パブロ・ミラネスは、キューバ出身のシンガーソングライターで、1943年生まれ。楽器はギターとピアノを演奏する。同世代に属するシルビオ・ロドリゲスと並んで、キューバの"ヌエバ・トローバ"を確立したアーティストとして知られる。"ヌエバ・トローバ"というのは、キューバ革命(1959年)後のキューバで1968年から1970年代にかけておこった文化的・音楽的ムーヴメントを指す。"ヌエバ"とは、スペイン語で"新しい"という意味で、"トローバ"は"詩"を指す。ちなみに"トロバドール"はそれを実践する"詩人"の意味。 パブロ・ミラネスは、70年代から現在に至るまで、編集盤を除いても40枚はあろうかというほどの膨大な数のアルバムを出しているため、その一部しか聴いていないが、本盤は、筆者が最初に聴いたアルバムとして強く印象に残っているものということから、まずはこれを紹介しようと思う。 アルバム・タイトルは『コミエンソ・イ・フィナル・デ・ウナ・ベルデ・マニャーナ(Comienzo y final de una verde mañana)』、日本語に訳すならば、『とある緑の朝の始まりと終わり』という意味で、収録曲6.のタイトルがそのままアルバム名になっている。このタイトル曲も美しい旋律を持つが、何といっても、ハイライトは5.「ブレベ・エスパシオ・エン・ケ・ノ・エスタス(気がいないわずかな隙間)」である。アルバム後半の曲順がややまとまりに欠ける感はあるものの、概ねどの楽曲もピアノとヴォーカルが奏でる旋律の美しさがきれいで、詞がわからなくても楽しめると思う。上記以外に筆者のおすすめは、1.「ノ・ア・シド・ファシル(容易ではなかった)」、2.「ア・ベセス・クアンド・エル・ソル(時折、太陽が)」、4.「ロス・アニョス・モソス(若き頃)」、9.「36ペルダーニョス(36段のステップ)」。 何分、キューバの音楽なので、アメリカでの流通がよくないことから(かつては一切流通していなかった)、入手しにくいのは確かだが、このアルバムだけがいいわけではなくて、たいていどのアルバムにも外れがない。そんなわけで、どこかでパブロ・ミラネスの名を見かけたら、ぜひ一聴をおすすめしたい。
[収録曲] 1. No ha sido fácil 2. A veces cuando el sol 3. Pobre del cantor
5. Breve espacio en que no estás 6. Comienzo y final de una verde mañana 7. Ya se va aquella edad 8. Blas 9. 36 peldaños 10. Nicaragua