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2007.03.24
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カテゴリ: 教養・実用


PHP研究所



李登輝前総統、現代台湾の問題と人生哲学、政治哲学を語る。

両岸の経済関係がますます深まりを増すなか、台湾では「大陸との経済的関係の深化」と「台湾としての自立」との折り合いをどうつけるのかが問われている。台湾の大陸への投資が増え海峡両岸の経済的な一体化が進み、逆に大陸の台湾への影響力が増してきている。
そのような状況のなか、『壱週刊』に掲載された李登輝氏のインタビュー記事が、李登輝は「転向」したのではないかとの議論を巻き起こした。

改めて李登輝の主張を整理するために『台湾の主張』を読んだ。台独についての李登輝の基本主張は、すでに独立しているのだから改めて独立を声高に叫ぶ必要がない、というもの。『壱週刊』のインタビューそのものは読んでいないが、日本で紹介された論説を読む限り、今回も記事もこの路線に沿ったものに思えた。
本省人でありながら中華民国総統になったほど政治感覚に優れており、また行政の実務面にも詳しい李登輝のこと。真意を知るためには、その発言の政治的意図や、より実際的な技術的問題についても考えていかなければならないだろう。

ただ、この本で気をつけたいのは、あくまでこの本は「李登輝の主張」だということ。本省人の主張はだいたいこのようなところなのだとは思うが、=「台湾の主張」ではない。台湾辿った数奇な運命と、それに起因する重層的なアイデンティティーの重層性が、問題を複雑にする。

その昔は「化外の地」とよばれた台湾は、日本の植民地となり近代化を遂げる中で、中華世界とは一線を画す独自性を現してくる。そして日本の敗戦後に中華民国がやってきた。しかしその光復の実体は目を覆わんばかりのもので、「イヌが去ってブタが来た」と揶揄された。台湾にやってきた国民党は、2.28事件の大弾圧を行なった。毛沢東の中共に大陸を追われた国民党は、逃げ込んだ先の台湾から中国全国を代表する正統政府との姿勢をとり続ける。政権は蒋介石から蒋経国に移り、大陸反攻はもはや外省人も信じなくなった。それでも戒厳令は解除されず、少数者である国民党が台湾を牛耳る一党独裁体制が続いた。その後、蒋経国の病死により跡を継いだ李登輝は本省人。李登輝の下で、台湾は民主化を進めながら、台湾としての独自性を取り戻し、新しい台湾アイデンティティーを模索しつつある。

現在では外省人も新台湾人として台湾帰属意識を高めてきている。それでもやはり、本省人と外省人とでは主張は異なるだろう。これからも「中華民国在台湾」でよいのか。それとも、名実共に独立し、中国とは異なる台湾という国民国家を作り上げていくのか。大陸との経済的結びつきが深まるいまこそ、台湾は中国とはどう違うのか、台湾とはそもそも何なのかが問われてくる。李登輝の後の台湾ではどのような主張がなされていくのか注目していきたい。





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Last updated  2012.04.10 13:01:07
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