PR
Comments
別れの情景はいつもいっしょだ
『さよなら』とひとこときみが言い ほんのしばらく間をおいて
『さよなら』とぼくが応える
そのとき
きみの「さよなら」とぼくの「さよなら」に
一瞬の空白がある
<何を考えているというわけでもなく>
ありふれた日常の言の葉は
まるでシュレッダーにかけられて
すべてが解体され意味を喪うかのようだ
解き放たれた沈黙の空間に
「さよなら」だけが通い合う
再会のときが来れば
解体された
ありふれた日常の言葉たちは
また甦って
昨日今日の瑣末やら音信やら
とめどもなく
小鳥の囀りのように
撒き散らされる
そして 秋の夕暮れ
別れのときはいつもいっしょ
『さよなら』ときみが言い
一瞬の沈黙の余韻のなかで
『さよなら』とぼくが応える