2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
全10件 (10件中 1-10件目)
1
![]()
筒井康隆『愛のひだりがわ』新潮文庫荒廃した近未来の日本を舞台に、多くの仲間に支えられてさまざまな困難を乗り越え成長してゆく少女を描いたジュヴナイル。後輩の勧めで読んだ。いまさらジュヴナイルもないだろうなどと思いながら読み始めたが、意外と面白い。この本を貸してくれた後輩に感謝している。どうもありがとう。これまで何冊か筒井康隆の作品を読んできたが、同氏によるジュヴナイルはこれがはじめて。こんどはあの傑作『時をかける少女』あたりでも読んでみたい。主人公月岡愛は、父を探すたびの中で出会いと別れを繰り返す。さまざまな事件に巻き込まれつつも、愛の不自由な左側には常に彼女を守ってくれる仲間がいた。数多くの体験を重ね、成長していくというストーリーは、子供から大人への成長を描く物語の定石を踏んでおり安心して読める。また、冒険の舞台となる日常的に暴力が横行する荒廃した不条理な世界は筒井康隆特有のブラックさを持っており、月並みで単調になりかねないストーリに刺激を与えると共に、さまざまな問題を読者に提起している。一見細切れにも見れるたびの途中の各エピソードは最後にひとつに繋がり大団円を迎える。成長と同時に、少女時代の特権を喪失してしまうというラストの物悲しさも、この手の成長物語の醍醐味の一つ。非常に良く出来たジュヴナイルの王道である。
2006.11.29
![]()
『ワールド・ムック Pen&letter 万年筆スタイル3 未来行き万年筆』ワールドフォトプレス 待ちに待った『万年筆スタイル3』。万年筆の未来像はここにある。今号は「子供に残したい限定万年筆」の企画がなく、代わりに「限定万年筆のモノ造り・モノ語り」という企画が掲載されていた。これは、限定万年筆をマーケティング的発想から考察しなおすという企画で、切り口がとても面白い。万年筆を筆記具としてではなく、ビジネスルーツとしてあるいはファッションアイテムとして見る主張を最近良く目にする。一方で、万年筆の真価は書き心地の良さにあるという意見も根強いし、見た目が良くても書き心地の悪ければマニアから高く評価されていないようである。確かに、日本人は高級万年筆や限定万年筆にも書き味のよさを求める。しかし、これは、一見当たり前のことだが、海外のコレクターはボディーの装飾や細工の美しさに鑑賞するだけで、書き味は追求しないという人が多いそうである。(「万年筆の未来を楽しむ男」の記事より)実際に、現代において万年筆の価値を筆記具として考えるとそんなに高くはない。万年筆好きの私でも、学生生活の中で筆記具は万年筆よりもシャープペンシルをよく使っている。ビジネスマンならば、ボールペンを良く使うだろう。そう考えると、万年筆の魅力は筆記用具としての能力以外のところにある考えるのが自然だろう。そもそも、万年筆に何万円も何十万円もかけたところで、値段に見合った書き味が保証されているともいえない。それでも高級万年筆を買ってしまうのは、それ以外のところに価値を見出しているからに他ならない。この『万年筆スタイル3』のテーマは正にそこにある。今号の目玉記事「未来行き万年筆」は、未来における万年筆のあり方を、クラシックカメラや手巻き時計と同じ道に見出すという内容のものである。たしかに、趣味性の強い現代の万年筆ブームは、機械式時計の流行と類似している気もする。
2006.11.28
![]()
手嶋龍一『外交敗戦 130億ドルは砂に消えた』新潮文庫湾岸戦争における日本の外交の失敗を描く。この前、フォーラムで手嶋龍一の講演を聞いた。その鋭く的確な分析と、持っている人脈の凄さに、この人の本を読まねばとこの本を買った。現在大学院生である私には、いまから10年以上も前の湾岸戦争に関するリアルタイムの記憶はほとんどない。もちろん後からそこそこの知識は得ていた。しかし、この本を読んで、外交の難しさを再確認させられたと共に、当たり前のことを当たり前に出来なかった当時の日本の情けなさに改めてがっくりきた。今回のイラク戦争の時には「湾岸戦争のときの失敗を繰り返してはならない」と、自衛隊の派遣がすんなりといった。湾岸戦争の失敗について大雑把なことを後から知っただけの若者である私には、「イラク戦争のときの自衛隊派遣の快挙は、湾岸戦争のときと比べて隔世の感がある」といわれても実感があまりわかなかった。しかし、この本で湾岸戦争の時の外交交渉の様を読んで、その意味が分かった。冒頭でちらりと書いたフォーラムで手嶋氏は、北朝鮮問題を中心に日米同盟の揺らぎと米中の接近について話された。日米同盟の重要性は多くの人に理解されているが、その同盟脆さを認識している人はあまり多くない。あくまで同盟関係は、双方の利害が合致することによって維持されている。また、同じ理念や価値観を共有しているかや、長期的戦略を共有できるかも重要となる。日米同盟は必ずしもいつまでも磐石であり続けるとは限らない。しかし、それでも日本は日米同盟を維持し続けるべきである。この本はそのことを思い出させてくれる。
2006.11.27
![]()
五木寛之『(改訂新版)青春の門 第一部 筑豊篇』講談社文庫不滅の青春大河小説『青春の門』の第一部。本当は尾崎士郎の『人生劇場』を読みたかったのだが、絶版となっておりなかなか手に入らない。いずれは古本で買って読むつもりだが、先に『人生劇場』を手本として書かれた五木寛之の『青春の門』の方を読んでしまおうと思う。この『青春の門』も世代を超えてよみつがれる傑作で、むしろこちらの方が有名かもしれない。学生の間に「再起篇」までは読みたいと思う。今回読んだ「筑豊篇」で描かれているのは、主人公伊吹信介の生い立ちと少年期のエピソード。期待して以上に面白く、一気に読んでしまった。早く続きが読みたいのだが、まだ「自立篇」買っていない。まとめて全部買えばよかったと後悔している。
2006.11.23
![]()
『ワールド・ムック GOOD STATIONERY 文房具スタイル』ワールドフォトプレス贈り物という切り口で、ハイセンスな文房具を紹介。プレゼントとしてのステーショナリーという視点が面白い。贈る側の視点で読んでも、貰うならばこれかなあと考えながら読んでも面白い。贈るときの参考になるかはともかく、欲しくなったものに関しては自分で買うことになるのが現実なのだが。それはさておき、気になったのはこのムックは何歳くらいを読者層と想定しているのだろうか?私はこの本を大学内の書店で買ったのだが、内容は30前後のサラリーマン向けの気がした。最近、文房具や万年筆がブームらしいが、周りを見ても学生の間では特に流行っている兆しは見えない。
2006.11.19
![]()
別冊宝島編集部『戦後未解決事件史 -反抗の全貌と「真犯人X」-』宝島社文庫数々の未解決事件の概要と、その事件の検証、そしてそこから見えてきた底知れぬ闇。なんとなく手にとって読み始めた本ではあるが、読み出せば面白い。奇怪な事件の裏にある真実を知りたいという好奇心を持つ人は多い。しかし、平凡な日常を過ごす私のような人間には、裏の世界の世界の実情など知る由もない。だが、このような本を読めば、アンダーグラウンドを垣間見た気になれる。退屈な日常では味わえない刺激的な興奮を求める心理が、分厚いベールの奥に秘匿された真実を知りたいという欲求の源なのだろう。
2006.11.18
![]()
中西輝政『なぜ国家は衰亡するのか』PHP新書歴史上の多くの事例から衰亡していく文明のパターンを導き出す。ローマ帝国末期、大英帝国末期と現代日本を重ね合わせると恐るべき共通点が現れる。モラルの低下、社会意識の衰弱、癒しブーム、大都市での刺激的な生活、パンとサーカスを求める大衆…。これらは、文明の衰退の予兆だという。今の日本を含めた国が一番恐れるべき衰亡のシナリオは、「内なる原因」による衰退だという。いろいろ思い当たることがある上に、過去の事例を読むと、現代日本は衰退の真っ只中にあるように思えてならない。亡国論が流行る頃は亡国の恐れは少なく、亡国の危機に瀕しているときには亡国論はあまり出てこないそうだ。直面している危機に、危機意識を持って真剣に対処出来るかどうかが今後の課題となる。危機だと気付いた頃には、破局を迎えていたなんてことにならないようにしたいものだ。衰亡というテーマは恐ろしいが面白い。今度は、ポール・ケネディーの名著『大国の興亡』を読んで、国の興亡についてもっと学びたいと思う。
2006.11.16
![]()
山口淑子『「李香蘭」を生きて 私の履歴書』日本経済新聞社日経新聞の人気連載「私の履歴書」に綴られた李香蘭こと山口淑子の自伝。上戸綾の主演で2007年春に放送される「李香蘭」の原作。この前、国立民族学博物館の、みんぱく映画会「サヨンの鐘」上映会に行ってきた。銀幕の中で軽やかかつ華やかに歌う李香蘭に関心を持ちこの本を読んだ。劇団四季の昭和三部作で「ミュージカル異国の丘」と「ミュージカル南十字星」は見ながら「ミュージカル李香蘭」を見逃してしまい、激しく後悔していたことも、本書を手に取った理由の一つ。昭和の激動の歴史に翻弄された山口淑子のたどった自伝を読み終えて、「ミュージカル李香蘭」を見に行かなかったことへの後悔は増した。また、李香蘭主演の昔の映画をもっと観たくなった。レンタルビデオショップにあればよいのだが。
2006.11.12
![]()
北尾トロ『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』文春文庫事件の裏にある人生模様を浮き彫りにする裁判傍聴記。難しい法解釈ではなく、人間の生き様にスポットライトをあてる。ワイドショーばりの野次馬的な好奇心の対象として裁判を見てみると、不謹慎ではあるが確かに面白い。裁判所は、人生何があるかわからないということの実例が豊富な展示場である。私は法学部に入ったばかりのときに、一度裁判を傍聴しに行ったことがある。法ではなく政治を学ぶようになって、裁判への関心はなくなっていたのだが、本書を読んでまた傍聴に行きたくなった。
2006.11.11
![]()
石井英夫『産経抄 それから三年 2001~2003』文春文庫産経新聞朝刊一面の人気コラム「産経抄」の特選集。最近は便利な時代で、ネット上で各新聞社のコラムをただで読める。朝刊一面のコラムは、ベテラン中のベテランが書いており、文章がとてもうまく、どこの新聞のものも非常に面白い。内容は各紙の論調に沿ったもので、重大事件が起きた際に読み比べると大変面白い。その中で、一番共感するのが産経抄。この本でまとめて産経抄を読むと、時代の雰囲気が蘇ってくる。あんなこともあった、そんなこともあった、と当時のことを思い出しながら読んだ。いまから5年から3年前のコラムだが、少しずつ時代が変わってきているのを感じる。
2006.11.06
全10件 (10件中 1-10件目)
1