A面のワンホーン作品は"This Time the Dream's on Me"から始まるが、コッテリした味付けを期待していただけに、爽やかな演奏にまず驚かされる。デューク・ジョーダン、トミー・ポッター、アート・テイラーという薄味系のリズム隊のおかげかもしれない。2曲目の"How Deep Is The Ocean"は、バリサクならではの落ち着いた語り口でマッタリと聞かせる。3曲目はなぜかランディ・ウェストンの曲で"Chessman's Delight"。この曲はB面のクインテットで演奏した方が良さそうな曲で、バリサクでは今ひとつキレが悪い。ラテン調の4曲目"Arnetta"もやはりバリサクでは辛いようだ。
B面はドーハムの大活躍により、素晴らしいハードバップ作品となっている。流石はハードバップの当たり年1956年録音の作品だと唸らせるものがある。1曲目の"Saucer Eyes"は再びランディ・ウェストンの曲だが、この曲がドーハム・ワールドにピッタリの曲なのである。ペインもドーハムもリラックスした雰囲気でのびのびと吹いている。ジョーダンのピアノソロもコロコロと転がるようで、ここまでは幸せなムードに溢れている。しかし、2曲目"Man of Moods"はマイナーのアップテンポ曲。この手の曲が大得意のドーハムは容赦なく必殺技をキメまくり、ハードバップまっしぐらな世界に突入する。クールだったペインの音が徐々に暑苦しくなる様子がよく分かる。盛り上がってきたところで、ブルースナンバー投入となる。明らかにペインのノリが良くなってきた。最後の曲はバップの聖典"Groovin' High"。ペインもドーハムもバップ魂に火がついたらしく、燃焼度の高い演奏をぶちかましてくれる。