第十一話【ナースコール】


フゥゥ・・・(=_=|||

霊感ナースシリーズ: 第十一話【ナースコール】




親友の霊感ナースT子が久々に電話をかけてきました。夜勤明けでドロドロに疲れ切ってる
はずが、今日は久々にちょっと怖い事があったわー、と結構興奮気味。その話を紹介します。



ナースの間では患者さんが亡くなることを「ステる」と言います。最初は「捨てる」だと
思ってたんだけど、遠藤周作の小説でも登場する言葉でルーツはどうやらドイツ語らしい。
さて、T子が夜勤に入ったその日の午前中に、一人の患者さんがステッてました。T子は
現在大病院の内科勤務ですが、内科ってイメージ的には楽チンそうで、その実、原因不明な
病気の人が一番最初に来るところであり、かつ、ターミナル(末期)の患者が各科より送られて
くるところでもあるので、結構ヘビーなんです。

亡くなったその患者さんは癌の末期で、ターミナル期の患者用の6人部屋にいた一人でした。
そしてT子が夜勤に入った深夜に、その部屋からナースコール。すぐに部屋にかけつけるが
患者も付き添いの家族も皆寝入っている。なにかの拍子に手でも当たったんだろうと詰め所に
戻って30分後、またナースコール。部屋に駆けつけたが、また皆寝ている模様。そもそも
末期の患者さんはほとんど意識のない寝たきりの人ばかりで、ナースコールするとすれば
付き添いでついている家族なのですが、念のため起こして聞いてみても該当者がいない。
変なの、と思いながら詰め所に戻った20分後、再びのナースコールです。その時、一緒に
夜勤に入っていた同僚ナースが妙なことに気付きました。

「ねえ、ナースコール、部屋の真ん中から鳴ってる・・・」

ナースコールは通常ひとつのベッドにひとつナースコールボタンが付けられていて、どのベッド
(患者さん)からのコールかが詰め所ですぐわかるようになっています。T子の病院では、部屋の
中央にもひとつ、万が一用のコール線が張ってあるので、詰め所のナースコールボードには
各部屋の真ん中にもひとつコールのライトがあるんですが・・・ 万が一用なので当然ワイヤーは
つながれていません。つながってないはずのそのライトが、光っている。ナースを呼んでいる。

この手の体験には慣れっこのT子もさすがにゾクッときたそうです。しかし、コールを無視する
わけにはいかないので、また部屋に行き、患者の家族に声をかける。やはり誰も鳴らしておらず、
また、誰かが部屋に入ってきていたずらした気配もなかったそう。

これは・・・ 間違いないね・・・ と詰め所に戻ったT子と同僚。その後もナースコールは、
20分おきが10分おきに、10分おきが最後には5分おきにと鳴り続け、朝の日の出の時刻に
ぴたっと止まったそうです。



さて、この話の後にT子が続けたおまけ話。
亡くなった患者さんって、自分が亡くなった事に気付いてない人が結構多いらしく、生前の通り
病棟をウロウロしてるんだって。T子がここ最近見かけたのは、談話室に座って通り過ぎる人達を
じーーーっと見つめているひと、車椅子でキコキコ廊下を進むひと、それから点滴スタンドを
持ってナース詰め所の前に突っ立ってるひとだそうな。全部今は亡き元患者。
しかし、目を合わせると、「あ、この人、おいらのことが見える」って嬉しがって着いてくるので
気付かないふりで知らん顔のまま仕事するそーな。






※文中の「私」(語り手)は、bittersweetだったりババだったりT子だったりします。
 私や周囲の不思議体験をごっちゃに紹介しているので。ご了承ください。




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