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浅田次郎「椿山課長の7日間」

主人公の椿山和昭(享年46歳)は働き盛りのデパートマン、家族のために身を粉にして働いていたがある日突然倒れ、そしてそのまま死んでしまう。。。
この物語の中では死んだらまず「中陰役所」というところで生前の審査を受けなければならない。
この「中陰役所」、小説を読んでいる限りここのイメージは自動車運転免許試験場のよう、魂の優良者は講習免除であるとかそれぞれの罪に応じて講習を受けなければならないとか。
この物語では椿山と「中陰役所」で知り合ったヤクザの武田勇と、まだ7歳の少年、根岸雄太の三人が特例で全く別の体で限られた期間この世に戻る。
美女になった椿山、ヤクザの武田はいかついヤクザとは似ても似つかないスマートなオトコマエに、7歳の根岸雄太はかわいらしい女の子に。。。
生前ではあかの他人だったかもしれないが実は互いに大きなつながりを持つことになり物語がおもわぬ形へと展開していく。
現世へ戻ると生前知らなかった秘密をたくさん知る、それは大きな裏切りもあれば、一生気付くことのなかった無償の愛もあった。
無償の愛を受け、自分から自分を取り巻く人たちへも無償の愛を注ぐとき、魂は浄化されていくものなのかな、と感じました。
ラストは決してハッピーエンドでは無いけれど、読み終わった後、心が清らかになり死ぬことが一時的にも(笑)怖くなくなりました。
登場人物のなかでチョット気に入ってしまったのがヤクザの武田勇。
オトコマエになってからの武田はスマートでカッコイイ。
美女になった椿山と惹かれあいそして正体に気付くシーンも可笑しかった。
以下、現世で出会った椿山とヤクザの会話です。
椿山が美女、椿。ヤクザはインテリジェンスな紳士に姿を変えています。
(・・・タイプよ、ズバリだわ)
胸の中で呟くと、いっそうときめきがつのった。
(お願い。声をかけて。何か言って)
すると、願いが通じたように紳士は背を向けたまま言った。
「この時間からお出かけですか?」
「え、あ、はい」
「いえ・・・なかなか寝つかれないもので、バーでお酒でも飲もうかと思って」
「ああ、そうですか。実は僕も同じでしてね。もしよかったら、ご一緒しませんか。
いや、無理じいはいたしませんけれど」
スッと気が遠くなって、椿(椿山)は踏みこたえた。何と自然な、何と邪気のない誘い方だろう。こういうアプローチをされたら、女は百人が百人、断れないと思う。
はい、答えると、紳士は口髭を一文字に引いて、往年のハリウッド映画にしか存在しない笑顔を振り向けた。
この後二人はお互いの正体に気付きますが、これが実は頭の禿げ上がったデブッチョの椿山課長と、いかついヤクザとの会話だと思うとついつい笑っちゃうのです。
笑いあり涙ありの「椿山課長の7日間」、読んで損は無いと思います。
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