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ヴィンセント劇場<第三幕>


 かなり手間取ったが、魔物達を退ける事が出来た。銃身から生暖かい熱気が残る愛用の銃をホルスターにおさめると、ヴィンセントはその場でしゃがみこむ。
「おいちゃんは強いなあ」ヴィンセントのかたわらに座りながらナナキが言う。
『おいちゃん・・・』ヴィンセントはムッとして睨みつけるが、当のナナキには通じない。長い尾を振りながら上目使いで笑うだけである。
『私はまだ若い、おっさんはあっちだろうに・・・』そう思いながら、くわえ煙草で槍を振り回しているシドの方に目をやる。
「くうっ、一仕事の後の一服は美味い」まだまだ物足りない様子は、歳に似合わず元気な男である。
「だんだん強い魔物が出て来るね」そう言いながら、前足をなめ始めたナナキの方に目を向けた。
「怪我をしたのか、どれ見せてみろ」ヴィンセントは慣れた手つきで、ナナキの前足に手当てをする。
「ありがとう、おいっちゃん。ちょっと避けきれなかったんだ」屈託無く言うナナキに、ヴィンセントは何も言えなくなってしまう。
「ねえ、おいちゃん。あいつ大丈夫かなあ」ナナキの言うあいつとは、クラウドの事である。ナナキから見ると、クラウドは同世代に見えるのだろう。
「さあな、本人の心の問題だ。俺たちが兎や角言う事では無いな」口にはそう言いながらも、『おいちゃんはやめてくれ・・・』と頭の中で思うのだった。
「ううん・・・、よくわかんないや」怪我をした所を上にして組んだ前足に、頭を乗せた格好でナナキが呟く。
「時が経てば、心の傷も癒えるだろう。多分な・・・」そう言いながら、手元にあった草を引き抜いて口にくわえると、ヴィンセントは空を見上げる。
雲一つ無い青い空が、一面に広がっている。『俺も・・・、人の事は言えんか・・・』
事情を知らないナナキは、不思議そうな目をしてヴィンセントを眺めながら首を傾げる。
「おおっ、帰ってきよったか」シドの声に我に返ると、ヴィンセントとナナキはシドの目線を追って振り返った。
クラウドとティファが走って来るのが見える。
「元気になったみたいだね」嬉しそうにナナキが言う。
「ああ、そのようだな」ナナキの言葉に、合わせる様にヴィンセントは言う。
『表面上は元気そうだが・・・』大きく手を振りながら走って来るクラウドを見つめながら、ヴィンセントはゆっくりと立ち上がった。
大切な物を失った悲しみは、よく解っているのである。
刻み込まれた深い傷が、簡単に癒される物ではない事を、誰よりも彼自身が知っているのである。


                                FF7 Act2-17以後


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