音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年01月03日
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テーマ: Jazz(2004)
カテゴリ: ジャズ




 音楽の世界には、"必然的名演"と"偶発的名演"があると思う。クラシックのように演奏方法が安定しているジャンルでは、必然的な名演奏が生まれやすいのだろう。けれど、ジャズのように即興性という要素が強いジャンルになると、見事なメンバーをそろえても必ずしも名演が生まれるとは限らず、"やってみなければわからない"という不安定要素が残る場合が多い。とくにアドリブが多く含まれる分、やってみてうまくいく事もあれば、そうでない場合もあるというわけだ。

 無論、ジャズの中にもしっかりと考え込まれ練られた名演というのもある。今までに紹介した盤からいくつか例を挙げると、マイルス・デイヴィスの 『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』 とか、カーティス・フラーの 『ブルースエット』 、あるいはMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の 『たそがれのヴェニス』 などといったアルバムは、いわば計算通りに出来上がった名作である。言い換えれば、1+1が2になるとか、2×2が4になることがある程度予想できたものと言える。しかし、1+1がマイナスになるかもしれない、掛け算をすると数字が減るかもしれない、という、普通の計算とは逆の場合もある。つまり、今回紹介する作品は、上記のものとはある意味で対極にあり、偶発的に生まれた名演の典型と言ってよい。そして、ジャズの世界ではこうした"偶発的名演盤"の方がむしろ主流と言った方がいいかもしれない。

 本盤『サキソフォン・コロッサス(Saxophone Colossus)』(通称“サキ・コロ”)は、テナー奏者、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)がプレスティッジに吹き込んだ代表作で、"一家に一枚"的な名盤としてよく紹介される。バックを務めるのは、トミー・フラナガン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、マックス・ローチ(ドラム)。なるほど名盤が仕上がりそうなメンバーである。しかし、このメンバーが揃ったからといっても、それは、本作が名盤になる上での必要条件が整っていたに過ぎない。問題は、実際にやってみてどうなるかであり、アドリブにかなりの比重が置かれるロリンズの演奏だけに、"やってみないとわからない"という危うさが当然のように伴う。しかし、本盤に関しては、結果としてうまくいき、超名演に仕上がった。その結果が天下の名盤『サキソフォン・コロッサス』という訳である。

 このことは、ところどころで様子を探るようにタイミングを計り、ここぞと言う時に一気になめらかなアドリブを噴出させるロリンズの演奏に注意して聴けばすぐにわかる。有名曲の1. 「セント・トーマス」 を例にとると、出だしのテーマは、遠慮がちに柔らかくテナーを吹く。続くアドリブでは、"ブブッ、ブブッ"とよくわからない音が最初にある。これこそ周囲の様子を伺っているわけで、来たるべきタイミングがあった瞬間、なめらかなメロディが一気に噴き出す。その後のドラム・ソロの後、待ち構えていましたとばかりにサックス・ソロが来るが、この頃には既にロリンズはのりまくっていて、見事なフレーズを連発する。ここまで来れば、後は上記のメンバーである。トミ・フラ(トミー・フラナガン)も見事に流れにマッチしたピアノ・ソロを披露し、ロリンズはと言うと、のりにのったままテーマへと戻り曲を締めくくる。




[収録曲]
1. St. Thomas
2. You Don't Know What Love Is
3. Strode Rode
4. Moritat
5. Blue Seven

Sonny Rollins (ts)
Tommy Flanagan (p)
Doug Watkins (b)
Max Roach (ds)

録音: 1956年6月22日






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Last updated  2016年02月18日 19時48分43秒
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