わんこでちゅ

あの川のむこうは5





カークはルイと大樹をとても短い膝の上に抱き上げのせると、膝からころげおちないよう、これまた短い前足でしっかりかかえこみ、眠らず食べず、延々と今までの冒険談を思い出してはしゃべりつづけた。自分のからだの何倍も大きな犬と何回も決闘したこと。人間のお父さんとお母さんに、色々なところにつれていったもらったこと、川や海で泳いだり、富士山の真ん中くらいのところまでいったこと、ルイと大樹のお母さん犬はとても美人でスタイルのいいチャンピオン犬で、いつも自分がいいよっては、てひどくふられていたこと、いたずらしたら、どんなに恐ろしい顔で人間のお母さんにおこられるかということ、、、、たくさんたくさんおしゃべりをした。


おしゃべりをしていてカークはあることにふと気がついた。熱をいれて思い出をしゃべると、ふとそのときの光景が、紫色の空のスクリーンに、つぎつぎと現れては消えていくことに。そしてその光景を間違いなく仔犬は自分と一緒に共有するように、みていたに違いないということに。なぜなら、最初は二匹だけだったのに、いつのまにかたくさんの仔犬たちが自分のまわりにすわっていて、みながみな、目をまんまるくしたり、身震いしたり、あまりの恐怖に背中の毛を逆立てたり、とてつもない驚きに前足の肉球でつい口を押さえたりして、その話にききいっていたからだ。

ずっとしゃべりつづけていたので、いよいよ話すことがなくなってきたぞとカークが思った頃、ルイと大樹はすっくとたって、急に遠くにある森の方向へ歩きだした。

「ちょっとまって、どこにいくの?」

「たくさんお話きけて満足したから、森にゆくの。」

「森って、森にはなにがあるの?」

「わからないけど、、、、。森にいこうと思うの。ありがとうカーク。」

カークはあわてて二匹にむかってこう言った。

「僕こそありがとう。どこに向かって歩いていたか、僕も思い出したよ。そして君たちのおかげでたくさんの思い出を見ることができたよ、、。」

二匹はカークの言葉にふりむくと、肉球にきゅっきゅっと力を入れて、ばいばいのような仕草をしてから、背を向けると、嬉しそうに尻尾をふりふりまた歩き出した。話の途中で急にいなくなってしまうことに、カークは不思議と腹もたたなければ、この二匹のこの先のことにも不安はまったく感じなかった。そして残りの仔犬達のために、数少なくなった思い出を一生懸命思い出しながら、また話をはじめた。だが話の途中で一匹、また一匹とたちあがって、あの二匹と同じように歩き出す仔犬がいた。その数は次第に増えて、いよいよ話す思い出がなくなったときには、ただ一匹だけをのこして、みんないなくなってしまっていた。


douwa5


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たいせつなものをなくしたら、、泣いてもいいよ。思いはとどくから、、


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