2020.03.25
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某月某日 無意味
あれはまだ同僚のKさんと仕事帰りにテニスをしていた頃だから、15年前くらいのことだろうか、ある晩ラリーの途中にドサッと言う音が聞こえて振り返ると、テニス場の管理人の老人がフェンスの外で倒れていた。肥満気味でチェーンスモーカーの彼とは別に親しい間柄でもない、ただある程度挨拶を交わしておかないとあれこれ融通を効かせてもらえないからという程度の関係だった。誰かが救急車を呼んだのだろう、すぐに救急員が駆けつけ彼の状態を確かめた後担架で運んで行った。その一切を眺めながら、僕たちは二人は結構ショックを受けしばらく立ち竦んでいた。どういう心理的な筋道でそういう話になったのかは覚えていない。ただなんとなく自分たちの存在が無意味だなあ、と二人とも感じていた。毎日仕事はしているものの、いったいどれだけ社会の役に立っているんだろう、正直、ほとんど貢献していないのじゃないだろうか、ある健康分野のプログラムの成果の検証などを手掛けていたが、そんなもので政府のプログラムなんて何の変更もされるもんじゃない、僕たちの仕事なんて予算の獲得と防衛に使われるくらいのものだ。

その後僕は退職し、非営利団体の古本屋のボランティアなどをして幾分かの存在意義を恵んでもらっていたが、その町から引っ越した今ではそういう時間的に気儘なボランティアの口も探すことができず、以前よりももっと無意味な存在になり下がっている。

忘月忘日 テニス
この町に移り住んでからのテニスは、週二回夜の何時から何時までという定住型のものではなく、適当な時にコートに行って居合わせた人たちとする遊牧型のものに変わった。どちらのスタイルがいいか、一長一短なので簡単には断定できないが、それがここの事情だから合わせるしかない。そんな中、今回日本に行く前に知り合った二人とは、週一ではあるがわりと定着タイプになりそうな雰囲気であった。一月後、さてテニスをしようと連絡したら、例のCOVID騒ぎで町の公園は全て閉鎖されてしまった、もちろん町が管理するテニスコートもである。もう一月テニスはお預けということになりそうだ。

×月×日 自由な消費という幻想
いつの頃からか、ある会社のある商品が、たとえばスパゲッティ・ソースをとると、いくつもの味で売られるようになった、伝統のトマト味、トマト+バジル+ニンニク味、4種のチーズが入った味、ぶつ切りマッシュルーム入り、などなど。想像するに、製造する方には大した手間がかからないのだろう、すべて機械がしてくれる、ベースになるソースにあるものはバジル、別のラインはチーズ、こちらはマッシュルームと放り込んでいけばいい。買う方は、自分の好みに合わせて、この場合好みが単に思い込みなのか実際に味の違いが分かる舌なのかは不問に付すが、今週はあの味次の週はこの味と変化のある消費をしているという充実感を抱ける。バラエティが充実しているというイメージのブランドがよく売れるに違いない。要は、消費資本主義のマーケティング戦略にすぎない。いままでは画一的な商品を買わざるを得なかった消費者が、自分の選ぶモノを買うことができているという自由と差別化の幻想。





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最終更新日  2020.03.25 19:36:47
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