、リベリーノ。そして82年は、ジーコ、ソクラテス、ファルガン、トニーニョ・セレーゾ。80年代後半、バルセロナの監督に就任したクライフは、絶滅寸前のポジションとなっていたウイングを復活させる。 サッカーの戦術は、基本的に守備の発達とほぼイコールである。 フォーメーションだけみても、初期には2人だったDFが オフサイドルールの改正にともなって3人になり(WMシステム)、 さらに4人になる。 MFも3人から4人、5人と増加傾向。 当然、FWの数は減っていく。 WMシステムのときには5人いたのが4人になり、3人、2人、そして1人へ。 もちろん、単純にアタッカーの人数を減らしているわけではなく、 FWが減少したぶんはMFやDFの攻撃参加によって補っているのだが、 攻撃専門のスペシャリストを削り、守備に人数をかけてきたのは間違いない。そんな流れに逆らって、本格的ウイングを復活させたクライフは、「人はボールより速く走れない。ボールはいくら動かしても疲れない」と、10人のフィールドプレーヤーを、選手間で形成されるトライアングルの数が最多になるように散開させ、パスを回し続け、プレッシングを無効化した。 そもそもサッカーは守備に有利なスポーツである。 バスケットボールのような高確率で得点にならない。 攻撃力の差がそのまま得点差になりにくいのだ。 一方、攻撃に傾けば守備には隙ができる。 バルセロナは圧倒的に攻めるけれども、 相手にも攻められるチームだった。そして時を遡り、78年のアルゼンチン。テクニカルでスピーディーな技巧派としてのスタイルを前面に押し出し、4-3-3のフォーメーションで、両サイドに突破力のあるウイングプレーヤーを配置して、ワールドカップを制す。82年は、世界のスターになっていたマラドーナが、徹底的にマークされてしまい、2次リーグで敗退。その後、ディエゴ・マラドーナを得て、86年は優勝、90年も準優勝。”エンガチェ”と呼ばれるトップ下の良し悪しで決まるサッカー。92年に優勝したデンマークは3-5-2で、相手の2トップに3バックで対処し、両サイド高めに攻撃的MFを配置。が、実際には5-3-2であり、攻撃型から守備型まで、幅広いプレースタイルに変化できるものだった。98年に優勝したフランスは、鉄壁の4バックに攻撃のキープレーヤー・ジダン。圧倒的なキープ力で、プレッシング戦法の常識が通用しない選手。そして、ここぞという試合ではクリスマスツリー(4-3-2-1)。ジダンとリケルメが押し上げに必要な時間を作り出し、攻撃に結び付けていた。94年のミランとバルセロナの一戦は、ハードワーク、引いた位置でのプレッシング、ダイレクトプレーといったその後の戦術の流れを決定する要素が、凝縮されていた。この一戦を制したのはミランだったが、翌年、アヤックスに敗れてしまう。 トライアングルで素早くパスを回し、両サイドを深くえぐり、 長身のセンターフォワードがペナルティーエリアの中でパワーを加えた。レアル・マドリードは、00-01シーズンにペレス会長が就任して大きく変化。フィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカムと大型補強を繰り返す。4-4-2だが、自由で無秩序。得点も多いが失点も多く、明らかに守備面で問題を抱えていた。04-05シーズンで、プレミアムシップを制したのはチェルシー。プレッシングエリアを意図的に後方へ設定して守備を固め、ファウルに強いドログバが、前線に残ってカウンターアタックを演出。そしてポゼッション、パスを回し続け休息していた。 ボールを支配して敵陣に押し込んでいくバルセロナの戦法では、 守備の課題はカウンターに対するケアである。04-05シーズンにチェルシーに敗れたバルセロナは、次のシーズンにはMF、DFは連携したプレスを控えるようになった。FWの3トップは、ボールを奪われたら直ちにプレッシャーをかけ、DF同士のパスコースを消すだけで、それ以上は守らない。が、3トップがハーフラインに残ることで、相手の4人のDFも、そこに残らざるを得ない状況を作り出した。アーセナルは、サイドバックの追い越しを多用する攻撃。これにより、相手のディフェンスラインを下げ、DFとMFの間のバイタルエリアのスペースを広げることが出来る。ハードワーカーと戦術を組み合わせ、創造性を際立たせたのだった。 低い位置でのプレッシング&カウンターアタックという戦術と、 ポゼッションして引いた相手を攻略する戦術、 この2つを状況に応じて使い分けられるチームが有利になる。 ***こうやって、フォーメーションや戦術の変遷を見ていくことで、また、サッカーの見方が変わったような気がする。テレビ中継で、ボールの行方を追っているだけでは、決して理解できない世界が、ピッチの上には広がっていた。
2016.09.17
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最近、私の贔屓にしているチームが、相手のカウンター攻撃を受けると、 ディフェンスが戻りきれずに失点するパターンが続き、 近年では記憶にないほどの連敗を喫してしまった。 それで思ったのは、「本当にディフェンスは難しいなぁ」ということ。 本著の副題は「ゾーンディフェンス論」。 著者は、ヴィッセル神戸でプレーしていた松田浩氏。 現役引退後、神戸でコーチ、福岡や神戸、栃木で監督を務めた経験を持つ、 確固たる守備戦術を駆使できる、希少な指導者である。そして、彼が推奨する「ゾーンディフェンス」とは、次のようなものだ。 ボールの位置、次に味方の位置を見ながらそれぞれの守備のポジションが決まる- これが欧州では当たり前に共有される守備の考え方であり、 スタンダードに用いられるゾーンディフェンスの守備の肝である。(p.020)さて、本著の中で、私が特に興味を持ったのは、『セレッソ大阪 最少失点の要因 鍵となるリトリートを読み解く』。初出は『フットボールサミット第17回』(カンゼン社)で、2013年12月に掲載された記事である。 やはり、柿谷の動き出しは、初速の速さ、タイミング、駆け引き、 いずれも日本でトップクラスですよ。 セレッソにボールを奪われた瞬間はこちらの守備も脆弱だし、 ディフェンダーも対応する時間がないので 相手の速いカウンターに対する判断を誤ることがある。 それにカウンターに対する守備は練習ではできても、試合ではできないことが多いんです。 試合では練習のときほど冷静でいられないし、 自分たちの攻撃中の準備ができていないことが多い。 練習では2対2でもゴールは奪われないのに、試合では一瞬でもパニックに陥ると 4対2の数的優位な状況ですらやられてしまうことがあります。 やはり、セレッソが志向するリトリートの守備はサッカーでは強いんです。(p.160)リトリートとは、ほとんどの選手が自陣に下がりゴールを堅く守る戦術のこと。私の贔屓にしているチームは、ポゼッションフットボール志向で、見ている分には、やはりその方が楽しい。でも、痛い目にあうのは、リトリートのチームを相手にした時なんだなぁ。次は『日本代表の守備はなぜ崩壊したのか? ポジショニングから見る4失点の要因』。日本がブラジルに0対4で敗れた試合についての内容で、初出は『サッカー批評issue59』(双葉社)に、2012年11月に掲載された記事である。 ゾーンディフェンスであれ、マンツーマンディフェンスであれ、 カウンターの局面ではいかに早く十分な数の体を帰陣させるか、 それだけしかないんです。 僕はその意識付けを促すためにDのポジションの重要性を選手に伝えている。 ペナルティーアークがDの形をしているから僕はDと呼んでいるんだけど、 DF3枚とボランチ1枚で3と1の形を作る。 クロスに対してこぼれ球を拾われてズドンなんて場面があるからDを押さえるわけです。 カウンターの局面ならば『誰でもいいからDに戻れ』と。(p.169)やはり、全員で攻め、全員で守るという意識が大事。攻守の切り替えを、どれだけ素早くできるかが問題。求められるのは、『ボール周辺の雲行き』を読み、ハードワークをすること。でも、皆が皆、センスに溢れ、無尽蔵のスタミナを持つ選手ばかりではない。続いては『2013コンフェデレーションズカップ 日本代表の守備はなぜ崩壊したのか?』。これも日本がブラジルに0対3で敗れた試合を振り返ったもので、初出は『フットボールチャンネル』(カンゼン社)で、2013年7月に配信されたものである。 最初の5分は”クリティカルフェイズ”と呼ばれる、重要な局面。 僕は前半開始5分と前半終わりの5分、後半開始5分と後半終わりの5分、 それと得点でも失点でもゴール後の5分間。 それをクリティカルフェイズと呼んでいる。 失点しても相手がフワッとしていればすぐに同点にすることもできるし、 逆にこっちがしょぼんと沈んでしまったら、相手が傘になって攻撃をしかけてきて、 そこで連続失点して試合が終わってしまうこともある。 だからその時間帯は気をつけないといけない(p.186)これは、昨日観戦していた試合が、まさにこれだった。相手の攻撃を粘り強く耐えていたのが、前半終了間際にとうとう先制点を許すと、その直後、さらに得点を重ねられて、前半を終えたため、後半には、どうにも立て直しようがない状況になってしまった。まぁ、これはサッカーに限らず、日常の色々なことについても言える。「最初が肝心」とか「終わり良ければ総て良し」とか。車の運転なんかでも、出発直後や到着間近のトラブルは結構多い気がするので、私は、結構気を付けるよう心掛けている。 日本人が日々、温室と形容される甘やかされる環境のなかで、 ぬくぬくと育ってきたことも大きな影響を与えていると個人的には考えています。 日本の社会環境そのものが温室で、それがサッカーの現場にも相通じてしまうものがある。 一方で、海外の育成の現場では、温室とはまるで真逆、 ボールの奪い合いを激しくやっています。 それをメッシやハメス・ロドリゲスらはくぐり抜けてトップ選手になっている。 日本にその激しさを持ち込もうものなら、『子どものうちはそこまでやるなよ』 という反応が返ってきてしまうのが現状の日本サッカーに携わる人たちの感覚であって、 つまりそれが日本サッカー文化なのだと思うのです。(p.232)これも、サッカーだけの話ではないような気がする。世界を相手にするときは、どんな分野でも、国内で発揮する以上のタフさが求められる。
2016.06.26
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現代サッカーでは狭いスペースで相手のプレッシャーを受けながら、 素早く次のプレーを選択しなければいけません。 自分の技術を発揮するためには、 オフ・ザ・ボールで自分の時間とスペースを作る必要があります。 ボールがないところでいかに効果的にプレーするか……。 これこそが、現代サッカーで求められる最重要タスクといえるでしょうか。(p.172) サッカーを漠然と眺め、「なかなか点の入らないスポーツだな」と思っていた頃には、 この文章を読んでも、さっぱり意味が分からなかったと思う。 しかし、あるきっかけから、ちょこちょこピッチサイドでサッカーを見るようになり、 さらに、スタジアムに頻繁に足を運ぶようになった今なら、よく分かる。 サッカーは1個のボールで22人がプレーするスポーツです。 1人あたりのボールに触っている時間は、 90分のうち2、3分程度と言われています。 つまり、ほとんどの時間がボールを持っていない、 “オフ・ザ・ボール”の状態なのです。(p.3)つまり、ボールだけを追っかけていたのでは、サッカーというゲームは、全く理解できないということ。ボールをゴールへと運んでいくために、相手のマークをコントロールしながら、スペースを作りだすため連携して動くプレイヤーたちを、全体として俯瞰する必要がある。本著は、プレイヤーや指導者向けに書かれたものだが、サッカーをもう一歩踏み込んだところから見てみたい人にも、ぜひ、おススメしたい一冊。例えば、最終ラインについては、次のような事柄が書かれている。1.CBがGKからパスをもらうときの動き2.ボランチがGKからパスをもらうときの動き3.パスを出した後のGKの動き方4.CBからSBにパスを出した後の動き方5.ボランチの低い位置でのサポートの動き6.CBからのサイドチェンジ7.CBとSBの入れ替わりの動き8.ボールから離れるボランチの動き9.サイドでロングパスを受ける動き10.DFラインの背後でロングパスを受ける動きもちろん、この他にも、中盤エリアでのつなぎ方や、サイドからの攻撃、フィニッシュまでの動きと、全てのエリアにおけるオフ・ザ・ボールについて説明されている。きっと、サッカーというスポーツの奥の深さに驚かされることだろう。
2016.04.24
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「いいチーム、悪いチームの見分け方」について、 攻守の本質、攻守の切り替え、ゴールを決めるために大切なことから説明し、 「いい選手、悪い選手の見分け方」について、 FW、MF、DF、GKのそれぞれのポジションから説明している。 さらに「いい監督、悪い監督の見分け方」について説明し、 「プロのスカウトはどこを見ているか」と 「現時点の最も高度なサッカーとは」にも言及している。 結構サクサク読み進めることが出来る一冊。『サッカー「観戦力」が高まる』に比べると、内容的には基本的なレベルのようで、初心者にも分かりやすい。また、図を使って上手く説明してくれているのも有り難い。先にこちらを読む方が、順番的には正しいと思う。そして、『一生つかえる! サッカーのみかた 』を読んでから、『サッカー「観戦力」が高まる』の順に、読み進めるのが良いと思う。『宮本式・ワンランク上のサッカー観戦術』は、どの時点で読んでも、OKではないだろうか。 *** 第1章 攻 1.ボール保持者のまわりで、アクションを起こしている選手がいるか? 攻 2.クロスに対して、相手ゴール前にとび込む選手が何人いるか? 守 3.DFからFWまでをコンパクトに保てているか? 守 4.ゴール前中央を空けていないか? 第2章 攻 1.攻撃の布石として、ボールの後ろに素早く戻れているか? 攻 2.「守備は狭く、攻撃は広く」ができているか? 守 3.各選手が2秒以内にプレーしているか? 守 4.ボールを使った休憩(攻撃の緩急)ができているか? 第3章 攻 1.縦パスが入っているか? 攻 2.DFを下がらせながら攻撃できているか?(p.79)これが、「いいチーム、悪いチームの見分け方」について示されたポイントをまとめたもの。 1.ボールが前に進んでいるか?(はじめに) 2.ボールを追い越していく選手がいるか?(第1章) 3.ゴール前にとび込む選手がいるか?(第1章) 4.DFラインの前をブロックできているか?(第1章) 5.1人あたりのプレー時間が2秒以内か?(第2章) 6.縦パスが入っているか?(第3章) 7.動いている選手の足元にパスをドンピシャで合わせているか?(第4章) 8.DFラインがペナルティエリアの幅にちょうど収まっているか?(第5章) 9.組み立ての種類が2つ以上あるか?(第7章) 10.飛び抜けた選手が1人以上いるか?(第7章)(p.182)そしてこれは、著者の「サッカーの見方」のベスト10。確かに、これらが出来ている状況ならば、その試合では優位を保てているだろうし、この状況を常に生み出せるチームなら、強いに違いない。5.や7.が出来るならば、本当にスゴイと思う。
2015.06.14
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システム、ドリブル、キック&トラップ、パス回し、中央突破、サイド攻撃、 攻守の切り替え、ディフェンス、プレッシング、ラインコントロール、 対バルセルナ戦術、GK、セットプレー、ゲームマネージメント。 これらについて、観るべきポイントとなる視点を示した一冊。 所々に写真は掲載されているものの、 各ポイントを説明する図は一切ない。 また実在の選手のプレイを例に説明することが多いので、 ある程度、そのイメージが思い浮かばないと、読んでもチンプンカンプン?それでも、そのレベルがクリアできるのなら、読んでいて「なるほど!」と、思わず手を打つこと間違い無し。そして、サッカー観戦に関する知識が増して、きっと、スタジアムに足を運びたくなるに違いない。 つまり『攻撃の広さ』と『守備の狭さ』をどのような優先度で追求するか。 そこにチームのコンセプトが現れるのだ。 このセオリーを知っておけば、全く知らないチームの試合を観戦するときでも、 パッとシステムの並びを観れば、ある程度の特徴は察しがつくようになる。 たとえば両サイドバックや両サイドハーフ、両ウイングFWといったサイドの選手達が タッチライン近くにポジションを取り、ピッチを広く使おうとする意図が見えれば、 そのチームはパスサッカーを志向する攻撃的なチームだろうと、 わずか数秒でチームの大枠を理解できる。(p.65) バルセロナのサッカーを観ていると、階層の多さが顕著に現れている。 サイドバックは高い位置を取り、メッシが下がり、セルヒオ・ブスケツが残って、 シャビとイニエスタは前へ。 彼らが織りなす階層は、2-1-2-2-1-2の6段か、 あるいはそれ以上に細かく分かれている。 そのような視点でバルセロナを観ると、彼らの陣形の奥深さが観えてくる。(p.69)この二つは、パス回しについて観るべきポイントだが、これらについて知っているか、知らないかでは、サッカーを観ているときに分かること、感じることに、大きな差が出てくるだろう。もちろん、この様子を観ようとすれば、スタジアムに足を運んだ方が良いに決まっている。 ガンバ大阪とオランダ代表の例は、 選手の長所を発揮するために優れたシステムを構築したといえるが、 一方では、システムに対して居場所がなくなる選手や、 自らの長所を発揮する機会を失う選手も出てくる。 ガンバ大阪であれば、当たりに強い空中戦タイプのセンターバックは 足元の技術の弱点が出やすくなってしまい、 オランダ代表はGKを使ったポゼッションを多用するので、 どんなにセービングがうまくても足元の技術がないGKは選出されない。 選手の能力をロスすることにもなり得るが、 チームに一定の枠組みを作る以上、仕方のないことでもある。 システムの構築は、 11人の個性の最大公約数を見つけ出す作業と考えればわかりやすいだろう。 システム構築の初期には、このようなロスが出やすい。(p.14)本著で最も心に残った箇所である。
2015.06.14
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サッカーの勝敗は88分間で決まる。 ボールは3割しか見ない。 この二つを意識するだけで、 試合の観方がおもしろいほど変わります。(p.5) これが、冒頭「はじめに」の締めくくり。 これは、サッカーの1試合90分のうち、 選手1人がボールに触れている時間は、たった2分前後と言われていて、 ボールがない状況の88分間の動きにこそ、その選手の本当の価値や質が出るから。なので、ボールの動きを7割見ながら、残りの3割はボールのないところを観る。ボールのない状況の選手が、どんな動きをしているのかを観ることが重要。そして、ピッチ全体を見るためには、ピッチを4つのゾーンに分けて観る。そうすると、そのチームが攻撃的かどうかも分かってくる。なるほどな、と思った。私は、以前はサッカーの試合は、ほとんど観ることがなかった。でも、ある時、実際に会場で試合を観てから、はまってしまった。テレビの中継では分からなかった世界が、そこにはあった。つまり、テレビの中継では、ボールの動きしか追うことができない。けれど、会場に行けば、ピッチ全体を見ることができる。そこで起こっていることに、初めて気付き、その面白さが分かった。そして、会場に行けば、4つのゾーンで観ることなんて、自然にやってしまっていた。 なでしこジャパンのサッカーは、非常にボールを大事にするサッカーです。 昨年のワールドカップ優勝で、各国の女子代表も、 パスワークを重視した日本のやり方にならい始めているようですが、 日本の方が一日の長があります。 さらに、パスを早くつないで崩すという戦術が、 より相手ゴールに近いゾーンでできるようになっている。 そのやり方は、まさにバルセロナなのです。 女子サッカーは、男子に比べてフィジカルとパワーの違いが明確です。 特に日本の女子選手はアメリカやドイツなどに比べて体格とパワーで劣るため、 多の国に比べて、よりボールを大事にしようとする。 ボールを相手に奪われたら、奪い返すのが難しい。 だからボールを奪われないように、早く動かす。 それがなでしこのチームづくりの原点だと思います。 それを高いレベルで実現できると、 相手のプレッシャーが男子ほど厳しくないため、 きれいなコンビネーションのサッカーが成立します。(p.144)これぞ、女子サッカーの魅力。そして、いよいよワールドカップが始まる。連覇は、そう簡単なことではないと思うが、ぜひとも頑張って欲しい。特にINAC神戸から選ばれた7人に!
2015.06.07
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以前は、あまり見ることのなかったサッカーの試合を、 最近は、結構よく見るようになった。 しかも、スタジアムで。 テレビの画面で見るよりも、色々なものが見えてきて面白い。 しかし、やはりにわか観戦者の辛いところで、 サッカーそのものの基本的な戦術とかポジション毎のプレイが分かっておらず、 今、ピッチで何が起こっているのか、本当の意味で気づくことが出来ていない。 そこで、購入したのが本著。有名選手のプレイを例として、どこが見るべきポイントかを述べている箇所が頻出するのだが、そのシーンが目に浮かぶということは、私のレベルではほとんどない。日本人選手なら、ある程度分かっても、外国人の選手は、一部を除いてほとんど分からない。それでも、図を使って上手く説明してくれているので、プレイそのものは理解できた。特に私が感心したのは、両チームのシステムがどうかみ合っているかについて述べている所。これまで、そんなことは考えたこともなかったので、「なるほどな」と感心した。また、各ポジションの選手の動きも、以前より色々考えながら見ることが出来るようになった。テレビで解説を聞きながら、ボールの動きを追うのではではなく、スタジアムでピッチ全体の選手の動きを見るためには、ぜひとも読んでおきたい一冊だと思う。以前より、サッカーを見るのが楽しくなった。
2015.05.09
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凄く興味をそそられるタイトル。 一つのチームで長年指揮した人や、複数チームで指揮した人なら このタイトルで、書こうと思えば、書ける人は結構いると思う。 でも、商売になる本に仕上げることが出来るのは、やっぱり野村監督。 目次を見るだけでも、圧倒される豪華メンバー。 さらに、2013年のWBCで指揮したオランダとキューバの監督も教え子。 野村監督が指導して育てた選手たちは、指導者としても大活躍。 まさに、日本の野球を変えた人物。それぞれの選手の記述も面白かったが、やはり深みがあるのは、自身のことについて述べた部分。どのようにしてID野球が形成されていったのかという、野村監督の歩みに触れることができる内容。また、実際に自分の目で見たかったと思ったのは杉浦投手のピッチング。それに加え、野村監督の教え子ではないけれど、宮本遊撃手の所で出てきた遊撃手・吉田義男、三塁手・三宅秀史、二塁手・鎌田実に、ノッカー・藤村富美男の試合前の伝説のノック。野村監督の著作で、こんなところに登場するくらいだから、本当に凄かったのだと思う。吉田さんと鎌田さんのプレイは、うっすらと記憶にあるのだが、とにかく上手かった。三宅さんの守備や藤村さんの打撃が、全く記憶にないのが本当に残念。
2014.10.07
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岡田彰布氏の著作は、これまでに何冊か読んでいるが、 今回は、これまでのものに比べ完成度が低いような気がした。 「もう少し、丁寧に推敲して文体を整えれば良いのに……」と何度も思った。 何かの事情で、出版を急ぐ必要があったのだろうか? テープ起こしをしたことがある人なら分かると思うが、 話をしているときというのは、思っている以上に同じ内容を繰り返し述べている。 さらに、書き言葉とは違う、独特の言い回しもある。 それらを、岡田氏の特徴として、今回のライターさんは、そのままにし過ぎている。 まるで、スポーツ新聞のインタビュー記事を読んでいるような感じがした。さて、表現の方は、そういう風にシックリこないものを感じたが、内容については、岡田氏の行動や考えていることがよく分かった。選手会長として岡田氏が取り組んできたこと、そして、今後、選手会が取り組んでいくべき重点は何なのか。さらに、チームやグラウンド、試合への思い、それらが、立場によって、見る観点や考える観点が変わること。そして、プロ野球30球団構想。実現すれば、とても面白いと思った。
2014.09.22
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私は、岡田彰布氏のファンである。 先日、金本氏と共に解説している試合を、TVで観戦していたが、 いつもながら、たいへん面白かった。 「そこまで、放送で言っていいの?」ということを平然と言ってのける。 また、彼の持っている野球観や、タイガースへの愛情にも、私は惹かれる。 それ故、『頑固力』や『動くが負け』等の著作も読んできた。 本著が発行されたのは、昨シーズンのCSより少し前の時期。 3位の広島に1勝もできず、巨人と戦うことなくシーズンを終える前のことである。だから、今となっては『なぜ阪神はV字回復したのか?』というタイトルには、違和感さえ感じる。2013年のペナントレースは、結局1位巨人に大差を付けられ、CSでもイイところは全くなし。2位とは言っても、気持はほとんどBクラスのイメージのシーズンになってしまったからだ。そして今年も、スタートからまずまず良かった調子が、上本が欠場してからは下降気味。最中、苦手の交流戦が始まり、現在首位のオリックスに、藤浪がボコボコにやられてしまった。本著で、岡田氏がケチョンケチョンに貶しているオリックスが、何故、今年はこんなに強いのか?どこが、どう変わったのか、岡田氏に教えてもらいたい。きっと、彼なら、分かっているはずだ(でも、オリックス戦の解説などしないだろうな)。しかし、一昨日の試合は、タイガースも粘りを見せた(交流戦から上本も復帰)。榎田から交代した鶴が、初球ホームランで逆転され「もう終わったな」と思った試合を、何と新井貴が同点ホームラン、「もうあかん」と思うピンチの連続を安藤が踏ん張りきり、最後は、4番ゴメスの豪快なホームランと、呉のセーブで見事な逆転勝利。その余韻を引きずったまま、昨日書店に行ったため、思わず本著を購入してしまった。新書を読むのは久し振りだったが、一気に読み終えた。昨シーズンのことを書いているので、今シーズンには当てはまらない部分もあるが、タイガースに残る慢性的な課題についても、遠慮なく指摘している。その点で、昨年出版された書籍ではあるものの、「第4章 常勝軍団になるための阪神への提言」と「第5章 次期監督問題を考える」とは、過去の古い問題ではなく、まさに現在も続いている問題で、読む価値十分である。そして、本著から何よりも強く伝わってくるのは、岡田氏のタイガースへの愛情である。
2014.05.23
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12人のスポーツ界著名人へのインタビュー集。 著名な方たちばかりなので、周知のエピソードが多いと思いきや、 「あの時、実はそんなことが起こっていたのか」ということが大部分。 あの人が、人知れず、そんなにも、もがき苦しんでいたとは…… 最初の4名は、リーダーとして活躍した人たち。 野球の野村克也氏、ソフトボールの宇津木妙子氏、 先日、現役最後の公式戦を終えたばかりのヤクルト宮本慎也氏、 そして、全日本男子バレーボール監督として活躍した松平康隆氏。宇津木氏、宮本氏、松平氏のオリンピック舞台裏のお話は、驚かされるものばかり。これらのエピソードだけ見ても、真実というのは、なかなか伝わってこないこと、マスコミからの情報で、私たちは何でも知っているつもりになっているけれど、実は、そうではないということに気付かされる。その後に続くのは、ビーチバレーの佐伯美香氏、テニスの杉山愛氏、ボクシングの竹原慎二氏、野球の川崎憲次郎氏、サッカーの城彰二氏、スキージャンプの船木和喜氏、マラソンの有森裕子氏、卓球の松下浩二氏。いずれも、その競技において、何らかのパイオニアとなった人たちである。その言葉からは、前例のないことに挑戦し、道無き道を切り開くことの困難さが、伝わってくる。その際、周囲から否定されたり、非難されたりすることも多々ありながら、いずれの人も、それを乗り越え、現在の自分に辿り着いた。そのタフさこそ「打たれ強い心」なのだが、それを獲得することは容易ではない。本著は、それを獲得するための、ヒントにはなるだろう。
2013.10.06
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衝撃的なタイトルである。 阪神ファンなら、誰もが薄々気付きながら、 避けて通りたい言葉「暗黒時代」。 そして、その再来の予感。 野村監督(今でもそう呼んでしまうのは何故だろう?)の著書は、 これまでに、イヤというほど読んできたし、 今回もまた、タイガースのことを、けんもほろろに叩いているに違いない。 だから、今回はパスしようか……と思ったものの、あの「暗黒時代」を指揮した歴代監督のトリを務め、その後の「黄金期」幕開けの土台を作った真の功労者であることを考えれば、やはり、読まねばならないと思い直し、購入した次第である。(発行日は2012年12月24日となっているが、もちろんもう購入出来る)そして結論、本著は野村監督のタイガースへの想いがヒシヒシと伝わってくるものであり、タイガースファンにとっては、これまでの野村監督のどの著作よりも胸に迫る優れた貴重な一冊であり、必読の書であった。しかも、最新事情満載である。しかし、本著を本当に読んで欲しいのは、まず和田監督である。そして、フロントやスタッフの皆さんたち、さらに選手たちにもぜひ読んで欲しい。鳥谷や新井といった主力はもちろんだが、それ以上に、秋山、岩本、歳内の若手三投手、上本、大和といった今季チャンスをつかみかけた選手、そして藤浪、北條の新戦力二人にも。 しかしそれでも、GMには確かな判断基準が必要である。 チーム編成における優先順位は何か。 投手なのか野手なのか、勝利なのか興業なのか、FA補強重視かドラフト育成重視か。 必要なのは簡単には揺るがない「阪神タイガースはどうあるべきか」という思想である。 巨人には「常勝」の信念があり、そのスローガンの下で現在ではドラフト重視へと舵を切り、 足りないピースをFAで補うという確たる方針を定めて 2012年に3年ぶりの日本一奪回に結びつけた。 しかし阪神には、長らくその思想がなかった。 あったのは「打倒巨人」などという、視野の狭いスローガンだけだ。 親会社も球団もファンも、「巨人にさえ勝てばいい」 とだけ考えていた時期があったことは否定できないはずである。 打倒巨人だとか、打倒東京だとかいった、視野の狭いスローガンが、 阪神を単なるアンチ巨人の代表でしかない存在に長く置いてきた原因ともいえる。 だから「阪神野球とは」「阪神の伝統とは」という問いに、誰も答えが出せない。(p.204)核心をズバッと突いた言葉の連続である。特に最後の一行には、言葉がない。「これだけの戦力を持ちながら、なぜ勝てないんだ……」と、今シーズンずっと思い続けてきたこと自体が、阪神ファンの甘さの象徴だったと気付いた。巨人以外にも、日ハムや西武、ソフトバンク等、見習うべき球団は多い。
2012.12.16
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野村監督の書いたものは、これまでに数多く読んできた。 (野村さんは現在、監督ではないが、監督と言った方がピッタリ来る) と言うより、その執筆のペースは、あまりにスゴ過ぎる。 (もちろん、自分でパソコンに向かって入力などしてないだろうが) それ故、書かれている内容も、重複する部分が多くなってくるのは当然で、 出版されるもの全てを読もうなどとは、現在はもう思っていない。 なのに、ついつい買ってしまう、読んでしまう……。 それは、そこに必ず新しい情報が、ほんの少し盛り込まるからである。本著の中で、野村監督が高く評価しているのは、西部の涌井投手、ソフトバンクの和田投手、日ハムの稲葉選手、中日の落合監督等。かつての選手で言うと、南海の杉浦・皆川両投手、金田・江夏投手と言ったところ。特に、皆川投手とのエピソードは、とても興味深いものだった。チームで言うと、阪神や楽天に対しては、やはり色んな思いを引きずっているようで、色んな面で嫌みっぽく、そしてグチっぽくなっている。そして、「4番とエースが不在」と、巨人に対しても手厳しい。まぁ、それは巨人だけに限ったことではないと思うが。そして、いまだにオールスター戦での投手・イチローについて述べている。このことについては、相当な拘りを持っている様子だ。 残念ながら、仰木は選手時代にオールスター戦に出たことがなかったから、 オールスターの価値がわからなかったのかもしれない。(p.143)もし、野茂やイチローが仰木監督ではなく、野村監督の下でプレイしていたら、ひょっとすると、二人ともメジャーで活躍する機会には恵まれなかったかもしれない。野球ファンは、数々の三振と共にメジャーリーグで湧き起こったトルネード旋風や、2度のノーヒットノーランを見る機会を失い、新人王、年間MVP1回、首位打者2回、盗塁王1回、シルバースラッガー賞3回、ゴールドグラブ賞10回を獲得し、今なおシーズン200安打以上を継続しているという、野球史上に燦然と輝く大選手を、失うことになっていたかもしれない。そうなると、いまだに、プレイヤーにとっても、日本に住む野球ファンにとっても、メジャーリーグは、とても遠い存在のままという可能性が高い。また、2回のWBCの結果も、全く違ったものになっていたのではないか。これが、野村野球と仰木野球の行き着くところである。
2011.05.29
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先日、久しぶりに書店をうろついた際、偶然見かけたのが本著。 シーズン終了後に発行されたのかと思ったら、第一刷発行は7月30日。 何と、ペナントレース真っ盛りの時期に発行されていた。 オリックスの交流戦優勝を記念して、発行されたということか。 それにしても、シーズン中に著書発行とは。 もちろん、岡田監督自らが、原稿用紙を前にペンを走らせたり、 パソコンに向かって文章を打ち込んだりしたわけでは、決してないだろう。 それでも、こうやって一冊のきちんとまとまった新書が出来上がるのである。さて、本著タイトルのネーミング由来は、次の一文からであろう。 ただ、ひとつだけ言えることがある。 事態が悪いときほど走り出しても駄目だということだ。 悪いときほど、自然の流れに身を委ね、 その事実をしっかりと受け止めてから動き出したほうが良い。 選手時代、監督時代を通して、悪い流れの時ほど動こうとするし、 また実際に動かなければいけないこともあった。 でも振り返ってみれば、その状況を打開するための最善の策というのは、 「動かずにひとつ勝つこと」なのだ。 その一つの勝ちが、すべての流れを大きく変える唯一無二の処方箋だった。(P.49)これとは逆のこと、つまり「悪いときには、とにかく即動け!ジタバタせよ!!」と言う人も結構いるのだが、私は、どちらかというと岡田さんの考え方を支持したい。見通しもなく動き始めると、まず、ろくなことにはならない。もちろん、見通しが立ち、状況が整えば、動き始めなければならない。 負けた試合直後のミーティングを私が嫌うのも、理由は一緒。 ピンチで打たれた投手は責任を感じているし、 チャンスで打てなかった野手も責任を感じている。 担当コーチだって、何が悪かったのかその理由はわかっている。 負けたときに自分がわかっている反省点を改めて指摘されると、誰しも腹が立つ。 だから私は、負けた試合の直後は、何も語らずに監督室に入ることにしている。 次の試合までに確認しておかなければいけないことがあったとしても、 それは次の試合の朝に話をする。 ほとぼりが冷めて、皆が話を聞ける精神状態になってから説明したほうが、 言葉が素直に耳に入り、記憶に残っていくものなのだ。(p.95)この姿勢にも、私は強く賛同する。相手の状況を把握し、適切なタイミング・言葉・方法で伝えることが、とても重要。これらのさじ加減が上手くいっていないと、それがどんなに正しい内容であっても、相手の心には決して届かない。
2010.11.23
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岡田監督の著作は、昨年11月に出版された『オリの中の虎』をまず読み、 その後、江夏豊氏との共著『なぜ阪神は勝てないのか?』を読んだ。 新しいものから古いものへと時代を遡って読んでいることになる。 しかし、これは偶然というわけではない。 2008年、阪神タイガースがぶっちぎりで優勝することを、多くの人が確信していた。 しかし、何と13ゲーム差を逆転され、10月10日には優勝の望みが絶たれる。 さらに、クライマックスシリーズでも、藤川がとどめの一発を食らう最悪の幕切れ。 これを現実として受け入れるには、当事者もファンも随分時間を要したはずだ。そんな2008年の11月28日、本著は既に発行されている。発売日は、それよりさらに前だっただろう。即ち、本著は本来優勝記念として発売されるはずの出版物が、何と世紀の大逆転を許し、自ら監督を辞した直後の出版物となってしまったと推察される。あまりにもイタすぎる……私自身は、2009年のシーズンが終わった時点でも、本著を読む気分にはなれなかったのだ。そして、岡田氏が新天地オリックスの監督に就任したのを受け、『オリの中の虎』を読んだ。さらに、解説者時代の辛口コメントを期待して『なぜ阪神は勝てないのか?』を読んだ。この2冊を読むことで、岡田彰布という人物が、私がそれまで思っていた以上の器を持つ人物であると強く感じた。そして年が改まった2010年、城島を迎えた真弓タイガースが常勝復活に向け動き始めた。岡田オリックスも本格的に始動し、その時点でやっと本著を読んでみようという気になれたのだ。本著を読んでみて、改めて岡田彰布の野球観を知った。「7回を制するものが試合を制する」ことを具現化したJFK。岡田監督がどんな補強を理想とし、平野、新井を獲得したのか。なぜ岡田監督は、試合中マウンドへ行かず、バントやスクイズをしなかったのか等々。本著では、岡田氏が選手時代に接したブレーザー、吉田、中村といった諸監督や仰木、野村、星野といったコーチ時代に接した監督たちとのエピソードも描かれている。もちろん、まだまだ時効とは言い切れない部分もあるため、ブレーキを効かせてはいるが、それでも、岡田監督らしく結構辛口で、行間はスリルに溢れている。 ***そして2月、最下位チームから一挙に優勝争いへ、そんな思いを胸にキャンプイン。ところが、今年最も期待されるはずの選手の一人が、全く予想もしなかった事態に……今こそ、岡田監督の真価が問われる時。この逆境を見事跳ね返し、是非ともペナントを勝ち取って欲しい。
2010.02.08
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野村監督のチームづくりへの執念が感じられる一冊。 今年、楽天イーグルスを2位にまで引き上げた野村監督が、 その集大成として、来年もチームの指揮を執ることに、 どれほど強い意欲、希望を持っていたかが、ひしひしと伝わってくる。 もうあと一歩で、完成の姿を見届けることが出来るという段階にまで来て、 自らがやるべきはずの仕事を、強引に奪われてしまったことに対しては、 怒り、無念、後悔等々、とても一言では言い表せない複雑な心境であろう。 私も、もう一年あれば、きっと野村野球が楽天に根付き、結果が出たと思う。それでも、最初拒んでいた名誉監督を引き受けたのは、渋々ながらも、自分の中で踏ん切りを付けたということか。まぁ、踏ん切りを付けるしか、この状況で、選択肢は他になかったわけだが……そんな踏ん切りを付ける努力をしようとしていることが、本著からは痛いほど伝わってくる。来年度のペナントレースが終わったとき、野村監督には、もう一度、楽天イーグルスというチームについて、そして、楽天という球団について、さらに、今回の騒動について、冷静に振り返って、語って欲しい。
2009.12.30
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今シーズンを振り返っての真弓采配には、江夏さんも岡田さんも手厳しい。 CS進出に向けての希望を、最後の最後まで繋いだとはいうものの、 結果的には勝率5割を切っての4位で、久しぶりのBクラス。 就任一年目の監督に、突っ込み所が満載なのはやむを得ないところである。 江夏さんの豪腕伝説は、今さらながらにその偉大さを思い知らされる。 そして、その江夏さんの投球論だけでなく、岡田さんの打撃論も興味深い。 さらに、この二人が仕えた監督たちとの日々を思い返しながらの、 理想の監督像についての対談部には、ちょっと危険な雰囲気が漂っている。 さて、岡田彰布という人が、これまでどのような人生を歩み、そこで何を考え、何を行い、今日に至ったかということが、本著では明かされている。中でも、大学進学までの経緯や、そこでどんな立場・役割を担っていたかについて、私はこれまで、こんなに詳細には知らなかった。しかし、改めて振り返ると、岡田さんは選手としても素晴らしい成績を残している。当時は、掛布さんやバースさんが一際目立っていたため、クリーンアップの一角を担いながらも、やや地味目な存在だったのだが、それでも、村山監督と中村監督のときに、開幕4番を2度経験している。そして、本著の中で一番の衝撃は、江夏さんが語るこの事実である。 昭和48年、残り2試合で1勝すれば優勝という時の話よ。 あの時、パリーグはプレーオフを導入していて、 報知新聞から私は観戦記の依頼をされていてね。 だから昼間は大阪球場でプレーオフを見て、それから名古屋に入ろうと思っていた。 すると、その前の晩に球団から電話があって、 プレーオフの試合前に西梅田の阪神電鉄本社に呼び出されたんだよ。 あと1勝したら優勝よ。 「ボーナスの話でもあるんかな。」と、喜び勇んで報知新聞の車に記者を乗せたまま、 本社に向かったのよ。 通された部屋のドアを開けたら 当時の長田睦夫球団代表と鈴木一男常務が難しい顔をして座っていてね。 「なんの話なんやろう」と思ったら、「勝ってくれるな」と言うのよ。 勝てば選手の年俸はアップするし、金がかかるからな。 優勝争いの2位が一番理想やったんやろうな。 長田代表は「これは金田正泰監督も了解しているから」と言うのよ。(p.90)この言葉を聞いた江夏さんは頭に血が上り、テーブルをひっくり返して、その場を立ち去ってしまう。そして、優勝のかかった残り2試合の阪神の戦いぶりはと言うと、最初の中日戦で、その年中日から8勝と抜群に相性の良かった上田次朗投手をはずし、中日戦・名古屋球場にあまり相性が良くなかった江夏さんを先発させて2対4で敗れる。さらに最終戦となった巨人戦では、上田投手が先発して打ち込まれ、0対9で完敗巨人がV9を達成したこの試合は、阪神ファンにとって忘れられない屈辱のゲームであり、人気野球マンガにも登場したシーンである。「なぜ、中日戦で上田投手が先発しなかったのか?」その疑問の答えは、実はこんなファンや選手をバカにした球団の陰謀だったのだ。あれからたくさんの月日が流れ、その間、阪神は3度だけ優勝した。6チームで均等に優勝できるとすれば、この倍は優勝しなくてはならないはず……。それでも、フロントは確実に変わり、お金をかけてでも選手を集め、勝とうとしている。もし、現在あのようなニュースが流れたら、阪神は球団を手放さざるを得なくなるだろう。
2009.12.20
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『オリの中の虎』に比べると、裏話的なものは少ない。 というか、ほぼ皆無である。 冒頭に記された古田さん自身のドラフト会議当日の様子が 一番生々しいノンフィクション・裏話で、これを超えるレベルのものは他にない。 それ以外は、一貫して古田さんの考え方、 すなわち「優柔決断」という思考法について述べられている。 最後は、脳科学者・茂木さんとの対談で締めくくられており、 全体として、静かで落ち着いたトーンの書物になっている。述べられている内容は、古田さんの「らしさ」が感じられるもの。「いかにも」「だろうな」と思えるものばかり。 古い情報などアテにならないのです。(中略) 古い成功体験はもはや要らない情報。 どんどん捨てて、代わりに新しい情報を入れる。 そうした更新作業をつねにやってきたのが、ほんとうのところなのです。(p.41)まぁ、野球だけでなく、相手のあることは何でもそうだろう。こちらの成功を見て、相手が対策を立てて変わっていくのは当たり前のことなのだから、こちらも相手をさらに上回るように変わっていくしかない。過去にばかり捕らわれていては、新しい成功を勝ち取ることなど決して出来ない。 迷うこと自体は悪くはないのですが、 大勢に影響がない決断を後回しにして時間をかけてしまうのだとしたら、 それはそもそも決断できないクセだと思うのです。(中略) たとえ正解にたどりついたとしても、 時間をかけたという事実自体が正解ではなかったということが 世の中多いような気がします。(p.52)これぞ「優柔不断」の最大の難点、問題点。「巧遅よりも拙速」と言われる所以である。 しかし、スポーツのような勝負ごともビジネスでもそうだと思いますが、 失敗しても必ず次がある。 それが明日なのか一週間後なのか、はたまた一年後なのかはわかりませんが、 必ず取り返せるチャンスがあるのです。 だから、決断を恐れないでほしい。(p.56)ここが「決断」の重要性を最も雄弁に語り、読者を勇気づけてくれる部分。古田さんのポリシー。 長所を磨くほうがいいと言う人もいますが、 長所はそもそも自分の好きなことですから、 意識せずとも取り組んでいることが多いのです。 苦手を克服しないと、やはり伸びしろはありません。(p.123)これは、野村監督と同じ方向性の言葉。岡田監督は『オリの中の虎』の中で、実例を挙げながら逆の主張をしている。 ぼくがもっとも大切にしているのは、あくまでも現有戦力で何ができるかということ。 「無い袖は振れない」ではないのですが、ないものねだりをしてもしょうがないのです。 現有戦力を客観的に把握し、分析して、その与えられた環境の中で勝つための もっとも有効な方法を考える。 この考え方が正しいとぼくは思っています。(p.133)これには、岡田監督も同じ考え方を示している。私も全く同感。
2009.12.06
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岡田さんがオリックスの監督に就任したのは10月14日。 私が本著を書店で購入したのが11月9日(発売開始は11月5日)。 そして、本著に記された発行日は11月20日。 こんな短期間に新書が一冊完成し、発売された。驚きのスピードである。 もちろん、本著は岡田さんがオリックス監督に就任する前から企画され、 ある程度(と言うかほとんど)出来上がっていたのだろう。 それにしても、プロローグの内容は未だにホットでタイムリーなもの。 これを巻頭に持って来たベースボール・マガジン社は、さすがである。それにも増して、岡田監督の就任後の動きはスピーディーである。秋期練習を公開したり、チーム再建に向け渇を入れる言葉を次々に発表したりさらには選手登録明を公募したり、田口選手や矢野選手の獲得に意欲を見せたり等々。そこには、仰木監督や野村監督ら、名将に似たものを感じる。 「マイナス思考」というと、消極的で受け身の悪い意味になってしまうけど、 おれの監督としての気持ちの持ち方はずっと 「マイナス思考」「マイナス覚悟の思考」であったよな。 だからこそとてつもないことが起こっても、冷静でいられる。 最悪のことを考えているから、何があってもしっかり受け止められる。 「打たれる」と思って見ていたら、打たれても「ああ打たれよった」ってことだけやん。(p.034) 野球の監督は、悪いこと考えて、ええこと起きればそれでええ、というんがおれの考え方。 やられたときにどうする、それを先に考えておいたら、ベンチでどっしり構えられる。 あたふたしたところは、相手チームにも、自分とこの選手にも見せたらあかん。(p.043) 打つほうもそうや。ここで打ってくれへんかななんて、思わん。 そう思うてないのに打ったら、ああ打ってくれよったでええやん。 願望、願望でベンチから見とったら、そんなんどないもならんわ。 願い事というんは、なかなか、かなわんもんや。 願望でさい配しとったら、あかん。(p.052)徹底した悲観論というか、危機管理意識というか……岡田彰布とはこういう人だったんだということを実感できる発言の数々である。確かに、岡田監督の采配にはバタバタとしたところが、ほとんどなかった気がする。先を読みながらチームを指揮しているとは感じていたが、その根底にある考えには気付かなかった。 1.自分が黙っていたら、相手が勝手にしゃべる。 2.自分が動かんかったら、相手が動く。 3.相手が動くと、対策を立てられる。 4.サインを出すから見破られる。 5.サインを出さんかったら、見破られない。 6.メッタに打たん選手が打ったら、次は打つ確立は低い。 7.ずっと打っている選手が打てなかったら、次は打つ確立が高い。 8.出番の少ない選手が打ったら、続けて使って凡退させるより、 いい感触のままベンチに下げたほうが、次の出番でいい結果が出る。 9.ドラフト上位で獲った選手は、そのときがベストの状態だから、 打ち方や投げ方を指導者が変える必要はない。 10.何もしないのが一番いいさい配。 11.ベンチが何もせず、普通に勝つチームが一番強い。(p.054)「岡田の法則」とある記者が名付けたものである。最後の二つが、岡田監督がめざすさい配、チームづくりである。 その翌年から阪神の一軍監督になった野村克也さんは、 「プロ野球で教えるべきことは、選手の短所を直してやることや」と言う。 おれは逆なんやなあ。二軍は特に、長所を伸ばしてやるべきやと思う。(p.135) おれがほかの監督と決定的に違うのは、こういう野球をやりたい、というのがないことよ。 おれは預かった戦力でどう勝つかが、監督のさい配やと思うてる。 だから戦力も見ずに、戦力とは関係なく、こういう野球をやりたいとか、 おれのやりたいのはこういう野球やとかいう人の意味が分からん。 だから最高のさい配は、何もしないことよ。 何もせず勝てる戦力が、一番強いということやねん。(p.141)試合に勝つことが目的という岡田監督。このチームを、この戦力で勝たせるためにはどうしたらいいかを考えるという岡田監督。いつも通りの勝ちパターン、安心して見ていられるけど、面白くない試合をするチームにオリックス・バファローズを変貌させてくれることを願っている。
2009.11.22
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先日から日本シリーズが行われている。 私としては、この舞台に野村監督が立っていることを願っていた。 さらには、巨人をも破り日本一の座にのぼりつめることを。 そして、それでも楽天が野村監督を解任できるか見たかった。 しかし、クライマックスシリーズ第2ステージの初戦黒星が響き、 残念ながら、その願いは叶わなかった。 もちろん、クライマックスをシリーズ終盤からの勢いで勝ち抜いたとしても、 巨人との戦力差はあまりにも大きすぎ、日本一は極めて困難だったろう。それにしても、よくぞこの戦力で長いシーズンを乗り切り、Aクラス入りを果たしたものだと思う。おそらく、他球団の監督が今年の楽天を率いていたら、最下位争いをしていただろう。そして、来シーズンの成績は、現時点において極めて心配なものである……。 *** 人間は何のために生まれてくるのか - 私はやはり、「世のため、人のため」だと思っている。 人生と仕事を切り離して考えることはできない。 とすれば、人間は仕事を通じて成長し、 成長した人間が仕事を通じて「世のため、人のため」に報いていく。 それが人生であり、すなわちこの世に生を受ける意味なのである。(p.54)まさに、哲学である。そして、さらにこう続ける。 であるならば、野球という仕事を選んだ人間は、 レクリエーション感覚で野球に取り組んでいいわけがない。 全身全霊、全知全能を懸けて対峙してくれなければ困る。 だからこそ私は結果よりも過程、すなわちプロセスを重視する。 その意味で、プロフェッショナルの「プロ」とは、プロセスの「プロ」であるといえる。 プロセスによって、人間は成長するのである。(p.54)この言い回しは、他でも度々登場する。もちろん、これは野球だけでなく、他の職業についても同じことが言えるだろう。それ故、野村氏の著作は本著に限らず、ビジネスマンによく読まれる。 中国のことわざに、こういうものがある。 財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする。(中略) 私が「人材を育てる」という意味は、たんに選手として一人前にするということだけではない。 その前に、「人間として一流」にしたかがどうかが大切なのである。 そう考えれば、名監督の条件とは -これまで述べたことを覆すようだが- 優勝回数や野球の知識といった目に見えるものだけではないのである。(中略) 監督の仕事とは「人づくり、試合づくり、チームづくり」であると私は自分に言い聞かせている。 そして、なかでも大切なのが「人づくり」だと考えている。(中略) 「人間的成長なくして技術的進歩なし」 - これを理念にしている自分の考え方は間違いないと私は信じている。(p.151)これも、野球に限らないことであるが、野村氏が嘆くように、残念ながら他のビジネスの世界でも、「人づくり」に力を注いでいる管理職は、そう多くない。 そういうアドバイスができるかどうかは、その指導者が現役時代にどれだけ悩み、考え、 試行錯誤しながら、どれだけ創意工夫を重ねたかで決まるといっても過言ではない。 名選手が名指導者になれないのは、ここに理由がある。 「おれができたのだから、おまえもできる」といって、自分のやり方をおしつけるか、 「なぜできないんだ」と頭ごなしに叱ってしまう。 その意味でも、現役時代に「感じ」「気づき」「考える」ことが大切なのである。(p.220)これは、とっても分かりやすい。天才肌の人ほど、その天才を他人に伝えることは難しいのだろう。逆に、他人に伝えることができないことこそ、それは天才の領分なのだが。 逆に大逆転をくらった阪神の岡田彰布監督は、Vを逸した責任を取って辞任することになったが、 逆転されたことばかりがクローズアップされ、 一時は巨人を一三ゲーム離したという事実にほとんど着目されることがなかった。 この年の阪神は、戦力ではやはり巨人に見劣りした。 それが最後に踏ん張りきれなかった最大の理由だったと思うが、 限られた戦力を使い、あれだけ独走したこという意味では、 岡田はもっと評価されてよかったはずだ。(p.155)こんなことに気付き、こんなふうに言った人が、どれ程いただろう?そう言われてみれば、確かにその通りなのである。そして私は、密かに来期のオリックス躍進を相当期待している一人だ。
2009.10.31
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将来を大いに期待され、南海ホークスに入団したものの、 ケガのために、実力を十分発揮できず、若くして引退。 しかし、わずか28歳で打撃コーチになると、目を見張るような活躍を始め、 7つもの球団を渡り歩きながら、数々の名選手を育てあげた。 そんな伝説の打撃コーチ、高畠導宏さんが、 還暦を前にして、高校野球の世界へ。 プロ野球のコーチという激務をこなしながら、教員免許を取得し、 筑紫台高校・社会科教員として、甲子園を目指す。規定により、プロ野球の世界を離れても、2年間は、高校野球の指導は出来ないことになっている。高畠さんは、自ら、球児たちを直接指導する日を心待ちにしながら、教員生活を過ごす中、突然、癌で亡くなってしまう。自分の夢が叶うはずの時を迎える、まさに、その目前での死。その無念さは、どれほどのものであっただろう。それが、常人には、思いも及ばないほどのものであったろうことは、誰にでも、容易に想像できる。 ***「プロ野球」と「高校野球」。自分の人生において、どちらをより高位の目標として掲げ、目指すのかと問われたとき、野球というスポーツに携わり、かつ、自身の実力に自信がある者ならば、その答えは、自明のことだと、世間の人は考えるに違いない。もし、私自身が、高畠さんと同様の実力を天から与えられ、同様な状況に置かれたならば、間違いなく、「プロ野球」の世界で、人生を全うすることを選択するだろう。それだけの、確固たる地位を、高畠さんは、「プロ野球」の世界で、既に築き上げ、まだまだ、彼の存在を欲する人がおり、活躍の場や機会が、数多く残っていたのだから。にもかかわらず、高畠さんは「高校野球」の世界を選択した。彼にとっては、そちらを選択する方が、より困難さを伴うものであったのにも関わらずだ。そこまでして、彼は、「高校野球」の世界に、何を求めたのだろうか?それは、「プロ野球」の世界で、大事を成し遂げた者だけが辿り着ける境地なのか……。それ以上に、私たちの想像を超えるのが、その一念発起した時の、彼の年齢だ。一つの世界で大事を成し遂げた者が、50歳を超えて、全く異なる世界に飛び込もうとする。そして、高畠さんは、見事にそれに成功してしまう。プロ野球のコーチを務めながら、高校教師になる準備を進め、本当に教壇に立ったのだ。 ***何時、どんな状況でも、自分自身の夢を、追い求めることが出来る。そして、それは、何歳になっても、遅すぎるということはない。もし、高畠さんが、今も存命なら、教え子たちが、甲子園で優勝旗を手にする瞬間を、きっと目にすることが出来ただろう。
2009.03.22
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真の阪神ファンなら、 野村さんから言われるまでもなく、 そんなことぐらい、とっくの昔に知っている、分かってる。 そういう事柄が、丁寧に書き綴られ、まとめられている。 でも、あらためて、こんな風に一冊の本になっちゃうと、 しかも、書いたのが野村さんだと、説得力があるんだなぁ。 中には、感覚としては分かっていたんだけど、何か上手く言えない部分、 それを、ズバッと書いてくれている箇所がある。選手に、自身を過大評価させてしまうマスコミやファン。派閥と内紛の連続、情けないフロントの姿勢等々、阪神タイガースに欠けていたものが多々あることは、本当に、ご指摘の通りだと思う。巨人を強く意識し、巨人にだけは負けたくないという気持ち、それは阪神の場合、選手もファンも、極めて強い。だから、ご指摘の通り、巨人戦後の他チームとの戦い振りと言えば、まるで、気の抜けたサイダーのよう……弱い……。野村さんによる、阪神・巨人の歴代ベストナインは、面白かった。現役で唯一、入っていたのは、阪神の金本選手。巨人の方は、メジャーに行ってしまった松井のみ。阪神のセカンドに、岡田が入っていたのは、ちょっと驚きかな。でも、野村さんが言うように、候補選手を挙げていくと、確かに、巨人の方が、どんどん名前が挙がってくる。こんな作業を通じて、客観的に比べてみると、両チームで活躍した選手、個々の力量には、確かに大きな違いがある。そして、それ以上に、チームとして目指してきたところにも、大きな違いがあるように思う。「阪神に伝統はない」と言われても、阪神のことを本当に分かっている者なら、決して言い返せない……。でも、野村さんが、監督やってくれてから、少し変わった。星野さん、そして、金本選手が、チームの意識をかなり変えてくれた。遅ればせながら、フロントも変わってきた気がする。でも、まだまだこれから。そういう意味で、今年は楽しみ。大補強のジャイアンツに、どんな戦いが出来るのか。チームとしての完成度はピカイチのドラゴンズに、どう挑んでいくのか。岡田監督が、名将と呼ばれる日は、やって来るのだろうか。
2008.02.22
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交流戦が終わって、リーグ戦が再開した日本プロ野球。 パ・リーグで6月だけなら1位と検討した楽天の野村監督が、 交流戦で転けまくり、あのスタート・ダッシュは何だったのかと ファンが嘆き悲んでいる真っ最中の巨人軍に捧げる一冊。 もちろん、本著は、今期開幕前に書かれたものですが……。 勝つために何をすべきかという、明確なビジョンが示されており、 読み進むにつれ、野村監督が目指しているチーム像や、 どのようにチームを育てていこうとしているのかが、 よ~く伝わってきました。そんな野村監督の理想のチーム像は、V9時代の巨人軍。そして、理想の監督像は川上哲治氏。確かに、あの頃の巨人は他を圧倒する抜群の強さを誇り、レベルの違いを感じさせられたものでした。そんな巨人の強さの秘密を、この一冊で知ることができたように思います。あの頃の巨人にあって、今は失われているものが確かにある。でも、巨人再生のためには、失ったものを取り戻すという方法もあるけれど、そんな考え方は、ちょっとネガティブかもしれません。過去の栄光にとらわれず、新たな巨人を作っていこうという気概こそが、再び常勝巨人軍を復活させる近道なのではないかと、私は思います。ちなみに、私は決して巨人ファンではありません。あのV9時代に苦渋を味わい続けた者の一人です。
2006.06.24
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私がプロ野球の監督で好きなのは、西本幸雄さんと仰木彬さん。 まず、阪急・近鉄を率いた西本監督に惹かれ、 その後を受け継いだ仰木さんに惹かれました。 西本監督の作るチームには、 他のチームにはない、力強さがあったように思います。 一人一人のバッターのスイングが、確かに違いました。 ただ「振る」というのではなく、 パワーがその中にこもる振り方でした。本著(ぴあ株式会社発行)は、そんな西本さんの野球人生、中でも監督人生についてまとめたもの。私の知らなかった、プロ野球創世の頃のエピソードも盛り込まれ、たいへん興味深い内容となっています。あれだけリーグ制覇を成し遂げながら、ついに日本一にはなれなかった名監督。特に、あの石渡のスクイズ失敗とその後の三振は、悔しくて、悔しくて、今でも忘れることが出来ません。でも、本著の締めくくりの言葉、「うん。俺は幸運だったと思うよ。もしどこかのチームで日本一になっていたとしても、人生が変わるようなことはなかったやろな。」で、少しは救われた気がします。※ この記事は、他サイトに2005年06月06日に投稿した記事を 移転したものです。
2006.02.07
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