コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~
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紙面に落とされたアリスメンディの確固たる意志を感じさせる瞳が、蝋燭の炎を鋭く反射させている。しばしの後、アリスメンディは、おもむろに顎を引いた。「いかにも。わたしが書いたものだ」(──やっぱり……!)かなりの確信度でそうだろうと思ってはいたが、アリスメンディ本人から己が書いたと聞かされると、改めてその重みが心に迫る。それは、アンドレスのみならず、ジェロニモたちも同じようで、ひんやりしていたはずの室内にいつしか熱気が漂いだしているように感じられた。「モスコーソ大司教があなたを血眼になって探していることはご存知だと思います」と、モソプキオ村で起こったことなどをアンドレスがかいつまんで話すと、アリスメンディは「うむ」と物思わし気に頷いた。それから、真剣な表情で話に聞き入っていたマリオに視線を向けて、真摯な口調で詫びる。「ロカ殿やそなたの村人たちに迷惑をかけて、誠にかたじけない」「いえ、とんでもありません!ロカ神父も、村のみんなも、私も、アリスメンディ様のお考えに賛同してますから。あいつらが押し寄せてきたとき村の自警団の力が及ばなかったのは悔しかったけど、でも、運良く、ここにいる4人が助けてくれました。きっと、これも神様のお導きなんだと思います。だから、アリスメンディ様も、モスコーソなんかに絶対負けないでください!」澄んだ大きな瞳に力を宿して毅然とした眼差しをアリスメンディに向けているマリオの様子に力を得たように、アンドレスも胸襟(きょうきん)を正して真っ直ぐアリスメンディに向き直る。「アリスメンディ殿、今回あなたに会いにきた一番の理由を言わせてください!インカ軍にあなたを匿(かくま)わせていただけないでしょうか?トゥパク・アマル様もそれを望んでいるはずです!!」ひとキャラメッセージ「今回も読みに来てくれて、本当にありがとうございます ところで、最近ナスカでは、こっちの考古学者と日本の研究者の共同研究で、AIを活用して新たな地上絵が300個以上も発見されたらしいよ~」byアンドレス☆【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。40代前半。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫(インカ軍)トゥパク・アマルの甥で、インカ皇族の青年。20歳。剣術の達人であり、若くしてインカ軍を統率する立場にある。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。英国艦隊及びスペイン軍との決戦において、沿岸に布陣するトゥパク・アマルのインカ軍主力部隊にて副指揮官を務めていたが、急遽、トゥパク・アマルの密命を帯びて旅立つことになった。≪ジェロニモ≫(インカ軍)義勇兵としてインカ軍に参戦する黒人青年。20代半ば。スペイン人のもとから脱走してインカ軍に加わった。スペイン砦戦では多くの黒人兵を統率し、アンドレスの無謀な砦潜入作戦の完遂を補佐。身体能力が高く、明朗な性格で、ムードメーカー的存在。これまでも陰になり日向になり、公私に渡って、アンドレスを支えてきた。≪ペドロ≫(インカ軍)インカ軍のビルカパサ隊に属する歩兵。此度のアンドレスの旅の同行者の一人。20代後半の若さながらも郷里には妻がおり、息子思いの父でもある。≪ヨハン≫(スペイン軍)スペイン軍の歩兵。20代半ば。偶然的な事情から、此度のアンドレスの旅に同行することになった。スペイン人らしい端正な風貌の持ち主で戦闘力もあるが、性格は傍若無人なところがあり、掴みどころが無い。≪マリオ≫(インカ側)アンドレスたちが『青き月の谷』に向かう旅の道中、立ち寄ったモソプキオ村の自警団に属するインカ族の少女。18歳。≪リリアーナ≫(インカ側)聖カタリナ修道院の修道女。孤児院で育ったマリオの姉のような存在。20代半ば。≪アリスメンディ≫(インカ側)イエズス会に属するスペイン人の高僧。40代半ば。かつてペルー副王領でインカの解放運動をしていたが、スペイン国王から弾圧を受け英国に亡命。英国王室に接近して相談役として英国艦隊への乗艦を許可され、ペルー副王領に舞い戻った。上陸後、英国艦隊から離脱して姿を消しており動向は明らかではないが、水面下で隠れイエズス会士たちと行動しているもよう。≪モスコーソ大司教≫(スペイン軍)植民地ペルー副王領におけるカトリック教会の頂点に立つ最高位の司教。60代前半。単に宗教的な意味合いで高位に君臨する存在というだけでなく、植民地統治においても絶大な発言力を有する政治的権力者。キリスト教の名を笠に着て、いかなる冷酷な所業をも行う一方で慈愛深げに振舞う、奇態な人物。◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!にほんブログ村(1日1回有効)
2024.10.23
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