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高校生が初めて大賞を受賞 -平成29年度 防災アプリ賞を決定-(国土地理院)国土交通省の国土地理院と水管理・国土保全局は、内閣府と協力して平成26年から防災アプリを公募して表彰しているが、今年度初めて防災アプリ大賞を高校生が受賞した。大賞に選ばれたのは宮崎県立佐土原高校情報技術部が開発した「SHS災害.info」。このアプリは災害発生時の安全確保に加え、「助けられる側から助ける側へ」をコンセプトに救助活動を補助する機能を持つことが特長。入力の簡略化や、非常持ち出し物品リストを揃える際に画面上に達成率を示すことでモチベーションを高めるなど利用側を意識した工夫が利いている。高校生の取り組みで大賞を取ったのは画期的なこと。その他の受賞アプリは以下のとおり。防災INSIGHT(斎藤 仁志)登山・防災用GPSオフラインマップアプリ:SkyWalking(DEEP KICK.com 本多 郁)ハザードチェッカー(兵庫県立大学 応用情報科学研究科有馬昌宏研究室)火山重力流シミュレーション エナジーコーンモデル(高速版)(産業技術総合研究所シームレス地質情報研究グループ)さいれぽ(東海大学 さいれぽ・まちれぽ製作委員会)受賞したアプリは10月12~14日にお台場の日本科学未来館で開催されるG空間EXPO2017で展示され、体験することができる。
2017.10.02
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63本のろうそくに火をともし慰霊 御嶽山噴火から3年(朝日新聞)死者・行方不明者63人を出した御嶽山の噴火災害から3年となった27日、ふもとの長野県木曽町三岳の太陽の丘公園で、夕方から地元住民による慰霊式があった。あの日から3年。噴火の規模は必ずしも大きくなかったにもかかわらず、さまざまな悪いタイミングが重なり戦後最大の火山災害となってしまったことで、御嶽山の事例は火山防災に大きな影響を与えることになった。防災というのは皮肉なもので、大きな災害が起きてその教訓を社会全体が共有しないとなかなか進歩していかない面がある。火山災害でいえば、1991年の雲仙普賢岳の噴火で人々は火砕流の恐ろしさを知り、3年前の御嶽山噴火で噴石の殺傷力を知ることとなった。いずれも大きな犠牲を伴った災害だが、もしかするとその犠牲がなければ多くの人はステレオタイプの噴火しか知らないままだったのかもしれない。もっとも、火山災害の怖さは共有したとしても、それに対する対策が整備されるかどうかはまた別の話。御嶽山噴火はベストシーズンともいえる秋の、週末、それももっとも人が山頂付近に集まる昼頃発生している。被災したのは全員登山者で、住民への被害は出ていない。そこには不運もあったが、同じような状況は他の火山でも起こり得ることだ。何らかの異変が起きた時に登山者へどのように知らせるのか、噴石をよけるシェルターを設置するのか、噴火警戒レベルをどう扱うのか、などなど課題はまだ山積している。もちろん、何もかもが劇的に変わるわけではない。少しずつでも対策が進んでいけばいいし、何よりも多くの人が3年前その場所で起きたことをきちんと共有しているということが一歩になるのではないか。
2017.09.27
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電車移動中の津波想定し避難体験…参加者を公募(読売新聞)乗車時の津波避難を体験学習するスタディーツアー「鉄学」が10月28日、和歌山県のJR紀勢線串本―新宮駅間で実施される。参加者を初めて一般公募する。和歌山大の西川一弘准教授(鉄道防災教育学)によるユニークな試み。これまでJRや県立串本古座高の訓練として実施していたものを、一般公募して参加者を募るというもの。内容は列車内での紀伊半島の自然や津波についての講義と、駅間で徐行や臨時停車して、車両からの飛び降りや非常はしごを使った避難を行うという。実際に東日本大震災でも列車の被災はあったわけだし、紀勢本線は沿岸部を走る箇所も多いだけに、参加者はもちろん、JRにとっても有効な訓練の場になる。ポイントは防災訓練のみのイベントでなく、観光ツアー形式を採用しているところか。沿線の名勝では写真撮影の時間を設けるなど、防災と地域振興を組み合わせた企画となっており、往復切符や弁当、お土産のストラップがついて大人1人6500円という料金設定。訓練なのか遊びなのかわからないという声もありそうだが、防災に関する講義や体験ができることは確かであり、参加することで一定の知見を得ることができることも事実。個人的には防災が付加価値を持つ形でビジネス化するのは悪いことではないと思っているので、このツアーはひとつの形になるのではないかと期待している。
2017.09.25
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前線と台風ダブルパンチ、大雨ピーク2回の恐れ(読売新聞)台風18号は17日の0時現在屋久島の西250kmにあり、午前中にも九州に上陸する見込み。一方で台風本体からは離れた伊豆諸島でまとまった雨が降っている。これは台風が停滞している秋雨前線を刺激しているためで、気象庁では雨のピークが2回に分かれる可能性があるとして警戒を呼び掛けている。台風本体も大型で強い台風であることから動きが気になるところで、報道でも上陸するのかしないのか、上陸するとすればどこかといったことを中心に報じることになるわけだが、往々にして台風本体から離れた場所で大雨が降って災害になるケースがある。記憶に新しいのは平成27年9月関東・東北豪雨、いわゆる鬼怒川水害だろう。この時も「台風18号」が日本に迫り、東海地方へ上陸ししてそのまま日本海へ抜け、温帯低気圧となったのだが、台風が通過した地方以上に大きな被害になったのは台風本体から離れた関東・東北地方だった。台風そのものへの警戒はもちろん必要だが、台風の中心ばかりを見ていると足下をすくわれ兼ねない。気象庁が注意を呼び掛けているのもそういったことがあるからだろう。雨雲の動きを見つつ、台風から離れた地方でも十分に注意したい。
2017.09.16
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朝倉300年前の水害風化 同じ被災地名、寺の古文書に(西日本新聞)松末(ますえ)、志波、山田…。7月の九州豪雨で大きな被害が出た福岡県朝倉市内の地名が、300年ほど前に起きた水害の被災状況を記録した古文書にも残されていた。同市宮野の南淋寺が所蔵。今回の豪雨では寺周辺でも犠牲者が出たが、住民の間で過去の水害は知られていなかった。災害の伝承といえば地震や津波に関するものが多いが、頻度の高さから考えれば、水害がもっとも伝承されやすいようにも思えるが、残念ながら今回はそれが生きなかった。そもそも河川沿いに氾濫平野や谷底平野が発達する朝倉市の地形の成り立ちを考えれば、頻繁に洪水に襲われていたであろうことは想像がつく。川沿いの平野に住むということは、その土地が洪水によりつくられたものであることは何となくでも認識しておいた方がいいのだが、実際にはあまり考えられていないというのは今回に限った話ではなく、全国的な傾向だろう。加えて、現在の河川はしっかりとした治水がされている。川岸は堤防で固められ、上流にはダムや堰堤がある。かつては大雨が降れば毎度のごとく氾濫していた川も、こうした治水対策によって洪水の頻度は少なくなった。逆に言えば、それが人々の危機意識を減退させたともいえる。ダムや堤防があることで、洪水を目の当りにする機会は減り、万が一破堤なりで氾濫が起こった場合にどのような状況になるのかは想像しにくくなった。かつて平野に住む人々は微高地である自然堤防に家を構え、旧河道や後背湿地など水がたまりやすい場所は水田として利用することが一般的だった。ところが、今はそうした「稲の領域」に住宅が建つことも珍しくない。治水が進んだことで、河川が氾濫すること自体が想定しにくくなってしまっているのだ。地震や津波といった災害は地域にとって必ずしも頻度が高いものではないが、それに比べれば洪水による氾濫は、大雨になれば常に可能性があるし、またそうした大雨は前線や台風など、決して珍しい現象ではない。個人的には防災において地域における過去の災害の伝承は非常に重要だと思っているし、必ず効果を生むはずと考えている。中でも水害についてはその頻度から考えても本来伝承がされやすいはず。たとえば東京を例にとっても、明治以降たびたび大水害を経験している。ただし、治水が進み洪水の頻度が減少することで、そうした災害の記録はどんどん過去のものになってしまい、いつしか自分には関係ない領域へと消え去ってしまう。普段堤防で守られている街が、一旦破堤したらどうなるのか、地域の過去の災害の伝承を紐解いて考えてみる機会が必要なのではないか。
2017.08.27
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「Disaster Prevention Portal / 防災ポータル」を開設! ~2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けた首都直下地震対策ポータルサイト~(国土交通省報道発表資料)国土交通省は8月24日、4か国語に対応した防災ポータル「Disaster Prevention Portal」を開設した。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に首都直下地震が発生することも想定したものだ。防災に役立つ75のサイトを見やすくカテゴライズしてひとまとめにして、日本語、英語、中文(簡体・繁体)、韓国語の4か国語に対応としており、平時から容易に防災情報等を入手できることを目的としている。オリンピック・パラリンピックの有無にかかわらず、訪日外国人が増えていることに加え、東京が国際都市でありながらも英語が通じにくいという現状を考えれば、対応は遅すぎるくらいだろう。たとえば沖縄では同じような防災ポータルが既に運用されている。首都直下地震対策に特化していることも気になる点。もちろん東京では現状想定しているもっとも大きな災害という前提なのだろうが、災害は首都直下地震に限らないし、どんな災害であれ、訪日外国人を含めて適切な避難活動がされなければならないはずだ。ともあれこうしたことがきっかけとなって少しずつ変わっていけばいいと思う。
2017.08.24
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富士山噴火想定し広域避難訓練 2千人参加、渋滞3キロ(朝日新聞)富士山の噴火に備え、山梨県北麓地域の富士吉田市、富士河口湖町など6市町村が20日、初めての広域避難訓練を行った。住民約2千人と自家用車約600台が参加し、25~30キロ離れた避難先を目指した。これはかなり大がかりな避難訓練。訓練は午前7時に気象庁が噴火警戒レベル5(避難)を発令し、溶岩流が市街地に迫っているという想定で行われた。富士吉田市が午前9時に防災無線で一斉に避難を促すと、住民は自家用車、高齢者役の参加者らは自衛隊のトラックと民間バスに分乗する形で峠を越え、避難先へと向かった。避難先までは25~30km離れており、必然的に避難には車を使うことになるが、訓練では懸念されたとおり最大約3kmの渋滞が発生したという。実際に避難行動をとってみることでさまざまなデータが得られるわけで、今後の対策には今回の訓練の結果をフィードバックすることが重要になる。実際の噴火がどこから(山頂から噴火するとは限らない)、どういう形で(溶岩流でなく火砕流が猛スピードで迫るケースもある)起こるかわからないため、避難はマニュアル化でなく、さまざまな引き出しをもって対応することがカギになる。市町村でもさまざまなケースをシミュレーションしておく必要があるだけに、こうした訓練を色々なパターンで繰り返すことも有効かもしれない。もう一つの問題は観光地ゆえ、外来者の避難をどう考えるかだ。こちらはなかなか事前の訓練を行き届かせるのが難しいだけに、いざという時にどういう「サポート」をすればいいのかという整理はしておく必要がありそう。
2017.08.20
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Jアラート訓練 メール文字化けなど各地でトラブル(NHK)Jアラート(全国瞬時警報システム)を使用した緊急情報の送受信訓練を行った際に、各地でトラブルが相次いだというニュース。島根県でのトラブルはテスト配信された防災メールが文字化けで読めないというというもの。調査の結果システムの設定ミスだったのだが、このプログラムの設定は6年前に行わていながら、今回の訓練で初めて気がついたという。やはりシステムは使ってなんぼだし、訓練はこうした不具合を確認する意味もあるわけだから、まあ訓練でわかってよかったね、ということなのではないか。同じく岡山県でも文字化けのトラブルが発生。こちらもシステムを使ってメールの配信を行ったのは今回が初めてというから、やはり訓練で確認できて幸いということになるだろう。一方鳥取県米子市では、市役所で受信したJアラートの情報を防災行政無線を通じて市内全域に流す際に、音が出ない不具合があったという。こちらはPCの再起動で情報が流れるようになったということ。お粗末な話ではあるが、こういうことを訓練で経験しておくことには意味がある。防災行政無線の音声が流れないといったトラブルは、高知県の高知市と土佐町であったようで、防災無線にからんだトラブルは案外頻度が高いので日頃の点検はもちろんだが、別の伝達ルートを併用するなどの対策は必要だろう。また、徳島県那賀町では防災行政無線を各世帯で受信できる端末が作動しないトラブルがあった。これもまた起こり得ることで、万が一を想定して何らかのバックアップを考えておく必要はありそう。各地でトラブルがあったところを見ると、訓練を実施したのは正解ということになる。機器の故障やシステムのトラブルはいつでも起こり得ること。ある程度想定して代替えの方法を用意しておくことも必要なのではないか。
2017.08.18
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神奈川・藤沢の防災アプリ、避難図表示されず 集中豪雨(朝日新聞)藤沢市が提供している防災アプリ「ふじさわ街歩きナビ」で不具合があり、今月1日の豪雨と7日の台風5号に伴う大雨の際に避難所の場所を示す地図が表示されなかったことがわかった。アプリは災害時に市の避難勧告などの情報を文字で表示するほか、ユーザーの位置情報から周辺の避難所が地図上に表示され、避難所への方向が太い赤線で示す機能があるが、1日夜の豪雨で市が避難勧告を出した際に、避難所の地図が表示されなかったというもの。肝心な時に機能しないのは確かに困るが、アプリの不具合は起こり得ることと考えておいた方がいい。元来こうした防災マップの類は、災害が起こってから使うよりも、平時から避難所の位置を把握しておくなど、事前に見て知っておく方が効果が高いことは多くの専門家が指摘している。避難勧告のような情報も、市からは複数の手段で発信されているはずで、雨が強くなって気象警報や河川の水位に関する情報が出されている場合などは、特に注意して情報を逃さないようにしたい。位置情報と連動した防災アプリは確かに便利だが、盲目的にアプリに頼るのではなく、他の情報と併せて上手に使うことが賢明。
2017.08.08
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九州北部豪雨 氾濫河川の両岸で浸水被害に大差(NHK)九州北部豪雨で氾濫した福岡県朝倉市の一部の川では、わずか30分で川の西側の地域が深さ2メートル以上浸水した一方、対岸の地域の浸水は一部にとどまったと見られることがわかりました。東京理科大学の二瓶泰雄教授の研究チームによる調査結果に関する記事。朝倉市の北川を対象に、上流の雨量や地形、氾濫の状況、住民への聞き取りをもとにシミュレーションを行ったものだが、川の西側で浸水被害が大きかったのに対して、東側では浸水が限定的であったというもの。これは主として地形が影響しており、地理院地図で当該個所の治水地形分類図を見ると、東側は比較的川の近くまで段丘になっているのに対して、西側は氾濫平野となっていることがわかる。標高差は5m程度あり、浸水の差が出るのはある意味必然といえる。また、航空写真を重ね合わせてみると、東側では家屋のほとんどが段丘上にあるのに対して、西側では(西側にも段丘はあるが)低地にも家屋が建っていることも見てとれることから、浸水被害の差は地形的には理にかなっていることになる。洪水ハザードマップでは北川周辺の低地は浸水想定区域になっていないが、これは浸水想定が筑後川の氾濫を対象としているため(※もちろん浸水想定はある一定条件下のシミュレーション結果であり実際の浸水がその通りになるという意味ではない)。一方で土砂災害ハザードマップを見ると、上流部が土石流危険渓流であり、下流への水や土砂の流出があることはある程度警戒しなければならない場所であることがわかる。対岸への避難は早いうちであれば可能だが、河川が増水した状態では現実的に難しいだろう。氾濫平野等低地に家がある場合は一層早めの避難行動をとることが重要になる。災害のたびに言われることではあるが、自らの土地がどのような場所であり、どのような被害が起こり得るのかを事前に知っておくことは人的被害を防ぐ上では必須といえる。前述のような情報は市町村のハザードマップは地理院地図である程度把握することが可能。もちろん刻々と変化する気象情報にも十分注意を払う必要がある。ハードルは高いかも知れないが、是非一度自分の住む土地の地図をチェックしておくことをお勧めしたい。
2017.08.05
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震災教訓に自動閉鎖の水門など本格運用 岩手(NHK)東日本大震災の津波で多くの消防団員が犠牲になったことを教訓に整備された、災害時に自動で閉まる水門などの運用が、岩手県の宮古市と大船渡市の一部で本格的に始まりました。岩手県では東日本大震災の際に90人の消防団員が犠牲になっているが、そのうち48人が水門閉鎖等に関係していた(消防庁資料)ことがわかっている。こうした事例を教訓として、津波警報などが出された際に自動で閉鎖する水門や防潮堤の整備が進められてきたが、宮古市や大船渡市の8か所で31日から運用が始まったというもの。消防団員は多くの場合有志で成り立っており、消防団員であることはもちろん、地域の産業の大事な担い手でもあり、犠牲は地域にとって大きな痛手になった。水防活動や救助・救難活動などによる犠牲は、本来であれば死なないはずの命が失われたことでもある。こうした被害を受けて、全国の自治体で消防団のあり方の見直しが行われたと聞く。独自の時間制限を設けるケースもあれば、水門閉鎖や避難誘導をせず津波後の捜索・復旧活動に役割を絞るような検討がされた地域もある。犠牲を無駄にしないためにも、今後同じような犠牲が出ないための対策は全国で必要になるが、水門の自動閉鎖は中でももっとも有効な設備投資の一つにといえるのではないか。
2017.07.31
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「レスキューWeb MAP」での「浸水リスク情報」の提供開始について ~当社・レスキューナウ・匠技研の協力によりサービス化を実現~(建設技術研究所)建設技術研究所は、株式会社レスキューナウと株式会社匠技研が共同開発し運営する「レスキューWeb MAP」に関して、業務提携を開始することで基本合意した。各社が持つサービスやノウハウ、強みを活かして「レスキューWeb MAP」を通じた事業拡大を図る。第一弾として、建設技術研究所が開発した「内水浸水リスク情報」を「レスキューWeb MAP」の新メニューとして追加する。これによりゲリラ豪雨などの際の内水はん濫による浸水被害リスクを、250mメッシュでリアルタイムに把握することが可能となる。メニュー追加開始は2017年8月下旬の予定「内水浸水リスク情報」は、同社が提供する「水災害リスクアラートサービス」のコンテンツである「内水リスクマップ」をベースに開発されたもの(「内水リスクマップ」は専用webサイト「RisKma」で閲覧可能)。いわゆるゲリラ豪雨のような局地的な雨は天気予報等でもとらえにくく、また内水氾濫に関する情報もなかなか伝わりにくいことは事実で、こうした民間のサービスが成立しやすい領域ともいえる。建設コンサルタントである建設技術研究所が法人向けサービスに参画するのは意外にも思えるが、防災分野での実績を考えればこうした選択肢はあってもいい。BCPやリスク管理は企業にとって不可欠なものになりつつあるだけに、今後の市場拡大を視野に入れる。
2017.07.26
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防災情報の端末停止 避難指示の伝達不十分か 大分 日田(NHK)記録的な豪雨によって大きな被害を受けた大分県日田市の小野地区で、自治体からの防災情報を知らせるため住宅内に設置された端末の機能が停止して、結果として300余りの世帯に避難指示の情報が十分伝わっていなかったと見られることが市の調査でわかりました。土砂崩れで通信ケーブルが切れたことが原因だということで、市は改善策を検討したいとしています。防災情報の伝達は防災無線が使われることが多いが、聞こえにくい場所があったり、豪雨の音にかき消されてしまったりといった問題もあり、別の方法と併用されるケースも多い。日田市の場合はケーブルテレビの加入者に住宅内に専用の端末を設置し、防災情報を音声で提供していたが、土砂災害によるケーブルの切断でこの端末が機能しなかったことがわかったというもの。日田市は「避難情報を伝達するうえでの課題」として改善策を検討したいとしているが、なかなか万能な手段というのはないもので、肝要なのは複数の方法を用意しながらも、「伝わらない状況もあり得る」という事実を住民と共有することではないか。たとえば今回機能しなかった端末も、あくまでもケーブルテレビ加入者が使えるもので、(加入率がどの程度なのかわからないが)加入していなければそもそも伝わらない性質のものだったはずだ。一方福岡県の東峰村では屋椎地区で設置されたスピーカーは土砂に流されたことで機能しなかったものの、無線放送が流れる受信機をすべての世帯に貸与していたことで避難勧告などの情報伝達は迅速に行われたいう。最近では携帯電話のエリアメールなどを使うケースも多いが、無線システムであれば「ケーブルの切断」「スピーカーの破損」といった個別の物理的な被害には強い。ただし、送信施設や基地局が被災した場合はその限りではなく、過度に依存することはやはり避けたい。現実的には複数の伝達方法を担保しつつも、過信せずに「何らかの理由で伝わらないこともあり得る」ことを住民と共有することが求められるのではないか。理想は自らの判断で早めに身を守る行動をとることであり、情報はその判断材料であるということを理解してもらうことかもしれない。
2017.07.17
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平成29年6月30日からの梅雨前線に伴う大雨及び台風3号に関する情報(国土地理院)国土地理院は、平成29年6月30日からの梅雨前線に伴う大雨及び台風3号による被害状況を把握するため、国土地理院ランドバード(GSI-LB)を派遣し、UAV(ドローン)を用いて撮影を実施しました。一連の九州北部の大雨災害について、国土地理院がドローン撮影した動画を公開した。地理院地図で場所を確認しながら動画を見ることができる。2015年の鬼怒川水害以降、国土地理院は災害の際にいち早くドローンによる動画を撮影し、公開している。今回の動画も被害状況を把握する上で貴重な資料となりそう。いずれも尋常ではない被害状況であり、復旧には時間がかかることが予想される。まだ安否不明の方もいる状況で発生から災害現場での生存率が下がる目安の一つとされている「発生後72時間」が迫っている。被害が広がらないことを祈りたい。
2017.07.07
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「大雨警報(浸水害)や洪水警報の危険度分布の提供開始」、及び「大雨・洪水警報や大雨特別警報の改善の延期」について(気象庁報道発表資料)気象庁は「大雨警報(浸水害)の危険度分布」及び「洪水警報の危険度分布」の提供を7月4日13時に開始する。なお、大雨・洪水警報及び大雨特別警報の改善については、気象警報等の発表に用いるシステムの改修が必要であり、現在懸念されている梅雨前線及び台風第3号に伴う防災気象情報の提供に万全を期すために7月6日13時に延期することとなった。警報の危険度分布は、地中に浸み込んで土砂災害を発生させたり、地表面にたまって浸水害をもたらしたり、川が増水することで洪水害を引き起こしたりといった雨水の挙動を模式化し、それぞれの災害リスクの高まりを表す指標としての土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数を用いることで、単純な雨量よりも適切に評価・判断することがで的確な警報発表につなげようというもの。<気象庁ウェブサイトより>気象情報や災害情報の提供については、過去の災害の教訓を生かすための改善が続いているが、情報にはさまざまな受け手がいる以上、そこには当然試行錯誤もある。例え改善であっても、「変える」ということは(それまでの情報のあり方に慣れていれば慣れているほど)一定のリスクも伴うことになる。だからこそこのタイミングでの実施を延期したともいえるのだが。重要なのはしっかりと周知をすることだろう。今回の改善については天気予報等でも解説やコメントが入るだろうが、定着するまで繰り返し周知するしかないのではないか。せっかくの改善を生かすためにもそこは粘り強くやってほしいところ。
2017.07.03
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福井地震きょう69年 資料デジタル化、後世に 福井高専教授ら「防災意識高めて」(毎日新聞)福井地震は28日で発生から69年を迎える。福井工業高等専門学校の吉田雅穂教授(地震防災工学)らのグループはホームページ「福井震災を知る」を作り、火災や液状化が起きた場所を示した地図や集めた写真などのデータを今年4月、公開した。来年の発生70年に向けて内容の充実を目指す吉田教授は「地震を身近に感じ、市民の防災意識が高まるきっかけになればうれしい」と話している。福井地震は1948年6月28日16時13分に発生、戦後まもない福井を襲った地震(M7.1)。福井市では当時の震度階級で震度6を記録しているが、気象庁が震度階級に新たに「震度7」が設定される契機となったことでも知られる。記事で紹介されているウェブサイト「福井震災を知る」では、福井地震に関する写真や地図などさまざまな資料がアーカイブ化されており、当時の様子や現在との比較を通じて学ぶことができる。「空からみた福井地震」では、当時GHQが撮影した航空写真と、UAVで撮影された現在の姿を対比して掲載している。また、震度分布予測や国の調査結果を基に学生が作成した「福井地震災害マップ」やなども公開されており、防災学習ツールとしても汎用性が高い。地元の高等専門学校がこうした資料を一元化したサイトを立ち上げたことで地域の中で福井地震の教訓を共有し、地域の特性や起こり得る被害を知り、地域防災への関心が高まるきっかけにできればというところ。
2017.06.28
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アングル:高層住宅火災で露呈、英国が抱える「貧富の格差」(ダイヤモンド・オンライン)少なくとも17人が死亡した大規模火災が今週発生したロンドン西部の公営住宅がある一角から、徒歩で少しの場所に、数百万ポンドはする優雅な住宅が並ぶ、英国で最も裕福な通りの1つがある。ケンジントン・アンド・チェルシー王室特別区は、ポップスターやセレブ、富裕層や銀行幹部が住むエリアとして、英国内外で広く知られている。だがその同じ地区には、今回の火災が起きた24階建ての高層公営住宅「グレンフェル・タワー」が建つ一角のように、貧しい地区も点在している。惨事との因果関係がはっきりしたわけではないが、格差が拡大する現代社会において、都市の構造という観点からも考えさせられる記事だ。高層の公営住宅という様式自体も過密都市を象徴する居住スタイルだが、そこに防災という概念が軽視されていたことが多くの犠牲を生んだ要因であることは間違いないだろう。記事中の地区の人の言葉の中で「どちら側の人間」という表現が出てくるあたりに、格差による都市コミュニティ分断が如実に現れている一方、火災によってコミュニティの異なる層の人々が団結が見られる点は特筆できる。いわゆる災害ユートピアというのはこれまでも多くの例があるけれど、格差などでもともと分断されたコミュニティが災害をきっかけにどう変化していくのか興味深いところ。被災者の今後、そして地区の再生を考えた時に、都市コミュニティのあり方がひとつのカギを握ることになりそう。
2017.06.16
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避難場所と避難所の違い(ハフィントンポスト)河野太郎氏による投稿記事。全国の避難所のデータベースを提供しているゼンリンデータコムの調査によると、全国の自治体で避難所にさまざまな名称が使われていることがわかったというもの。災害対策基本法では「指定緊急避難場所」と「指定避難所」を明記しているが、その違いがどれだけ認識されているのかも怪しいところ(中には兼ねているところもある)であるにも関わらず、「避難所」「避難場所」「地域避難所」「拠点避難所」「一時避難所」「一次避難所」「一次開設避難収容所」「一時避難場所」「一次避難場所」「屋外避難先」「緊急避難場所」「広域避難所」「広域避難地」「市指定避難所」「市指定避難場所」「指定避難所」「指定避難場所」「震災時避難所」「二次避難所」「避難地」「避難予定場所」「福祉避難所」「避難施設」「補助避難所」「予備避難所」「自主避難所」と多くの名称がまかり通っていて、確かに何ともわけがわからない。たとえば自分の居住地である府中市について見てみると、避難所として「一時避難所」と「二次避難所」が、避難場所として「地域避難場所」(自宅近くの公園や神社の境内など)「指定避難場所」(小中学校及び都立高校)「広域避難場所」(広い公園や河川敷等)が掲載されている。ただし、「広域避難場所」に指定されている東京競馬場や東芝、NECなどの事業所は私有地であることから、「市の要請に基づいて開場し、市の職員や警察官の誘導により避難する場所」という扱いとなり、街中にある避難場所の看板等には記載されていない。ちなみに我が家からもっとも近い広域避難場所は東京競馬場(徒歩7分)なのだが、看板通りだと多摩川河川敷(徒歩15分)まで逃げなければならないことになる。事情はわかるが、これではいざという時にわかりにくい。もちろんきちんと名称を整理してわかりやすく表示することをして欲しいところだが、まずは自分が住んでいる地域において、避難所や避難場所がどういう機能でどういう名称であるのかをしっかり把握していざという時に迷わないようにしたいところだ。それにしても河野太郎氏、地理院地図のことをいまだに「電子国土」と書いているのは政府の人としてはアレだな。
2017.06.11
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産総研ら、ドローンによる埋没車両の探査システム開発、災害時活用を推進(財形新聞より)産業技術総合研究所はエンルートや日立製作所、八千代エンジニヤリングと共同で、土砂災害時にドローンを使用して空中から埋没車両を探査するシステムを開発、検証実験で埋没車両の位置特定に成功した。その手法は型電磁探査システムのセンサーをドローンにつり下げて航行計測するもの。人やヘリコプターでは探査が困難なケースでもドローンでの迅速な探査が可能になることから、災害時の実用化に期待がかかる。災害時のドローンの機動力はこれまでも実証済みで、国土地理院が鬼怒川水害や熊本地震で被災状況を動画で撮影して状況把握に貢献したことは記憶に新しい。一方で実際の土砂災害現場では傾斜が急で複雑な場合も多く、つりさげ型センサーで安定した航行ができるのか懸念もある。今後は急斜面での実験を行い、実用化へ向けて加速する。
2017.06.08
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位置情報から車中泊対策 携帯3社、システム構築へ 熊本地震の教訓をいかす(SankeiBiz)政府が携帯電話大手3社と協力して、災害時に携帯電話の位置情報データを活用した車中泊の被災者らの所在把握システムの構築を目指すという記事。この仕組みづくりはビッグデータを防災分野に生かす取り組みの一環として位置づけられており、政府が予定している実証実験に3社が参加する形で実現する。どこまで被災者の所在把握の精度や、個人情報、プライバシー等への配慮を検証するという。携帯電話3社は基地局との通信から得られる位置情報を匿名データとして提供し、地図と重ねることで被災者の所在を把握したうえで、例えば地図上の大型駐車場内で位置情報データが夜間に集中していれは、車中泊の人が複数いることが推定できるというもの。技術的には特に問題はないが、実際の運用は難しい。記事ではプライバシーへの配慮がうたわれているが、この種の解析は個人が特定されやすいことに加えて、本当に被災者の救済や対策のために利用するのであれば、突き詰めるとむしろ個人情報が合った方がいいというケースも出てくる可能性がある。そういった点も含めて、車中泊の被災者らの所在を把握することで何ができるのか、そして実際にどこを目指すのかを踏まえた運用を考える必要があるのではないか。そのうえで救済とプライバシー対策のバランスを決めていくことが落としどころになりそうだが。
2017.06.05
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八王子でAIを活用したリアルタイムハザードマップ作り 拓大、エイビットら事業参加(八王子経済新聞)八王子市と拓殖大学、エイビット、みらい、ハレックス、M2Bコミュニケーションズの6者が「八王子市災害対策推進コンソーシアム」を結成、水位監視センサーにより河川の水量を常時観測し、AI(人工知能)によりリアルタイムハザードマップを作成する実証事業を進めることを発表した。この取り組みは八王子市が進める総務省委託事業である「IoT サービス創出支援事業」の採択を受けて実施されるもので、事業の正式名称は「IoT・AI を活用したリアルタイムハザードマップの作成と行動支援情報の提供モデル実証事業」となっている。水位監視センサーを市内を流れる河川に約30カ所設置し、収集したデータを気象情報と併せて無線でサーバーに蓄積、AIによる解析で水害発生の見込みなどをリアルタイムで地図上に示すシステムを構築する。河川の状況や気象条件だけでなく、発災時の人間の行動も分析することで、適切な避難誘導も留意されるという。使用される通信技術「LoRaWAN(ローラ・ワン)」は、無線局の免許がなくても基地局を展開できる。通信速度は遅いが、1つの基地局で5キロの範囲をカバーできるほか、免許を必要としない周波数帯を使うことでコストを抑えることができることから、次世代の通信技術とされている。IoTによる常時観測はいわゆる豪雨など局地的に強い雨が降った場合などの急激な出水を捉えるうえでは有効だろう。記事では触れられていないが、それをどういう形で地図化して、どのように配信して避難行動に結びつけるのかという点も重要になる。その点が展望も含めあまり明らかにされていないのは気になるところではある。既に静岡市が実施しているが、IoTのセンサー情報をリアルタイムオープンデータとして提供するという方法もある。この方法はさまざまなアウトプットの構築を促すことになり、多様な情報の受け手に対して適切な形でアラートを出せる可能性がある。IoTやAIの活用を生かすためにもアウトプットの部分をより最適化して欲しい。
2017.05.17
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防災アプリを「観光」「見守り」に活用 大阪大が産学共同研究(産経WEST)災害時に防災アプリを使いこなせるかどうかは普段使いがされていることが前提になる、という点についてはこれまでも多くの関係者が指摘しており、さまざまな事例が世に出ている。今回、大阪大の稲場圭信教授らのチームが産学共同研究として開発した「未来共生災害救援マップ」もそういった点でいえば後発といえるが、目立った特徴としては・独立電源型のWi-FIステーションなどを搭載した街路灯との連動・学校や公民館に加え、寺院や神社などの宗教施設を避難所とみなした(全国約30万件のデータを蓄積)というところだろうか。前者は風力と太陽光で発電する街路灯を改良するもので、防災面だけでなく防犯カメラ機能を持たせてアプリと連動することで、たとえば高齢者や子どもたちの見守りでも機能するというもの。実現すればインフラとして有効だろう。後者については神社仏閣ならではの見所や祭りなどの観光情報を併せて掲載することで普段使いを促す狙いもあるようだ。ただ、掲載されているすべての施設が避難所として有効なのかどうか(立地の安全性に加え、施設側の受け入れ態勢も含めて)は気になるところ。公的な避難所に逃げられない場合などに選択肢が増えることは有効だとは思うが。
2017.05.15
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火山噴火避難計画 自家用車使用記す 伊豆大島・三宅島(東京新聞)伊豆大島と三宅島の噴火の際の避難計画がまとまり、従来は避難の際に使用できなかった自家用車について、状況に応じて使えるようにすることが盛り込まれた。火山噴火避難計画は、2014年の御嶽山噴火を受けて改正された活動火山対策特別措置法において、全国49の火山を対象に周辺自治体に作成が義務付けられており、住民や観光客の安全を確保などが盛り込まれる。伊豆大島と三宅島の両島では避難に使えるバスの台数が少ないことから、事態が切迫した場合の自家用車の利用が明記された。従来災害時の避難において自家用車の利用はタブーとされてきたが、今回状況に応じた使用が明記されたことはひとつの先例になりそう。これまでも津波避難などの際に、高齢者が多い地域などにおいて、近くに高台がなく長い距離を避難しなければならないようなケースなどでは車を使用せざるを得ないといった議論はされてきており、福島県いわき市などでは実際に避難計画に盛り込む動きがある。同じように高知県黒潮町でも、津波避難は原則徒歩としながらも、車での避難は排除せず「自動車避難容認地区」「不適切な地区」などを地域防災計画の中で明確にしようとする方針を打ち出している。また、洪水時の避難においても、福島県郡山市など実際に言及がされている例はある。もちろん多くの人が自家用車で避難をすれば渋滞等の交通混乱が発生するなどむしろ危険を招くリスクもあり、車使用には事前にルールづくりが前提であることは言うまでもない。それでも状況に応じた最良の避難の選択肢の一つとして実証実験等を行っておくことは必要なのではないか。
2017.05.14
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震災6年2か月 続く「学ぶ防災」/岩手・宮古市(岩手放送)東日本大震災の発生から6年2カ月が流れた。沿岸の被災地ではさまざまな防災に関する取り組みが実施されているが、記事は宮古市田老地区を拠点に、震災翌年の4月から活動を継続している「学ぶ防災」を紹介している。「学ぶ防災」は東日本大震災で甚大な被害が出た田老地区の現状を知ってもらうことが目的。残された防潮堤に上ったり震災遺構のひとつとなっているたろう観光ホテルなどを見学しながら震災の教訓を伝え続けている。これまで全国から、約12万人を受け入れてきている。田老地区は震災前から「津波防災の町」として知られ、巨大防潮堤は海外からの視察もあったほど。それだけ防災意識がの高かった町が被災したことは大きな衝撃であったと同時に、だからこそ伝えられる教訓もある。交通の便もよくないため首都圏からだと遠く感じるが、チャンスがあれば田老の町は一度見ておいていいし、その際には「学ぶ防災」を体験することをお薦めする。
2017.05.11
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小・中学校版防災教育補助教材「3.11を忘れない」【平成28年度】(東京都教育委員会)東京都教育委員会は、首都直下地震等に備え、防災教育の充実を図るための防災教育補助教材「3.11を忘れない」【平成28年度】を作成・公開した。教材は小学校版と中学校版があり、それぞれPDFをダウンロードすることができる。教材の内容は小学校版が「知って」「備えて」「守って」「明日へ」、中学校版が「知っておこういろいろな災害」「大災害への準備と対策」「その日に備えて 〜自助・共助の心〜」の章建てで構成され、災害への備えばかりではなく、3.11はもちろん、過去の災害についてさまざまな事例が記載されていたり、自助・共助・公助について触れられていたりとかなり踏み込んだものになっている。特筆すべきは新聞等を活用しながら、正しい情報収集と適切な情報活用について考える記述があるなど、災害情報についての考え方にも言及があることだ。また、百人一首など古典文学や災害記念碑などを例に挙げて、災害を伝承することの重要性について(先人の残した教えを受け止めることも含めて)もきちんと記載されている点は好感が持てる。わかりやすさだけでなく、小中学生の被災者~のメッセージも含め、全体にバランスがとれた優れた教材になっている点は評価できる。問題はこれをどういう形で実際の教育の現場で使っていくかという点だろう。小学生は5~6年生、中学生は2~3年生の国・社・理・体・家・道徳・総合・特活などで教科横断的に活用できるつくりにはなっているが、実際に教科横断的に防災教育を行うとすれば、それぞれの科目の指導計画の中にあらかじめ組み込んでおく必要があるだろうし、すべての教科の教員にそれなりの意識やスキルがあることが前提となる。上手く生かすためにも、それぞれの科目の中に防災教育的な内容を組み込んだプログラムを考えていく必要があるのではないか。
2017.05.09
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防災学習、より身近に 県さぼう遊学館が改装オープン(岐阜新聞)岐阜県海津市の「岐阜県さぼう遊学館」がリニューアルオープンした。同施設は土砂災害の減災啓発を目的に1994年の開館したが、今回は「土砂災害に対する避難の重要性や方法について学習する施設」としてのリニューアルされたもの。リニューアルによりハザードマップを用いた災害図上訓練を行う研修会場を新たに設けたことで、消防機関や自主防災組織など災害対策に関わる専門家にも門戸を広げることになった。展示についても、3D映像で土砂災害の被害を疑似体験できるコーナーが新設されたほか、土砂災害の記録映像や、県内全域で指定される土砂災害警戒区域と避難経路を示すハザードマップも公開されている。開館中は出入り自由で展示物を見ることができるほか、事前に予約すれば無料で土砂災害や防災に関する専門家による研修を受講することができる。また遊学館周辺の「羽根谷だんだん公園」では登録有形文化財に登録された「巨石積えん堤」や、実際に土石流で山から流れ出てきた石に触れることができる「土石流の広場」などもある。地図で見るとこのあたり。海津市というと木曽川、長良川、揖斐川に囲まれて低平な土地というイメージがあるが、岐阜県さぼう遊学館は養老山地の麓、羽根谷が山から低地へ流れ出る場所に位置しており、古くから土石流の多発地帯として知られており、江戸時代から砂防工事が行なわれていた場所でもある。充実した施設でもあり、防災学習の拠点として活用できれば理想的。同様に各地で地域の災害特性を生かした施設ができれば一番いいのだが。
2017.05.07
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沖縄の名護市と大宜味村で川増水、一時54人が孤立(TBSニュース)5日午後、沖縄県の名護市と大宜味村で大雨による川の増水で行楽客など54人が一時対岸に取り残された。うち一ヶ所は名護市の源河川で、大雨の影響で水位が急激に上昇し、上流、中流、下流の3か所で合わせて男女21人が対岸に取り残され、その後救助された。映像に映っている現場は地図ではこのあたり。また、この現場からほど近い大宜味村の「ター滝」でも行楽客ら33人が対岸に取り残された、その後全員が救助された。地図ではこのあたりになる。滝の上流側は源流までの距離がややあることから、上流で大雨が降ると急な増水の可能性があり、現場でも看板等で注意喚起している。沖縄気象台が名護市に大雨洪水警報を発表したのが14時46分。通報が14時半頃とのことなので、警報そのものは間に合わなかったということだろうか。沖縄の河川は源流から海までの距離が短いことから、豪雨等では急激に増水することが多い。2009年には那覇市のガーブ川で、川底で橋梁の調査をしていた作業員5人が豪雨による鉄砲水で流され4人が死亡する事故が起きている。今回全員無事救助されたことは幸いだったが、これから雨の多い季節に向かうにあたり、局地的な豪雨では警報等の情報が間に合わないまま河川が急激に増水することもあることを認識しておきたい。
2017.05.05
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3億円以上かけた防災無線事業が頓挫 宮城 色麻町(NHK)<一斉放送破綻>巨費投じた防災施策後退も(河北新報)宮城県色麻町が3億7000万円かけて導入したデジタル無線網による災害情報などの町内全世帯への一斉放送システムが、多くの家庭に電波が安定して届かず、事実上頓挫していたことがわかった。システムは町内6箇所に設けた高速無線通信の基地局から発信した電波を各家庭に設置した端末で受信する仕組みだが、電波が安定して届かず、町内約2000世帯のうち放送を受信できるのは300世帯程度だという。一般論としてデジタル無線は直進性に優れ、同じ出力であってもアナログよりも遠くまで届く一方、遮蔽物に弱い性質があり、ある一定の電波量を下回ってしまうと一切の通信が途絶えてしまう。色麻町の地図を見ると、町域は山間部まで含むものの、住居はおおむね低地に集中しており地形的な遮蔽があるようには思えない。設計業者は原因を「施工業者が設置した交換機がうまく作動しなかったこと」としており、検証委員会も動いており、原因は特定されておらず対策は見当たらない。ただ、防災デジタル無線については実際に運用している自治体もあるので、仕組みそのものの問題とはいえないだろう。巨費を投じた事業が頓挫したことで、町の防災・減災施策は後退しかねない。町民の安全確保を考えれば代替えとなる情報伝達手段を早く整備する必要があるのだが。
2017.05.03
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雨による災害発生の危険度の高まりを評価する技術を活用した大雨・洪水警報や大雨特別警報の改善、及び危険度分布の提供について(気象庁報道発表資料)気象庁は7月上旬から、「大雨警報(浸水害)の危険度分布」及び「洪水警報の危険度分布」の提供を開始する。気象庁はこれまで土壌雨量指数や流域雨量指数雨など、災害発生の危険度の高まりを評価する「指数」を開発し、警報等の発表に活用している。今回は洪水害について、流域雨量指数を精緻化するとともに、浸水害について表面雨量指数を新たに導入することで以下の改善を行う。・表面雨量指数を大雨警報の発表基準に導入する。また、表面雨量指数を用いて、市町村内のどこで大雨警報等の発表基準に到達するかを確認できるよう、地図上に危険度を5段階で色分け表示した「大雨警報(浸水害)の危険度分布」の提供を開始する。・精緻化した流域雨量指数を洪水警報の発表基準に導入する。また、精緻化した流域雨量指数を用いて、市町村内のどこで洪水警報等の発表基準に到達するかを確認できるよう、地図上に河川の流路に沿って危険度を5段階で色分け表示した「洪水警報の危険度分布」の提供を開始する。・危険度分布の技術の活用により、大雨特別警報を危険度が著しく高まっている地域をより明確にして発表する改善を行う。災害のたびに教訓があり、それを克服するための改善がある。ただしハード面の対策は(改善がされれば)ある程度の即効性があるのに対して、ソフトの部分は周知定着に時間がかかるし、また周知の仕方も難しいものだ。気象庁の防災における役割は、さまざまな観測結果から得られた情報を提供するというソフト的な部分になるわけだが、情報の流通には受け手側にも相応のスキルが必要であり、時として誤った解釈によるマイナス効果も起こるためなかなかデリケートだ。今回の改善は情報の受け手にとってわかりやすくなる一方、情報が緻密になることにより「安心リスク」(危険度が高い部分を外れているから大丈夫だという過信)を生む可能性もある。せっかく情報が提供されても、逆効果になっては意味がない。情報を生かすも殺すも受け手次第。それだけにマスコミや気象会社などの役割はより重要になるだろう。「どう伝えるか」は決して気象庁だけの問題ではない。
2017.04.29
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全国地震動予測地図2017年版(政府地震調査研究推進本部)地震調査研究推進本部地震調査委員会が「全国地震動予測地図2017年版」を公開した。この地図は特定の地点が30年以内に地震に見舞われる確率を示したもので、2014年に公表された後、2016年に一度改定をしている。その後2016年7月に、新たに「中国地域の活断層の長期評価(第一版)」が公表されたことから、この間に得られた知見に基づいて全国地震動予測地図を更新したもの。<J-SHIS 地震ハザードステーションより>2016年との比較でいえば、中国地方の活断層の再評価を反映する形で山口県山陽小野田市で最も上昇率が高く(3.6ポイント)なったほか、太平洋側では軒並み1ポイント程度上昇している。ただ、こうした数字は防災インフラの整備等を別にすれば、防災的にはあまり大きな意味をもたないと考えた方がいい。日本列島はどこであれ地震のリスクはあるし、それがいつ起こるのかも予測できるわけではない。地図上で確率が低いから安全ということでもない。また人口集中地の多くは地盤の柔らかい沖積低地に発達していることから地震時の揺れも大きくなりがちだ。数字にとらわれるよりも、むしろ日本に住む以上は地震はいつでもどこでも起こるという意識で万が一に備えることが肝要なのではないか。
2017.04.27
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災後生まれ今春就学 被災と教訓どう伝える(河北新報)東日本大震災以降に生まれた子どもたちがこの春小学校に入学している。震災発生から7年目に入り、当時の実体験や記憶のない子どもたちが増えてきたことで学校の防災教育は岐路を迎えているという。防災教育において津波の怖さを視覚的に知ってもらうことが大事としながらも、学校ではこれまでは被災児童に配慮し、津波の映像を見せることは避けてきた経緯がある。その中でどうやってこれからの子どもたちに視覚的に伝えるかについて、各学校は模索している。個人的には、当面はまだ親や親せきなどの身内や地域の人たちが、映像はともかくも語り伝えていくであろうことから、大切なことは伝わるのではないかと思っている。自分の年代に置き換えると、子どもの頃に両親や祖父母からたくさん戦争の時の体験を聞かされてきた。戦後生まれであっても、そうした「一次資料」的な話をなまなましく聞けているうちは、戦争の怖さは伝わり続けた。震災でも同じだろう。今はまだ、体験者が周りにたくさんいる。しかし時が流れて世代交代が進めばそうしたなまなましさはどうしても薄れていくことになる。むしろその時のために、今の子どもたちにどう体験を伝え、どういう防災教育をするのかが大切なのではないかとも考える。記事中にもあるが、災害経験の継承を巡っては阪神淡路大震災の被災地での活動が先行している。ノウハウを共有しながら、長い目で見れば全国に広げていくことが今後は求められるのではないか。
2017.04.23
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遺族側の請求棄却 釜石の防災センター津波訴訟(朝日新聞)東日本大震災の津波で、岩手県釜石市鵜住居町にあった鵜住居地区防災センターに避難して津波にのまれて亡くなった犠牲者2組の遺族が、市を相手に損害賠償を求めた訴訟について、盛岡地裁は遺族側の請求を棄却する判決を言い渡した。鵜住居地区防災センターは市が指定する正式な避難場所ではないにも関わらず、200人以上の住民が避難場所であると信じて避難し多くの犠牲者を出した。遺族側は「市は避難場所ではないと周知する義務を負っていたのに、住民の誤解を解く努力を怠っていた」と主張したのに対して、同センターは、市指定の正式な避難場所ではなかったが、市は震災前の避難訓練で避難場所として使用することを認めていた。こうしたことから、遺族側は、「市は避難場所ではないと周知する義務を負っていたのに、住民の誤解を解く努力を怠っていた」などと主張していた。背景には過去記事でも触れているが、鵜住居地区防災センターが地域の避難訓練において避難場所として見立てられて利用されていたことがある。鵜住居地区の住民は総じて防災意識は高かったとされ、避難訓練への参加者も多かったことで誤解が広がったと考えられる。避難訓練での利用は地域側が希望したものだった。寒い中で高齢者の負担を軽減するため、本来の避難場所でなく、防災センターを避難場所に「見立てる」ことを要望し、市もそれを了承したという経緯がある。「いつしか避難訓練の参加率を上げること自体が求められるようになっていた」と市の報告書にもある。この防災センターには2010年2月のチリ地震津波の際にも多くの住民が避難している。この時は津波がそこまで大きくならず、被害が出なかったのだが、この時点で地域の住民が誤解していることは明らかであったといえる。今回の訴訟に対して市側は正しい避難場所を周知していた点や「避難場所ではない」とまで周知するのは過度の負担を強いる点を挙げて反論していた。一度生じた誤解を解消するのは簡単ではない。「防災センター」が避難場所ではないというわかりにくさ(公民館等の建て替えの際に予算がつきやすい「防災」の文言を入れたという経緯がある)、そして避難訓練での使用など誤解を醸成する下地があったこと、それが解消されないままその時を迎えてしまった。結局その場しのぎの「まあいいや」の積み重ねが大きな悲劇につながったのではないか。個人的には責任云々ではなく、この経緯とそこから生まれた結果について、きちんと全国で共有することが大事ではないかと思う。
2017.04.21
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苫小牧港管組、港の津波避難計画策定 被害予測地図も (苫小牧民報)苫小牧港管理組合が「苫小牧港津波避難計画」を策定、苫小牧港の東港と西港を対象に、津波の発生時に港湾地域にいる人々が円滑に避難できるルートを示したハザードマップ(被害予測地図)も作成・公開した。港湾の津波避難計画の策定は、北海道内で初めてだという。計画とハザードマップの作成に当たっては、国土交通省が2013年に公表した「港湾の津波避難対策に関するガイドライン」をベースとして、道が作成している津波浸水予測図や苫小牧市と厚真町の津波避難計画の内容を加味している。ハザードマップでは、津波による浸水の深さをカラーで表示し、海岸や港湾地域から両市町が指定する避難所までの移動ルートを点線、移動方向を矢印で記し、各避難所の高さなども明記している。津波避難計画とハザードマップは苫小牧港管理組合のホームページで公開されている。ホームページでの公開はGISではなくPDFだが、ひと通りみることができる。ハザードマップは通常であれば市町村が作成するもので、港湾管理組合が主体となるケースは珍しいが、避難計画やハザードマップの対象が港湾であり、複数の自治体にまたがっていることを考えれば、むしろ港湾管理者である組合が作成するのことはむしろ合理的。同じようなことが河川についてもできれば、かねてから言われているように自治体ごとに分けるのでなく、水系単位など広域での避難計画やハザードマップの作成が可能になるのだが、港湾管理組合のような相応な管理主体がないことがハードルを上げているのかもしれない。
2017.04.16
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避難情報の名称を変更 防災基本計画修正案を了承(NHK)政府の中央防災会議が開かれ、避難に関する情報の名称変更などが盛り込まれた「防災基本計画」の修正案が了承された。修正案は昨年4月の熊本地震や、同8月の台風10号における岩手県岩泉町での大きな被害の教訓から、従来の「避難指示」を「避難指示(緊急)」に、「避難準備情報」を「避難準備・高齢者等避難開始」にそれぞれ変更したのをはじめ、高齢者施設などが避難計画を作成し訓練が行われているかについて、自治体が定期的に確認することなどが盛り込まれている。これを受けて、今後は全国の自治体で「地域防災計画」の見直しが進む見通しだという。避難指示や避難勧告の違いや意味が正しく伝わっていないという懸念は以前からあったが、加えて昨年の台風10号で岩泉町の高齢者施設が被災した件について、責任者が避難準備情報の意味を理解していなかったことが避難の遅れを招いた可能性があることが指摘され、避難情報のあり方が問われていた。結果として「わかりやすい表現」へと変更されることになったが、変更が正しく周知されなければむしろ困難を招く可能性もある。変更することが一つの方法であることは理解するにしても、むしろ既に運用されている用語を周知・徹底することの方がむしろ早道という考え方にはいかなかったのだろうか。一つのことを決めて、それが上手くいかなかった時に改善することは絶対に必要だが、それは必ずしもそれまでのやり方を捨てるということではないはずだ。もちろん決まった以上は徹底すべきだし、そうしなければ意味がない。「わかりやすくなった」で終わりにしてはいけない。
2017.04.15
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体感震度や被害 分布図に 14年県北部の地震で報告書(信濃毎日新聞)信大震動調査グループは、2014年11月の長野県北部地震(神代断層地震)において、住民による体感震度や被害に関するアンケートを報告書としてまとめた。回答は2万6105人から得られ、体感震度は「はわないと動くことができない」を6強、「立っていることが困難」を6弱として指標を示して選択してもらう方法と採用した。住民の回答から震度分布図や被害状況地図も作成され、今後大学のホームページを通じて公表することで地域防災に役立てるという。同グループでは2011年6月の長野県中部地震(松本地震)においても同様の手法で報告書を公開しており、その成果を踏まえた「揺れやすさマップ」も公開されている。こうした試みは、気象庁の震度計ではカバーし切れないローカルな被害特性を解明する上で意味がある。もちろん住民の体感震度ゆえの誤差は必ずあるだろうが、こうした調査を積み重ねることで必ず地域特性は見えてくるし、同時に住民側もその特性を認識し、自然な形で土地と被害の関係への理解も促されることが期待できるのではないだろうか。労の多い調査であることは想像に難くないが、地域の研究機関として是非とも続けて欲しい取り組み。
2017.04.06
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「雪崩被害は防げなかったのか」(NHK解説委員室)3月27日に栃木県那須町のスキー場付近で発生した雪崩に登山の講習会に参加していた高校生らが巻き込まれ8人が死亡、40人がケガをした事故について、NHKの松本浩司解説委員による見解。・引率した教師たちは登山経験が豊富であり、雪崩が起きやすい状況にあるということ認識していたはず・講習会の最終日で登山を雪のために中止し、第2ゲレンデの周辺で深い雪の中を進む「ラッセル」の訓練を行った・今期のスキー場の営業は既に終了しているが、那須町によれば第2ゲレンデの上はたびたび雪崩が起こる場所。シーズン中は頻繁にパトロールを行い兆候が見つって第2ゲレンデを閉鎖することもシーズンに数回ある・この登山講習会は50年以上の長い歴史があり、近年は同じ場所で開催されている。雪で登山が中止になったため最後にラッセル訓練を経験させたいという思いがあったのでは。ただ、よく知った山だけに油断があった可能性も・自然の中での活動はリスクが必ずある。ただし教育活動として行う以上安全に最大限の配慮が必要雪崩で8人死亡 講習参加の全員が発信器持たず(NHK)こちらの記事では講習に参加していた生徒と教員の全員が、雪崩に巻き込まれた際に居場所を発信する「ビーコン」を持っていなかったことを指摘・雪崩の可能性がある山に登る際は携帯するのが望ましいがビーコンは今回の講習での持参品リストには入っていなかった・登山を中止してラッセル訓練に講習の内容を変更したことは現場から主催者側には伝わっていなかった・防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの上石勲センター長によると、新たに積もった雪が崩れて流れ下る「表層雪崩」が起きた可能性が高い・那須町によると、現場付近は毎年雪崩が発生しており、危険がある場合はゲレンデを閉鎖している・日本山岳ガイド協会の磯野剛太理事長は、研修の成果をきちんと出そうと訓練をしたことがあだになったと指摘。スキー場だからといって安全ではなく、ラッセル訓練をするのなら、もっと樹木が多い場所を選ぶべきだった点、ビーコンを携行していなかったことは雪崩を想定していなかったと言わざるをえない点から、判断に問題があった可能性に言及した雪崩、尾根で生死わかれたか 生存の生徒、発生時を語る(朝日新聞)・講習会に参加していた高校山岳部の男子生徒が、亡くなった県立大田原高の生徒たちは尾根をまたいだ反対側の斜面を歩いていたこと、雪崩の雪が尾根で分かれて、自分たちの側は雪が少なかったので助かり、向こう側は雪量が多かったことで被害が大きくなった可能性を証言【事故調査】170327那須岳雪崩事故・速報(日本雪崩ネットワーク)・現地調査の結果、面発生乾雪表層雪崩であり、規模がサイズ2(走路およびデブリ量より推定)であるとした・雪崩の流下方向と被災現場を推定。現場が完全な山岳エリアであり、スキー場ではない点を指摘雪崩から身を守るために(政府広報オンライン)・雪崩の発生しやすい場所として傾斜が30度以上の斜面が挙げられている。雪崩ネットワークの調査によれば現場の斜度は20~25度、推定発生区への見通し角は33度とのことであり、これに該当する・同じく雪崩の発生しやすい場所として低木林やまばらな植生の斜面が挙げられており、今回の現場は疎林であり、やはりこれに該当する・被害を防ぐために心掛ける点として危険個所の把握、気象庁や市町村が発信する情報をチェックすることが挙げられている。気象庁では前日に雪崩注意報を発表していた以上、さまざまな情報を合わせると雪崩のリスクが高かったことは読みとれる。現場の特性や気象状況等を考えれば、ラッセル訓練を行ったこと、ビーコンを携行していなかったこと(記者会見で主催者側は現在の山の状況を「冬山」ではなく「春山」と認識していた旨を発言している)も含め、適切なリスク管理がされていたのかには疑問を持たざるを得ない。もっとも、山に登るなど自然の中での活動は少なからずリスクを伴うものであり、2014年の御嶽山噴火のようなケースもあり、すべてを防ぎきれるものでないことも認識されるべきではある。一方で、教育活動の一環としての「講習会」であった点を考慮すれば、訓練の強行には疑問が残る。今回はスキー場での被災だったが、雪崩は道路や住宅地を襲うこともある。被害を防ぐには、やはり日頃から多くの人が雪崩災害を意識しておくことも必要だろう。新潟県の自治体などでは雪崩ハザードマップも用意されており、発生しやすい場所や発生しやすい気象条件などを把握しておくことも重要。今回の事故といい、先日の長野での救助訓練の防災ヘリの墜落事故といい、「本番ではない訓練」での犠牲が続いている点は残念なこと。せめて再発防止につながって欲しい。
2017.03.28
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御嶽、乗鞍防災マップ 携帯電波状況など記載(岐阜新聞)岐阜県が作成した岐阜・長野県境にある御嶽山と乗鞍岳の登山者向け火山防災マップに、噴火した場合の規制エリアや緊急時の連絡先、気象庁サイトのQRコードなどに加えて、登山道の携帯電話の通話状況やラジオの受信状況などが掲載された。同県の登山者向け火山防災マップは、焼岳、白山に続く3作目だが、携帯電話やラジオの情報が取り入れられたのは初めて。火山防災マップは岐阜県内の登山口周辺の宿泊施設やスポーツ用品店などに置かれるほか、県ウェブサイトからも閲覧可能。携帯電話の状況は独自調査によるもので、ドコモ・au・ソフトバンクの3つのキャリアについ登山道中に沿って受信の可否が線状に色分けされて掲載されているほか、ラジオは登山道中のNHKのAMの受信可否が同様に線状で、NHKのFMについては山小屋や広場など特定の箇所について受信の可否が示されている。これまで防災マップにこうした情報が掲載されることはなかったが、災害情報を得る手段でもある携帯電話やラジオの受信状況を知ることは防災上重要であることは確かで、今後普及していくことが期待される。もちろんこれらの情報は、アンテナの状況や気象条件、あるいは利用者の数などによっても変わるだろうし、アンテナの増設などで更新されることもある。あくまでもひとつの目安ではある。それでも(特に山岳地帯においては)重要なインフラ情報のひとつであり、今後掲載必須項目になっていく可能性はあるように思う。
2017.03.26
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今年も3月11日がやってきた。2011年のその日の午前中、税務署を訪れ確定申告を済ませてひとつ肩の荷を下ろしたところで、仕事先へ向かった(当時クライアントの社内で作業をさせていただいていた)。多くの人がそうであったように、数時間後に大変な出来事が起きるなどとは思っていなかった。あの3月11日の14時46分まで、みんなが普通に暮らしていたことはもはや遠い夢のよう。 3月10日の晩にはきっとたくさんの「最後の団らん」があったはずであることを思うと、今でもこみ上げるものがある。仏教では6年は亡くなった方々にとっては七回忌の年忌法要にあたる。6年経てば人々の環境も変わる。小学校に入学した子どもは卒業を迎える。いつの間にかそれだけの時が流れている。しかし現実はどうだろう。現地では災害公営住宅が少しずつ建ちはじめ、仮設商店街が新しい商店街へと生まれ変わるなど、力強い前進が見える一方で、嵩上げが終わったばかりの更地の土地が目立つこともまた事実だ。復興は長い道のりであり、今はまだ道の途中。少しずつであっても、復興が可視化されるのはいいことだ。ただ、被災した人々の心の中の復興はなかなか目に見えてこない。6年の間に色々な言葉が生まれ、消費された。よく使われた「絆」はいい言葉だが、それゆえに安易に使われるようになってしまい、軽さや違和感を覚えるようになった。最近は「寄りそう」という言葉に同じような脆さを感じる。それは決して言葉が悪いのではないし、それを使う人々が悪いのでもない。ただ、そうなってしまうのだ。きっと心理的なものなのだろう。さすがに今日は一日、テレビも震災関連番組が多かった。6年が経った3月11日は特別な記念日であると同時に1/365の日常でもある。復興は記念日だけで進んでいるわけではない。毎日少しずつ何かが変わっていっている。この道が幸せな未来に向かっていることを祈りたい。
2017.03.11
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川口メディアセブンでのトークショーで話をさせていただいた。川口市メディアセブンは、川口市が設立している、地域の文化、歴史、産業、芸術などさまざまな分野と連携しながら、総合的に学び、探求する新しいタイプの「学びの場」。実際に行った印象としては学びの場でもあり、交流の場でもあるイメージ。駅のそばの「キュポ・ラ」の7階にあり、公共施設としては非常に利便性が高く、階下は市立中央図書館になっている(駅前に中央図書館があるというのもなかなか凄い)。施設はワークスタジオやプレゼンテーションスタジオ、録音・編集スタジオ、コミュニケーションスタジオなど色々なタイプがあり、開催されるイベントもトークイベントや寄席、映画の上映、ワークショップなど多彩。今日はオープンスペースとなっているワークスタジオBを使用してのトークショー。地図や地名をからめた防災的な話をさせてもらったが、有料にも関わらず思っていたより聴衆が多くてありがたかった。90分話して残り時間が質疑応答というような段取り。尺が長いので時間配分がなかなか難しく、途中端折りながらもややオーバーしてしまった。ちょっと詰め込み過ぎたのは反省点。あと、もう少し噛み砕いた話にしたかったのだが、時間配分の関係でやや粗かったかもしれない。防災、とりわけ土地の性質の話だけに半信半疑だったのだが、皆さんよく聞いてくれて鋭い質問もあり、11日に東日本大震災発生から6年を迎えることもあってか、関心は高かった。終わってみるともう少し地元川口の話を多めにすればよかったかなとも思った。聴いていただいた方の1/3くらいは常連の方のようで、施設が立派であることはもちろんだが、いい文化になっていることも素晴らしい。チャンスがあればまた話をさせてもらいたいと思った。
2017.03.09
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Yahoo!天気・災害「災害カレンダー」に災害直後の自社撮影画像を提供(アジア航測)アジア航測がヤフーが3月8日から提供を開始する「Yahoo!天気・災害」の新機能「災害カレンダー」に災害緊急撮影画像を提供する。「災害カレンダー」はユーザーの防災意識を高めることを目的に、過去の災害の記録を報道機関や自治体などから収集してカレンダー形式で提供するもの。アジア航測では1959年の伊勢湾台風から50年以上、大きな災害が発生した際には、独自の判断で自主撮影を行うことを継続しており、撮影画像は被災状況の把握や災害復旧に利用できるよう、行政機関の関係部署や研究機関・建設会社・報道機関・関連学会などに提供するとともに、ホームページでも公開してきた。「災害カレンダー」への掲載は、これらをさらに有効に活用しようという試みになる。ヤフーの災害カレンダーは過去の災害のリマインダーとして、防災意識を高める効果が高い。当ブログでも「災害記録帳」というカテゴリの記事をこれまで39本掲載しているが、狙いは恐らく同じだろう。災害には多種多様な被害状況がある。しかし人はどうしても直近の災害に引っ張られる傾向がある。関東大震災以降地震で恐ろしいのは火事という共有認識が広がり「地震だ火を消せ」が標語になった。同じように東日本大震災の後に誰もが津波ばかりを気にするようになったのは記憶に新しい。しかしそれ以外にも恐ろしい災害形態はたくさんことは、決して忘れてはいけない。過去の災害を知ることは、災害が日本全国で起こっており、その被害形態も多様であることを認識することにつながる。加えて、地域固有のハザードや被害のパターンを認識する効果もある。災害カレンダーがそうした意識向上につながる可能性を秘めた仕掛けだと思う。
2017.03.08
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津波避難施設、整備に差=活用の一方、ゼロの自治体も-宮城(時事通信)東日本大震災後の津波避難タワーなど避難施設の整備について、同じ宮城県内でも自治体によって差が生じているという記事。記事中で未整備自治体として名前が挙がっているのが東松島市と南三陸町。いずれも東日本大震災で甚大な被害を受けた地域であり、また復興工事が続いている現状があることに加え、地形的には背後に高台があるため導入の議論は止まっている。南三陸町については人口の多い志津川地区では街全体を嵩上げしていることから、必ずしも津波避難タワーの需要があるわけではない点も考慮に入れる必要があるだろう。東松島町については必要が地区もあるはずだが、まだこれからという状況なのではないか。山元町と亘理町は、応急措置として小山を造成している。こうした小山は自分の記憶では岩沼にもあったはずだ。タワーであれ小山であれ、高台まで遠い場合の緊急避難が目的であるから、それなりの人数がそれなりの高さに避難できる状態であることが求められる。仙台市をはじめとした都市部では、自治体が協定を結んだ既存の民間ビルを津波避難ビルとして利用するケースが多い。ただ自治体は原則として、長期滞在できる施設への避難を勧めているというが、いわゆる緊急避難のための施設とその後被災者が滞在する避難所は別物であり、分けて考えるべきことと思う。もちろんこうした問題は東北だけの話ではない。静岡県をはじめ、南海トラフ地震による津波被害が懸念される地域でも整備はまだ一部。全国で共通認識となるまでにはもう少し啓発を磯く必要がありそう。
2017.02.26
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荒砥沢崩落地 活用策を探る(河北新報)2008年に発生した岩手・宮城内陸地震の際に荒砥沢ダム上流で大規模な地すべりが発生した。この荒砥沢崩落地を防災教育に活用するための検討が始まったという記事。地滑り地形は全国に多く分布しているが、荒砥沢崩落地はその中でも最大級で、分かりやすいとされる。今後は活用可能区域の特定や崩落地内などへの立ち入りに関する安全基準、フィールド整備のあり方などについて検討が行われる。土地が安定している場所は他にない。宮城教授は「安全確保をベースにした利活用について検討していく」と述べた。なかなか面白いアイデア。ただ、防災教育だけではもったいないとも思う。それだけ分かりやすい事例なのであれば、地形(形成要因も含めて)としての地すべりにも目を向けたいところ。全国にはたくさんの地すべり地形があり、人によってさまざまな利用もされていることも事実。災害だけでなく、地すべりの恩恵についても学んでもらう場になればさらにいいのでは。その延長線上で防災を考えることが理想ではある。現象としての地すべりと災害の関係、その結果としてできた地形や景観、さらには人々の暮らしとの関係という形で多くの人に知ってもらうことができれば一番いいし、そうなれば観光資源としても活かすことができるのではないか。
2017.02.21
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津波動画、地図で検索=1369本データベース化-東北大(時事通信)東北大が東日本大震災で発生した津波の様子などが撮影された、youtubeで公開されている動画1369本のの撮影場所を特定してデータベース化し、地図上で検索できるウェブサイト「動画でふりかえる3.11-東日本大震災公開動画ファインダー-」を開設したというニュース。東日本大震災はスマートフォンやSNSが普及していたタイミングで発生したこともあり、さまざまな場所で撮影された動画等が存在する。被害が広域に及んだこともあり、地域ごとの津波の高さや被害の状況や避難の様子などが、さまざまな場所でさまざまなタイミングで撮影されていたことは、情報の共有という点で非常に有益だった。こうした動画は津波防災の啓発や、防災関連のさまざまな研究にも利用されているが、これまでデータベースとしてアーカイブはされていなかった。幸いにもyoutubeに集約されていたことが今回の取り組みにつながったといえる。これだけの(一つの)津波についての動画がデータベース化されている例は他にないだろう。今後はこのデータベースがどういう形で防災にフィードバックできるかが問われることになる。youtubeにあるのだから、世界へ向けてという意味でも使えるのではないか。
2017.02.11
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災害時に帰宅支援 相鉄線各駅で「地図」無料配布(カナロコ)相模鉄道が大規模地震が発生した際に役立つ情報をまとめた「相鉄沿線災害時帰宅支援マップ」を各駅の改札などで無料配布している。災害時に電車が長時間運転できず帰宅困難が生じた場合に備えたもので、沿線を11のエリアに分ける形で各駅周辺の避難所、津波避難場所、帰宅困難者一時滞在施設、給水拠点、災害拠点病院などが掲載されている。こうした沿線別の帰宅支援地図は確か東急でも配布されていたように記憶している。また、周辺自治体では海老名市が配布したことがあったと思う。通常のハザードマップは自宅がある場合に配布されるが、海老名のケースでいえば、通勤で利用しているケースや、海老名駅を乗り換え利用している人が多いことなどから配布された経緯がある。今回の相鉄についても同様だが、利用者の帰宅困難が発生した場合、多くの場合帰宅先も沿線にあると考えれば、各鉄道会社が自社線沿線のマップを配布するのは需要にかなっているといえそう。特に避難所や帰宅困難者一時滞在施設、給水拠点などは、地元以外ではなかなか情報も得にくいだけに、利用者にとって配布はありがたいのではないか。災害はどういう状況で発生するか予想ができないもの。自宅はもちろんだが、勤務先や通勤ルートなど、利用頻度が高い場所での被災はある程度想定しておくことも必要かもしれない。
2017.02.05
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大雪に対する国土交通省緊急発表(国土交通省)国土交通省が大雪に対する緊急発表を行った。これによると、24日にかけては上空に強い寒気が流れ込む影響で、西日本の日本海側や北陸地方を中心に大雪の見込みで、西日本の太平洋側や東海地方の平野部でも積雪のおそれがあるという。国土交通省では車の立ち往生等への警戒や、不要不急の外出を控えることを呼び掛けている。同省では過去の類似事例として、2010年12月31日~2011年1月1日にかけての降雪で、鳥取県において1日の降雪量が年間の降雪量を上回る90cm近くを記録し、国道9号でタンクローリーの立ち往生をきっかけに約1000台の大規模な立ち往生が発生、車両の移動および通行止め解除に2日を要した例を挙げて注意喚起をおこなっている。大雪が予想される地方整備局では、道路交通の確保のため対応を24時間行う。鳥取の事例は1台の立ち往生が結果として大きな混乱を招くことになることを示唆している。やや古い記事だが、日本気象協会が「ドライバーなら知っておきたい、大雪で立ち往生した時の『命を守る心得』」を公開している。雪の日の車の立ち往生は最悪の場合命にかかわることもあり得る。国土交通省が緊急発表しているほどの大雪である点を留意しつつ、十分な備えでくれぐれも無理のなきよう。
2017.01.23
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兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の発生から22年を迎えた。 22年前の発災時、自分はまだ地図業界に入る前で、某時刻表を作っていた時代。関東圏や関西圏、名古屋圏で当時としては珍しかった、大都市近郊区間のJRや私鉄の全電車を掲載する時刻表。関西圏の時刻表も手掛けていたので、地震の被害で各線に不通区間が発生して、それが徐々に復旧していったため、通常ダイヤの時刻表が意味をなさず、復旧の度合いに応じて設定される暫定ダイヤを調査して時刻表に掲載するため、編集部から交代で現地に取材に行った。 傾いたビルや瓦礫が散乱する埃っぽい中をたくさんの人が歩いていた光景は今も忘れない。 大げさでなく、東京に戻ると真っすぐ建っているビルに違和感を覚えたほどだった。 被災地では鉄道が断片的に復旧する中、各線の動いている部分を乗り継ぎながら歩いた。福知山線で三田へ行き、神戸電鉄と北神急行を乗り継いで新神戸に入り、そこから三ノ宮、元町、神戸を調査して、帰りは部分的に復旧していた阪神、阪急、JRを徒歩で繋ぎながら大阪へ戻ったりした。 確かハーバーランドと天保山の間は代替の船が運航されていたように記憶している。 高速神戸の地下街だったか、大きな声を上げて「震災コーヒー」を売っていたおじさんの何とも言えない逞しさも印象に残った。 やはり気になったのは時刻表をつくるにあたってお世話になっていた各社の担当者の安否だった。 これは信楽高原鐡道の事故の時もそうだったけど。当時神戸には親戚も何人かいたのだけど、その親戚もしばらくは安否確認ができなかった。まだ今のように色々な手段が確立されていなかったこともある。携帯電話もそれほど普及していなかったし、インターネットもまだ本格化していなかった。 その後色々あって時刻表の世界を離れ、96年には地図業界に入っていた。そして99年だっただろうか、国土地理院の仕事で神戸地区の1万分の1地形図の修正をやった際に、現地調査で1週間ちょっと神戸に滞在して、西宮、芦屋、東灘あたりを歩き回った。 復興が少しずつされてきた時期で、あまりにも現況が変わり過ぎていて大変だった。 1万分の1地形図は家1軒1軒が表現されているのでほとんど全部変わっているので、もはや修正とは言えないレベルだった。 図化は空中写真からするとはいえその写真撮影時からもどんどん変化している。西宮北口の北側で復興に伴う大規模な再開発があって、現況が元の地図とも空中写真とも異なって、どこをどう直せばいいのか、それ以前にあたりがなくてどこがどこなのかもわからないようあ状態になっていて、現地で途方に暮れていたのが思い出される。徐々に入居者が減りつつあった仮設住宅を表現するかしないかを担当と議論したのも覚えている。仮設住宅ごとに使用しているかしいていないかを調査するように指示を受けていて、それもなかなか大変だった。 もちろん図化では空中写真に写っているものは全て描かれているので、現地調査は人が住んでいるかどうかを調べた。ところが納品間際に仮設撤去の発表があって、結局すべて地図上から削除することになった。このように日々状況が変わっていくのが復興というものなのだということを知った。そしてそれは後の東日本大震災でも同じだった。神戸は好きな街だったこともあり、震災前もよく訪れて歩き回っていた。それだけに震災後に訪れた際の変わり果てた街の姿には覚悟はしていてもショックを受けた。そしてさらに復興期、現在と現地を訪れるたびに変わっていく街を見ていると色々と感慨深いものがある。 よそ者で瞬間瞬間しか見ていないわけだから、余計に変化が印象に残るのかもしれない。 神戸を初めて訪れる方は是非「人と防災未来センター」に行って欲しい。 神戸の街と震災がきちんとアーカイブされていて、分かりやすい。 思えば22年前のこの日までは、地震や災害のことなんてあまり考えていなかった。いつか起こるのだろうな、くらいのものだったし、関西では地震は怒らないという根拠のない都市伝説を特に疑うこともなかった。まったくもって不勉強だった。災害を目の当りにして初めて意識が変わったのだと思う。最初にテレビで見た映像は当時それほどに衝撃的だった。奇しくもその後地図の世界に身を置くことになった。自分の地図業界でのキャリアは、阪神・淡路大震災後の、いわゆるGISの普及期と重なる。そして業界団体のWGのメンバーとして、地図を通じた防災の調査検討作業に関わるようになり、少しずつ災害というものを知るようになった。 メモリアルデーはひとそれぞれの受け止め方があるだろう。 この震災で身内を亡くした方にしてみれば大切な人の命日でもある。 自分にとっては、せめてあの日のことが風化しないよう、振り返りをする日。 神戸のこと、そして災害がどこにでも起こり得ることを忘れないよう。
2017.01.17
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災害から命守る知恵比べ 大船渡の伝承館がコンテスト(岩手日報)岩手県大船渡市の大船渡津波伝承館では、2017年の2月に防災や減災の実践的な取り組みを発表し合う「被災地と共に考える防災・減災コンテスト2016」を開催する。東日本大震災後に岩手・宮城両県内で復興支援活動実績のある団体・企業・学校などを対象として、復興支援活動の事例やマップや冊子などの製作物を1月末まで募集する。1次審査を通過した事例については、2月25日に東北大災害科学国際研究所で2次審査のプレゼンテーションを行い、最優秀賞などを選定するという。大船渡津波伝承館は銘菓「かもめの玉子」のでお馴染みのさいとう製菓の元専務である斉藤賢治氏が館長となり、工場に併設された施設で、館長自らが津波の映像を見ながらさまざまな解説をして津波防災の普及啓発にあたっている。コンテストは初めての試みだが、実際の津波被災地発でこうしたイベントが企画されることは意味があること。津波防災の啓発や震災の風化防止のためにも、可能であれば継続的なイベントとして欲しいところだが。
2016.12.29
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避難準備情報を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更(NHK)「避難準備情報」の名称が「避難準備・高齢者等避難開始」に変更される。2016年8月の台風10号による大雨で岩手県岩泉町の小本川が氾濫、川沿いにあった高齢者グループホームで入所者9人が犠牲になった。この際、岩泉町から齢者などに早めの避難を呼びかける「避難準備情報」が発表されていたにも関わらず、情報の意味が正しく伝わらなかったことで適切な避難がされなかったことが惨事に繋がったことは記憶に新しい。このことを受けて、国では本来の「避難準備情報」の意図を強調するため、名称を「避難準備情報」から「避難準備・高齢者等避難開始」に変更した。避難に関する情報については、まだまだ世の中の認識が低いのが現状。元来「避難準備情報」は、<要援護者等、特に避難行動に時間を要する者は、計画された避難場所への避難行動を開始(避難支援者は支援行動を開始)>(避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインより)と定義されており、情報が正しく伝わっていれば岩泉の悲劇は防げたことになる。関係者にとっては痛恨の極みだろう。ちなみに「避難勧告」は<その地域の居住者等を拘束するものではないが、居住者等がその「勧告」を尊重することを期待して、避難のための立退きを勧め又は促す行為>、また「避難指示」は<被害の危険が目前に切迫している場合等に発せられ、「勧告」よりも拘束力が強く、居住者等を避難のため立ち退かせるためのもの>(いずれも逐条解説災害対策基本法より)と定義されているが、こちらも実際のところ広く認知されているわけではないだろう。本来災害が発生するおそれがある時、自ら危険を察知して回避行動としての適切な避難が行われることが望ましいが、誰もが同じように察知できるわけではないので、避難を促すための情報が出される。そもそも発表される情報はすべて意味のあるものだと思った方がいい。自治体が出す情報だけでなく、気象庁が発表する警報や注意報、各種注意情報なども危険を回避するための重要な情報であり、貴重な判断材料なのである。今回の名称変更がどの程度の効果をもたらすのかは未知数だが、変更することがこうしてニュース等で報道されることである程度の認知を促すことはできるのかもしれない。また、マスコミや自治体関係者もこれを機に積極的な呼びかけを行って欲しいところ。ちなみにNHKでは自治体などが「避難準備・高齢者等避難開始」を発表した際には「避難準備の情報を出して高齢者や体の不自由な人などに避難を始めるよう呼びかけています」などと伝えるとしている。
2016.12.27
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糸魚川火災 推定150棟焼く大火 延焼のなぜ(毎日新聞)新潟県糸魚川市で22日に発生した大規模火災は23日午後4時半ごろようやく鎮火した。推定150棟が焼け、約4万m2に被害が及ぶ惨事はなぜ起こったのか。災対本部の記者会見では、木造家屋密集地帯であったこと、飛び火しやすい強風が吹いていたこと、そしてこの規模の火災に対する消防体制が不足していたことが挙げられた。木造の古い街並みは観光資源になっていたこともあり、防災対策が後手に回ったとされる。同じような例は全国にあるだけに深刻な課題といえる。趣のある街というのは往々にして防災的には脆弱だ。例えば下北沢はあのごちゃごちゃ感こそが街の売りでもあり、地元商店や訪れる人の多くは再開発に反対しているが、大地震や大規模火災の際に怖いというのは歩いていても感じる。京都の町屋なども、木造で間口が狭く奥行きがあるという作りは、伝統美でもあるがいざ災害となれば被害を拡大させる可能性がある。町の良さと防災、究極の選択ではあるが、きちんと地元も含めて議論されるべき問題だ。風はどうしようもなかった。火災のきっかけは失火だとしても、これだけ延焼したのは気象災害の側面が強い。国内の過去の大火も多くはフェーンの強風時に発生している。関東大震災で火災の被害が拡大したのも北陸沖に台風崩れの強い低気圧があって強風が吹いたこと(さらには途中で風向が変わったこと)が大きかった。強風と大火の関係は災害の事象の一つであると考えた方がいいのかもしれない。消防の体制についても今回は不運だった。今回のように広域に延焼する火災に対応し得る最大級の消防のリソースを平時から確保することは現実的に難しい。その状況で飛び火による延焼が起こればもうどうにもならない。できるとすれば、建物の防火対策や広小路や緩衝帯を設けるような街づくりといった方向になるのではないか。
2016.12.23
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平成28年度 防災アプリ大賞を決定(国土地理院)国土地理院と水管理・国土保全局、内閣府は平成28年度防災アプリ大賞を発表した。防災アプリ大賞は兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科有馬研究室の「ハザードチッカー」が受賞した。このアプリは現在地あるいは指定地点のハザードの有無と気象防災情報が、同時に文字と記号と警告色で表示される(多言語対応)もので、テキストと記号と色と地図と音声と振動などで危険性と対処方法をすぐに理解できるように示すことから、地図を読めず、ハザードマップの凡例を理解できない人でも避難行動へ繋げることができるのが大きな特徴。洪水と土砂災害と津波のハザードマップを切り替えて表示することが可能で、最寄りの避難場所・避難所も災害別に〇✕のリストと地図上に記号で表示されるので、表示される標高と合わせて、どこに避難するかの意思決定と実際の避難行動にも有効。また、自治体の防災ページにもリンクが貼られており、サイトにアクセスするだけですぐに利用できる防災情報ワンストップサービスを実現している点も秀逸だ。そういえば今年10月の日本災害情報学会第18回学会大会(日本大学文理学部で開催)でも、このアプリに関するポスター発表「ハザードマップの情報品質を高める防災アプリの開発」(田中健一郎氏:博士前期課程2年)がのポスター発表で、若手会員を対象とした優秀ポスター発表に授与される阿部賞を受賞しており、事実上のダブル受賞という点も見逃せない。簡単に利用できるので普及して欲しいアプリの一つ。
2016.12.09
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