世界で一番愛する人と国際結婚

別離は次の出会いの為の苦行




2003年の夏


大殺界の真っ只中にいた私にとって、正に暗黒の夏だった。

ブランへの連絡を絶って、1ヶ月が過ぎた。苦しい1ヶ月だった。
まだ自分への点数は僅か30点だった。


その頃、連絡のつかない私に会いに、ブランが突然2泊3日で
日本にやってきた。


まさか、私にプロポーズをしにきたのでは?
ぬか喜びだった。ブランの考えは変わっていなかった。


「君のことは本当に愛している。結婚のことはずっと考えていた。
でも、今はまだ結婚が怖い。もう少し時間が欲しい。
自分勝手なのは分かっている。
でも、どうしてもこのまま関係を続けられないだろうか。」


「時間が欲しいって、あとどれくらい?」


「それは分からない。」


ブランは黙りこくってしまった。


私は同意できなかった。もう、結婚がまだ分からないとか怖いという
言葉も聞きたくなかった。


遠距離恋愛になって半年。付き合ってから、そろそろ4年になる。



「ブランとは一体どうなってるの?結婚しないの?」


「結婚したい程、プルメリアを好きではないんじゃない?」


「ひどいよね。プルメリアを振り回しているんじゃない?」


今思えば、周りからのそういった声に、私は負けてしまった。
彼の本当の愛情を見ようとせず、『結婚』にこだわってしまった。


私は、もう終わりにしたいと告げた。


もう2度と会うことはないかもしれない。何か彼に言い残したことは
ないだろうか。


別れる前に、せめてブランに子供でもいたら引き取りたかったと思った。
何かブランの形見のようなものが欲しかった。

私の子供でなくていいから、ブランの血をひく子供、できれば息子で
ブランにそっくりの男の子。


「私、貴方の息子が欲しかったな。そして、お父さんのような
男になりなさい、と言いきかせて育てたかったな。」


私は言った。



ブランも泣いていた。



ANAホテルから、成田に向かうリムジンバスに乗り込む彼を
見届けた後、彼が振り返る前に私はその場を離れた。


こうして私は、終にブランとの4年間の恋人関係に終止符をうった。


失恋から立ち直るには、何より時間が必要だと分かっていた。
自分への点数は0点から始めることにした。


涙に暮れる日々。そしてしばらくの喪失感の後、もっと効果のある
治療法に入らないと駄目だと気づいた。
つまり、『次の人を見つける』ということだ。



つづく



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