地上12,000mmの沃地

地上12,000mmの沃地

空歪みの塔 GREEN(ブドウっ葉編)



緑色の扉を開けて中に入る

中は木漏れ日のようなライトグリーンの煌めき
もう私たちは、森の中だ。

メンバーは、私、リセポン、ヘロディアの娘サロメ。
落葉樹の明るい森。 枝の間から見える青空の吸い込まれそうな青。
呼べばピリカもやってくるんじゃなかろうか。

ここでは感覚を総動員して探検するんだよ。

サロメ「黄金の木とか、宝石の泉を探すの?」

(^^;)それもあるだろうけどさ、そのままのものが
あるがままで美しいとかそういうのを探すんだよ、たぶん。
そのままでいいんだよ。

サロメ「そっか(笑)」嬉しそう。

じゃ行こう。

手を繋いで歩きはじめたところだったのに。



サロメが消えてしまった。

「あるがまま、そのままでいいんだ。」ちょこっと微笑んでつぶやいたサロメ。
サァァ…と色を失って、みるみるうちに姿が薄れて…ショールだけが残って
地面に舞い落ちた。



私の手の中には柔らかな軽い灰があっただけ。
思わず開いた手のひらから、あっというまに飛んで去った。
なんで?なんで?なんで?
あんなに楽しそうだったのに。

結び目がほどけたように、彼女は存在しなくなってしまった。

森、生き物たちの気配、風も空も全然変わらないのに。
彼女のショールを拾い上げた。 

こんなのない。  涙が止まらない。


澱んだ宮殿から、あの子を連れ出せただけでも、善かったんだろうか?
ふと 拾い上げたベールを見てみる。
紫地に金のアラベスク。滑らかな手触り。
最初に会ったときは黒い総レースのだったのに。
これも天使の謀?
…冗談じゃないわ。

あの子に見せたいと思ったもの
自力で咲いてる花
蜘蛛の巣作り
狐の子育て


魔法のアイテムなんか欲しくない。。。。
そのままで随分、ぼさ~~~っとしていたらしい。
涙も乾いてた。 疲れた。 背中痛い。

水音がする
リセポンが心配してる。 ゴメン。
そっち行ってみようか。


泉があった。
きれいな水。
小さな滝。
廻りの草木もたっぷり水を含んでいる。
銀巫女さんが伝えてくれた
ルシフェルの言葉通りの泉。



あははは。
傷など負うまでもない。(自嘲気味に思う)

ホラここ(心臓の場所)にある。
古い傷。
箱から振り出されたようにコロリとでてきた塊。

鳥の死骸のよう。

干からびた羽根。
カサカサの血糊。
ぐっちゃぐちゃの血塗れになった後、乾いちゃったもの。
翼以外の形が分からない。

泉の水に浸してみたけど、硬く乾き過ぎていて
すぐには水を吸い込むことすら出来ない。
枯渇するってこういう事なんだ…

戻るのかしら、、、、、プカプカ浮かんでる其れに水をかけながら思う。
何んなのこれって?


どうやら。

もがれた天使の翼(しかもフリーズドライ)
それがどうして、私の心臓に収まっているわけ?
とんだ聖遺物箱だね。 
そんな埒もないことばかりを考えなから、水をかけ続けるうち
徐々に瑞々しさを取り戻し始めた翼。


翼と卵と。卵から翼だ。

とりあえず瀕死状態から仮死状態まで戻ったらしい翼。
(ぴくりとも動かない)
心臓くらいの白い卵から生えているのを元の場所に
納め直す。
当然、背中から突き抜ける翼。(苦笑)

泉の縁から底へ向かって、白い石の階段が降りている。
次の扉まで続いている。


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