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2010.11.07
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カテゴリ: Editor's Life




 私が出版社に入社した当時は、(当時もワープロはありましたが)ほとんどの著者の方が手書きということもあって、 上司や先輩から原稿を手渡された新人の私は、 コピー機の前に陣取って、 一日何時間も原稿のコピーをしていたこともありました。 

 実は、これには2つの理由があって、執筆依頼の際に著者に渡していた当時の原稿用紙がとても薄くて柔らかったことと、今と比べてコピー機の性能がそれほど良くなかったために、連続コピーをすると紙詰まりを起こしやすかったのです。  そのため、 原稿を1枚1枚ガラス面に置いてコピーすることが多かった、という事情がありました。

 出版社が舞台のテレビドラマで、新人の編集者がコピー機の前でひたすら原稿をコピーする場面がよく出てきますが、当時の私は、まさにそうしたことの繰り返しだったような気もします。 今は著者から頂く原稿はほとんどが入力原稿なので、原稿をプリントアウトしたもの(ハードコピー)と入力データ(MOやUSBなど)の双方を頂けるようになり、そうした点では、当時と比べて作業の効率が上がったことは確かです。

 そのため、著者から手書きの原稿 (生原稿) を頂くと、今でも私は緊張します。  一つには、 やはり生原稿には作品を完成するまでの著者の格闘の跡が生々しく残っていること。そして、もう一つは、目の前の原稿が、この世に2つとない(入力原稿のように、データとして残っているわけではない) からです。 もちろん、入力原稿には著者が苦労した跡が見られないということではなく、手書きの原稿では、それをリアルに感じやすいということが言えるのではないかと思います。

 将来、 (今でも少なくなってしまった) 手書きの原稿が更に減ってしまい、その一方で、電子書籍で読書することが当たり前の時代になったとしても、個人的には、手書きの原稿は、できれば紙の本として出版したいという思いがあります。もちろん、手書きの原稿も(編集者が割付した後に) 印刷所のオペレーターの方がそれに基づいて組版し、結局はデータ (入力された原稿) になってしまうわけですが、手書き原稿にはそれが醸し出す独特の雰囲気があって、それは、手触り感のある紙の本の方が (言葉でうまく表現できないのですが) 似合うのではないかと思っています。 

 でもこのことは、今後は入力原稿は電子書籍がいいとか、今後も手書き原稿は紙の本がいい、ということではなくて、大切なことは、その作品にとって最もベストなカタチを選択することではないかと思います。






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Last updated  2010.11.08 19:26:55
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