ちょっとブルガリア気分

ちょっとブルガリア気分

私と刺繍

私と刺繍


goblenと呼ばれる刺繍に出会ったのは、忘れもしない。2000年の3月9日ブルガリアでの滞在が、約1ヶ月過ぎた頃でした。以前から存在は知っていましたが、「お裁縫全般が苦手な私には縁のないもの」と思っていました。
前日の3月8日は国際婦人デーで、プロウディフに住む親戚にレストランディナーへ招待されていました。帰りは遅くなるので、お泊りすることになったのです。

その頃の私は、カルチャーショック&ホームシックがピークに達していました。
危ないと言うことで、だんな様やお父さんから一人で外に出ては駄目と言われていて、まさに鳥かごの中の鳥状態でした。

3月8日のお泊りは、久々の外出でした。普段、お父さんは村に住んでいて、私はアセノフグラッドのマンションでいってみれば一人暮らしです。お父さんは毎日お昼ご飯のときに帰ってきます。この時期は、羊に赤ちゃんが生まれ、大忙しで、帰ってこれない日が続いていました。
 レストランも楽しかったし、朝起きたら、おはようと言ってくれる人がいるし、とても楽しい、そして心が休まった日でした。

3月9日に従兄弟の奥さんのエレ-ナさんと、プロウディフに散歩に行きました。何気なく手芸店に入ったら、刺繍キットが売っていました。急にすごーくやってみたい気持ちになり、子供のようにショーケースの前でたたずんでいました。ずっと見ていたので、店員さんが、「どれが欲しいの?」と聞いてきました。私は「すごく欲しいけど、やり方が解からない。」と言うと、「じゃあ教えてあげるわよ!」
と予想もしていなかった展開に!!私はとりあえずハガキサイズの『馬の親子』というタイトルの物を買いました。そんな様子を見ていたエレ-ナさんは、「これ難しいのよ。私も出来ないんだから。本当に買うの?」と心配そうにしていました。
親切な店員さんが「難しくないわよ、あなたも一緒にやりましょう!」と。ブルガリア語も、刺繍のことも良くわからない私でしたが、店員さんもそんな私の様子に気がつき、「心配しないで、実際に一緒にやっていけば、出来るわよ!」といってくれました。エレ-ナさんも、私に付き合って、小さいセットを買い、その日は家に帰りました。

店員さんの実演は簡単そうだったのに、実際にやってみるとけっこう解からなくて、苦労しました。一人ではお手上げだと思い、思い切ってお父さんにお願い書を書いてみました。「一人でアセノフグラッド、マガジン、電車でプロウディフへ行ってもいいですか?」という内容です。そうしたら、お父さんは涙目で、全部の項目に「OK」と書いてくれ、サインまでしてくれました。「息子から、一人で外に出さないように言われてたんだよ。でもお父さん、それじゃ退屈なんじゃないか心配してたよ。それに最近ずっと元気なかったし。自分で言い出してくれるの待ってたんだよ!当たり前の事に気をつけてれば、危なくないから行っておいで!!」
と言ってくれました。

お父さんと握手を交わし、早速一人であの手芸店へ!辞書(6000語集)を片手に、手振り身振りで、教わって、すっかり理解できるようになりました。店員さんともすっかり仲良くなって、ブルガリア語も上達しました。

エレ-ナさんもすっかり刺繍にはまり、よく二人で見せ合いながら、そしてしゃべりながら作っていました。気が付くと、辞書がなくても雑談できるようになっていました。滞在中に2作品仕上げました。何かを最後までやり遂げるのは、初めてに近い経験でした。

この刺繍がきっかけで、残りのブルガリア滞在期間はとっても楽しく過ごせたし、なんと言っても、一つの作品をやり遂げる忍耐力、行動力、ブルガリア語の上達、友達、エレ-ナさんとの更なる絆・・・・たくさんのものを得る事が出来ました。




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