烏猫の自由奔放記~It's a Wonderful Life~

Legend of Twilight


鳥の鳴く声が聞こえる。
光が眼の中に入ってくる・・・眩しい。
ああ・・・、起きて本を片付けなきゃな・・・。
眠い眼を擦り無理に体を起こす、・・・起こす?
「・・・ここは何処だ」
何処かの倉庫・・・いや農家などに見られる納屋か。
「すぅ~・・・。」
隣には寝息をたてる・・・少女が。この形だと、・・・なぜ俺は添い寝を?もしくはそれをされているのだ・・・?
記憶を整理しよう。
まず・・・図書館で調べ物をするからこいつ達と分かれた。
そして、徹夜覚悟で調べててー・・・見つけて。
後は・・・覚えてない。
連れてきたにしてもいったい誰が・・・?
いや、そんなことを考えていてもしょうがない。
ぐぅ~
腹が減るだけだ・・・。
とりあえず・・・外に出るか。

「うぅー・・・」
体をほぐす、たった一日徹夜したからといってこんなにもかったるくなるのか・・・。しかも朝方寝たし。
「おや・・・?お前誰だ?」
声の方を向くとおっさんが立ってる
「あー・・・誰だろう・・・な。」
「変な奴だな、まあ・・・差し詰めシェル坊の関係者か。」
顔を綻ばせながら近づいてくる。
「朝飯食うか?」
「あー、別に・・・。」
ぐぅ~
「・・・」
「・・・食うよな?待ってろ。」
断ろうかと思ったのに・・・、また主人の意思無視しやがって。
少し待つとパンをくれた。
「家の自家製だが味は保障する、他の奴らの分は別にあるから遠慮すんな。」
「ありがとう。」
・・・うん、旨いな。小麦の香りがまたなんとも。
「チーズも食うか?」
返事をする前に懐からナイフを取り出して二切れほどくれた。
パンにもよく合う、これも旨い。
「・・・そうだ、少し待ってろ。」
食べ終わるか否かの時に、おっさんは家に走っていった。
すると鍵をじゃらつかせながら戻ってきた。
「ついて来な」
おとなしく従うと納屋の後ろから扉に入りすぐにあった階段を降り地下に。
「おぉー!」
見てすぐわかる、ワインだ。ワインが置いてある。
「おっ、小僧のくせに飲めるのか?」
「はい?飲ましてくれるからここに連れてきたんじゃないのか?」
「まぁそうなんだが・・・、まあいい。」
奥からグラスを持ってきて注いでくれた。
「いい色だ・・・」
「なんだよ・・・そんなもんがわかるほど飲んでやがったのか。」
「旅してると色々とあるんでな」
匂いも・・・いい、深みがありだがシンプルに。
味も・・・しつこくなく浅すぎず。
「うま・・・。」
「うわ・・・味までわかってやがる。こうなったらこっちはどうだ・・・」

そんな感じですすめられるままに飲んだが・・・。
「小僧・・・ひゃるな。」
「おい・・・大丈夫かよ。」
おっさんはベロンベロン、俺は・・・強いんでな。
一体どれほど飲んだか・・・。
「でな、孫がな・・・」
酔いに乗じて語ってくるが・・・仕方ない。美味い酒のお礼だ、おとなしく聞いていよう。
しかし・・・、朝から酒か・・・。
こんなことは初めてだ。


手伝い 投稿者:ラグナレク 投稿日:2004年11月4日 23:22:44
「ねぇお姉ちゃん、義父さん知らない?」
「う~ん、・・・納屋の鍵がないからそこじゃない?あっ!!飲んでるかも。」
「朝から!?もう~・・・シェルさんが来たからって、付き合うシェルさんもシェルさんだけど。」
「しょうがないんじゃない?・・・私の旦那はあまり飲めないし、彼ももう二十歳になった。義父さんも久々に飲める相手が見つかって嬉しいんじゃない?」
「でも~今日は刈り入れなのに~・・・。私、様子見てくる。」


「お~いおっさん、大丈夫か?」
「何言ってんでゃか、まだまだいけるりゃ!」
駄目だこりゃ・・・。参ったな・・・。
「あぁー!!義父さん!」
「んー?おお、レナか。お前も飲むか~?」
「飲むか~?じゃない!朝から何やってんのよ~・・・、シェルさんも・・・。」
いきなり飛び込んできた少女がこちらを見て驚いてる。まぁ無理もないが・・・。
「シェルさん・・・じゃない。君ー誰?」
「おおー、そういや名前聞いてなかった。なんていうんだ?」
「俺は、ラグナレクっていう・・・旅人、か?」
特に当てはまる職業も思いつかなかったので自分で言ってて違和感を覚える。
「ほお、今までどこを旅してきた。・・・まあ飲め、語ってくれ。」
「飲め、じゃないでしょ義父さん・・・。そんなに飲んで刈り入れどうすんのよ~。」
「な~に、このくらい。・・・おっとと。」
立ち上がろうとして倒れそうになるおっさんを支える。
おっさんを支えたと同時に同じ動きをした少女と手が重なってしまった。
「あっ・・・。」
「えっ。」
不意に声を出され固まってしまった。
そのまま見詰め合う形になる。
少女の顔が紅く染まった。
「いや~悪い悪い。」
そういっておっさんは階段を上がっていく。
少女の顔はまだ紅いようだ。
熱でもあるのか・・・?
「ひゃ・・・。」
少女の額に手をあてて自分と比べる。
「あ、あの。」
熱は・・・無いようだが、先程にもまして顔が紅くなってる・・・。
「大丈夫か、体調悪くないか?」
「えっ?あ、大丈夫です!」
「・・・悪かったな、おっさんにすすめられるまま飲んだだけだが・・・お互い飲みすぎたか。」
「あっ、あなたはーラグナレクさんは、大丈夫なんですか?・・・そんなに私と歳変わらないですよね?」
「俺は強い方だからな、それと同じ歳位だって?」
「はい、私は16歳ですが・・・」
「俺は17歳だ。」
「そうなんですか・・・あっ私、名前を・・・。」
そういえばそうか、まあ・・・聞くか。
「教えてくれ、俺だけ知られてる・・・。」
「どうしました?」
「いや、なんでもない教えてくれ。」
あいつらの名前知らないままだ・・・。
「じゃあ改めまして。レイナールといいます。」
ぺこりとお辞儀してきた。
「ああ、よろしくなレイナール・・・」
「あっ、レナと略してくれて結構です。」
「わかった。そうだ、おっさんあれじゃあ仕事にならないだろう?」
「そうですね、仕方ないです。」
「代わりに俺が手伝う。」
「えっ、悪いですよ~、お客様にそんなことさせられませんよ」
「いや、飯の礼もかねてだ、やらせてくれ。役に立つかどうかわからないが。」そのくらいはやらないとな・・・。
「いえ!その・・・(居てくれるだけで・・・。)」
「なんだ?最後の方が聞こえなかった。」
「いっ、いえ何でもありません!えと・・・ありがとうございます。よろしくお願いします。」


朝の時 投稿者:レニー 投稿日:2004年11月6日 04:21:18
「……」
この惨状を見たとき、呆れて物も言えなかった。

「……朝からここまで呑んでどーする……」
自分の仕事できんだろーが。おっさんよ。
ラグナレグとレイナールと言うダイクの娘に抱えられた親父を見たとき、本気で頭が痛くなった。
聞くところによると50は過ぎたこの宿の主人は、無類の酒好きで、本来こんな時間から酒を飲む人ではない…そうだ。
が、久しぶりに共に酒を飲める相手を見つけて、近頃の鬱憤が爆発したらしく、酒蔵に近い倉庫で彼を見つけたときには……
高そうなワイン銘の入った樽の側で、ぐってんぐてんに酔っ払っており、それを二人で何とか介抱している状態だった。
そのままにしておく訳にもいかんが、結構な体格の親父を納屋まで運んでくるのは結構体にキタ…
…二人も手伝ってくれたし、その後寝室に運ぶまでは、親父の息子や女将さんも手伝ってくれたがな。
オレとシェルナークがいつもこの親父さんがやってる仕事を変わりにやってたからヒマだったとは言え…
体壊すぞ、いやまぢで。
確かこんな事よくあったなぁ…そんな事を思い出しながら、オレは幾つかの薬草をすり鉢で潰してよくブレンドする手を止めず、はぁ―と溜息をついた。

目が覚めた後、ラグナレグを迎えに行ったオレは、もう空が青く晴れてしまった時間では寝付く事も出来ず、かと言ってやることも無くヒマだったので、宿の朝の仕込みで、男手が必要な事を幾つか手伝わせてもらっていた。
…面倒臭かろうがなんだろうが、こう言うことは疎かにすべきではないだろう。シェルナークの昔づきあいとは言え、一宿の恩と言うのは大きい事を、オレは何年間の傭兵生活で身に染みていた。
それに、良い体慣らしになるし。
結局シェルナークもそれにしばらく付き合ったが、昨晩話していた王都に行くまでのつなぎの仕事―行商の護衛の仕事の確認に行った辺りで、オレは残った二人―ミルアスティーとラグナレグを起こしに行けったのだが―ラグナレグがいない。
ほぼ完徹で図書館の本を読み漁っていたから、まだ寝てると思ったのにな…
そう考えていたら、この宿の女将に、ダイクとか言うここの主人の姿が見えないから、探してきてくれと言われ、探してみると…
…こーゆー状態の親父が一人、いたわけだ。
ちなみに酒に付き合っていたラグナレグは割としれっとした顔をしている。まぁ、こーゆーとこ、流石師匠の息子…と感心してしまう。
師匠も、まだ大人になりかけのオレや神聖騎士団の仲間連れて、よく酒場に繰り出してたもんなぁ…
オレや他の連中がぶっ潰れても、師匠だけ涼しげな顔で「まだまだ弱ぇえな…」とか言いながら盃を重ねていっており、次の日とんでもない二日酔いに悩まされたのは今でもよく覚えている。
ただ、あれで鍛えられたのか、傭兵仲間や友人とたまに飲みに行っても、まず酔いつぶれる事がなくなったのには感謝しているが。
そしてそうなってしまうと…当然酔いつぶれた連中を見るのは、理性のまだあるその仲間と相場は決まっている。神聖騎士団の頃に覚えさせられた薬草の知識をフルに生かして、二日酔い対策の薬を作る事はそう少ない事ではなかった。
取り敢えず、持っていた薬草と、この辺りに自生してる薬草(この町に入る前に取ったやつだ)を使い、台所の調理器具を借り、手早く作ってしまう。その丁度半分を皿に盛り、「起きたらこれを飲ませてやれ」とレイナールに渡す。
「あ、すいませんわざわざ…」
「一宿の礼。…そろそろか?朝食」
そう聞くとはっとしたように少女は立ち上がり、急いで台所の方に向かう。それを見てラグナレグも続こうとしたが、短く呼び止め、残り半分の薬草も彼に渡す。
「オレはいらない。」
「…あの酒は飲んでしばらく後から酔いが回る。強くても飲んだほうが良い。
 話したいこともある。」
そう言って薬草を強引に手渡すと、ラグナレグは怪訝な顔でそれを受け取る。
飲んだのを確認して、オレは言った。
「オレは、お前の親父さんを知ってる。」
言ったとき、ラグナレグの顔に驚きが浮かんだのが分かった。


砕かれるべき神の盾 投稿者:レニー 投稿日:2004年11月6日 04:22:38
「…オレは彼に剣を教えてもらった。そして、彼の元で戦い、彼が死ぬとき側にいた。」
ラグナレグの顔には今、驚きより混乱の色が深かった。当然だろう。あまり寝てない頭で酒飲んだ後にこんな事話されているのだから。
だが、今話さなければ、おそらく俺の目的の一つが―
彼の遺言が果たせない。
「その時に、彼はオレに仕事を頼んだ。息子に会い、王都に連れて行き、ある人物に会わせろと」
彼を守り導き、そして、もし時が来てしまったら止めてくれと。
「…正直に言う、オレはこのまま、お前を王都に連れて行くつもりだ。」
…てゆうか、首に縄つけてでも連れて行く気だけどね。
ラザナーシュが言ってた魔物の強力化が本当なら、ぐずぐずしてる暇は無いと思うから。
「お前にそれを決める権利はある。だが時間が無い。
昨夜シェルナークがオレ達に仕事を持ってきた。王都までの行商の護衛で…
…出発は、今日だ。」
それを言われてラグナレグが困惑した表情を深める…あまりに急すぎる話だからな。
…正直、迎えに行くべきだったんだよなぁ…シェルナークに話し聞いたときに。
だけど、調べたい事があるって言うし…でも後から小娘や奴の話聞いてて、やっぱり考える時間与えたいなと思ったけど…迎えに行ったら案の定疲れて寝てたし。
まぁ…別行動ってのも手だし、取り合えず今は王都にこいつ連れてくのが最優先だから何とかなるかなと考えてたけど…無理かなぁ…
何か言いたげなラグナレグを眼で制し、オレは話を続けた。
「お前が他に王都に行くべきなのはもう一つ理由がある。…お前図書館で色々調べてただろう。
禁術系の事が調べたいんなら、ここよりも、王都の図書館が良い。
…あそこはこの国隋一の蔵書量を誇ってるし、魔術師の数も多いから、何か聞けるかもしれない。
それに今日行けば、旅費はしばらく困らない。王都への武器の運び込みだから、報酬破格だしな。」
…一体何を運び込むつもりなんだか。そこまで言うと、外に人の気配を感じた。
オレは床に置いていたすり鉢とすりこぎを持ち、落ち着けていた腰を上げ、ゆっくりと立ち上がる。
「オレはメシ食ってくる。シェルナークが帰って来るまでに決めろ。」
それだけ言い残して納屋を出ようとすると、ラグナレグはオレの襟首を引っつかみ、無理矢理こちらを振り向かせる。
「…待てよ…」
押し殺した声には、怒りがにじみ出ていた。
「何なんだよあんたは・・・俺の親父の遺言で王都に俺を連れてくって…
 一体何がどうなってんだ!第一、俺の親父は刀使いだぞ!?だけどあんたが使ってたのは確かに銃だった!親父が師匠ってなら、何で剣使わないんだ!それに、何で俺がラグナレグって知ってんだ!あの親父は似 顔絵ヘッタクソだったから、特徴聞いただけじゃ普通分かんねえだろ!しかも…」
「確かにな…ヘッタクソだった。」
ポツリと言った一言に…郷愁を感じてしまったオレの言葉に、ラグナレグは押し黙る。
確かに絵はヘッタクソだった。酒の席ではいつも生まれた村や、家族や…特に息子の事を語るのが好きで、どんな顔か聞いて描いて貰った似顔絵はどこぞの抽象画家とそれを見た周りの人間は笑ってた。
豪快な人で、でも気くばりは忘れず、気さくで、面倒見が良くて―そうでもなければ、あれほど教会内で腫れ物扱いされまくってヒネたオレの面倒なんか見なかったろう。
きっと、オレと、オレより年下だと言うその息子を、重ねていたのは分かっていた。
でも、冗談抜きでオレは、あの人に救われ、変われたのだ。
それが例え、短い間だったとしても、恩人でもある師匠に。
ラグナレグの手から力が抜けたのが分かり、オレは襟首を掴んでいたそれをそっと放す。
混乱するのは分かっていた。憤るのも当然だ。
だが…今はこれ以上話す時間も無ければ…
「お前が息子だと分かったのは、顔立ちがよく似てたんだよ。師匠とお前。
…後は省略する。これ以上オレの話を聞いても、混乱して何も考えられなくなるだけだ。」
今は話したくない。何故オレがお前をラグナレクと分かった本当の理由も。
何も知らない今、話してしまえば…絶望してしまうかもしれないから。
くるりと奴から背を向け、納屋から出ようとすると、一つだけ。そうラグナレグは言った。
「一つだけ、教えてくれ。…言ったよな、親父はあんたに『仕事を頼んだ』って
 …じゃあ、その報酬は一体何なんだ?」
…よりによって、それを聞いてくれるか。お前は。
オレは振り返らなかった。振り返りたくなかった。
ただ、これだけ言い残して、納屋を出た。
「………オレの人生だ。」

「…今の話、本当ですか。」
納屋から出ると、やはりレイナールがそこにいた。
どこから聞いてたかも見当はついてる…アイツが怒ってた時位かな。
「…何が?」
「彼を…王都に連れてくって話です!」
そう叫ぶ彼女の顔には、非難のような色も見える。
さっきのラグナレグとの様子からして…恋バナか。こりゃ。
「…だったら?」
可哀想だとは思うが、こればっかりはどうしようもない。後は奴の判断だ。
そう言って、オレは宿に向かった。

出発が1日延びたと言う話を聞いたのは、そのすぐ後だった。
「…遅れてるのか」
「行商の荷物がな。向こうで何かトラブルがあって、1日遅れたそうだ。」
帰って来たシェルナークのその言葉を聞いて、オレは正直安心した。
これで、奴に1日でも、考える時間が出来たって事だ。
だが、今奴が行くにせよ行かないにせよ、遅かれ早かれ王都に行かなければならない時は来るだろう。
そのタイミングくらいは、選ばせてやりたかった。
『何なんだよあんたは・・・一体何がどうなってんだ!』
「…聞きたいのはこっちだよ…」
誰にも聞こえない声で言う。本心を。
『予言』を聞いた俺にさえ、まだ一体何が起こっているかは掴みきれてない。
ただ、言える事がある。
オレが『砕かれるべき神の盾』であること。
「なぁ」
声に、シェルナークは振り返った。
「『盾』は、『守るもの』だよな」
「?ああ、民間宗教では、『守護』を意味するものらしいが…」
「じゃあ、それが『砕かれるべき』なのは…なんでだろうな」
シェルナークの顔が見える。困惑にゆがむ顔が。
だけど、その問いの答えは俺にも分からない。
取り合えず空腹をどうにかするべく、オレはシェルナークと食堂へと向かった。


仕事は命懸け 投稿者:ノア 投稿日:2004年11月6日 07:32:11
・・・・・・本来なら、皆も声をかけるべきだったのだろうか?

・・・・・・現在、騎士団は移動中だった。行き先は、王都である。どうやら、何が事件が起きたらしいが、王都の騎士団が動けないため、回りから騎士団が派遣された。僕達もその一団である。

街道を、馬車を六両で走っていた。一つの馬車に、八人がのり、四十八人が派遣された。

・・・・・・しかし、少な過ぎた・・・・・・

僕達は、大量の怪物に襲われた。中には、最強クラスとされている、ケルベロスまでいた。
「・・・・・・嘘だろ」
一人の騎士が言った。ケルベロスは、並大抵では倒せない。装備なら、最低Aランクはいるのである。しかし、現在の装備はC。最低ではないにしろ、勝てる見込みはない。

そして、命懸けの仕事は始まった・・・・・・。


緊急事態! 投稿者:ラザナーシュ 投稿日:2004年11月7日 23:27:33
「急げ!」
先頭を行く神聖騎士の一人が、後に続く騎士達に、切羽詰まった声で叫ぶ。
私の周りを走っている騎士の顔にも、焦りの色が見えた。
どうか、間に合って欲しいと、願う思いと共に。

教会に帰ってから、騎士団は先日起こった町の襲撃の復旧作業と、王都の本部への報告に追われていた。
王都では軍が近々、行動を起こすと聞いて、安堵した騎士もいたが、殆どの騎士は緊張と不安が押し隠せないといった感じだった。
…無理も無い。とうとうそこまで大事になってしまったという実感が、ダイレクトに来てしまったのだ。
それに、王都の騎士団はこの国では最強の軍といわれているが、実際あのモンスターを目の当たりにして、どうなるのか…

そんな時、それは起こった。
王都へこの町の駐屯騎士団の一部が、武器輸送を行っている際、魔物たちに襲われたと言うのだ。
使い魔達からの情報で、その魔物たちはかなり強力であると。
しかも、魔物はそれだけでなく、騎士たちの血が他の魔物も呼び寄せている可能性が高いと。
まさか。
先日の悪夢を思い出し、騎士達は迅速に用意をした。
レニー達にも声をかけるべきかと迷いはした。 しかし、使い魔達からの情報からして時間が無いと言う事、それに、これ以上傭兵とはいえ、騎士団でもない人間の手を借りるのは主義に反するなどの意見から、傭兵達を呼ぶ事は今回、躊躇われた。

そこは、町から少し離れた、しかし王都まではまだ遠い、王都への物資輸送用の街道の途中だった。
舗装された道には、おびただしい量の血が染み、赤黒く染まっている。
倒れている魔物の数より、人間の数の方が多いのは明白だった。
…いや、正確に言えば、魔物は殆ど事切れていたが、生き残った2、3体だけが異様な強さを発揮していたのだ。
(ケルベロス…っ!!)
最悪だ。そう考えたのは、きっと私だけではなかったはずだ。

ケルベロスは3つの首を持つ狼型のモンスターだ。ただ大きさは普通の大人くらいもあり、戦い方も分布地方や種族によって変わるが、この頭皮の一部が赤いタイプは、その頭の一頭が魔法を使うと言う、少々厄介な部類だった。
(…まずい…)
ぎり、と歯軋りしたのは、無意識だった。
確かにこの神聖騎士団は対モンスター戦に対しては異様な強さを発揮しており、このモンスターくらいならこの人数で十分倒せるだろう。
しかし、このモンスターとの間に、駐屯騎士団とこれほど大きい荷物があるのなら、別である。
『教会』の人間としては、人命の救助が最優先だし、話に寄れば、彼らが運んでいる武器は、いま魔物側に渡るとなると、かなり厄介な物らしい。
今の所魔術師達が特殊方陣で封印しているそうだが、魔物達の中には人語を理解し、魔法のシステム解析に成功しているものも少なくない。もしこいつらと戦闘して勝ったとしても、何かの隙に荷物を奪われたら、とんでもない事になりかねない…
「ここはひとまず…彼らを撤退させるぞ。荷物と人命の救助が最優先だ。」
リーダー格の騎士の言葉に私たちはうなずく。
頃合を見ようと、辺りを見回すと、魔物たちと戦っている騎士の中に、見知った顔が合った。
よく見ると…あの時の騎士だ!
「ノアさん!」
神聖騎士たちの攻撃の合図とともに、私は黒髪の若い騎士の処に走った。
「え・・・あ・・・・!」
呼び止められて私の方に振り返った瞬間、ケルベロスが放つ炎が彼を焼こうとする!
「!! 氷の華よ!彼を守れ!」
そう叫ぶと、彼の前に幾つもの氷の盾が、彼を焼きつくさんとする炎の前に立ちふさがる。
炎が消えたとき、私は彼の隣に立つことが出来た。
「有難うございます! 神聖騎士団が来たのなら…」
「いえ…ここは取り合えず町に引き返します。先ほど使い魔の情報から、この辺りに魔物の援軍が近づいている可能性が高い…
長期戦になれば、こちらが不利になります。」
襲ってきたケルベロスの牙を流し、私は言った。
「貴方は…騎士たちに伝えて欲しいんです。神聖騎士団は一度貴方達と荷物と共に、町に撤退すると。
このまま王都まで突っ込むより、町に戻って形勢を立て直すべきだと。
私の仲間も・・アルベルディ司教騎士様も他の騎士たちに呼びかけてくださってますが…貴方の声も必要なんです。」
そう言うと、ノアはしばらく戸惑ったが…頷き、騎士たちの中をかけて行く。
それと同時に、神聖騎士団も「撤退!」と、周りの騎士たちを促し、けが人を荷車に手早く載せていった。

あちらこちらで、騎士団が町に引き返し始めたのは、そのすぐ後だった。


時を統べし者 投稿者:ノア 投稿日:2004年11月7日 23:50:45
戦いは、互角。魔物達も僕たちも、お互いに痛手を被った。

・・・・・・僕たちは撤退を余儀なくされ、撤退を開始した。しかし、簡単に逃げれる程、相手は弱くなかった。
「グルワアァァァァァ!!!」
叫びと共に、ケルベロスは跳びかかって来た。
「うわぁぁ!?」
一人の騎士は、襲われた事に驚き、動けなかった。
「はあぁ!!!!」
しかし、、ラザナーシュが攻撃を防ぎ、騎士はすぐに逃げた。ラザナーシュは、なんとか間合をとり、撤退を開始した。

・・・・・・全員、撤退終了。ただし、一人の騎士のおかげで・・・・・・。

「・・・・・・結局、やらないとダメみたいだね」
ノアは呟き、剣を構えた。
「グルワアァァァァァ!!!!!!」
ケルベロスは、炎を吐いた。しかし、ノアはその場にいなかった。
「・・・・・・遅い」
一瞬だった。たった一瞬で、ノアはケルベロスの後ろに立っていた。ケルベロスは、無数に斬られていた。
「・・・・・・まだ、死ねないんだ」
声とシンクロでもしたのか、声と同時にケルベロスは倒れた。

「・・・・・・時が歪み出した・・・・・・」

・・・・・・ノアは一言呟き、すぐに走り去った。

魔法 投稿者:ラグナレク 投稿日:2004年11月9日 01:41:39
「さて、何処から始めるか・・・。」
目の前には刈り入れを待つ小麦畑が広がる、そう地平線までびっしりと。
「広すぎる・・・。」
何処にこんな土地があったのか・・・。
目の前の大きすぎる課題に思わず座り込む。
「この土地の作物の育て方は他とは違うんです。季節にあったものを皆で一気に作ってそれが終わったら次の作物にうつるといったかたちなんです。」
隣にレナも座る。
「珍しいな、だが・・・何かしらの害がないとも限らないだろう?気候による・・・冷害とかな。」
「はい、幸い魔法を使える人がかなりいるので、そういった害を防げるんです。」
「かなり・・・、ってこの畑をカバー出来るほどの人数だろ?それこそかなりの人数だ。一つの町にそんなに集中していて、教会だとか・・・お偉い方に色々言われないか?」
「それが、戦闘に関与出来るほどのレベルを使える人はほとんどいないんですよ。だからかわかりませんが注意をうけるようなことはないですね。」
「才能はあるが・・・習わないからか、・・・もったいない気がするな。」
「ふふ、そうですね。でも必要ないんだと思います。」
レナが立ち上がる、風に髪がなびく。
「こんなような気持ちがいい風が吹くこの場所を、守っていければそれでいいと私は思います。」
「・・・そうか。」
しばらく風にあたる。
「・・・さて、こうしていてもしょうがない。」
「やりますか。」
「ああ。・・・そういえばお前の家族以外に他の人間はいないのか?」
「・・・そこが問題なんですよ~。」
「は?」
「昨日の騒ぎで人手がないんです・・・。」
「ちょっと待て、じゃあお前と親父だけでこの広い土地をやろうとしてたのか?」
「はい・・・、あっでも義父さんは刈り入れに便利な魔法が使えるので二人で平気かな~、と。」
「・・・そのおっさんは酒で潰れたし、第一魔法が使えてもこの広さだ、半日以上・・・下手したら一日かからないか?」
「でも、やらなくちゃいけないんです。」
・・・そうだな、こんなところでめげていても始まらないし終わらない。言い出した以上しっかりやらんとな。
「おっさんが使ってる魔法って何なんだ?」
「え~と、水です。」
「水で切れるのか?」
「それだけじゃ流石に足りないので風の魔法で円盤状にかたちどった水を回転させるんです。風の魔法は私が使えます。」
「成る程な、天然の鎌ってことか。効率もいいし第一作物に傷がつきにくいか・・・。」
だがおっさんがいないいんじゃな・・・。
「よくご存知ですね。」
「ん?ああ、昨日本で読んでな。・・・それと使ってるのを何となくだが見たことがある気がする。」
昔・・・俺のいた村でな。
やめだ、思い出してもろくなことはないだろう。
「おっさんの代わりは・・・。」
「いません!」
「・・・。」
元気よく言い切ったな・・・。
「ラグナレクさんは魔法使えないんですか?」
使えないことはないが・・・この小麦畑、消すつもりはない・・・。
なんで普通に役に立つものじゃないかなー・・・。
・・・いや待てよ、本にはたしか。漆黒・・・は無属性だったな、そして
『全ての根源にして世界の真理』
とかなんとか。
これ、言い換えれば何でもできるってことじゃないのか?
万能とはいってないが・・・世界は魔法の基本属性の火・水・風・土で構成されてるとも書いてあった。つまりその根源とやらを使える無属性なら・・・。
イメージとしては・・・。
眼を閉じ、想像力を高める。
「わっ。」
レナが声をあげる。
自分でもわかる、魔力の猛りが自分を取り巻くのを。
水、水だ・・・。
「あっ!」
レナの声に眼を開ける。
「出来た・・・って、うわ・・・。」
自分でも驚きだ、出来たことにも驚きだがもっと驚いたのはその規模だ。
「おっきい~!!凄いですね!!」
頭上にはギガント二匹分にも匹敵する水玉が。
「おう・・・、だが。」
問題はこれの形を変えなきゃいけないことだ。
平べったく・・・だろ・・・。
「わっわっ、破裂しそうです!」
「おっと。」
危ない危ない・・・、やりすぎた。・・・難しいな。
「ラグナレクさん、押しつぶす感じじゃなくて。こう、広げる感じに。」
レナが手を胸元から横にゆっくり広げる。
それを見ながら少しずつ形を整える。
「そうです、その調子です。」
限界まで引き伸ばす、そうすると薄い円盤型の鎌が出来上がった。
「じゃあ始めましょうか。」
「ああ。」
今度はレナが眼を閉じる、レナの周りに風が渦巻く。
それと同時に円盤が回転を始めた。
「大きいから少し大変ですね~。」
少しずつ回転数を上げていく円盤。
「よし、このくらいかな?」
試しに刈ってみる、大丈夫そうだ。
「じゃあいきますよ?」
「ああ」

魔法のおかげで仕事が早く済んだが、その魔法を煉るのに時間がかかり、結局終わる頃には昼などとっくに過ぎていた。
「腹減った・・・。」
「ふふ、ご苦労さまです。家に着いたらご飯食べましょ?」
「ああ・・・ん?」
「あれ・・・?なんだろ?」
帰る途中の通りで人だかりが出来ているを見つける。
あれは騎士・・・。怪我もしているようだ。
何かあったのか・・・?
目の前にいた野次馬の一人が退くとそこには女の騎士がいた。
「あんたは・・・」
「ん?・・・あ、ラグナレクさん。」
・・・また名前知られてる。まあいい。それより
「・・・何かあったのか?」


侵蝕 投稿者:ミルアスティー 投稿日:2004年11月11日 13:50:53
 行商の商人同士のトラブルがあったせいで・・・それだけではないが、出発が明日になるという予定外の事態になった。
 しかし、どうしてなのだろう。
 あたし以外、誰一人焦っている様子がない。
「ねえ、急がないと王都が危ないかも知れないのよね?」
「ああ、でも仕方ないだろう。商人共が移動してくれないと私たちも移動できないからな」
 シェルナークは細腕で軽々と重そうなベッドを移動させながら、穏やかな口調で答える。
「そりゃ、そうだけど・・・レニーも気にならないの?」
「別に・・・」
 相変わらず短く、あたしの期待からまったく外れた答えを返してくれた。その視線は修理中のランプに向いたままだった。
 確かに、なるようにしかならないかも知れないけど、昨夜の緊迫した空気と今日ののんびりした雰囲気の差が、あたしには釈然としないものがあった。
 なんで今、お礼とは言え、大掃除みたいなマネをしなければならないのだろう。本来なら、とっくの前にこの町を出て行商人の馬車の幌の中だっただろうに・・・
 『何かお礼にできることはないか?』などとシェルナークが言い出さなければ、民家の空き部屋を宿になんて思い付かなかったかも知れない。

「絶対あっちの方が楽よね~。女の子と二人っきりで楽しそうに・・・」
 ぶつぶつ言いながら、カーテンや壁飾りのコーディネートをする。
 ラグナレクはちゃっかりダイクの娘と刈入れに行ってしまった。なんだか、どことなく浮き足だっていたのが気にくわない。
(まったくホントに・・・なんで、たカがニンゲンナドニきヲ取ラレテオレラレルノカ・・・)
 首筋からどろりと黒いものがにじみ出て来た。ソレは周りの空気にとけ込み部屋全体がわずかに暗くなった。
 世界が・・・重たく・・・・深いトコロへ・・・堕ちていく・・・・・

「ぃ・・・、ぉぃ・・・、おい!!」
 がっと強い力に肩を揺さぶられ、あたしははっと意識を取り戻した。
「え・・・?な、何?どうしたの、シェルナーク??」
 目の前には真剣な表情をしたシェルナークが立っていた。額同士がぶつかりそうな距離に驚き、素っ頓狂な声を出してしまった。
「『どうしたの?』じゃない!それはこちらの台詞だ。今のはなんだ?お前、一体何をしたんだ」
「え?え?」
 相手が何を言っているのか分からず、あたしは馬鹿みたいにそれしか言えなかった。
 見ると、シェルナークの顔もレニーの顔も汗が滲んでいた。ついさっきまで焦りの欠片も見られなかった二人の様子にあたしは余計慌ててしまい、考えがまとまらない。
「まさか・・・無自覚。いや、覚えてないのか・・・?」
 レニーが低い声で言った。シェルナークははっとした顔でレニーを見た。
「なにを・・・?」
 そう言いながら、あたしは記憶に欠落があるのに気が付いた。ラグナレクのことを考えた後、意識が何かに飲み込まれるような感覚を覚え、そこから記憶が途切れている。
「ラグナレクと同じ・・・か?」
 妙に静かな室内にシェルナークの嚥下の音がごくりと響いた。
「いや・・・こいつは違うはずだ・・・が」
 そう言いながら、レニーは眉間のシワを深くした。
「ちょっと!ちゃんと説明してよ!気になるじゃないっ」
 二人の視線と雰囲気になんだか居心地悪くなり、あたしは声を張り上げた。
「・・・はっきりしたことは言えない。しかし、ミル、昨日のラグナレクを覚えているな?遥かに弱いが、同種の魔力を感じたんだ・・・お前から」
「うそ・・・」
 シェルナークの言葉にそうつぶやきながら、あたしは心のどこかで「やっぱり」と思っていた。
 首筋のシミが今朝より一回り大きくなっていた。しかし、いつも巻いているスカーフの為、その存在はまだ誰にも、あたし自身すら気付いてなかった。


荒療治 投稿者:レニー 投稿日:2004年11月13日 23:31:06
…何だか…厄介な事になっちまったなぁ…
シェルナークが告げたその言葉に重苦しい沈黙が落ち、オレは二人には気づかれないように、こっそりと溜め息をついた。

確かに…あの時は驚いた。
それぞれ役割を分担して仕事をしようと決め、オレはそれぞれの部屋にあったランプなどの道具の修繕をしていると…
自分の中にあるそれが、またざわつき始めた。
しかしそれは、ラグナログが『漆黒』を使った時のような、歓喜のざわめきでは無く、
驚きと不審に満ちた…混乱のざわめきだった。
ただ、オレ自身は何も感じていなかった。部屋の中には俺の気配以外無く、
窓の外も、先日の騒ぎから少しずつ暗い空気が薄れていっているだけで、どこもきな臭い感じはしない。
だが…
確かにその『闇』は感じ取っていた。オレすら気づかない何かの気配を。
気になって部屋の外に出ると…シェルナークも何かおかしな気配を感じたと言って、そっちはどうだ?と聞いてくる。
戦場から帰ったばかりで気が抜けてるのか…と考えながらも、「何も」と返すと、眉間の皺がますます深くなる。
その時に気づいたのが…ミルアスティーがこの場にいない事。
シェルナークもそれに気づいたらしく、家の者に聞いてみたが、そちらに行った様子は無い。
だとすれば、部屋の中にまだいるのか…そう考えてオレ達はミルアスティーがいるはずの部屋に行ってみると…

そこに、それは『居た』

「厄介だな…」
その声は二人にしっかりと届いたらしく、はっとした表情でこちらを振り返る。
「…厄介って…どういう意味よ…」
恐る恐る聞いてくるミルアスティーに、オレは溜め息をつく。
…本っ気で面倒な事になっちまった事を、今更ながら実感した。
「恐らく…お前の中に『何か』が入り込んでる。」
その言葉に、ミルアスティーはひっと小さく悲鳴を上げる。
シェルナークも、深刻な表情をしてミルアスティーを見る。
「何なのかは…分かるのか?」
「いや」
とっさに嘘をつく。大体の見当はついてるけど、言えばもっと怖がるのは分かってるしな…
「何か分からないなんて…じゃあ…あたしこのままだとどうなるのよ…!」
「…見当がついてない訳じゃない。多分、魔物と戦った時に、何か付いたんだろう。だから…
 …多分『闇』の眷属の何かだ。」
そう答えればミルアスティーはますます不安そうな顔をするが、シェルナークはそれを聞いて、はっとした表情をまた浮かべた。
…気づかれたかなぁ…こりゃ…
…まぁ、何にせよ、このまま何もしないと言う訳には行かないだろう。
オレの中のよりもずっと弱いものでも、彼女はオレと違い『聖』属の加護は受けていない。
となれば、オレよりも『喰われ』やすい立場にあると言う事だ。
「…何とか出来ない訳じゃあ、無い」
言えば、ミルアスティーは不安そうな目を向ける。
「…どう言う事?」
「消し飛ばす事は無理だが、弱体化は出来る。
 王都なら、そう言うのを相手にしてる『解魔医師』がいる。
 この後すんなり王都へ行く事が出来るなら、それまでそれを静められる」
…何も無くすんなり行けるならな。本当に。
「でも…弱体化は出来るのね!?」
「…相当の痛むぞ。これは。」
それでもいいのか?
脅しじゃない。本気で痛い。
いつもより声を低めて言えば、ミルアスティーは怯えたような顔をしたが…
しばらく迷った後、静かにうなずいた。

「傍にいて、こいつの手を握れ」
…気休めだけど、しないよりマシだから。
シェルナークにそう言えば、何も言わずに彼はミルアスティーの手を握った。
不安そうな目をしてベットに腰掛けたミルアスティーに、シェルナークは「大丈夫」と言ってやる。
…奴には事前に少し説明したからな。失敗しない保証もあるし。
舌を噛まない様、口に布をくわえさせたミルアスティーの前に立つと、「目をつぶれ」と言い、懐に入れていた短剣を、鞘から抜く。
…目をつぶる事には、意味無いんだけどな。見てると不安になりそうだし。
鞘から抜き放った短剣は、左手に持ち返ると、それで右手の人差し指を浅く切る。
「…父なる神よ」
静かに言いながら、その指で彼女の額に触れる。
瞬間、ジュワっと言う音がして、その額から赤い煙が出る。
「つ・…っ!」
「聖なる神よ」
構わずオレは続けた。あらかじめ言っておいたのだから、耐えれないと言い出しはしないだろう…多分。
「ここにおりますは迷える羊なり」
…正直、オレの指もかなり痛む。真逆の力が間近に触れ合ってるからしょうがないけど…
オレはその指で、確かめるようにゆっくりとある文様を描いていく。
「闇に目を閉ざされ、先の見えぬ羊なり」
聖刻文様を書き込む度、オレの中にあるそれも不快にざわめくのが分かる。
ミルアスティーも悲鳴こそあれから上げてないが、顔に脂汗かいてるな。
…さっさと終わらせた方がいいなこりゃ。下手を打てば暴れだしそうだし。
「父なる神よ。聖なる神よ」
次の文様を描こうとした時、不意にミルアスティーは身じろぎした。
指が滑りかけたが何とかなった。だが彼女の顔色は蒼白で、シェルナークが握っている手も力が入ってないようだ。
「…おい!」
たまらずシェルナークは声を上げる。
だけど、まだかと言わんばかりに睨まれても…仕方ないんだけどさ。
「天と地を繋ぐ、この聖なる雫に依りて…」
最後の文様を書き込むと、オレは彼女の額を軽く押した。
「この羊の目に、今一度晴れた道を示されよ…」
最後の言葉を唱え終わった時、ミルアスティーの目が一度カッと開くと、またゆっくり閉じていった。
彼女の体に力が抜けるのと同時に。
「ミルアスティー!」
「気を失っただけだ…しばらく安静にしてやれ」
そう言ったオレも、そう言うと、近くの壁に寄りかかる。
…思ったより『力』を使った感じだ…前はもう少し楽に出来たはずだけど…
…て事は…オレの中のそれも、少しずつ蝕んでんだな。オレの体。
「…ラグナレグに、この事は…」
「言ってやるな。今は」
これ以上あいつを混乱させる真似は、ゴメンだ。
今朝のあれだけでも、相当混乱してるはずだから…

がちゃりと音がして、ドアが開いたのは、その時。
そちらを向けば、ラグナレグが部屋に入ってきた。
「…もう終わったのか。刈り入れ」
ベットでぐったりしているミルアスティーと、その手をしっかり握るシェルナークに驚いているラグナレグにそう声をかけると、
まあな。と生返事をし、シェルナーク達をちらちら見ながら俺に言った。
「…ここの騎士団の一部が…王都に向かってた奴らが、魔物に襲われて逃げ帰って来た。
 その事で、ラザナーシュとか言う女騎士が呼んでる。人手が少ないから手伝えって」
それを聞いて、オレは深い溜め息をつく。
…王都へ行く前に、尽き果てそうだな。オレの精魂…


魔法書:黄昏の巻 投稿者:ラグナレク 投稿日:2004年11月14日 10:20:57
光と闇
天界と魔界
互いに
似て 非なるが故に
反発し
滅ぼしあう

だが
この双方が
一つになったとき
世界を作るに値する力を得る


天は神たる素質をもち
魔は魔王となる素質をもつ

神は創造し
魔王は破壊を司る

もしこの構図が逆転したとき

世界はどうなるだろうか



                   魔法書:黄昏の巻 より

困った 投稿者:ノア 投稿日:2004年11月14日 17:38:32
・・・・・・失敗だ

ケルベロスを撃退し、なんとか帰って来たのだが、追撃を考慮していなかった。何とかして、町の中に入れずに倒さねばならなかった。
「くっ!?力は、もうほとんど残ってないのに!!!」
剣を構え、町の入口の近くで対峙する。敵は、ケルベロスが一体。グリフォンが二体。更に、クレイマンが四体。今の状態では、勝てない状況だった。
「それでも、やらねば!!!」
ノアは剣を水平に構え、走っていく。
「だぁー!!!」
一閃。クレイマンを切った。しかし、すぐに再生した。
「くっ!!!再生能力が強い!!!!」

・・・・・・町の外では、戦闘が始まった・・・・・・



軍規律 投稿者:ラグナレク 投稿日:2004年11月14日 18:35:20
「事故があって・・・、戻って来ることになったんです。」
「そうか、だが無事そうでなによりだ。」
「え・・・、ありがとうございます。」
そうか・・・事故か、やっと戻れるって時に災難だな・・・。
「おおー!!ラグナレク!!」
でかくて聞き覚えのある声がした。
「!アルベルト騎士長!?」
「ん?おお神聖騎士殿じゃないか。お互い災難だったな。」
「はい、・・・それよりお話しておくことがあります。」
「・・・なんだ。」
「あ、行くか・・・。」
「いや、そこにいてくれ。」
気を利かして話を聞かないようにしようとしたがアルベルトが
変なことを言う。一般人の俺が聞いてもいい話なのだろうか?
「・・・では名前は伏せます。貴方様の部下の騎士が一人独断で行動してる件ですが・・・。」
「ああ、わかってる・・・。そのおかげで捜索にだした俺の部下が
・・・五人死んだ。」
「!そんなに・・・、不味いですね、独断行動は軍法会議にかける必要があります。」
「う~む・・・。」


新たなる飛翔 投稿者:ラグナレク 投稿日:2004年11月15日 00:53:16
「しかし・・・彼は逃げ遅れた者を助けるためだと・・・。」
「・・・だが、軍法会議の方針はわかるだろ?軍規は絶対である、と・・・。しかもその遅れのために五人も死んでる。いくら俺や、たとえ神聖騎士であるあんたが弁解したとしても・・・。」
「無駄・・・ですか。」
「・・・」
「・・・おい」
「ん?」
耐え切れず言葉を発する
「俺達が聞くべき話じゃなかっただろ・・・。」
しかしアルベルトは首を横に振った
「いや、本題はここからだ。」
「えっ?」
「その・・・騎士はまだ戦っています。この町のすぐ近くで。」
「じゃあ助けにいけば・・・」
「この状態でか?」
辺りを見渡す、怪我人は数え切れない。
「度重なる戦闘に、私達は消耗しています・・・。まともに戦闘参加できる人間は少ない・・・いえ、いないに等しい。」
「傭兵さん達もですか・・・?」
「それだけ被害が大きかったという事さ、お嬢ちゃん。」

ピシ

「くっ・・・しかも事態は最悪・・・ということか。」
「えっ?」
「どうした?ラグナレク」
「・・・いや、なんでもない。」
今のは魔力反応・・・?何で俺がこんなもの感じとれるんだ・・・。
・・・今更か。
「俺達は・・・宿に戻る。あいつらに応援を要請しておく。」
「あいつら・・・、レニー達の事ですか?」
「・・・誰だ?」
「えっ?誰って・・・あっ!!自己紹介してないんだったね。」
「そうなのか?でもよ、今時間はねえぜ?聖騎士殿、後にしな。俺は使える者連れてもう行くぞ?」
「わかってます。私も支援にいきます。」
「傷は?大丈夫なのかよ」
「そんなことも言ってられないでしょ?応急処置だけです!」
そいういうとアルベルトと騎士の女は走っていった。
「・・・さて俺達も行くか。」
「急ぎましょう!」

レナの家に着き三人に騎士のとこまで行くように言う。

「ラグナレクさん、貴方は行かないんですか?」
一人違う方へ行こうとする俺にレナが声をかけてきた。
「・・・こっちも重大だ、あいつらが話していた件の方は。・・・囮の可能性がある。」
「えっ、どういうことですか!」
「・・・ついて来い。」
先の戦闘があった丘が見える位置まで移動する。
「ここは・・・。」
「ここで魔力反応があった。」
「えっ・・・?」
「・・・お前も見たか?この前のデカぶつが赤ん坊に見える奴が来るかもしれない。」
「そんな・・・!なのに彼らの助けなしで!」
「可能性だ、まだわからない。そんなものに時間を割いてたら今戦ってる騎士は死ぬぞ。」
「そう・・・ですね。」
「ああ、だから俺一人できた・・・。」
「でもっ!もし・・・なにかあるんだったら!」
キィィィィン
「・・・お前は戻れ。」
「え・・・でも。」
「おっさんはまだ駄目だろ?ならお前が家族を支えてなきゃ駄目だ。・・・家族は助けあうものだ。」
「・・・わかりました。気をつけてください、絶対帰ってきてください。」
「ああ・・・。」
エナを見送る
さて・・・死力を尽くす相手じゃなきゃいいが・・・。

丘の上につくと、そこには。
「女の子・・・?」
一人の少女が立っていた。いや少し浮いている。
「お前・・・何してる、ここは・・・危ないぞ?」
『貴方は・・・』
なんだ・・・?喋ってないのに声が・・・。
『誰・・・?』
「俺は・・・。」

ピシ・・・

くっ・・・まただ、魔力を感じる・・・。
『名前・・・教えて・・・?』
「俺は・・・ラグナレク」
不思議な感覚だ・・・。いや・・・なぜだか懐かしい。
『ラグナレク・・・。』
「・・・そうだ。・・・お前は?」
少女が控えめだけど笑顔になった。
『知ってるはずだよ・・・?』
えっ・・・?
『思い出して・・・』

ピシ・・・

「お前は・・・シェスカ。」

少女がニッコリとして、それからこちらにゆっくりと近づいてきた。



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