DERICIOUS!

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権力の犬達



権力の犬達~嘘つきは犯罪者の始まり~

「体調にどこかお変わりはありませんでしたか?」
 当時歯科医院の助手であった男が、初診の診察患者である私にそのように尋ねた時、どうして私は普段同様に「おかげさまで」というテンプレート的な返しをしなかったのだろう。そのことが、全てを終えた今でも悔やまれる。あの時適当にあしらっておきさえすれば、丸3年に渡る精神的肉体的苦痛、ひいては世界的な緊急事態にまで発展した、このような大惨劇は起きなかったのだろうか。

「未だこちらで一度も治療を受けていないのに、変わるも何も、ないでしょうに」
 レントゲン撮影を促され診察台から立ち上がったタイミングの、ほんの僅かな、よくあるやり取り、患者と診察する側の、非常にありふれたやり取りでしかなかった。どうして私は、あの時不必要に頭を働かせてしまったのだろうか。そのような機械的な問いかけには、「おかげさまで」が正しいのだ、私。ヤツとて、患者と気の利いたコミュニケーションを図ろうと、僅かなタイミングを空白ではなく、体を気遣う医師側の言葉として相応しい軽口を投げかけてきたまでだ、どうして余計な一言を言って、放置してレントゲン室へと向かったのか、私よ。私とて、後になって、訴訟の記録に衣川側がその事実を記録として提出してきた時に、そんな事もあったなと、改めて思い出した事実だった、私にとっては、その程度の、僅かな記憶にも残らないような小さなやり取り。これを、衣川はデンタルクリニックの院長になって私の治療に当たるその時まで、根に持ち、執拗に覚えていたのだ。恐らくこれが、衣川が患者である私に対し、意図的な医療過誤に至った最も主要な動機だった。


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