アオイネイロ

May 7, 2009
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カテゴリ: 小説
「なー、はーやーてー」
遊びに来てそうそう、疾斗は寝転がったまま疾風にそう声をかけた。
けれど返事は無い。完璧にシカトを決め込んだらしい疾風は、無言で大剣を振るう。
「はーやーてー、なーなー。それ楽しいか~?」
額から流れ出る汗を拭っている疾風にそう声をかける。ぶっちゃけ見てる方としては退屈だった。
「……煩いな。何だと言うんだ。凜にでも会いにいったらいいだろう? 我に構うな」
流石に喧しく思ったのか、鋭い目つきで疾斗の方を見た疾風がそう言う。

「凜は今日出かけてるんだよなー。疾風、遊ぼーぜ」
「何で我が貴様に付き合わなくてはならないんだ。冗談はその頭だけにしろ」



「なーってばー。はやてー、なあなあはーやーてーー」
「っああ、煩いっ!」

30分程ずっとこんな調子の疾斗に、流石に我慢の限界が来たのか、疾風がそう叫んだ。
普段滅多に感情を表に表さない疾風だが、疾斗に対してだけは若干感情的になる。
というかどんだけ嫌いなんだ。
そのまま大剣を掻き消すと、疾風はさっさとどこかに行ってしまう。
「お、おい疾風?」
慌てて声をかけるが、そんなものは無視だ。
すぐに戻ってきた疾風の手には、一冊の本。
本と言ってもあきらかに薄く、幼児向けのものだ。
「貴様はこれでも読んでろっ!」

何故疾風がそんな絵本を持っていたのかというのも若干疑問だが、そこは置いておこう。
「な、んだこれ?」
新しい玩具を与えられた子供のような表情で、疾斗がそれを手に取った。
そこには『よいこのどうぶつえほん』と書かれている。
表紙は、可愛らしいライオンの子供の写真。

疲れたのか、疾斗の隣に座る疾風と、絵本をぺらぺらと捲る疾斗。

「すげぇぞ疾風! きりんだって! 首なげぇ!!」
「……疾斗、貴様馬鹿だろ」

一人で興奮してる疾斗と、冷めた目でそれを見つめる疾風。

「あ、鷹だ鷹! お前だろ!? 鷹なれるんだろ? なぁなぁ」
「………煩い」

絵本一つでここまではしゃぐとは思っていなかったのだろう。
疾風が大きくため息をついた。


続く、気がする。





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Last updated  May 7, 2009 10:31:43 PM
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