日記

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その夜から



私と子供たちは時間さえあれば主人に会いに行った。霊安室というのか、送風機能がある寝台に寝かされてガラス張りの冷蔵庫みたいなものに入れられていた。上から覗き込むと会えるのだ。子供たちと私と主人でいろいろ話した。泣きながら、でもほっとした4人だけの時間を感じながら。ずっといっしょに生きてきたから、4人でいるのが普通だったから。

全員で翌日、同じ系列のもっと大きな斎場に引っ越した。大勢の人が来ると予測してのことだった。

私は「決めてください」といわれたことを次々に坦々と決定し、挨拶にまわり、喪主としての仕事をこなした。泣いてばかりはいられなかった。

この日のことをなぜかあまり思い出せない。何をしていたんだろう。

そう、夜は私と子供たち2人を残し、他の家族は一旦家に帰った。
3人でお風呂にはいって、友達が買ってきてくれた夕飯をいただいて、敷いてくれたお布団に寝た。が、なかなか寝付かれなくて、なんだかとても怖かった。何か恐ろしいものが出てきそうでひたすら怖かった。

というのもその夜、11時ごろまでロビーで私と友達が二人だけで話をしていたら、しーんとしたフロアで、物音をきいてしまったのだ。私たちの話していたすぐそばから。ガシャっというようなセロハンを握りつぶしたような音が聞こえたのだ。えーーーーー?何?今の音。友達も私も両方が聞いてしまった。ひえーー。何かいるの?たくさんの霊がいるはず。斎場だもの。何か言いたかったのかしら。主人だったのか、別の誰かだったのか。妙に怖かった。


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