アロマテラピーの歴史
芳香を利用した生活を送っていたと見られる最も初期の痕跡は、現在のパキスタンで発見された蒸留器で、約5000年前に登場します。香水や化粧容器と一緒に発見されました。(1970年代)
古代の歴史の中で、芳香を利用した生活様式を送っていた人々といえば、古代エジプト人でしょう。古代エジプト人は芳香植物を、宗教的祭礼、儀式、ヒーリング（いやし）、香水、ミイラ(防腐処理)等に、利用していました。(紀元前3000年頃の当時の墓には芳香植物のオイルの作り方が描かれています。)
古代エジプト人が行っていたオイルの作り方は、粘土製の大きな壺に植物素材(シダーウッドの樹脂など)を入れて水を注ぎ、壺の口を布で覆い熱します。そうすることでオイルが湯気になって上昇し、布に染み込みます。その布をしぼりエッセンスを採る作り方。また、圧搾法を利用してオイルを抽出してもいました。例えばユリの花等を圧搾法で抽出する時は、女性たちが大きな布の袋に花を集め、ふたりの男性がその袋の両側に着いた棒をねじって袋をきつくしぼり、花びらからオイルを搾り出す抽出をしていました。
フランキンセンスやミルラ等のオイルが、遺体をミイラにするために使用されており、植物のエッセンスがもつ防腐力を利用した一例です。また、1922年にツタンカーメン王の墓を開いた時に、考古学者たちは練り香の壷を発見。壷からは、フランキンセンスの香りが立ちのぼったそうです。古代エジプト人は、様々な形でオイルを使用。神々にあわせ、異なったオイルが献納され、宗教儀式に使用されたり、美容、料理、病気の予防の一部として日常生活で使われていました。
当時の香りを再現できたブレンドがあります。「キフィ」と呼ばれ、ミルラやジュニパーを含む16種類の成分から構成され、眠
りを誘う香として焚いたり、薬としての服用や怪我や皮膚病の塗り薬として使用されていました。
これらの芳香植物の知識の多くをエジプト人より継承したのは、ギリシャ人でした。医師や史学の父ヘロドトス、哲学者のデモクリトスは紀元前500年にエジプトを訪れ、蒸留法について学びました。医学の父として知られるヒポクラテスは、医学の治療の原則として正確な記録や観察を最初に用いた人物です。彼は日常のトリートメントとして芳香浴やマッサージを推薦しています。
ローマ人は、芳香植物の情報を雇用していたギリシャ人医師から得ました。（ギリシャ人医師、ディオスコリデスはネロ軍の外科医でした）また、世界有数の風呂好きで、香油を使ったマッサージも好みました。
ローマ帝国が崩壊すると、多くの医者たちがペルシアへと逃れ、芳香植物の知識は既存の中東やアラブの医術へと溶け込み、11世紀に蒸留法の技術が医者であるアウィケンナによって完成されます。その蒸留法は900年たった今現在でもほとんど変わっていません。(冷却用コイルを発明したと伝えられており、蒸留の工程をより洗練させ、純度の高い精油やフローラルウォーターの抽出を可能にしました)
その後の数世紀間は、芳香植物に関する文献はごくわずかなものとなっています。十字軍戦士は１２世紀に外来の植物やスパイスを持ち帰り、それらは欧州の薬物学に加えられました。香水は手袋メーカーの仕事になりました。彼らは、動物の尿やフンの悪臭や皮なめしのいやな匂いを消すために、快い芳香を調合しなければならなかったのです。
英国の産業革命に伴い、19世紀には、化学者たちは植物からいわゆる不純物を取り除くことに熱中し、アスピリンやモルヒネのような薬品がつくられました。1800年代後半から1900年代前半にかけて、抗菌特性に関して言及した精油の研究がイタリアとフランスで続けられていました。
現代のアロマセラピーは、フランス人化学者ルネ・モーリス・ガットフォセによって名付けられました。彼はラベンダーの美顔効果を研究していましたが、研究での事故で手にひどい火傷を負ってしまいました。その際、患部にラベンダーの原液をつけたところ、その痛みが和らぎ、傷は目をみはるほどよくなり、爆発事故を思い出させる傷跡も残りませんでした。1928年に、ガットフォセは｢アロマセラピー｣という造語を作り出し、その名の著書を出版します。
医師であるジャン・バルネ博士は、ガットフォセの研究を読んで、第二次世界大戦中の負傷兵の手当てに精油を使いました。戦争後、パリにクリニックを開業し、精神病の患者に精油を使って治療しました。
オーストリアの生化学者マルグリット・モーリーは、バルネ博士が活躍していた同じ頃、肌を通して浸透する精油の研究を行っていました。モーリー女史はは、医師の資格を持っていなかったので、精油の内服を処方することができませんでした。その為、植物油で希釈して肌にマッサージする方法を開発。伝統的チベット医学の手法を取り入れ、背骨の中枢神経に沿ってオイルを塗るというマッサージ技術を編み出したのです。また、マッサージを受ける人の身体と感情の状態に応じてオイルを選定する｢個別処方｣もモーリー女史が最初でした。
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