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DERICIOUS!
おにぎりの誘惑~~ダイヤモンドは永遠の輝き~~(仮)
実在する方々とは何の関係もありませんからね。気に留めたりなさらないように。。。
ちなみに、私自身は「血は裏切らない」と信じている方なので、
ご両親が何かしらのプロフェッショナルである場合、
お子さんには間違いなく引き継がれたもの、あるいはそれ以上のものが
入っていると思っています。
設定。
主人公45歳。54では時間が経ちすぎかと。
青春時代を野球に全力投球してきたが、高校3年の夏の甲子園で
前代未聞の間違いを犯す。
主人公ただ一人にとっては間違いではない、けれども沢山のそれまで
支えてくれた両親や野球部のメンバーを裏切ってしまい、それが心底
彼の心を沈ませる。
父親はいわゆる星飛雄馬のイメージしかなくて(ちゃぶ台ひっくり返し)
厳格な、鬼コーチ的な存在。
主人公を絶対に野球選手にしようと幼少期から仕込んでいく。
主人公にはセンスがあった為、なおさら厳しく指導する。
もちろん、必ず芽が出ると信じての事。
口には出さなくても順調にプロ野球選手へ近づいていく息子を
誇りに思っている。口に出さないので分からない系の昭和の親父。
やわな育て方はしない、強くなってほしい一心なのだが、
昭和の男同士の親子あるあるで、息子には父親の本心が分からない。
彼の親友である同級生(キャッチャー)は彼の傍に常にいて、
高校で同じ野球クラブに入った時から彼の腕が本物である事、また
プロ野球選手を親に持つという一種の憧れの対象でもあり、
彼と一緒に戦ってきた2年半という野球人生の中で
最も彼に献身的なまでにサポートをする。
しかしながらキャッチャーは夏の甲子園優勝が決まる最後の一球(必ず彼が決めてくれると信じていた)、
手の中に豪速球で収まったストライプの梱包紙に包まれた
おにぎりを見て唖然とし、怒りに打ち震え、涙をこらえきれず、
試合が終わり皆が集まるまで握りしめていたそのおにぎりを、
グローブごと彼に投げつけて泣きながら怒りをぶつける。
「俺が、お前に嫉妬してないって、思ってたか」
キャッチャーの声はわななき、砂ぼこりで汚れた手は硬く握りこまれ、怒りに震えているように周囲からは見えた。しかしながらキャッチャーの心の殆どを閉めていたのは、怒りではなく悲しみだった。長い高校生活の青春を全て注いできた野球人生の無二の友と信じて疑わなかった主人公に、最後の最後で見事に裏切られた事が、受け止められず、ただただ悲しかったのだ。
「お前の右腕は、本物だって、受け止めてきた球の数だけ、俺が一番よく知ってる。一番近くにいた、だからお前が抱えてる葛藤も、プレッシャーも、誰よりも身近に感じた。俺はお前を心から尊敬してたよ、だけど。。。同級生のお前が、注目される度に、自分がちっぽけに思えた、どうやったって叶わないって。だから、あいつら(同じ野球部のピッチャーベンチ組)がお前にやっかみぶつける時、そいつらの気持ちだって、痛いほど分かった。それでも俺はお前を支えたかった、お前が背負わされてる責任の重さ、俺が支えてやろうって素直に、心から思えたのは、お前が誰よりも努力してそれに応えようとしてた事も、お前が良い奴だって事、沢山悩んでた事も知ってるから。そして、俺はこいつと一緒に、絶対甲子園行くんだって、信じてたからだよ!!それを。。。お前は。。。!!」
キャッチャーがそういうと、その場に集まっていた部員全員が、声を殺しながら泣き始めた。悲しみが、後から後から喉の奥から這い上がってくる。嗚咽を漏らすものもいた。主人公の彼は、「ごめん、ごめん。。。」としか言えなかった。彼も号泣し続け、その場はコーチの教師の一声で収まったのだが、キャッチャーの彼の背中をささえていたのはベンチのやっかみ組で、主人公をきっと睨みながら、(あるものは悲しげに目を赤くはらしながら)「行こう」と言って先に休憩室を出て行ってしまった。
ドアが閉じてしまうと、室内は静まり返り、彼の前にはキャッチャーのグローブと、グジャグジャのおにぎりだけが転がっている。
彼が失ったのは、夏の甲子園優勝というトロフィーだけではなかった。一番失ってはいけなかったものを失ったのだと、彼は打ち震え、泣き続けた。
(後から一人で出てきた主人公をレポーターが取り囲み、この後おにぎりインタビューに続く)
主人公が家に着くと、当然のように玄関で待っていた父親が
怒涛の勢いで彼を𠮟りつける。
彼は、涙を流しながら「はい、はい」と答えている。
母親が父親に「もう止めてください」と割って入った後で、
彼は引きつる喉の抑揚を抑えて、「分かっています。出ていきます」と言う。
「ああ!そうしたいならそうしろ!!」と怒りに任せて父親が言うと、
彼は顔を上げて、諦めたように「野球選手でない僕は、貴方の子供ではありませんよね」と言った後で、ウっと声を押し殺しながら泣き始める。
母親がとりあえずは彼の背中から腕で押して、家に入らせる。
父親は彼が家に入った後で、玄関に立ったまま、悔し涙を声も出さずに流す。
主人公は自室に入った後で、こみ上げてくる怒りを抑えきれず、
「野球、野球、野球!うっせぇんだよ!!」
と大声で叫ぶと、床に持っていたバッグを叩きつけ、ベッドに突っ伏して
声を限りに泣く。色々な感情が、涙になって溢れ出てくる。
主人公の彼は、ここからとある高校のコーチを引き受けるまでに、サラリーマンを続ける中で、グジグジグジグジ思い悩む。
ある時は後悔の念が募って泣き明かし(自分の犯した罪の重さと、最も堪えたキャッチャーからぶつけられた怒りと悲しみの為)、
またある時は怒り(それでも、自分のおかげであそこまで行けたんじゃないか、俺がいなかったらどのみち決勝戦までだって行けてなかったかもしれないという開き直り、また野球そのものに対しても、半ば強制的に始めることになった原因の父親に対してもその矛先が向く。心がささくれ立ち、いらだちから抜け出せない)、
悲しみと怒りの間を行ったり来たりしてしまう。罪を犯した後悔と、しかしながらああするしかなかったという自己肯定の念との間。
何が正しかったんだろう、という自己の葛藤の中から抜け出せない。それでも最終的には、「絶対に犯してはいけない罪を犯した」という結論に至って落ち込む、それを繰り返している。
昼食時、コンビニエンスストアに並ぶおにぎりを見る度目を伏せて通り過ぎ、スーパーの総菜屋さんでも同じようにおにぎりの前からそそくさと立ち去る。
彼はそれを見る度、キャッチャーの事を思い出す。
二度と見たくないと思っているのに、その前を通り過ぎてしまうのは、
それに計り知れない未練があるからだと、彼は気付かない。気付かないようにしている。
彼はいつでもキャッチャーの彼に、もう一度謝りたいと思いながら過ごしている。
主人公が高校の野球部へ出かけて、帰ってきた後で
嫁が山盛りのおにぎりを出したあたりのくだり。
主人公は事あるごとに、「さすが2世」という言葉で褒められる度に、
自分の能力を自分のものだと思いきれないようになってしまう。
それで、小学生の頃まで何も考えずただ大好きだった野球を、
しだいに真っ直ぐに楽しめなくなっていく。
これは俺の力なのに、俺の努力なのに。褒められても素直に喜べない気持ちが
常にある。そのことで、彼は野球から逃避するようにお笑いのテレビに
のめり込む。「自分だけの何か」を見つけようとする。
しかしながら彼は才能があって、野球そのものは好きなので、
心の中に亀裂というか、赤の他人から噂話をされたり部員の一部から「親の血を引いてるから」と
言われる度に、少しむっとして、ネガティブな感情を
少しずつ溜め込んでいってしまった。
野球に対して、気持ちにねじれが出来てしまった気持ちが、
あの日結晶化してしまったのである。
自分で自分の力を疑ってしまったのである。
嫁が話を持ってきたとある高校の野球部コーチを引き受け、
数ヶ月が経ったある日、
コンビニのおにぎりコーナーの前で、天むすをじっと見つめ、
そろそろ食べていいだろうかと、いや、キャッチャーのアイツに謝るまでは食べないと主人公の彼が葛藤していると、「あっ、あハハハハ!」という明るい声が後ろからして、
主人公と同じように年をとったキャッチャーの彼がお腹を抱えている。
主人公は一瞬でそれがキャッチャーだと分かり、瞬時に涙目になる。
キャッチャーが「やっぱりお前まだ、それが好きなんかよ!」と言って笑うと、
「ち、違う!俺は今の今まで、これを食べるまいって、二度と食べるまいって」と主人公が良い訳をした後、「お前、関東に引っ越したって聞いてたけど」と付け加えた。
「今日、実家に帰ってたんだ」とキャッチャーが答えて、ちょっと話そうと言って
彼を誘った。主人公とキャッチャーはおにぎりコーナーから離れて、飲み物だけ買うと、近くの公園のベンチに座った。
主人公が黙っていると、キャッチャーは「お前、高校の野球チームのコーチ、始めたんだろう?」と尋ねた。主人公が「知ってたのか」と言うと、キャッチャーは笑って、
「お前がどうしてるかって話に、未だになるからな。お前は、まぁ来れないだろうけど、同窓会があると必ずお前の話で盛り上がる」
主人公はそれを聞いて気持ちを落とした。きっとバカにされたり笑いの種にされているんだろうと思っていたら、「もう、良い思い出になってる、殆どの奴らの間で。未だに許さないって言い出すヤツも、少しはいるけどさ」と加えた。
「俺たち、随分年をとったからなぁ。お前と一緒に過ごした高校生活が、俺の中で一番、輝いてた、それは今でも色褪せないんだよ、不思議と。あんな事があった今でも」
「俺は、もう一度お前に、必ず謝らなければいけないって思ってた。おにぎりも二度と食べるまい、って。特に、クローバー(コンビニ)のエビ天むすは。だから今日も、買うつもりは全くなくて」
「何必死に言い訳してんだよ!食べろよ、部活の後あそこであのおにぎり買って帰るのが、お前のお決まりだったじゃないか。遠慮なんてすんなよ、何年経ってると思ってる」
「だけど。。。俺は。。。ごめん」
「謝るな。というか俺も、お前に謝ろうって、ずっと思ってたんだ。俺、お前がずっと悩んでたの、本当は気付いてた、気付かないフリをしてた」
「いや、どんな理由でも俺がやった事はお前を傷つけた、俺に謝るな、俺は一生お前に許してもらえなくても、仕方ない事をしたんだ」
「確かに、随分長い間、お前を恨んだよ。。。だけど、俺、お前の一番傍でお前を見てきて、お前の球を受け止めてきて。。。お前が、何かにずっと悩んだまま野球やってるって、本当は気付いてたんだ。俺がお前の父親、プロ野球選手の父親に会いたいってせがんだ時あったろ、お前に家に連れてってもらった時、お前の親父、どう見たって怖そうだったし、お前、父親なのに敬語でさ、こいつ、学校でも家でも、鬼コーチにしごかれてるのかって、ちょっと可哀そうだなって思った、握手してもらった時はめちゃめちゃ感動したけど。だって、プロだからさ、憧れの人だもんな。だけど、その時お前が向き合ってる責任の重さが半端ないってリアルに気付いて、お前、少し困ったような表情で父親と向き合ってて、それからお前が学校でコーチから指導受けてる時も、褒められてる時も、顔見てみたら、いつも眉を寄せて、ちょっと困ったみたいに笑ってるって気付いて。だけど、俺もお前に期待してたから、お前と一緒だったら甲子園行けるって、夢じゃないって息巻いてたから、お前の中にわだかまりがあるの分かってて、見てみぬフリしてた。あんなふざけた事しでかすまで、思い詰めてたって、俺が気付いてたら、違ったかもしれない、って後になって思うようになった。だから、ごめんな」
主人公の彼は、彼が言う言葉を聞きながら、声の限りに背中を丸めて泣く。
「もう泣くなって、そんで、もう謝るな。少なくとも俺には謝るな」と言いながらキャッチャーが寄り添う。
「ごめ、うう、うううっ。。。」
主人公が声を引きつらせながら何かいおうとするのだけれど、なかなか言葉にならない。
「お、おぇっ、俺は、お前が居なかったら、お前が、キャッチャーじゃなかったら、きっと、止めてた、続けられなかった、
誰も味方がいなかったら、きっと出来なかった、お前以外にも、一緒に歓喜して、一喜一憂して、繋いできた日々を、お前や仲間と駆け抜けた青春を、あの一投で、俺の我がままで、お前を、裏切った、ほんとに、ごめん、悪かった、ごめん」
「うん。。。俺、一生忘れないと思うよ、あの日のおにぎりの感触。。。グローブに恐ろしくフィットしてきた、あの重み。肯定は、出来ないだろうけどさ。だけどもう、迷うなよ!やるんだろ、もう一回!」
「俺、俺な、ここへ来て初めて、野球が好きだったって、気付いて」
「知ってるよ!嫌いな事に、あんな打ち込めるかよ!投げてる時のお前がどんだけ生き生きしてたか、俺の方が知ってるわ!」
「うん、うん」
「俺、応援してるからな、忘れんなよ」
「ありがとう、ありがとう」
高校を卒業してから27年目、引きずり続けた後悔の固まりを、ようやく解く事ができそうだった。
そして主人公は、厳しい野球生活の中で苦楽を分かち合った、特別な仲間との再会によって、より一層迷いなく、コーチの仕事に没頭していく。
彼がコーチとして甲子園に再び舞い戻り、生徒達がプレイするのを
それと知られないように緊張しながら見守っている時、
ああこれが、親父の気持ちだったのかと気付く。
自分がプレイするよりも、ずっと不安でずっと心配で。
自分が当時抱えていたものの、倍息苦しさを感じた。
自分の息子となれば、もっと、そうだっただろうと思った。
甲子園が終わって次の日に、母親から実家に一度帰ってきなさいと
連絡が入って彼はいよいよ帰る事にする。
母親とは、高校卒業後一人暮らしを始めた後もまめに連絡をとっていた。
母親はもちろんその度に父親にその様子を話す。
父親は頑固なので、決してそれを気にする素振りを見せない。
ただ黙って聞いている。
実家に戻り、そっと玄関をあけて小さな声で「ただいま」と言うと、
母親が笑顔でおかえりと迎えた。
そして、「おめでとう」と言った後、「お父さん、テレビで見ていたけど、貴方のチームが勝った時、
泣いてたのよ」と笑いながら言った。
「噓でしょ?」と言いながら、いそいそと部屋に入る。
リビングに父が座っているのを見つけて、体がこわばる。
随分合ってもいない、話もしていない。
後ろ姿に白髪が増えているのが分かる。父親も自分も、年をとったのだと思う。
年をとって、涙もろくなったのかもしれないと考えていると、
父親が「お帰り」とだけ言った。それに、「ただいま、帰りました」と返す。
二人はそれきりで、言葉を交わさなかった。母親だけが明るい声で
生活の事を主人公に尋ね、彼は笑い声も交えてそれに答えた。
少し重苦しい空気の中で、彼はテレビのあるソファーの方へ行って
テレビの正面に座っている父親から見て右側のソファーにそっと座った。
父親は老眼鏡をかけながら、新聞を読んでいた。
随分年をとったと、彼は思った。
自分も年をとった。甲子園に生徒達を導いた事が免罪符になるとは思っていないけれど、父親も少しは気を良くしたはずだと思った。
いくつになっても、父と息子の距離感は、難しいものである。
彼が何か言おうかと迷いながら黙っていると、父親の方が口を開いた。
「お前が幼い時、野球選手になりたいと言いだした時の嬉しさは、
お前には分からんだろうな」
彼がまだ黙っていると、父親はまた一つ口を開いた。
「お前がプロの野球選手になろうというのなら、どんな事でもしてやろうと思った。どんな力にでもなってやると。
お前が野球をやりたいものと信じて疑わなかった、
本気でやるからには厳しく指導した。お前はめきめきと頭角を現した。どんなに私がそれを喜んだか」
「お父さんが、どういう気持ちで俺と向き合っていたか、当時は分からなかったんだ。だけど、今なら、少しわかるよ」
「いや、分からんだろうな。。。」
父親はそう言って、ふっと笑顔になった。父親は彼の幼少の頃を思い出していた。
父親にとって、どれだけ年をとろうと、子供はいつまでも子供なのである。
そして、「優勝、おめでとう。よくやったな」と付け加えた。
彼はそれを聞いた後で、泣き出してしまった。
沢山の思いが走馬灯のようにざーーっと脳裏を流れていく。
声を上げて、彼は泣きに泣いた。
何も言葉を紡げないまま、ただ子供のように泣いた。
そして、どうしてこんなに時間をかけてしまったんだろうと思った。
色々な後悔と苦悩が、喉を押してくる。
誰よりも、父に知らせたかったのだ、と彼は思った。
誰よりも父親に、褒められたかったのだと、素直な心で。
誰よりも自分の野球を支えてくれた父親に。
「上手じゃないか」と言って大きな手で撫でられる時が、一番嬉しかった。
幼少の頃、父親が褒めてくれる度、それが自分の中の純粋な原動力でもあったのに。
自分にとっての最も偉大で、最も身近な目標であったのに。
いつしか、周りの声に煽られて、周りの事ばかり気にして、それを枷のように。
そして小さな自尊心の為に。
「お父さんの、おかげだよ、そんなの、当たり前だった、俺は、幼い頃からずっと、
お父さんに野球を、お父さんからもらったのに、当たり前なのに、
どうして喜べなくなった、どうして認められなくなったんだろう、こんな当たり前の事、
ごめんよ、ずっと支えてくれてたのに、俺は、裏切った、怒って当然だったよ、
当たり前だ」
彼がそう言って泣きに泣く間、父親はじっとして、新聞から目を離さなかった。
不器用な父親を見つめながら、彼は息を荒らげて泣き続けた。
彼は泣きやんで、キッチンにいる母の近くへ、
リビングのテーブルに向かって鼻をすすっていると、
母親がクスっと笑って、「貴方、さっきのお父さんの言葉、分かった?」と尋ねる。
彼が何の話かと、黙ったまま母親を見つめていると、母親は小さな声で、「孫よ」と言った。
「孫?」
「そうよ、子供は未だか、って言ってるのよ」
「えっ。。。まさか、『お前には分からんだろうな』のくだり?そういう意味なの?」
「そういう意味じゃない訳ないでしょうよ。貴方が帰ってくるまでの間、二言目には
『あいつは、子供は未だか』って合言葉みたいに言うのよ。私に言われてもね」
「マジか。。。えっ、マジか」
「大マジよ」
彼と母親の二人が、キッチンでひそひそと会話しながら父親の背中を見つめる。
父親はわざとらしく大きな咳払いをした後で、新聞をめくった。
父親の老眼鏡の奥の瞳に潜んでいる野心と夢は、若かりし頃から少しも衰えていないのである。
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