鈴木 セイヤ 0
全508件 (508件中 51-100件目)
木曜担当のよこてんです。 今回は盛岡競馬場で行われた南部杯の振り返りです。「Road to JBC」の最終戦、JBCを目指して出走してきた馬もいる中でどんな結末になりましたか・・・。 しかし今年の南部杯は、いや今年「も」と言うべきか。悪天候に脅かされました。当日の昼頃まで強い雨、それが上がったと思うと今度は霧。メインの南部杯の頃にはいずれも納まってくれたから良かったとはいえ一時はレース続行も危ぶまれるような状況でした。★雨のあとは・・・★霧で真っ白。気温が高かったのも霧を招いたですね 去年も一昨年も雨でしたねえ。照明レースですから晴れとか曇りとかは関係ないんですけども、雨はやっぱり。体育の日じゃなくなってから“晴れの特異日”でもなくなってしまったのか・・・。★南部杯も霧が完全に消えてはいなかった 今年の出走馬はJRA勢7頭、地方他地区5頭、岩手4頭のフルゲート16頭。JRA勢は昨年まで南部杯を連覇してきているアルクトス、フェブラリーSを連覇しているカフェファラオ、2019年のこのレースの覇者サンライズノヴァらのG1馬が参戦した他、JBCを目指すシャマルやヘリオスも登場。地方他地区勢はグレードレースで活躍するイグナイターが来てくれましたし2017年のホープフルSを勝って今は地方に移籍しているタイムフライヤーが参戦。地元勢もヴァケーション・ゴールデンヒーラーと牡牝のトップが出走して、JRA・地方のトップマイラーを競う舞台が整いました。 雨・霧がひとまず収まった中で行われたレースではカフェファラオが逃げたヘリオスをゴール寸前捉えてV。ゴール前伸びてきたシャマルが3着に食い込みイグナイターも直線半ばまで優勝争いに加わっているという近年に無い大接戦の決着でした。★第35回マイルチャンピオンシップ南部杯優勝 カフェファラオ カフェファラオはフェブラリーSを連覇している一方で大井ジャパンダートダービーは7着、船橋かしわ記念は5着と地方のコースでは結果が出ていませんでした。芝スタートだから東京が良いのかワンターンならイケるのか、今回そのどちらかが分かる・・・と思っていました。 自分は「芝スタートだから」派でした。芝スタートの東京ダートマイルとそれ以外のコースとで行き脚が違うんですよね。意外に遅い。だから芝スタートだから派でしたが、今回の結果からはそうではなくて「ワンターンならイケる」なようです。福永騎手も「スタートしてすぐコーナーがあるとスピードに乗れないタイプ」という意味のコメントを残しています。 かしわ記念の船橋マイルはスタンド前、直線半ばくらいからのスタート。中京の1800mもそんな感じですよね。今回の結果なら福永騎手の言うとおり「スタートからコーナーまで距離がある条件」なら力を出せる馬だと判断して良いのでしょう。 まだ良化途上という印象があった直前の調整具合、近年は意外にフェブラリーS勝ち馬の南部杯優勝が無い・・・というあたりも気になる点でしたが、そこは高い地力でカバーしたのだと考えます。 2着のヘリオスは惜しい競馬でした。意表を突いてポンと逃げる、逃げてレースを支配するのは鞍上武豊騎手が盛岡でもしばしば見せる作戦。マーキュリーカップのテリオスベル・江田照男騎手といいベテランの技はやはり素晴らしい。 もちろんそれだけでなく、マイルの経験こそ少なかったですがこの馬も東京コース巧者。戦績を見ても2020年の11月から今年1月まで8戦連続で東京しか使っていない(栗東所属なのに!)くらいですからね。右回りでのちょい負けは度外視して良い材料だったのでは。 3着のシャマルも惜しかったですね。十分勝ちはあった。あと少し何かがあれば・・・。とはいえマイルもこなせた点、このメンバーでもやれる力を付けている点は高く評価していい部分。 あとはJBCに出る事ができるかどうか。オーバルスプリントの際に松下調教師が「JBCに出るために、ローテーションは厳しいが南部杯に出る」と言われていました。今回の3着だとちょっと微妙なラインになってしまいましたが、出走が叶うなら本来の得意距離である1200mのJBCスプリント。面白い存在になるのでは。 4着のイグナイター。久しぶりの長距離遠征、久しぶりの左回り、久しぶりのマイル。厳しい条件が揃っていながらの4着、それも最後まで優勝争いに食い下がっての結果は見事でした。最後わずかに離されたのはそのいろいろの久しぶりの分か。盛岡コースが凄く合いそうな走りにも見えましたしこちらもJBCに出走するなら楽しみな一頭に。 地元ゴールデンヒーラーが5着に食い込みました。盛岡ダートではこれまで連を外した事がなく実はこれが自身初の“盛岡での馬券圏外”。しかしG1で掲示板確保なら馬券圏外になったとしても上々の結果ではないでしょうか。★5着の結果に笑顔の渡邉正彦厩務員 次戦はJBCレディスクラシックになる模様。1800mは少し長いかもですがこれまでも好走している距離ですから問題はないでしょう。1400mくらいの“JBCレディーススプリント”みたいなのがあるといいのになあ。 2番人気だったアルクトスは14着に終わりました。今回はフェブラリーSから8ヶ月ぶりの実戦となってしまい、これまでのように直前で一戦使ってからの臨戦過程ではありませんでした。馬体重も数字は整っていましたが身体はちょっと緩さを感じざるを得ない印象。それでも序盤先行していたのはさすがだと思いました。 同馬はレースの直後に引退・種牡馬入りが公表されました。オーナーさんのSNSからは南部杯で“よほどいいレースができなければ・・・”という雰囲気があって、自分もこのレースが最後になるかもと思いながら見ていました。南部杯連覇、一昨年は日本レコードで優勝。2019年も2着に入っており盛岡では3戦して2勝2着1回という好相性コースに望みをかけての参戦だったと思います。14着に終わったからといってその実績の輝きが薄れる事はありません。まずはこれまで見せてくれたレースぶりに感謝。そして種牡馬としての活躍を期待しています。 南部杯をもって「Road to JBC」も終了。各路線の状況も見えてきた感がありまが、しかしレディスクラシックとスプリントは良いとして、クラシックはチュウワウィザードの突然の引退をはじめ昨年くらいまでの中距離ダートG1で上位にいた馬が相当数引退していて読みづらいですねえ。牝馬でクラシックに回るような馬も出てきそうな・・・。出走予定馬の発表は来週、18日か19日になると思われます。乞うご期待!★今回はJBCの予行を兼ねて誘導馬が登場★陸上自衛隊第9師団第9音楽隊による生ファンファーレ演奏も。JBCでも生ファンファーレになりますよ
2022年10月13日
木曜担当のよこてんです。 今回は『Road to JBC』の前哨戦二つの観戦記を書きたいと思います。 まず初めは10月5日に大井競馬場で行われたダートスプリントのグレードレース『東京盃JpnII』。この東京盃は距離1200m、JBCスプリントの直前にあるスプリント戦であり基本的に同じ距離で行われるということで、JBC設立当初から重要な前哨戦となっています。★両レースの日とも雨模様。特に東京盃の日は割としっかりした雨に。氷雨。 今回は8頭立てになってしまったのがちょっと残念でしたが、昨年の金沢JBCスプリントの覇者レッドルゼル、根岸ステークス優勝、フェブラリーステークス2着などの活躍を見せていたテイエムサウスダンらが秋初戦を迎えて、春以降の短距離路線で成績をあげてきた馬との対決、勢力図に変化があったかどうか?を探る一戦ともなりました。★東京盃優勝 レッドルゼル そんな東京盃を制したのは昨年のJBCスプリントの覇者レッドルゼルでした。3月のドバイ海外遠征以来の日本での一戦、馬体重は487キロでしたがこれは遠征前の日本でのレース時の体重とほぼ同じ。もっと言えば同様のローテーションで挑んでいた昨年の東京盃ともほぼ同じ馬体重でした。昨年と違うのは58kgの負担重量、そして3着だった昨年とは違う1着という結果。 最後の直線の攻防も余裕十分な手応えでの快勝。馬体重しかり、臨戦過程しかり。JBCスプリント連覇に向けて順調なスタートを切ったと言えるでしょう。★テイエムサウスダン(返し馬)+14kgでこの結果なら次戦での上積みは大きいのでは ただ、2着のテイエムサウスダンも5月のかしわ記念以来の休み明けでプラス14キロ、余裕を感じる体つきと身のこなしでありながら直線は一旦先頭に立つような走りを見せています。このひと叩きで挑むことになるだろうJBCでの“叩いた上積み”には期待できるのではないでしょうか。★オーロラテソーロ(パドック)真っ向勝負で僅差3着、好レースをやりきったが・・・ クラスターカップの覇者オーロラテソーロは3着。最後まで上位2頭に食い下がり、脅かす走りはお世辞抜きに好内容、今の勢いはしっかり活かしたと感じますが、できればここで連対以上の結果を残したかったところでしたね。クラスターカップの際に畠山調教師が「なんとかして出たい」と言われていたJBC、ちょっと難しくなったか・・・。★ギシギシ(返し馬)ハナに行く形でよく粘ったものの残り100mでつかまってしまいました 翌10月6日に行われた牝馬のグレードレース『レディスプレリュード』。こちらはJBCレディスクラシックの前哨戦となります。注目はやはりグレードレース4連勝中、かしわ記念も制したショウナンナデシコ。ファンの期待も高く、馬券発売開始から1倍台の単勝オッズをキープするような人気ぶり。牝馬のグレードレースだけでなく牡馬を相手にしてもJpnIを勝っているだけにこの人気も当然、結果もその通りになるかと思われたのですが・・・。 レースはショウナンナデシコ自身がハナ立つ形。そしてマーキュリーカップでも見たテリオスベルの強襲。 直線に向いて懸命に食い下がり巻き返そうとするショウナンナデシコ、テリオスベルを交わしてなんとか先頭に返り咲いたのですが、そんな2頭を外から一気に交わしていったのがプリティーチャンスでした。★レディスプレリュード優勝 プリティーチャンス 同馬は昨年12月のクイーンカップでは3着、今年3月のエンプレス杯ではショウナンナデシコから1.5秒差の5着。そのへんの感じだとちょっと差があるのかなという印象でしたが、その後の4月アンタレスステークスではオメガパフュームの0.5秒差4着、前走の門別・ブリーダーズゴールドカップでも今回同様に直線末脚を伸ばす形でグランブリッジとタイム差なしの2着とここに来て勢いに乗ってきている印象がありました。エンプレス杯での約8馬身差をひっくり返す強い走りでの初重賞制覇となりましたが、近走を眺める限り不思議な感じもフロック感も全くありません。★テリオスベル(返し馬)マーキュリーカップを彷彿とさせる意表を突く強襲。JBCに出てくるならトリックスター的な立ち位置にもなりそうですが・・・★一周目のスタンド前を先頭で通過するショウナンナデシコ。自らハナに行く形はイマイチかも? この2レースでJBCスプリント。JBCレディスクラシックの直前の勢力図が明らかになったのではないでしょうか。 スプリントは、レッドルゼルやテイエムサウスダンが不在の間に成績を伸ばしてきていた馬たちがどれぐらいやれるか?と思って見ていましたが、今回の感じだとやはり実績馬強し・・・の評価になりそうですね。 ただ、ここには出走しなかったダンシングプリンス(クラスターカップからJBCスプリント直行)や南部杯からJBCスプリントを目指すシャマルといった馬たちがいます。“レッドルゼル一強”と見るにはまだ早いように思いますね。 レディースクラシックの方は本番でも大本命になるとなるだろうと思われていたショウナンナデシコの思わぬ敗戦。これで勢力図が混沌としてきたのではないでしょうか。 ショウナンナデシコは7月のスパーキングレディーカップからの休み明けという形になったんですけども、それでいながら478キロ、ここ1年ほどでは一番少ない馬体重になったのがちょっと気になりましたね。一か月後の本番までどれくらいの上積みがあるか?そこが焦点になると思います。 あと、この馬は一番強いと言うか自在に動けるのはマイルで、1800mは少し長いような印象があります。 一方で、この馬にとってはサルサディオーネのような徹底先行タイプがいた方がレースを作りやすいという印象もあります。本番にはそのサルサディオーネが出てくるでしょうから、その点では今回よりは戦いやすくなるという見方もできそうです。 また、今回勝ったプリティーチャンスに本番の主役を期待してみたいところですが、レース後の野中調教師のコメントは「左回りは右回りほど良さがない」ということで次走をJBCと決めてはいないというニュアンス。JBCには向かわない可能性もありそうです。 とするとブリーダーズゴールドカップを勝ったグランブリッジか?斤量差があったとはいえプリティーチャンスを退けているのですから評価は高めで良いと思います。 そしてもちろんサルサディオーネ。ビューチフルドリーマーカップで盛岡を“試走”し足慣らしも終えています。気になるのは8歳終盤・連戦の疲れという点でしょうか。 さてまもなく南部杯が行われますね。Road to JBC の最終戦、本番にはないマイルという距離ですが、南部杯からは2000mのクラシック、1200mのスプリントいずれにも向かう事ができますし、実際2003年にはアドマイヤドンが南部杯→JBCクラシックと連勝しています。南部杯の結果ももちろんJBCに直結するはずです。 今年の顔ぶれは、スプリントに向かいたいという馬が多めのような気がしますね。そして初盛岡になるという馬が多い。既に何度も盛岡を経験しているベテラン勢とどれだけやれるか?は、本番で目指す距離とは違えども、一つのものさしになるのではないでしょうか。 気になるのはお天気です。天気予報では少しずつ雨のタイミングが前にずれて行って、もしかしたら南部杯のレースの頃には雨が降っていないかもしれませんが、少なくとも夜半から午前中にかけては強めの雨が降る時間帯がありそうです。 過去2年も雨に影響された南部杯。雨の高速馬場になるとJRA勢が強さを発揮すると思われますが、本来短距離指向の馬がマイルの高速な流れに巻き込まれると・・・という展開のアヤもあり得るでしょう。馬場傾向の変化にはレース発走まで悩まされることになりそうです。
2022年10月06日
木曜担当のよこてんです。 28日の水曜日、仙台市『楽天生命パーク宮城』での『東北楽天ゴールデンイーグルスVS 埼玉西武ライオンズ』戦において岩手競馬・楽天競馬(競馬モール株式会社)の協賛による『岩手競馬ナイター』が行われました。 2011年から毎年実施されているこの『岩手競馬ナイター』。昨年は自分は球場まで行かなかったのですけれど今年は山本聡哉騎手が始球式を務めるという事で自分も2年ぶりに『楽天生命パーク宮城』に出向きました。 現地でイベントを運営するスタッフの皆さんは早朝から出発していますが自分は手元の仕事を終えてから午後の移動。球場に着いた頃はイベント真っ盛りのタイミングでした。★場内ステージでのトークショーに登場した山本聡哉騎手と関本玲花騎手★ムチの使い方を熱く説明する山本聡哉騎手★イベントブース。賞品付き抽選会はあっという間に終了、蹄鉄投げゲームに大行列★始球式前の記念撮影。銀次選手が来てくれたのを山本聡哉騎手が喜んでいた 場内イベントなどで山本聡哉騎手が銀次選手の事を話していたのは、銀次選手が久慈、山本聡哉騎手や山本政聡騎手が葛巻で、小さい頃はそれぞれ野球をやっていた事・世代も近いからという事と、もうひとつ、2012年の『岩手競馬ナイター』の時にスポーツ紙の企画で銀次選手と山本兄弟との“県北対談”をやったんですね。★2012年の対談の際。銀次選手と山本兄弟(みんな若い!) 銀次選手のスポ少時代の先輩を山本政聡騎手が知っている・・・みたいな、さすがはエリアが近いだけはあるという話も飛び出してきてなかなかに盛り上がった対談だったと記憶しています。★山本聡哉騎手の始球式。まっすぐミットに収まって場内からも拍手★始球式前にビジョンで大きく流れたJBCのPV。今回は一度だけだったのは、15秒だと2回、30秒だと1回だからとのこと★当日は場内のモニターにもL字で岩手競馬・JBCの告知が出ています。今回はピンク基調だから夜見ていても明るい雰囲気 『岩手競馬ナイター』、はじめの頃は“こんど岩手競馬ナイターがあるんですよ”と話すと“岩手もナイター競馬を始めるの?”と聞き返されたりしたものでしたが10年以上経つとさすがにそういう事もなく、逆に秋が近づくと“楽天の始球式いつ?”と訊ねられるようになってきましたから認知度は大きく上がりましたね。★“第1回”の『岩手競馬ナイター』、2011年の球場の様子。今から見ると凄いシンプルな感じがしますねえ★当時は7月実施。特に2011年は猛暑で40度近い気温に参った記憶・・・★こちらは翌2012年のグランド側の光景。2013年の優勝の時に大きく手が入ってスタンド増設とかありました。その後もいろいろ変わっているから、今見ると“普通の球場”という感じですね 楽天球場に行くといつも「競馬場もこんな感じに、テーマパークみたいになればいいなあ」と思います。食べ物の屋台を見て歩きながら、スタンドの右から左から観戦する。球場は“ボールパーク”という考え方が定着していて、“いろいろな楽しみ方ができる球場を持っているかどうか”が観客動員だけでなくチームの評価にも影響したりするようになっていますよね。札幌に新設されるエスコンフィールドはグラウンドそばのホテルやサウナから観戦できるとか。 競馬場も、JRAの競馬場はその方向でしょうし、地方競馬でも大井や船橋は“レースパーク”的な方向性に見えます。 盛岡のJBCも楽天球場のような感じに盛り上がればいいですねえ。 『楽天生命パーク宮城』の個人的なおすすめというかお気に入り、それはレフト・外野側にある『スマイルグリコパーク』の観覧車です。昼間でもいいですけども、ナイターの試合中が良いですよ。最上部はスタンドのどこよりも高くて照明塔よりも上になりますし、ちょうどその辺に来た時にヒットとか出ればスタンド全体がワッと沸くのを体感できます。高所恐怖症でなければ、ぜひ。
2022年09月29日
木曜担当のよこてんです。 先日の馬運車の火災事故。現在も調査継続中であり補償等の問題も絡む話なので現時点で細々書く事はできませんが、ひとまず人馬共に無事で良かったと思います。 「高速道路で事故を起こした場合・車が故障して停まらざるをえなくなった場合」は車内や道路上に留まらずガードレールの外側等安全な場所に避難すること、が推奨されています。これは自分の車が止まっているのが例え路肩であってもそこに突っ込んでくる車が決して少なくないためにそういう対応を採るようにいわれています。 高速道路に馬を降ろしたのは非常に危険だったでしょうし批判される事も理解できます。結果的に多重事故にならなかったのは幸運なだけだったのかもしれません。この場合の“正しい行動”は「人間だけガードレールの外側に避難している」事だったかもしれない。 ただ、火が燃え広がった場合に車中の馬を見殺しにするのか?と、それはできないと判断した厩務員さん達の判断を一概に批判する事はできない。もちろんそれは人馬に何事もなく終わったからこそ言える事かもしれません。“道路上に出たところに居眠り運転の大型トラックが突っ込んで来る”という想像する限り最悪の事態も起こらないとは言い切れないわけで、要は結果論に過ぎないのかもしれません。ここは冷静なふりをして“人間の命を守るのが最優先”と言うべきかもしれない。ただ今回に関しては結果論と言われてもいいから馬も人もよく頑張ったと言いたいです。 ところで、例えば今回のような高速道路上での馬運車の事故の場合の“対応マニュアル”のようなものはあるんでしょうか?岩手でというだけでなく各地の主催者さんとか輸送業者さんとか。馬運車が多重衝突に巻き込まれるとかの事故もごくまれに起きますよね。そういう時に馬はどう扱う事になっているんでしょう? さて先週は2歳と3歳の重賞が行われました。いずれも秋以降の路線につながる重要な一戦となりました。 まず日曜に行われた3歳重賞『不来方賞』。人気を集めたのはここまでの3歳二冠を制しているグットクレンジングでしたが、勝ったのはこれが転入初戦のマナホクでした。門別でのホッカイドウ3歳三冠戦線であと一歩及ばなかった雪辱を盛岡で果たした形。★不来方賞優勝/マナホク 門別の北斗盃・北海優駿ではシルトプレ・エンリルそしてマナホクが三つ巴の形でした。あちらの三冠最終戦・王冠賞ではしかし、エンリルがシルトプレを破る形で幕を閉じたもののマナホクは少し後れをとって5着。それも勝ったエンリルからは16馬身差と、それまでの僅差の戦いぶりからすると大きく離された印象がありました。★北海優駿でのマナホク 自分もそんな王冠賞のイメージがあったのでこちらに来て好調というお話をうかがっていてもちょっと半信半疑だったのですが、終わってみれば他馬を寄せ付けない快勝。ここまでの実績や経験も活きた勝利だったのかなと感じました。 次戦はダービーグランプリ、その後はさらに他の地区に移籍予定とのこと。これは当初から岩手では2戦という前提での移籍だったそうですので、この先も岩手所属の馬として応援したかったですがそこは仕方がない部分。ダービーグランプリでどんな戦いを見せてくれるのかに期待しましょう。 ところで岩手でマナホクを管理している佐藤雅彦調教師は同馬の半兄にあたるカッチャオ・ティアラアデントロも管理していました。カッチャオはちょうど不来方賞の日の7Rに出走していましたね。 カッチャオは岩手で8勝していますがいずれも短距離の部類に入る距離で、マイル以上での出走経験もありません。そんな実績の違いもあってか「きょうだいだけどタイプは全然違う」というのが佐藤雅彦調教師の感触だそうです。★8月22日秋桜賞優勝時のカッチャオ(左)。マナホクの4つ上の半兄です カッチャオは父ショウナンカンプだから短距離に出るのが普通として、トゥザワールドも結構短距離方向に出ますよね。実際マナホクも1200mの準重賞を勝っているし。中距離もイケるのはサンデークロスの影響?? 三冠達成目前と思われたグットクレンジングは8着に終わりました。序盤からちょっと行き脚に余裕がなく3コーナーでもう後続に捲られるような勢い。今までの強さが影を潜めたような走りでした。初めての左回りの影響もあるでしょうけども、マナホクも左回り初は同じですしね・・・。休み明けがイマイチなのか、あるいは“初コース”がイマイチなのかも。ちょっと次戦を待ってみたいと言うしかないような今回のレースでした。★グットクレンジングは三冠達成ならず そして火曜に行われた2歳重賞『ビギナーズカップ』。こちらは1番人気フジラプンツェルが期待通りの快勝、それも2着馬に1秒9、大差の圧勝でした。★ビギナーズカップ優勝/フジラプンツェル ここまでの4連勝で強さは分かっていましたし、今回は前走の若鮎賞とはまた少し違うメンバーとの対戦で変化があるか?でしたが、その点も何の問題もなし。1分26秒3の勝ち時計も優秀と言っていいでしょう。強さがより際立ったという結果になりましたね。 次戦は南部駒賞かエーデルワイス賞かの両にらみになる模様。どっちにしろ北海道勢が相手になるわけですから、だったらエーデルワイス賞で見てみたいですねえ。勝ち負けみたいな話はいったん置くとして、今のフジラプンツェルの完成度は門別の2歳勢と比べても遜色ないと感じますし、どれくらいやれるのか殴り込んでみてほしいです。
2022年09月08日
木曜担当のよこてんです。 28日に行われた牝馬の地方競馬全国交流重賞『ビューチフルドリーマーカップ』。いやいやサルサディオーネ強かったですね。★ビューチフルドリーマーカップ優勝/サルサディオーネ グレードレースでJRA勢と互角に渡り合ってきた実績を持つ馬が斤量面のハンデなしに地方競馬の相手同士と戦えば、それは楽々5馬身差の圧勝もある意味当然・・・というしかないでしょう。もちろん輸送とか初コースとかを気にするところがある馬だという事ですから陣営も必ずしも楽勝と思って送り込んできたわけではないのでしょうけども、馬自身の力でそんな不安をまとめて払拭。これならばJBCに向けても視界良しとなったのではないでしょうか。 サルサディオーネは青森・荒谷牧場の生産馬。昨年の秋、このブログで採り上げさせていただくべく取材に向かって、生まれた頃の同馬や同馬の母サルサクイーンのお話をうかがってきました。 その昨年は金沢JBC直前という事でうかがったのですが、金沢でのサルサディオーネは10着。Jpn2やJpn3は牡馬相手にも勝っていたりする同馬なのですがJpn1はこれまで6回挑んでまだタイトルには届いていません。今度こそ・今年こその力が入る今年の盛岡JBCでしょうし、そう思わせる内容でもありましたね。★昨年の金沢・JBCレディスクラシック。先頭で一周目のスタンド前を通過するサルサディオーネ(左) ちなみに荒谷牧場の荒谷さん、今の代の荒谷栄一さんですけども、今の代になって生産馬が岩手の重賞を勝ったのは初めてとの事。 また、岩手での青森産馬の重賞勝ちは20年ダイヤモンドカップ・グランコージー以来となりました。 さて、ビューチフルドリーマーカップを終えて、11月の盛岡JBC・JBCレディスクラシックの構図もだいぶ見えてきたのでは。 まずはやはりショウナンナデシコ。昨年の今頃はJRAの3勝クラスに上がったばかりの条件馬。昨年までは重賞に出走した事すらありませんでした。それが今年に入ってエンプレス杯・マリーンカップ・かしわ記念・スパーキングレディカップとグレード4連勝。中でもかしわ記念では牡馬を一蹴する走りでG1タイトルを手にしたのですからたいしたものです。 牝馬相手に絞ってみても、1月のTCK女王盃ではテオレーマ、昨年の金沢JBCレディスクラシックを制した“女王”に敗れたもののタイム差無し2着の大健闘。テオレーマ引退後の牝馬戦線でショウナンナデシコが大活躍する伏線となりましたし、その後のレースでも昨年の牝馬グレード戦線の上位馬を次々退けてきています。例えば対サルサディオーネでは3戦してショウナンナデシコの3勝ですから、現時点での“ダート女王”を挙げるとすればやはりこの馬でしょう。★ショウナンナデシコ(かしわ記念優勝時) そしてサルサディオーネ。対ショウナンナデシコでは、こちら側の視点では3戦して3敗ということになりますが、そのショウナンナデシコが常にサルサディオーネを強く意識したレースをしてくるように向こうが“手強い相手”と見ている事は間違いありませんし、ショウナンナデシコ以外の牝馬には優勢の戦績。今年の舞台は得意の左回り、コースを一度経験して本番に挑める点もアドバンテージになっていいはず。★サルサディオーネ(エンプレス杯パドック) もう一頭はグランブリッジ。関東オークスを勝っただけならまだなんとも言えませんでしたがブリーダーズゴールドカップで古馬を破った、それも同斤量でというのが価値が高い。その破った相手がこれまで牝馬グレード路線で健闘してきているプリティーチャンスという点も同じくです。伸び盛りの3歳馬の勢いには要注目でしょうし、ビューチフルドリーマー直系の小岩井血統というのも注目したい所です。★グランブリッジ(ブリーダーズゴールドカップ優勝時) ショウナンナデシコは10月6日のレディスプレリュードへ、サルサディオーネは9月28日の日本テレビ盃を経るかJBC直行か、グランブリッジはJBC直行。というのがそれぞれの現時点での今後の予定。JBCまでに一度使うかどうかの違いがあるにせよ、この3頭が相まみえるとすればそれは本番・JBCレディスクラシックになりそうですね。 その他の馬たちはどうでしょうか? 近年のJBCレディスクラシックでの有力馬の前哨戦はやはりレディスプレリュードが主流でそれに次ぐのがブリーダーズゴールドカップやスパーキングレディーカップ。日テレ盃からというのは昨年のサルサディオーネがそうでしたけども牝馬のローテーションとしては主流ではない。白山大賞典からという路線もなきにしもあらずですがこれも多くはないですね。 とすればこれまでの牝馬グレード路線で健闘してきた馬。レーヌブランシュ、プリティーチャンス。あるいはマーキュリーカップ2着からブリーダーズゴールドカップ3着と存在感を見せているテリオスベルか。★テリオスベル(マーキュリーカップパドック) ただしこれらの馬たちの次走はいずれもレディスプレリュードの予定。そこでもショウナンナデシコが強力な走りを見せて勝つようなら本番前に力関係が定まってしまう可能性もあります。 「なにか現れないか」という予感というか怖さというかはまだありますよね。昨年のJBCレディスクラシックを制したテオレーマ、一昨年のレディスプレリュードを制したマルシュロレーヌはいずれも前年の同じ時期には重賞に出た事もない条件馬だったのが、半年かそこらの間に一気に頂点にたどり着くような成長をみせました。今年で言えばそれがショウナンナデシコなのでしょうが、まだ他にもいるのでは・・・と期待したい気持ちもあります。 まずはこれらの馬たちが無事に、そして好調で、11月3日の盛岡に登場してくれる事を期待しつつ。
2022年09月01日
木曜担当のよこてんです。 岩手競馬の“20走ルール”・“15走ルール”、耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。岩手競馬ファンが長くなった方ならどこかで聞かれたことがあるでしょう。調教師さんや馬主さんなら必須レベルかもしれません。 地方競馬各場それぞれに格付けの条件があって、それが競馬場毎の個性であり特徴ともなっていて、“馬にとって手頃な転入条件になる競馬場はどこか?”を見極めるのが調教師さんや馬主さんの狙い所・手腕の見せ所でもあります。 岩手競馬の場合は一般に“20走(ルール)”・“15走(ルール)”と呼ばれるのがそれ。 例えば今年度(令和4年度)の場合は在籍馬については『令和3年度第10回水沢競馬初日前日以前15競走における本賞金(15競走に満たないものは、その合計額)』、転入馬については『令和3年度第10回水沢競馬初日前日以前20競走における本賞金(20競走に満たないものは、その合計額)』がベースとなって、その後に獲得した本賞金額の積み重ねで格付け(クラス)が変動する仕組みになっています。 ここで出てくる『令和3年度第10回水沢競馬初日』は3月開催の行われた3月11日。なので3月10日までの20走分(転入馬)・15走分(在籍馬)の賞金額で令和4年度の最初のクラスが決まる・・・という事です。 例としては、ディーエスプルーフという馬を挙げてみましょう。 水沢・伊藤和忍厩舎所属の同馬は昨年冬に金沢競馬から転入。その時点ではJRA時代の賞金のほとんどが格付賞金に入ったので(※なおJRA所属での賞金は20%のみ加算)A級に編入されていました。★今年3月11日の水沢2R。このレースの格は「C2八組」、ディーエスプルーフの前走はA級 しかし年が変わって3月11日に出走したディーエスプルーフはC2級の九組というC2でも下の方に登場しました。これは“今年3月10日以前”の15戦では金沢時代の5着1回・8万円の賞金のみしかなかったため。そのため前走がA級格付けだった馬がC2級のレースに出てきたわけです。★3月11日は2着だったディーエスプルーフは3月21日の同じくC2級八組戦を快勝。水沢では7戦5勝2着2回の成績でB2級まで“再出世”しました 3月頃のC2級ではこのように前走がA級・B1級という馬を見ることが珍しくありません。降級馬を狙うのが馬券のセオリーにもなっているのは皆さんも実感されているとおりでしょう。 以前は春の開幕時のみにおいてこの“20走(ルール)”・“15走(ルール)”による再計算があったのですが、それだけでは転入馬の条件が厳しくなるという事から、近年は転入馬に限り夏にも再計算のタイミングを作りました。 昨年度であれば『令和3年度第5回盛岡競馬初日前日以前20競走における本賞金(20競走に満たないものは、その合計額)』、つまり2021年の8月22日(令和3年度第5回盛岡競馬初日)の前日までの20走分・・・というところに再計算の機会がありました(※先に挙げた例のディーエスプルーフも転入当初はこちらのタイミングで計算された格付賞金が適用されたものです)。 さて今年は。 今年度は、ここまで挙げた「春の特別開催までの20走分(転入馬)・15走分(在籍馬)」、「夏のある時点での20走分(転入馬)」に加えてもうひとつ、新しいルールが設定されました。 『在籍馬(通算12開催以降)/令和4年度第5回盛岡競馬初日前日以前12競走における本賞金(12競走に満たないものは、その合計額)と当該年度における本賞金との合計額とする』。“12走ルール”です。 以前の夏に設定されたものは転入馬に対してのもの。在籍馬、既に岩手競馬に移籍済みの馬にとっての再計算のタイミングは事実上春先の一度のみ、そこで決まったクラスを基準に1シーズン戦うことになっていました。 それが今年度から、夏の終わりのタイミングの、それも12走という出走数で、各馬の格付けが再計算されるのです。 基準日は8月20日。この日までに岩手競馬に在籍している馬はそれ以前の12走分の成績(正確には「8月20日までの12走分」+「5回盛岡開催での賞金額」)をもってクラスが変わります。次開催(9月4日~)からがその大変動。今開催あるいは前回の開催時では例えばA級で走っていた馬が次開催ではC2級に降級している・・・という例が多数現れるはずです。 競馬新聞等を細かく見ていた方は気づかれているかもしれません。今季前半は“ここまで10走くらい賞金を稼いでいない馬”の転入が非常に多かった。それはこの12走ルールを見越した馬探しが活発に行われていたから。 これまでは春のセオリーだった“降級馬を狙え”が夏にも重要になってくるという事になりますし、例えば調教師リーディングとか騎手リーディングにも影響が出てくるのではないでしょうか。 15走あるいは20走となるとクラスによっては2年近くの期間が対象ですが、12走なら早ければ半年。半年間不振が続いたら降級して再出発のチャンス・・・となるのは上のクラスで苦戦している馬にとっては朗報になりますし、厩舎サイド・馬主サイドから見ればちょうどいい条件に当てはまりそうな馬を探すというモチベーションになる面もあるでしょう。 一方で“都合が悪い馬”も出てきます。岩手競馬は設定する各クラスのレース数を満たすように格付けする一種の相対クラス制をとっており、A級・B級・C級の各頭数がおおむね1:2:3の割合になるよう振り分けられます。 つまり、上のクラスから下のクラスに下がる馬がいれば下から上に上がる馬もいるということ。12走ルールで降級するA級馬にとっては良いルールになるでしょうが、B級あたりからA級に上がる馬にとっては、そこには普通にA級で好走していた馬が残っているわけで、ありがたいとはちょっと言いづらいですよね。また、降級してみたらまわりは同様に降級した馬ばかり、戦う相手はほとんど変わらない・・・という組み合わせになる場合も起こるでしょう。 そしてもうひとつ。例年ならこの時期に行われていた3歳馬の古馬編入ですが、今年はこのクラス替えを行う影響で時期が後ろにずれて10月に行われます。 9月に入ってすぐ古馬のクラスがガラッと変わり、一ヶ月して落ち着いてきたら今度は3歳馬が古馬編入されてまた顔ぶれが変わる・・・。この先しばらくは予想に悩む日々が続くのかもしれません・・・。
2022年08月25日
木曜担当のよこてんです。 今回は8月前半の話題を2点書いてみたいと思います。 まずは8月16日に行われたダートグレードレース『クラスターカップ』の結果から。当初はJRA勢5頭・地方他地区勢5頭・地元4頭の14頭立てだったのがレース当日にJRAリメイク号が競走除外(※馬券発売開始後の出走取消)となって13頭立てに、またJRAリュウノユキナ号に騎乗予定だった柴田義臣騎手がJRAのレースでの負傷のために村上忍騎手に乗り替わりになって・・・という状況でのスタートとなりました。 優勝したのは3番人気のJRAオーロラテソーロ。ハナを奪ったジャスティンの2番手追走から直線先頭、そのまま押し切る危なげの無い勝利は自身待望の重賞初制覇となりました。★クラスターカップ優勝/オーロラテソーロ号 今年のクラスターカップのキーワードを挙げるとすれば「雨」でしょうか。盛岡競馬場は前日午後から強い雨が降り、8月16日も降ったりやんだりの空模様。それでも後半戦に入る頃にはコースに浮く水も消えるくらいにはなっていたのですが、クラスターカップのパドックで馬が回り始めてしばらくした頃に土砂降りと言いたくなるくらいの強い雨が。返し馬に出る頃には収まったので実質20分ほどの雨ではありましたが、コースは一面水が浮くような状態になっていました。★クラスターCのパドックの時間帯にちょうど強い雨に★返し馬の頃には雨は弱まりましたが、水を蹴散らしながら走るようなコース状態になっていました 圧倒的と言っていい1番人気に推されていたダンシングプリンスが出遅れたのもこの雨による馬場悪化で踏ん張りがきかなかった影響はあったでしょうし、ダンシングプリンスが出遅れた事で先行勢のペースが落ちついてスローペース、上がり勝負の形にもなりました。 今年の優勝タイムは1分9秒4。二つ前のC1級戦で1分11秒9が出ている事を思えば決して“速い”と言える時計ではありません(1分11秒9はクラスターカップの7着相当になります)。2着リュウノユキナも上がり3ハロン34秒4、ダートでは自身最速の末脚を繰り出しているのですが、ゆったりマイペースで行けた先行馬に、勝ち馬34秒4、逃げたジャスティンに35秒0の脚を使われてはどうしようもなかったでしょうね。 ダンシングプリンスが出遅れた結果のこの展開、その出遅れを招いたのが突然の驟雨。という事なら、今年のキーワードは「雨」だったと言っていいのではないかと思います。 さて、勝ったオーロラテソーロですが、レース後の畠山調教師も「11月3日に盛岡に戻ってきたい」と言っていたように盛岡JBC・JBCスプリント出走を強く希望していますが、実際のところ、クラスターカップを勝ってなお賞金額では心許ない位置にいます。 畠山調教師は「これまでも何度もグレードレースに申し込んできたが賞金が足りなくてかなわなかった」とも言われていました。昨年のクラスターカップがそうで、オーロラテソーロも申し込みがあったのですが補欠から繰り上がる事ができませんでした。 その後オープン特別で2勝した事でJpn3レベルだと選定枠に入る位置まできました。ここで重賞勝ちの賞金も加えた。しかしJpn1となるともっと賞金を持っている馬が出てくるだけにこれでもまだ確実とは言えない。次走予定の東京盃でどれだけ上位に食い込んで賞金を積み重ねられるか?それがこのあとのひとつの山場になるはずです。 リュウノユキナは2着だった東京スプリント、3着だった北海道スプリントカップいずれも力負けという感じではなかっただけに、今回も展開で負けた感じになったのが惜しかったですね。★リュウノユキナ(パドック) 今年のここまでのローテーションは昨年とほぼ同じ。このあとも昨年同様に東京盃を挟んでJBCに向かうか直行になるか。中間がいずれになるにせよ、1200mになる今年のJBCスプリントは1400mだった昨年よりもこの馬にとってはずっと良い条件だけに、リュウノユキナも今年はぜひ出たいところでしょう。 ダンシングプリンスにとっては雨があと30分早く降るかあるいは30分遅く降るかだったら結果も変わっていたかもしれません。とはいえそれは“たられば”。次戦はJBC直行予定、今回の雪辱を果たせるとしたらそれは彼自身の力によってのみ。★ダンシングプリンス(パドック) 今年のダートスプリント路線はここまで混戦が続いています。1200m路線に進むテイエムサウスダン、3月のドバイ以降出走していない昨年のJBCスプリント勝ち馬レッドルゼルといった今年ここまでのスプリント路線には加わっていない馬、あるいはシャマルのような上がり馬、さらにはマイル路線からスプリントに進んできそうな馬もいます。JBCスプリントの勢力図はまだまだ定まりそうにありませんね。 さてもう一つの話題は8月9日の第9レース、JRA交流『フレンドリートロフィー エメラルド賞』。遠征のJRA騎手はいずれも盛岡初参戦、それも芝レースということでどんなレースを見せてくれるのか楽しみでしたが、結果は今村聖奈騎手騎乗のフローレンスハニー号が1着、加藤祥太騎手騎乗のタイニープライド号が2着、古川奈穂騎手騎乗レーヌデゼトワール号が5着と揃って上位を確保しました。★フレンドリートロフィー エメラルド賞/優勝フローレンスハニー号 今村騎手の落ち着いた騎乗ぶりはやっぱり目を惹きましたね。レースの前に芝コースを歩いて確かめてみたり、他のレースを見て研究してみたり・・・というのも、条件交流で来る若手騎手でやっているのをあまり見た事がない。★芝コースを歩いてみたり★ダートのレースも間近で見ていたり 頭の中が競馬漬けなのか・・・というと失礼な感じに聞こえるかもしれませんが、競馬の事をずっと考えているような印象をうけました。見ていて山本茜騎手を思い出したなあ。 古川騎手は、岩手でというか日本で見るのは実は今回が初めてだったのですが、3年前、オーストラリアでその姿を見ていました。★2019年コックスプレート、ムーニーバレー競馬場での古川候補生(当時) リスグラシューを豪・コックスプレートに遠征させていた矢作厩舎。当時候補生だった古川騎手もレース当日は現地に帯同して、レース前の準備を手伝ったり表彰式に一緒に並んだりとしている姿がありました。現地取材の日本のマスコミの間でも「あの子が今度デビューする古川さんか」と話題になっていましたね。久しぶりに姿を見て、候補生時代とは表情が違う、プロの顔つきになったなと感じました。 海外では、と“出羽守”な事を言うと、海外にはG1を勝ちまくるような、リーディングを獲るような女性騎手も珍しくはないですから、日本の女性騎手はまだまだこう何というか“アイドル”っぽい扱いが先に立っているように感じます。ですが近年の女性騎手はJRA・地方問わず以前よりも逞しくなっているようにも感じますね。少しずつ変わってきている手応えがある。今の女性騎手にもこれからデビューする女性の候補生達にも新しい時代を切り開いていってほしいと思うし、それだけの力がある騎手ばかりだと自分は思っています。
2022年08月18日
木曜担当のよこてんです。 度々書くのが遅くなって申し訳ありません。すっかり速報性がなくなっていますが、今回は8月11日に門別競馬場で行われた牝馬のグレードレース『ブリーダーズゴールドカップ』のお話です。 今年のブリーダーズゴールドカップはJRA勢5頭、遠征馬は大井から1頭、それを迎え撃つ地元馬6頭の12頭という構図でした。1番人気はテリオスベル、2番人気はプリティーチャンス、3番人気はグランブリッジといずれもJRA勢。4番人気・5番人気もJRA馬で単勝人気上位はJRA勢が占める形。 テリオスベルは前走となったマーキュリーカップでの好走が高く評価されました。出走馬中唯一の牝馬だったマーキュリーカップでは52kgという軽ハンデを利して他馬の意表を突くマクリ戦法。結果こそ2着に終わったもののゴール寸前まで先頭を守るあわやの走りは印象的でしたし、その記憶が新しいここで人気を集めるのも当然だったでしょう。 2番人気プリティーチャンスはまだ重賞タイトルを手にしていませんが、昨年12月のクイーン賞3着、今年3月のエンプレス杯5着だけでなくアンタレスSでは12番人気4着と牡馬の中で健闘。牝馬路線の有力馬の一角に伸びてきた馬。 そして3番人気グランブリッジは自身初めての重賞挑戦だった関東オークスを制したシンデレラホース。若さと勢いが魅力だったでしょう。★プリティーチャンス返し馬。水が浮く馬場状態となっていました 当日の門別競馬場は前日の雨の影響で重馬場からのスタートでしたがメインレースが近づくにつれ雨が強まり、ブリーダーズゴールドカップ発走の頃にはコースの各所に水が浮いた場所が拡がるほどの不良馬場となりました。そんな状況下で行われたレースは道中4番手追走から4コーナーで先頭に立つ形になったグランブリッジがプリティーチャンスの追撃を振り切ってゴール。自身2つめの重賞タイトルを初挑戦の古馬混合戦で獲得してみせました。★ブリーダーズゴールドカップ優勝/グランブリッジ グランブリッジのこの勝利は二つの視点から「素晴らしい」と言いたいと思います。 まず一つ目は“レース史上初の3歳馬による制覇”。少し古いファンの方ならご存じのようにブリーダーズゴールドカップは元々はJRA・地方交流競走として設立され、1997年にはG2に格付け。真夏の中距離決戦として親しまれまた重要な位置づけにありました。2014年からは牝馬限定のJpnIIIとなりそれ以前のようなG1級の牡馬がやってくる路線からは外れたものの、例えば昨年の優勝馬マルシュロレーヌが後にBCディスタフを制したように、ダート牝馬路線の中で改めて重要なポジションを占めつつあります。 そんなレースの歴史の中で4歳馬(あるいは旧年齢表記で5歳馬)が勝った事は数あれど3歳馬の優勝はこれまでなかった。34回にして初めての3歳馬の勝利はレースの歴史に新しいページを加えるものになったはずです。★引き上げてきて笑顔の福永騎手。表彰式では「妻の誕生日に勝てて来た甲斐があった」と ただ、ブリーダーズゴールドカップが牝馬限定戦になって以降、関東オークス優勝からここへ進む路線は珍しくなくなっていたし2着・3着に食い込む事もまた珍しくはなくなってきていた。ある意味“時間の問題”となりつつあった3歳馬の勝利だったわけで、今後は珍しくはなくなるのかも、このレースの中心は3歳馬だと言われるようになるのかもしれませんね。 もう一つは血統。グランブリッジの母系をたどっていくと1962年のオークス馬オーハヤブサに、さらにはカブトヤマやフアインモア(いずれも戦前のダービー馬)の全妹に当たる第参アストラルにたどり着きます。 第参アストラルの曾祖母はあのビューチフルドリーマー。逆から言うと、ビューチフルドリーマーを祖母とするアストラルにシアンモアをつけて生まれたのが第参アストラル。つまりグランブリッジはバリバリの“小岩井血統”の出なのです。 マルシュロレーヌも母系の方にトサミドリとかクモハタとか出てくる渋い血統ですし昨年の関東オークスを制したウェルドーンは小岩井牝馬ではないものの東北系の牝馬に小岩井種牡馬や御料牧場種牡馬をつないできた母系。もしかしてダート牝馬路線はこういう血統が“来て”いる?? もう一つ付け足しましょう。JBCレディスクラシックとの関連について。 ブリーダーズゴールドカップが牝馬限定になったのは2014年。同年の勝ち馬はサンビスタ。そうです。その年の盛岡JBC、JBCレディスクラシックを制した馬です。 以降、2015年アムールブリエ BGC優勝→JBCレディスクラシック4着2016年アムールブリエ BGC優勝→JBCレディスクラシック9着2017年マイティティー BGC優勝→※JBC出走せず2018年ラビットラン BGC優勝→JBCレディスクラシック2着2019年アンデスクイーン BGC優勝→※JBCクラシックに出走、8着2020年プリンシアコメータ BGC優勝→JBCレディスクラシック6着2021年マルシュロレーヌ BGC優勝→※BCディスタフへ BGC優勝からのJBCレディスクラシック優勝こそサンビスタのみですがBGC勝ち馬はJBCレディスクラシックでも好走しているといえるでしょう。グランブリッジが出走しない模様なのでここでは触れませんでしたがレディスプレリュードでの活躍例も多いです。 今年のダート牝馬路線はショウナンナデシコ一色の様相になっており、実際かしわ記念まで制した同馬の強さはもはや疑いようがないでしょう。そんなショウナンナデシコと度々接戦を演じているサルサディオーネも強い。なのでBGC優勝→JBCレディスクラシックの路線はこれまでとは違う位置づけになるのかもしれませんが、先にも触れたように小岩井牝馬、それもビューチフルドリーマー直系のグランブリッジが盛岡でのJBCレディスクラシックに出走すれば、それはやはり注目を集める存在になるでしょう。
2022年08月11日
木曜担当のよこてんです。 今回は「レコードタイム」のお話です。 7月31日に行われた芝の地方競馬全国交流重賞『せきれい賞』。船橋からの遠征馬アトミックフォースが優勝したのですが、その勝ちタイムが2分28秒5。旧レコードを25年ぶりに更新するという“快挙”になりました。★第44回せきれい賞優勝/アトミックフォース号 旧となったレコードタイム、2分29秒0が達成されたのは1997年6月22日に行われた『東北サラブレッド大賞典』、出した馬は岩手のロイヤルハーバーでした。 かつて「東北○○」とついたレースがそうだったように東北サラブレッド大賞典も岩手・上山・新潟の三場持ち回りで行われた古馬の東北交流重賞。1979年の第1回から水沢→上山→新潟と規則正しく行われてきて、“7回り目”の1997年の第19回、岩手開催の順番になったこの年、これまでの水沢から前年にオープンしたばかりのOROパーク新盛岡競馬場へ、さらにダートから芝へと大きく条件を変えての施行となりました。 そして遠征馬4頭・地元馬8頭の12頭で争われた第19回東北サラブレッド大賞典を制したのがロイヤルハーバー、勝ちタイムが2分29秒0。★東北サラブレッド大賞典、パドックでのロイヤルハーバー★ゴールの瞬間。これが25年続くレコードが出た瞬間でもありました 自分もこのレースを見ていましたけども、そのレコードタイムが25年も生き残るとは、その時はとても思わなかったですね。 ロイヤルハーバーは1993年にJRA中山でデビュー。旧4歳1月のデビューでしたので、牡馬はナリタタイシン・ウイニングチケット・ビワハヤヒデと、牝馬はベガやユキノビジン、ホクトベガと同じ世代になります。 JRA時代には交流グレード化前の群馬記念を制すなどダート戦線で活躍。97年の4月から岩手に移籍すると初戦でサカモトリードワンやプレザントを破り、二戦目のシアンモア記念では古豪ミヤシロテュードオにこそ敗れたもののヘイセイシルバーやユウユウサンボーイといったTM時代のベテラン勢に先着。トウケイニセイの引退によって生じた群雄割拠の混戦に断を下す存在になるかと思われました。 ただ、97年といえばそう、メイセイオペラ。この年旧4歳だったメイセイオペラは骨折から立ち直ると年末の桐花賞を4歳にして制覇。翌98年にはマーキュリーカップ、南部杯を、そして99年にはフェブラリーステークスを制し、岩手に留まらずダート界を代表する存在に成長していきます。 そして99年には南関東からバンチャンプが転入してきました。99年から2000年ごろの古馬重賞はメイセイオペラが勝つかそうでなければバンチャンプが勝つ・・・という状況になり、ロイヤルハーバー自身も休養が増え、98年は一戦のみ、99年は4戦のみ。99年の青藍賞でバンチャンプの7着の結果が競走馬としてのキャリアのラストレースとなりました。★97年桐花賞。先頭に立つメイセイオペラに外から追い上げるのがロイヤルハーバー 97年の桐花賞でメイセイオペラの2着に迫ったのがロイヤルハーバーでした。実は単勝人気ではロイヤルハーバーの方が1番人気、メイセイオペラは2番人気。それを見るだけでも当時のロイヤルハーバーへの評価が高かった事が十分に想像できるのではないでしょうか。97年はマーキュリーカップ5着、南部杯4着。南部杯は地方馬最先着でしたし、この年のロイヤルハーバーは遠征勢を迎え撃つ岩手のエース格だった・・・と言っても過言ではないはずです。★桂樹杯優勝時のロイヤルハーバー。父アスワン・母父ハードツービートという血統はファミコン時代のダビスタ感があって懐かしい 結果的にはロイヤルハーバーが岩手で勝った重賞は東北サラブレッド大賞典のみ。もっとタイトルを獲る事ができる力があっただけにちょっと惜しいと思う感覚が今でも残ります。ただ、タイミングもちょっと、運が悪かったかもしれませんね。★東北サラ大賞典、ロイヤルハーバーにまたがる草地神。若い!(当時25歳) ロイヤルハーバーの話が長くなった。レコードのお話です。 「盛岡芝2400m」の条件はORO開業の96年にはまだなくて、97年になってから登場した条件です。東北サラブレッド大賞典と、その前哨戦となる特別戦「桂樹杯」の二つが芝2400mのレースとして設定されました。 そして96年に行われたのは芝の特別戦のみだったので、東北サラブレッド大賞典が“ORO開業後最初の芝重賞”でもありました。 ついでにちょっと脇道にそれるとですね、このレースが鞍上・草地保隆騎手の初重賞勝ちだったそうです。 さて、芝2400mのレコードが長く残ってきたことには二つの理由があると思います。一つは「レース数」。97年はこの2レースだけ、98年は桂樹杯のみがこの距離条件でのレースに。99年に岩手県知事杯OROカップが芝2400mで新設されて桂樹杯がその前哨戦となりましたがそれも長くは続かず、2001年に芝1700mの条件が設定された事でこの両レースが1700mに短縮されて2400mのレースはいったん姿を消します。復活したのは2003年。シーズン前半にかきつばた賞(特別)-せきれい賞(重賞)が2400mで設定されて、この路線が今に続く事になります。 2007年には秋の2400m戦として「きんもくせい賞」が新設されましたが3年目に1000mに短縮。後のOROターフスプリントへと変遷していきます。 同じく2007年には3歳馬の芝2400m戦として「サファイア賞」が新設されています。こちらは重賞→準重賞→重賞と格付けを変えながらも今も存続していますね。 要は“そもそものレース数が少ない”。年に二戦程度の条件、走ったら次は来年・・・となるのでは走る方もそのたびに手探り。ガンガン時計を出していこうぜ・・・とはならないでしょう。 もう一つは“芝の状態の変化”。旧レコードが出た97年はORO開業2年目。完成から間がないこの頃の芝コースは状態が非常に良かったと言われています。芝1000mのレコードも96年に出されたものが長く破られませんでしたし、芝1600mのレコードも99年のものが今でも残っています。昔出たようなタイムはなかなか出ない・・・とずっと言われていたものです。 芝コースは使えば痛むので、例えばJRAの競馬場がそうするように何年か毎に全て剥がして地盤から作り直して・・・ができれば、それこそ開場当時くらいに戻るのでしょうけども、盛岡ではなかなかそうもいかないですね(芝レースを2年くらい休まないといけないとか)。 もう一つ付け加えるとしたらやはり“馬のレベル”になるでしょうか。せきれい賞に限らず初期の芝重特ではJRA未勝利とか500万下とか、そもそも初芝とかいう馬がメンバーの中心でした。今やJRA時代はオープンだとか、重賞で上位どころか優勝経験ありという馬も珍しくなくなりました。全体的なレベル、層の厚さ。これは毎年高く、厚みを増しているのは確かだと感じます。 一方で今年は、去年もそうでしたが、時計が出る馬場になっています。少々雨が降っても時計が出る。“今の盛岡は芝適性よりもスピード優先”みたいな事を芝の解説が当たった時には良く言うんですけども、なんにせよ時計が出る。 なので、例えば先日のオパールカップではウンが芝1700mを1分43秒6のレコードで勝ちました。馬場状態は稍重。実はその一週前のかきつばた賞でも同じ芝1700mで1分44秒0の好タイムが出ています。その時も稍重でした。 それまでのレコードは2013年のOROカップでナターレが出した1分43秒7なのですが、良馬場で、勝ったナターレは牝馬とはいえ古馬オープン級の交流重賞で、それで出たレコードを3歳馬が稍重馬場で更新するのですから、“速い馬場”という事になりますよね。★盛岡芝1700mの旧レコードホルダー・ナターレ(上)と、新レコードホルダー・ウン(下) なので、メンバーが揃ってきている・馬場も時計が出るという今年のせきれい賞の状況でなら、レコードが出ても決して不思議ではないとは思っていました。9月くらいになるとさすがに時計が落ちてきますからね。去年もそうでした。レコードが出るとしたら今、みたいな。 さて、先ほど「長らく破られなかったレコード」が芝にはもう二つあるといいました。 芝1000mのレコードは現在は2017年のハーベストカップでコウセンが出した57秒7ですが、旧になるレコードは1996年にカツヤマリュウホーが出した57秒8。21年にわたって君臨し続けました。★カツヤマリュウホー/やまびこ賞優勝時。芝レコードの時も見てはいましたが写真は撮っておらず これも、以前は2歳戦くらいでしか使用されなかった芝1000mという条件が今は古馬の重賞も設定されているので更新は時間の問題と見られていました。 今年も6月28日の盛岡開幕週の芝1000m、B1級戦で58秒1という高速タイムが出ています。今の時期にもし古馬の芝1000mでオープン級のレースがあったら、57秒7も破られていたかもしれません。秋口に入るOROターフスプリントではちょっと遅いかな。ハーベストカップがギリギリのタイミングかも。 古いレコードが次々更新された今なお残るのが芝1600m、1999年にロイヤルスターが出した1分36秒2です。 ロイヤルスターは岩手生え抜きでデビューが盛岡芝1000m。盛岡芝で10戦7勝、キャリア末期の一戦を除いて盛岡の芝では掲示板を外していないという典型的な“盛岡芝巧者”でした。1600mのせきれい賞も、2400mのOROカップも両方こなすような実力馬でしたしレコードタイムを守っている点に不思議は無いですが、果たしてこのレコードが破られる日が来るのでしょうか?★ロイヤルスター レコードの時は写真がなかったので2000年OROカップの際 速い時計が出る今年や昨年の芝とはいえ、こと1600mに限っては昨年の最高タイムが1分37秒2、今年ここまでのそれは1分37秒3。レコードにはまだ1秒の差があります。 現在のレース体系ではオープン級古馬の芝戦は1700mが主流で1600mのレースは少なくなっており、古馬芝1600mの重賞は「いしがきマイラーズ」のみで、あとはOP特別がいくつか設定されるかどうか。そしていしがきマイラーズは今のところ後半戦に組まれているので高速決着の可能性は低め。 とすると、いしがきマイラーズが前半戦に移動するあるいは通常夏場に行われる桂樹杯が1700mから1600mに短縮されるか、はたまたあるいはかつてのネイティヴハートのような2歳芝G1を狙えるような馬が地方から現れてジュニアグランプリにやってくるか。さらにはたまたいえば芝コースの全面改修が行われるか。いずれにせよいくつか条件が重ならないことには芝1600mのレコード更新は難しいのではないか・・・と思います。 盛岡に残る“一番古いレコードタイム”はこの芝1600m・・・で、いつまでもあり続けるのかもしれません。
2022年08月04日
木曜担当のよこてんです。 また書くのが遅くなり申し訳ありません。今回は、そんなこんなで若干時系列がずれているのが分かるかもしれませんが、久しぶりの岩手からの遠征馬のお話です。 5月のシアンモア記念3着、6月のみちのく大賞典では2着に食い込んだ牝馬のゴールデンヒーラー。次戦に選んだのは8月2日金沢での『読売レディス杯』となりました。 この稿を書いている時点では枠順まで決まっているのですけれど、主戦・山本聡哉騎手を背に昨年12月のクイーン賞以来の遠征競馬に挑みます。 という事でまずはゴールデンヒーラーの近況について同馬を管理する佐藤祐司調教師にお話をうかがいました。-みちのく大賞典後に読売レディス杯を選ばれた理由を聞かせてください「ゴールデンヒーラー本来の距離適性を考えてみて、マイル前後中心にとずっと考えていました。2000mのみちのく大賞典を使うのも迷っていた部分がありましたからね。 前走後に使うレース、牝馬のレースをピックアップしてみて、川崎のスパーキングレディカップから始まって門別や金沢、名古屋とあったのですが、門別の方はちょっと距離が長いかなとも思いました。1500mの金沢遠征は考えていたとおりの距離のレースです」★今季の白星はまだひとつだけだが、それが牡馬を相手に8馬身差の圧勝。やはり力はあると再認識させる勝利だった(3月29日桃花特別)★みちのく大賞典では2着に粘った-2着になったレースからは距離短縮になりますが、ずっと適距離になるだろうという事ですね「グレードレースでは無いですけどもグランダムジャパンの交流重賞になりますから、メンバーも強力ですしそう簡単な話ではないでしょうけども、どの辺まで通用するか?の立ち位置を確認したいと思いますし、ローテーション的にも良い間隔になるのも選んだ決め手になります」-昨年のクイーン賞を見た感じ、JRA勢はともかくとして地方馬同士なら・・・という手応えはあったのでは「結果は7着でしたが4着5着からは3馬身ほど。この馬本来の形の競馬ができていれば・・・とは思いますね」★21年クイーン賞/一周目のスタンド前を通過するゴールデンヒーラー-今回は真夏の長距離輸送になります。暑さの影響はちょっと心配しています「去年のクイーン賞の時も、普段の盛岡に輸送する時なんかもそうなんですが、輸送でイレ込んだり身体を減らすタイプではないのであまり心配はしていません。輸送に関しては他の遠征馬も同じ条件ですしね」-気が早いですが金沢のあとはどの路線に?「ビューチフルドリーマーカップは2000mという距離が、先ほどもお話ししたように長いと思うので、マイルあたりのレースを選んでいくつもりでいます」★担当は大ベテラン・渡邉正彦厩務員。騎手時代はメイセイオペラに騎乗して勝った事もあるんです ゴールデンヒーラーにとってはクイーン賞以来二度目の遠征で金沢は初めて。佐藤祐司調教師にとってはエンパイアペガサスで挑んだ2019年北國王冠以来の金沢になります。 真夏の金沢はやっぱり暑くて、自分は一昨年のイヌワシ賞、ランガディアはやっぱり暑さが応えたな・・・という印象が未だに強いです。 自分も見に行きたかったんですけども当日は地元でフェアリーカップがあるので岩手から見守ります。まずは無事の遠征を、そしてレースを。岩手に帰ってくるまでが遠征ですからね。 遠征馬のお話はもう一頭。シアンモア記念でゴールデンヒーラーらを破っているヴァケーションが8月25日に川崎競馬場で行われる『スパーキングサマーカップ』に遠征を予定しています。 岩手に移籍して久々の重賞制覇、そしてマーキュリーカップでは3着、地方最先着のみならず久しぶりの“生え抜き地方馬”の馬券圏内突入も果たし復活からの上昇ムード著しいヴァケーション。レースまではまだ少し時間がありますが近況などを畠山信一調教師にうかがいました。★シアンモア記念を制したヴァケーション。自身1年7ヶ月ぶりの勝利だけでなく木村暁騎手に初重賞をプレゼント-ヴァケーションが岩手に来てからは初めての遠征、同馬としても久しぶりの遠征競馬になりますね「川崎のスパーキングサマーカップに遠征しよう・・・というのは実はこちらに来た当初からオーナーさんとも話し合っていたんです。ローテーションも、ならそこに合わしていこうと考えていました。マーキュリーカップを使う事によって“その内容次第”という部分が出てきたのですが、3着に頑張ってくれましたからね。この内容ならば遠征でも・・・という事になりました」★みちのく大賞典は3着だったが、2000mでのこの結果がマーキュリーカップにつながった★マーキュリーカップ、返し馬に出るヴァケーション-岩手に来てからのヴァケーションですが、やはり状態は安定している、良くなっていると見ていていいでしょうか?「これはもう担当者がね、上手くやってくれています。馬の状態をよく見て調整してくれていますから、良い意味でね、落ち込む事無く良い状態を保ってくれていると思います。高月調教師が、こちらのレースを見に来てくれて“馬の状態が良くなってるな”と言ってくれていますしね。今回のレースに関しては暑い中の輸送であったりまた別の要素が出てくるので今まで通りとはいかないかもしれないですけれど、馬の状態としては良くなっていると思っています」★ヴァケーション担当の川嶋学厩務員はかつてメイセイオペラの半弟メイセイユウシャを担当していた。ゴールデンヒーラー・渡邉正彦厩務員とはある意味“メイセイつながり”-最近の状態などは?「暑くなってきましたが今のところ順調かな。暑さに弱いという感じはそれほど無いですけども、急に暑くなって来たし、暑さが負担にならないよう気をつけています」-ちょっと気が早いですが川崎のあとのローテーションは考えられていますか?「川崎のあとに青藍賞は間隔が短すぎるから、そうですね、南部杯に直行してJBC、そのあとは馬の状態と馬場の状態を見ながらになるかなと考えています」 畠山信一調教師の遠征は久しぶりじゃないかと思っていつ以来ですか?と聞いてみたら「笠松以来」。調べた所カネショウエリートで出走した2009年の笠松・オグリキャップ記念でした。13年ぶり! ヴァケーションは川崎デビューで川崎のJpnIを勝った馬ですから、川崎遠征はある意味“里帰り”。もちろんそれだけに留まらず、岩手で復活した同馬が故郷に錦を飾る形になったらなおいいですよね。こちらはまだ4週間ほど先の話、急に猛暑のようにもなってきましたし、まずはこの間順調に過ごせる事を祈っております。
2022年07月28日
木曜担当のよこてんです。 今日のお話は18日に行われたダートグレードレース『マーキュリーカップ』の振り返りです。 まず結果から始めますと、勝ったのは2番人気のJRA・バーデンヴァイラーでした。2着も同じくJRA・テリオスベル、そして3着に10番人気!の岩手・ヴァケーションが食い込み、馬番3連単の配当は63万5880円、マーキュリーカップ史上最高配当ともなりました。★第26回マーキュリーカップJpnIII/優勝バーデンヴァイラー 今年のマーキュリーカップはJRA勢・地方勢ともに先行タイプが非常に多いと見られていました。人気を集めていたのもそんな先行タイプのケイアイパープルであったりノーヴァレンダであったり、メイショウカズサだったりしました。 バーデンヴァイラーもその中の一頭だと思われていて、そんな先行タイプ同士のポジション争い、いわば“自分の競馬ができるかどうか争い”がどうなるのか?が今年のレースの一つの焦点だったんですけれども、バーデンヴァイラーは敢えて先行争いに飛び込まず控える形の競馬を選択。途中、これもやはり逃げ馬の一角とみられていて同様に控えていたテリオスベルの意表を突くマクリへの対応をしなくてはいけなかったそうですが、終わってみれば好位差し、差し競馬と言っていいような戦い方で勝利を手にしました。「いつもとは違う形の競馬をしてみようと考えていた」とレース後に語っていた福永騎手でしたが「最初からクリアしてくれるとは思っていなかった」とも。結果的に課題を見事クリアしたものの展開によっては、場合によっては上手くいかない可能性も無いわけではなかったはず。例えば前走のようにですね。それをクリアしたのが馬自身の地力であり勢いであり、導いた鞍上の好判断という事なのでしょう。 バーデンヴァイラーは2歳11月から3歳7月まで長期休養がありましたが、その後はダートに主戦場を変えつつ順調にクラスを上げてきました。半姉は昨年のBDディスタフを制したマルシュロレーヌ。祖母が1997年の桜花賞馬キョウエイマーチなんですが、この血統、ダートで走る馬も少なくないんですよね。★半兄にあたるグレナディアーズはキャリア末期を岩手で過ごして1勝を挙げています 自身の初重賞勝ちがマーキュリーカップという馬はまずまずいて、昨年・一昨年連覇したマスターフェンサー、2017年・18年と連覇したミツバがそうですし、ちょっと前だとマコトスパルビエロ、シャーベットトーン。ディーエスサンダー、ミラクルオペラなんかもそうですね。ただそれらの馬は以前にもなにがしかダートグレードレースに挑んで掲示板圏内の結果を残していました。バーデンヴァイラーのようにグレードレース2度目、それも大敗からの勝利というパターンは意外にレアパターンです。 先に挙げた馬たちはその後もグレード勝ちを増やす、G1を勝ち負けするというところまで出世しています。“レアパターン”なバーデンヴァイラーですがその分伸び代が大きいともいえるでしょうし、レース後に齋藤調教師が言われていた「偉大な姉に近づけるような馬になってほしい」という願い、バーデンヴァイラーの戦いの道のりはまだ始まったばかりなのでしょうけども、今後の活躍が楽しみなのは間違いありません。 2着のテリオスベルはベテラン騎手らしい奇襲というか絶妙の判断というか。見せ場たっぷりのレース内容は、こちらが勝っていても何ら不思議では無いと感じさせるものでした。 同馬の前走は東京ダート2100mのスレイプニルステークス。この「東京ダート2100m」とマーキュリーカップとの関連性の強さは無視できないものだとこれまでも何度も言ってきたのですが、自分は10番人気1着という結果に少し甘く見てしまいました。データや傾向をさじ加減で取ったり捨てたりしてはいけないと改めて反省。 そして3着に食い込んだ岩手のバケーション。みちのく大賞典3着からの転戦、2000mは距離は少し長いけれども動きが良くなっているし左回りの方が良さそう・・・というのが陣営の戦前のお話。単勝10番人気から3着という結果ではありましたが自分はフロックでは無いと思っています。 同馬を管理する畠山信一調教師によれば次戦は遠征を選択する模様。マーキュリーでの走りを見て決めたいというお話でしたので、3着で“これならば”という事なのでしょう。 4着のケイアイパープル。レース当日に鞍上が地元の山本政聡騎手に乗り替わりになって注目度がより増した印象がありました。昨夏以来5着以下が無いという近走成績もあって人気を集めたわけですけれども、結果的には先行タイプが多い中で自分の形に持ち込めず・・・になったのかなと思います。 この馬の“自分の形”はすんなりハナを切って粘る・・・ではなくて、他の馬と競り合いながら、追って追って抜け出して追って追って勝ちきる・・・だと思うんですよね。なかなかその辺はテン乗りでは形にしづらい部分では。結果的には先行した馬の中では最上位だったわけですし、人気に応えられなかったのは残念ですけども、こういうタイプの馬としてはひとまず力を出し切っているのではないでしょうか。 南関勢はグレード勝ち馬もいて粒ぞろいだと、特に直前の帝王賞に出走した南関勢が少なかったこともあり、こちらに照準を絞ってきたのかなとも思って見ていたのですが、終わってみればギガキングの5着が最高に。南関勢も先行タイプが多かったですから展開面が厳しかったという事でしょうか。 ところで、レースとしては固い決着が多い印象のマーキュリーカップ、昨年までの過去5年間も三連複・三連単が組み合わせ1番人気とか2番人気とかで決まっていて、2015年にユーロビートが勝った時の11万2860円、翌2016年にタイムズアローが2着に飛び込んで17万9810円になった時なども“そうとう荒れた”感がありましたが、今回はそれらを大きく上回る配当に。三連複の14万5300円ももちろんマーキュリーカップでの最高配当です。 さらに余談になりますが、マーキュリーカップで単勝10番人気の馬が馬券対象になったのは2000年の第4回、3着に突っ込んだミストフェリーズ以来。ワイド万馬券が出たのもその時以来となりました(今年のワイド1-2、2万950円も第4回の1-10、2万10円を超えていますね。ん?その年も1番・・・。そういえばタイムズアローも1番・・・)。 ノーヴァレンダについても触れておきたいと思います。レース直後にSNS等で伝わった形でしたが、マーキュリーカップを8着で終えたノーヴァレンダはレース後に心臓麻痺で倒れ、そのまま亡くなってしまうという悲しい結末になってしまいました。★一周目スタンド前を先頭で通過するノーヴァレンダ号 自分はそのレースから引き上げてきた所の写真を撮っていたりして、普通に帰って行ったように思いつつ見ていたので余計に驚きました。★引き上げてきた直後のノーヴァレンダ号 その時の現場を見ていた方のお話を聞くと、レースを終えて馬房に帰る途中で急に倒れたと。そして当初は熱中症かということで近くにいた盛岡の厩務員さん達なんかも手伝って馬に水をかけたりしていたんだけども、程なくそこで事切れたということだったそうです。 心臓麻痺は予兆が無いですからね。自分も2回、心臓麻痺で倒れた馬を見たことがあるんですけども、一頭は能力検査の時、走りながら突然倒れるパターン。もう一頭はレースが終わって普通に引き上げてくる時に途中でパタッと寝転んだ感じになって、どうした?と思っていたら獣医さんが飛んでいって、その時にはもう死んでいた・・・みたいな。いきなり来るから本当に心臓麻痺っていうのは怖いですね。 しかしせっかくダイオライト記念を勝ってこれから・・・というところで、夢半ばにして亡くなってしまったのは残念です。 ノーヴァレンダは2018年の全日本2歳優駿の勝ち馬。そして3着に入ったヴァケーションは奇しくも2019年の同レースの勝ち馬でした。そんな“勝馬対決”でもあったんですけれどもね。ノーヴァレンダ号のご冥福をお祈りいたします。
2022年07月21日
木曜担当のよこてんです。 今回は少し遅くなりましたが7月5日に行われた『ヤングジョッキーズシリーズトライアルラウンド盛岡』のお話から。 昨年は9月に行われたTR盛岡でしたが今年は7月頭となり、東日本地区の最初のTRになりました。というか全国で最初のTRですね。なので出場する騎手達の表情も心なしかより初々しいというか、なにかこう、“久々に遠征に来ました!”感があって新鮮な感じがしました。★紹介セレモニーでの集合写真 実際、今年デビューの騎手にとっては“初めての遠征騎乗”だったりしますし、JRA騎手でも“昨年のYJS以来の地方遠征”だったりもするし、新鮮かつちょっと緊張気味だったりするのもさもありなん・・・なのでしょうね。 さて、当日7月5日の盛岡競馬場は当初晴れの好天だったのですがYJSが近づいた午後遅くになって突然の豪雨になって、TR第1戦の一つ前、9Rなどは強い雷雨のために出走馬のパドックへの入場が遅れるという状況にもなりました。 しかしその強い雨は30分ほどで収まり、第1戦の頃は小雨、第2戦の発走の頃には雲が切れて青空も見え始めるという感じに回復していってくれたのは幸い。去年のLJSのようにずっと雨だったらどうしようと思っていましたけどもギリギリのところで雨雲が避けてくれましたね。★第2戦の馬場入り時には向こう正面に虹も出ていました★ヤングジョッキーズトライアル盛岡第1戦/優勝ブラントン・永野猛蔵騎手 第1戦のダート1200m戦を制したのはJRA・永野猛蔵騎手騎手でした。4角から直線のあたり、先行勢が止まったり後方から一気に捲ってくる馬がいたりとちょっと慌ただしくなった勝負所の攻防の中、内過ぎず外過ぎずの進路を確保してコンパクトに回ってきた同騎手の手綱捌きはなかなかのものだったのではないでしょうか。★口取りのあとブラントン号をねぎらう永野騎手。鷲田厩務員も嬉しそう ただここは、2着コスモリモーネの横山琉人騎手、3着ヤマニンレガリーノの池谷匠翔騎手、4着コパノオーロの田中洸多騎手も見せ場はしっかり作っていました。1着から4着までクビ・アタマ・半馬身でしたがその辺は展開のアヤというか本当に僅差だったと思います。★横山琉人騎手は2着・9着でJRA東日本地区2位スタート。ただJRA騎手は6戦騎乗なのでまだまだ巻き返すチャンスあり★ヤングジョッキーズトライアル盛岡第2戦/優勝ラブリボーン・及川烈騎手 第1戦は4番人気→2番人気→8番人気の決着で3連単が約24万円の波乱。続く第2戦も終わってみれば6番人気→4番人気→3番人気の小波乱に。 ハナを奪った関本玲花騎手ファッベラを追走したクイーンシルビア永野猛蔵騎手。直線に向いてもファッベラの脚色は衰えず、クイーンシルビアがそれを捉えきれなかった所を外から捲ってきたラブリボーン及川烈騎手がまとめて交わして突き抜ける・・・という形の優勝争い。 4角を回るラブリボーンはけっこう外に膨れてしまったんですけども、要は脚色が良すぎた・勢いが良すぎたと言うことだったんでしょう。★「膨らんじゃったの、あとで怒られるかなあ・・・」とめっちゃ気にしていた及川騎手なのでした 第1戦を制した永野猛蔵騎手は昨年のTR盛岡では11着・12着に終わっていて、今年は同じ盛岡で雪辱したい所だっただけに1着・3着でJRA東日本地区1位発進できたのは好結果だし今後の勢いにもつながるのでは。 第2戦を制した及川烈騎手は、この春デビューながら今は笠松で期間限定騎乗中。そうやって“よその釜の飯”を食べている分の腹の据わり具合というか、初盛岡だけどあんまり物怖じしていない感じというか、なんかこうちょっと面白い感じがしました。面白いって言うとあれか。興味を惹かれるというか。 今年の地方騎手はトライアルラウンドでは基本4戦、多くて5戦の騎乗予定ですから“1勝”の価値が高い。初騎乗のコースで一つ勝てたと言うことも大きなアドバンテージになるでしょう。 岩手から出場の関本玲花騎手は7着・2着で26ポイント、東日本地区2位からのスタートに。同騎手は既に80勝を超えていてこのあと順調なら来年4月までには100勝突破の可能性大、そうであればYJS出場も今年が最後に・・・ということになります。 このシリーズは最後がホーム騎乗が連続する南関騎手に有利になりますけども(逃げ切る・追い上げるにしても乗り慣れた競馬場かそうでないかはやっぱり心理的な影響が大きく出るでしょう)、残る3戦の騎乗で良い結果を挙げてほしいものです。★岩手に“戻って”来たコータ騎手も元気そうで何より。ちょっとたくましくなった?? さて、7月18日の月曜日、海の日の祝日となる盛岡競馬場では今季のグレードレース第一弾・マーキュリーカップが行われます。 JRA勢5頭・地方他地区馬5頭、地元勢4頭の14頭立て。JRA勢はちょうど昨年の今頃からグレードレースで活躍し始めたメイショウカズサ、昨冬から同様に活躍し始めたケイアイパープルのグレード勝ち経験馬2頭と、3勝クラスからオープンに上がってきた3頭。基本的にはこれから実績を積み増していこうという馬たち。4歳から一番年上のケイアイパープルでも6歳で、JRAからの遠征馬がこれくらいの若い馬で揃ったのは久しぶりです。★ケイアイパープル(佐賀記念優勝時) とすると、今年のダイオライト記念を制しているノーヴァレンダ、今年の川崎記念や昨年のダイオライト記念で2着のエルデクラージュでも実績的に差は感じませんし、ギガキングであったりヴァケーションなども同様。今年のマーキュリーカップは、結果JRA勢のいずれかが勝つにせよ、掲示板上位の差があまり大きくない結果になりそうな気がしますが、果たして・・・。
2022年07月14日
木曜担当のよこてんです。 岩手競馬で働くウズベキスタンの厩務員さんたち。概要などをお伝えした前回に引き続いて今回は後編として、実際に彼らを雇っている調教師さんにお話を伺ってみました。 お相手は盛岡の飯田弘道調教師と水沢の伊藤和忍調教師。飯田調教師はイスロイル厩務員・アミル厩務員を、伊藤和忍調教師はキリチ厩務員・グロム厩務員を初期から継続して雇っております。★グロム厩務員。前編のは顔が小さかったからはっきり分かるものを まず全体的な評価として。お二人とも「ウズベキスタンの厩務員は真面目」と口を揃えます。「ある程度馬を扱えたし、厩舎作業を教えれば覚えて出来るようになっていってくれた。指示したことは真面目にやってくれるから働いてもらう方としてはやりやすいですね(飯田調教師)」 前編でも触れたようにウズベキスタンから来た厩務員さんには現地で馬を扱っていたあるいは自身が馬に乗っていたという方が少なくなく、それは日本の競馬とは違うにせよ基本的な“馬の触り方”を知っていたのは小さくないアドバンテージだったようです。「日本人でも馬のことを全く知らなくてやってきてこちらで一から教える場合も多いですからね。だったら厩舎作業の細かい所を働きながら覚えてもらうのは同じ。教えてあっという間に辞められるリスクがある日本人よりは、まとまった期間続けてくれるウズベキスタンの人たちの方が戦力として計算できる。雇う方としてはそういう見方もできます(飯田調教師)」 ところで厩舎でウズベキスタン人厩務員を雇うにあたって厩舎側・調教師側ではどんな準備や対応をしているのでしょうか?「こちら側では住居の提供ですね。家電付きの宿舎を用意します。それからこちらに来る際の渡航費。あとはもちろんお給料。賞金手当等も支払われるのは日本人の厩務員と同じです(伊藤和忍調教師)」 少し手間がかかるのが在留資格の更新手続き。外国人労働者として1年毎に在留資格を更新しなければなりません(この辺詳しく聞かなかったのですが、恐らく特定技能1号の扱いだからと思われます)。岩手県での手続きは盛岡市内にある入管出張所で行う必要があるため「盛岡の調教師だと近いからいいけど、水沢の調教師さんたちは盛岡まで出てくる時間と手間がかかるよね」と飯田調教師。 そのため厩舎(調教師)との雇用契約も単年契約の1年毎に更新の形になっているとのこと。 この話が出たら触れておく必要があるのがエージェントの存在。岩手で働くウズベキスタン人厩務員さんたちは個別に現れたのではなくてエージェント、人材仲介業者を介して募集され手続きを経て日本にやってきています。それはウズベキスタンに限らずインド人厩務員等でも同様ですし、岩手に限らず他の競馬場や牧場でも同じ。規模の大小はあるにせよエージェントが関わっています。 岩手でのエージェント関係については後日記事を書けると思うので詳細はその時に触れることにして、今回は「間にエージェントが入ることでこの形が成り立っている」というのがお話の前提になっている・・・という所までにとどめておきます。 収入に関してもエージェントが仲立ちしたうえで条件を提示して、双方合意の上で契約という形になります。競馬の場合は賞金とか手当とか変動する部分も出てきますが、収入面でトラブルになることはないのでしょうか?「“都会の方ではもっと高い基本給をもらっているそうだ”という情報に浮き足立つ人も中にはいますが、都会との生活費や物価の差だったり、競馬での賞金・手当でプラスアルファになる分を考えればこちらが不利ということは無い。手元に残る分でならむしろ有利とも言える。その辺は皆理解しているようです(伊藤和忍調教師)」 雇う側からの問題とか課題とかは?と訊ねたところ、まず挙がったのはやはり言葉の問題。「日本語で会話が出来るくらいとは言わないが、日本の数字はしっかり覚えてきてくれれば助かる」とはお二人とも口を揃える所。「○番の馬房の馬を出してきて、○番の馬房を掃除しておいて・・・と仕事を割り振るのに、その数字を教える所からではね」。 もうひとつは最近岩手競馬にも増えてきたインド人厩務員の存在。今現在6人のインド人厩務員が水沢・盛岡の両競馬場で働いていますが、彼らはドバイやサウジアラビアの競馬場だったり牧場でトラックライダーとして働いていた経験を持ち、つまり「競馬場の中でのスキル」は高いものを持っている・・・と周りからは見られています。 自分なんかが見ていても、ちょっとした動きにしても「競馬場に慣れているな」と感じますものね。調教も最初からそつなくこなすインド人厩務員はいわゆる“即戦力”としての注目度が高いようです。「ウズベキスタンの厩務員達の真面目さや熱心さはもちろん高く評価しています。どっちが優れているという事ではなくて、お互いの仕事上で良い刺激になってくれればいいですね(伊藤和忍調教師)」「自分はウズベキスタン厩務員は全然ウェルカム。最初に受け入れたから余計にそう思うのだろうけど、やっぱり真面目に働いてくれますから(飯田調教師)」★鈴木祐騎手と立ち話のガイライト厩務員。冗談を言い合えるくらいにガイライト厩務員の日本語は上手 当初は人手不足を補ってくれれば、とにかく人手が欲しいからという形で見られていたウズベキスタンの厩務員さん達でしたが、3年近く経って“戦力”として計算される存在にもなってきました。 ウズベキスタンから一番最初に来たグループ、キリチ厩務員やガイライト厩務員たちのグループは来た当初は日本語が全く出来なかった。それが今や日本人厩務員を相手に冗談を言えるくらいに日本語が出来るようになった。そんな先に来た面々が後から来た人たちに仕事や日本語を教えたりするようにもなっている。そういう努力は周りも認めたうえで、全体のレベルがもっと上がってくれればもっと働きやすくなるよね・・・というのが調教師さんの最近の想いだそうです。★相手が大ベテラン(牧野さん!)でも物怖じしないのがキリチ厩務員のらしいところ 余談になりますが、インド人を主に外国人厩務員を早くから受け入れていたホッカイドウ競馬では、新しく来た人たち向けの日本語の勉強会や競馬の仕組みの講座だったり、厩務員同士の交流会を開いていたそうです(齊藤正弘調教師談。なお近年はコロナ禍の影響で大人数で集まる催しは行えていないとのこと)。そういう部分はエージェント側の役目という見方もあるでしょうが、やってきた外国人厩務員を育てる・支える施策、あるいは初期のメンバーが得たノウハウを後進に伝えていくような施策は、受け入れる側でも行う意味があるのではないかと思います。
2022年07月07日
木曜担当のよこてんです。 ※6月30日分を7月7日になって書いております。後編もあわせてお読みください。 岩手競馬のパドックを見ていて“最近外国人の厩務員さんが増えてきた”と感じているファンの皆さんは少なくないのではないでしょうか。今だとウズベキスタン、インド。少し前まではベトナム人の厩務員さんもおりました。今回はその中でウズベキスタンの厩務員さんのお話を採り上げたいと思います。 この稿を書いている時点で岩手競馬で働いているウズベキスタン人の厩務員さんは16人。先月かな、新しくやってきたグループ6名が各厩舎に入って現在の数になりました。 一番初期に来たグループは3年目になります。この間、世界的な新型コロナウイルス拡大の影響で日本内外との移動の制限が厳しくなったために来日の予定であったり帰国であったりの予定が大きく狂ってしまったりもしたそうで、日本に来たまま一時帰国ができず家族にも何年も会えず・・・という方もいるのですが、そんな状況下でもウズベキスタンから来た厩務員さん達は岩手競馬の中で働き続けています。★ファズリディン厩務員(佐藤浩一厩舎)。愛称ファジー★イザトペック厩務員(瀬戸幸一厩舎)ハナノミチ等を担当★オタベック厩務員(千葉博次厩舎)イザトペック厩務員と兄弟?★口取りに収まるグロム厩務員(右・伊藤和忍厩舎)★木村暁騎手と勝利の握手をするシロジディン厩務員(現 伊藤和厩舎。撮影時は新田守厩舎)★フサン厩務員(酒井仁厩舎)★飯田弘道厩舎のイスロイル厩務員、アミル厩務員(※今年来た厩務員さんはまだ写真が揃ってない。申し訳ない) ここでウズベキスタンという国について簡単にご説明しておきましょう。 ウズベキスタンは正式には『ウズベキスタン共和国』といい、中央アジアにあります。中国やロシア、イランなどとは直接国境を接していないもののそれぞれの中間点といえる位置にあることで想像できるようにかつてはシルクロードの交易路が通っており、首都タシュケントはその重要な中継地として古くから栄えた都市です。 また、かつては旧ソ連の構成国でしたが1991年に独立、ウズベキスタン共和国となりました。 面積は日本の約1.2倍。しかし人口は約3400万人ほど。雨は少なく、夏の気温は高いですが冬はそれほど寒くはならず、ウズベキスタンから来た厩務員さん達は「日本の方が寒い」とぼやくことしきり。 海に接しておらず、海につながる大河も無い・・・という非常に特徴的な地勢の国で、そのためか国土の8割が砂漠となっています。かつては西部のアラル海が世界第4位の湖として有名で、自分が高校の頃なんかだと「アラル海=綿花」と覚えたものですが、長年の水資源の乱用によってアラル海の水量が大幅に減少してしまっているのが問題にもなっています。 晴山厚司厩舎で働いているガイライト厩務員は最初にやってきたグループの一人で来日からもうすぐ3年になります。ウズベキスタンの南東部にあるシュルチという街から来ました。 シュルチは、先に述べたように乾燥したウズベキスタン国土の中でも数少ない河川に接した地域にあって、GoogleMAPでみても砂漠のような丘陵に囲まれた中に農地が拡がっているのが分かります。★ガイライト厩務員(晴山厚司厩舎)昨年7月のジュライカップを担当馬が制した際の口取り ガイライト厩務員は地元に厩舎と自分の馬を持っていて、ウズベキスタンの競馬にも出ていたそうです。ウズベキスタンで“競馬”というと日本のようなそれではなくてモンゴルの“ナーダム”を想像していただいた方が近いようです。あるいは相馬野馬追の神旗争奪戦のようなものか。「他の馬とぶつかり合いながらで、怪我をすることもある」と言っていたので後者が近いのかな。 なので、馬には慣れていたとはいえウズベキスタンとは全く違う日本の競馬には「慣れて覚えるのに2ヶ月かかりました」とガイライト厩務員。 彼の目標は馬の仕事を覚えて帰ること。現地に持っていた厩舎や馬は日本に来る時に手放したのだそうで、日本で馬について・競馬について覚えて、ウズベキスタンに戻った時には向こうで再度馬の仕事をしたいのだそうです。「3年経つとちょっと寂しいから、コロナが落ち着いて行き来できるようになったら一度帰りたいですね」とも。 伊藤和忍厩舎で働いているキリチ厩務員も最初にやってきたグループの一員。実家はガイライト厩務員のシュルチに近いそうです。キリチ厩務員も現地で馬を持っていて、10歳の頃から馬に乗っていたのだそうです。キリチ厩務員にいただいた現地写真を見る感じ、広々とした高原に馬が点々といて、なんというか凄くエキゾチック。★キリチ厩務員(伊藤和忍厩舎) 岩手で働いているウズベキスタン人厩務員さんはこのように現地でも馬を飼っていて、お祭り競馬に参加していて・・・と、小さい頃から馬に慣れ親しんでいた方が少なくないようです。★ウズベキスタンの馬とか(キリチ厩務員提供) キリチ厩務員も地元に家族を残した“単身赴任”。やはりなかなか会えないままの3年目が近づいています。メッセージアプリなどでは頻繁にやりとりはしているそうですが。 とはいえ「日本であと何年か働いて、そうしたら帰って向こうで牧場を開きたい。馬じゃなくて羊とか牛のね。だから自分の給料はほとんど送っています。自分は節約生活ね(笑)」。そういう大きな目標のためには・・・なのでしょう。 この2人に現地のお話を聞いたのは、この2人が日本語が凄く上手くなっているからです。ウズベキスタンの言語はウズベク語で、ロシア語とも違う言葉で、英語もあまり広まっていないそうなので、ウズベキスタンの厩務員さん達を受け入れた当初はやはり言葉が大きな壁になっていたようです。英語が通じればまだしも・・・だったのですがそうもいかず。ウズベク語の簡単なやりとりとかウズベク語での数字の言い方とかを調べて対応しようとした厩舎もありましたが、初期の面々は結局彼ら自身が日本語を覚える方が早かった模様。 とはいえ会話となると片言の人もまだまだ多くて、難しい部分は翻訳アプリを使ったり、例えばメッセンジャーアプリで向こうはウズベク語、こちらは日本語で、文章を翻訳しながらやりとりしたりという“会話”になることもしばしば。 便利っちゃ便利な時代になったわけですけども、翻訳アプリは細かい意味が違ったりするし、そもそも日本語って翻訳アプリにとってけっこう“難しい”言語で、英語にするのも意外に気を遣いますし。 なので、日本語で冗談も言えるくらいのガイライト厩務員とかキリチ厩務員は自分としても細かいことを聞きやすいので・・・というのがお二人を選んだ理由。全員それぞれお話を聞きたかったのはやまやまでしたが。なので他のウズベキスタンの厩務員さん、悪く思わないでくださいね・・・。 さて、ウズベキスタンは平均年収が日本円にして20~30万円くらいだとされる国です。年収ですよ。月収ではありません。 なので、岩手競馬の厩務員として2ヶ月ほども働けば年収ほどのお金が手元に残るわけで、ウズベキスタンの厩務員さん達にとってお金、収入という部分が大きなモチベーションになっているのはその通り。出稼ぎであるのもその通り。でもそれは重要です。夢とか理想とかで生きていけるわけではないですからね。 先にも触れたように現地で馬に乗っていた、馬を飼っていたという方も少なくないわけで、そんな経験を活かして日本で競馬の仕事に就いてそれなりに高い収入を得て・・・は、WIN-WINと言うまではあれかもしれませんけどもそれに近いものがあるでしょうし、そんなモチベーションをもって日本に来たい、岩手競馬で働きたいというウズベキスタンの人が途切れず続いてくれるなら、それは十分にありがたい事だと思います。 ウズベキスタンから来た厩務員さん達の評価は概ね好評です。もちろん課題もあるのですけれど、真面目に働いてくれると見ている関係者は多いです。次回は後編として、厩舎サイドから見たウズベキスタン厩務員さんたちの評価や課題をお伝えしてみたいと思います。
2022年06月30日
木曜担当のよこてんです。 まずは19日に行われた『一條記念みちのく大賞典』のお話から。前年の勝ち馬が不在となったのは久しぶりのみちのく大賞典。人気も、単勝オッズで10倍以下の馬が5頭という割れた形になりました。そんなレースを制したのは2番人気のステイオンザトップ、岩手転入2戦目での重賞制覇でした。■一條記念みちのく大賞典/優勝ステイオンザトップ この19日は4R頃に少し強めの通り雨が降り、その後も時折雨が降るという天候。コース状態も1R時の良からメインの頃には稍重になっていました。傾向的にはコース内側が走りやすい・止まらないという感じが雨と共に強まっていった印象。 なのでそんな傾向的に一番いいコースを獲ったのがゴールデンヒーラー、差しに回ったヴァケーションやステイオンザトップはやや不利・・・となるはずの直線の攻防。それを差し切ったステイオンザトップは、結果クビ差でしたけれども、その着差以上に強かったと考えていいはずです。■引き上げてきたステイオンザトップを右腕を上げて出迎える小林俊彦調教師 ステイオンザトップはJRA時代に芝で2勝・ダートで1勝を挙げており、芝では1200mから2000mまで、ダートも1400mから1800mまで使われていてどの距離でも極端に大きく崩れてはいなかった戦績。JRA3勝クラスを突破していてもおかしくなかった成績ですし、初勝利がダートだったようにダートにも苦手感無し。実際、転入初戦だった5月23日のA級一組戦でも強い競馬を見せていて、岩手でなら普通にダート重賞級という手応えを感じさせていました。 今回の焦点は2000mという距離で、それがベストではないのでしょうけれどもしっかりこなして見せた。先にも触れたように内ラチ沿い有利の傾向下で外からの差しを決めた点も含め、この勝利はこの馬の強さを証明した一戦になったのではないでしょうか。 本馬は、ご存じの方もおられるでしょう、4月のサラブレッドオークションにおいて286万円(税込314.6万円)で購入された馬です。ちょっと面白そうな馬を買えたというお話は当時から耳にしていて転入初戦もそのつもりで注目して見ていたんですけども、2000mでこれだけ強い競馬ができる馬だとはその時点では想像していませんでした。■転入初戦・5月23日青葉特別優勝時のステイオンザトップ。“モノの違い”を感じさせる走りを見せました まあしかし改めてきょうだいを眺めてみて、本馬の半姉のローブティサージュこそスプリンターと言っていい戦績ですけどもその他はマイル~中距離ですし、本馬の祖母リッチアフェアーはヴィクトワールピサの母ホワイトウォーターアフェアの全妹なのですから、中距離で戦える素地は十分にある血統ですよね。 ステイオンザトップの次戦は、今回の結果を受けてマーキュリーCになる公算が高そうですが、その後は青藍賞-南部杯-JBCクラシックの王道路線を採るのも、あるいはスプリント方面に行くのも、はたまたOROカップ狙いで芝路線に進むのも、どれでも良しという感じがします。今回のダートでの連勝・2000m克服で今後の選択肢も大きく拡がりましたね。 さてしかし、2着ゴールデンヒーラー、3着ヴァケーションも良い戦いをしていました。■一周目スタンド前を進むゴールデンヒーラー(左)・ヴァケーション(右) 逃げたゴールデンヒーラーは速すぎず遅すぎずのペースから絶妙なタイミングで仕掛けてあわやの2着。ヴァケーションは、道中の位置取りの兼ね合いから“伸びない”コースを進まざるを得なかった分伸びきれなかった。ステイオンザトップに「着差以上の強さ」と言っているのと矛盾することを言いますが、この2頭も「着差が力の差ではない」と、展開によってはこの2頭の方が勝つパターンも十分にあったはずだと言いたいですね。■ゴールデンヒーラー、ヴァケーション共に休み明け3戦目、前走以上の好状態に見えました この2頭も“2000mは少し長いかもしれない”と覚悟を決めての出走でした。ヴァケーションはマーキュリーCに進むかもしれないけれどゴールデンヒーラーはビューチフルドリーマーCには向かわないかもしれない。青藍賞あたりが、この上位3頭の再戦になるのかもしれません。 さてさて。長かった水沢競馬は21日で一旦終了、来る日曜・26日からは盛岡競馬がスタートします。盛岡競馬と言えば「芝」。初日26日・B2級の芝マイル戦から芝シーズンも開幕して、2日目にはB1級芝1700mの特別「朝顔賞」、3日目には3歳芝1600mの準重賞「はまなす賞」と毎日一戦ペースで芝のレースが組まれています。 昨年の盛岡開幕時は芝の状態が非常に良くて、レースの方も距離を問わず好タイム連発の状況となりました。今年はどんな状態なのか?どんなタイム・どんな傾向になるのか?11月に大レースが控えているだけにかなり気になるところです。 今回の盛岡開催スタートは3年ぶりにイベント類がたくさん行われる開幕になります。今のところお天気はスッキリとはしない感じなのが残念ですけども、今週末は皆様ぜひOROパーク盛岡競馬場におこしください。■次回の水沢競馬は11月27日から。こんな景色にも雪が降っているのかも・・・
2022年06月23日
木曜担当のよこてんです。 14日月曜日に行われた岩手のダービー『東北優駿』。12頭が覇を競った戦いは1番人気グットクレンジングの勝利で幕を閉じました。★東北優駿(岩手ダービー)優勝グットクレンジング 勝ったグットクレンジングのレースぶりは「完璧」と言っても言い過ぎではないのではないでしょうか。 前半の1000m通過が1分4秒をわずかに超えるくらい。リュウノシンゲンが勝った昨年のレースよりは0.5秒ほど速い、ただ意外に時計が出ていた当日の馬場傾向を考慮すれば“速くも遅くもない”ペースというべきか・・・という序盤の展開。その中でグットクレンジングはスタート直後から3番手を確保していました。★一周目スタンド前を通過する馬群。グットクレンジングは3番手に レース後の山本政聡騎手は「自分から前に行く形も想定したりしたけれど、内にも外にも行きたそうな馬がいる。考えても仕方がない、馬がのびのび走れる位置につけようと思いました」と、その序盤の位置取りについて話していました。この“馬がのびのび走れる位置”という言い方がすごく山本政聡騎手らしい。前に2頭、後ろにフジクラウン、サンエイブレーヴを置く形の3番手、ペースは速すぎず遅すぎず。そこは、力を溜めながらも他の馬の出方をうかがえてかついつでも動ける位置。それも、決して無理に出していって獲ったわけではなくて、スタート後の自然なダッシュで“そこに収まるべくして収まった”かのようなポジションです。この位置を獲った時点で6割、いや7割、いやもっとかも。いずれグットクレンジングが勝負の流れを大きく引き寄せていたのでしょう。 2000mという距離はどの馬にとっても未知のものですから、レースの終盤はどうなるか?は読めない部分がありました。しかし、道中しっかり脚を溜め、勝負所にさしかかってからの手応えも十分にあるように見えたグットクレンジングが、そこから大きく止まるとは思えませんでしたね。実際同馬のラスト3ハロンは40秒0、“上がり最速”でこそなかったものの12頭中2番目の速さ。こうもきっちり仕上げられては、直線差を広げる一方の10馬身差も当然・・・だと言う他なしです。 父コパノリチャード・母父スターリングローズと並ぶと「長い距離はどうなのか?」となるのはまあ自然かなと思います。今回2000mを勝ったグットクレンジングですが、だから長い距離も得意!と言うのはまだ早い。ですけども折り合いに難のないレースぶり、好位で流れに対応できるレースセンス。それが距離への対応力として発揮されているのでしょう。 秋の戦いは盛岡の2000m。門別→高知→大井と転戦してきて岩手では水沢でしか戦っていないグットクレンジングにとっては距離だけでなく“左回り・坂があるコース”という点もチャレンジングな部分になりますが、東北優駿でこれだけ安定感のある強い競馬ができるのなら、秋に待つ三冠目にも、自信をもって挑めるのではないでしょうか。 板垣吉則調教師によればグットクレンジングは既に牧場で秋へ向けての充電に入ったとの事。不来方賞へはやまびこ賞を使ってからになるか直行になるかは馬の状態次第で決定される模様です。 2着のフジクラウン。10馬身もの差を付けられてしまいましたけども、決して悪い内容ではなかったと思います。 重賞二戦目、自身も初めての距離でライバルに真っ向勝負を挑んだ。しかしそれでライバルに完璧な展開を作られ完璧な勝ち方をされた時、挑んで敗れた方が大きく離されてしまうのは決して珍しい事ではない。10馬身という差は決して馬の力の差ではないはずです。「ゲートが開いてグットクレンジングについていこうとした時にちょっとハミを噛んじゃって、そこで少し力を使ってしまった。自分が上手く流れに乗せてあげられていたらもっと差が縮まっていたかも・・・。ですが馬は最後まで本当によく頑張ってくれました。結果はこれだけ差が開いたけど自分の思っていた戦いはできました。距離にはそんなに苦しい感じはしなかったですし、これから身体がしっかりしていけばもっと良くなると思います(菅原辰徳騎手)」 3着には5番人気のサンエイブレーヴ。前走の1番人気9着で株を落とした形の同馬でしたが今回は単独3着確保、それもフジクラウンとの差をジリジリとではありますが詰めながらのゴール。なかなか計算しづらい成績ですが力はあるのはやはり間違いないですね。 今回は前に先行馬を置いた5番手の位置にいるときにはいい手応えで追走していましたが、周りがばらけたらちょっと気を抜くような所がありました。この馬の場合、外枠より内枠の方が力を出せるのではないでしょうか。 さて秋はどうなるか?今回は不在だったクロールキックも不来方賞での戦線復帰を目指して再調整に入っています。フジクラウンも同様に最後の一冠を絶対に獲りたいでしょう。そしてグットクレンジング。一冠目ダイヤモンドカップ、二冠目東北優駿、いずれも濃い内容の強い競馬でした。当然三冠奪取を目指してライバルたちの前に立ち塞がるはず。3歳三冠最終戦・不来方賞は9月4日。2ヶ月半先のレースが楽しみで仕方ありません。
2022年06月16日
木曜担当のよこてんです。 きたる6月14日火曜日はダービーデー!岩手のダービー『東北優駿』が行われます。“ダービーシリーズ”として行われる地方競馬各地のダービーも全8レース中4レースが既に終了して後半戦に入りました。ここで生まれる8頭の“ダービー馬”の中に岩手から加わるのは、果たしてどの馬でしょうか? ということで今回は東北優駿に出走予定の馬たちからピックアップして、各馬を管理する調教師さんに近況やレースに向けての意気込みをうかがいました。 まずは3歳三冠第一戦であり東北優駿の前哨戦ともなったダイヤモンドカップの上位馬から。優勝したグットクレンジングについて板垣吉則調教師のお話です。★グットクレンジング(ダイヤモンドカップ優勝)「ダイヤモンドカップからダービー直行は当初から決めていたローテーション。好調をキープしていると思いますよ。 2000mという距離はこの馬にとってベストの距離ではないかもしれない。血統的なものから想像したりしてね。その意味では他の馬との戦いというよりも自身との戦いということになるのかもしれない。ですが、折り合いにはあまり苦労を感じないレースぶりですし、ここまでも距離を意識した調教をしてきたつもり。好調さを活かしてくれると思っています(板垣吉則調教師)」 昨年7月に門別でデビューした同馬は未勝利戦を勝ったのちに門別3戦1勝で高知に移籍。高知では4戦2勝2着2回、重賞2着の成績を挙げて今度は大井へ。そこでは一戦のみで今年の春に岩手に転じて・・・というグットクレンジング。転入初戦のスプリングカップはクロールキックに敗れましたが二戦目のダイヤモンドカップは完勝の形で重賞V、三歳三冠の一冠目を手にしました。 父コパノリチャードとなると長い距離向きの印象はあまりないですが、母方の近親には芝の中長距離で活躍した馬もいます。2000mはそもそもどの馬にとっても未知であり課題になる距離。自身との戦いも勝ち抜いて二冠目を獲得してほしいもの。 ダイヤモンドカップの上位3着までには東北優駿の優先出走権が与えられています。同2着だったフォルエルドラドもここに出走予定。★フォルエルドラド(ダイヤモンドカップパドック)「重賞を勝てる力は持っていると感じる馬。自分の走りができて、ダイヤモンドカップの時のような戦いができれば、楽しみもあるでしょう(櫻田浩樹調教師)」 フォルエルドラドも昨年5月に門別でデビューした馬。後にやはり岩手に来たボサノヴァやヴォルテッラと同じレースを戦ってその時は9着でした。門別では未勝利のままシーズン終了と同時に岩手移籍、1月2日に初勝利、冬休みを挟んだ3月22日に2勝目を挙げています。 前々走2着から前走6着と成績にはまだつかみ所が無い印象が残りますけども、ダイヤモンドカップの2着、その前の3歳A級戦での3着など世代上位で戦えそうな力をしばしば見せているのも確か・・・といえそうです。 ダイヤモンドカップ3着のフェルゼンハントは昨年7月4日に行われた、昨季の岩手での芝の新馬戦勝ち馬第一号になった馬です。その時の勝ちタイム58秒9は開幕週の状態が良い芝だということを考慮しても目を惹く好タイムでしたね。★フェルゼンハント(ダイヤモンドカップ返し馬)「休み明けを一度叩いたことで調子はあがってきています。ダービーに向けては距離なども意識した調整をしてきました。芝の新馬戦を勝ちましたし芝の方が成績が良いですが、芝の短距離だけの馬ではないと思っています。なにぶん5月31日生まれという遅生まれですから昨年などは体もできていなかった。体ができてくればダートでも・・・は前走で見せていますしね。まだまだこれから良くなってくる馬。2000mは楽な距離ではないけれど先々の糧にもなってくれるでしょう(飯田弘道調教師)」 2歳時の成績だけを見れば“芝、マイルまで”と結論づけてしまいたくなりますが、昨年12月の寒菊賞4着・ダイヤモンドカップ3着の直近二戦をみればダートにも手応えあり。ここでどんな戦いをみせてくれるか?はたしかに楽しみです。 今年から初夏に移動してダービー前の最終切符的な位置づけになったイーハトーブマイル。ここまでの重賞戦線の上位馬が人気上位に推されていましたが、それらを押しのけて勝ったのが重賞初挑戦のフジクラウンでした。★フジクラウン(イーハトーブマイル優勝)「前走後も順調に来ていまして、好調を保っていると言って良いと思います。2歳時はなかなか思うようにレースを使えなかったのですが、今年は、例えば前々走から前走の間が中一週、中間の調教もしっかりやっていて馬体重が+3kg。それだけ馬が良くなってきているのだと思うんですよね。 距離に関しては未経験ですからなんとも言えないし、だからああしたらいい、こうしたらいい・・・という事もいえませんが、折り合いに難のあるレースはしていないから大丈夫だろうとは思っています。2000mでも前走のような形で戦えればいいですね(瀬戸幸一調教師)」 2歳のデビュー前から調教師の期待馬としてその名前をうかがっていたのがフジクラウンでした。その2歳時は素質の片鱗を感じさせたものの結局重賞に挑む事ができず、春の初戦も1番人気で8着。しかし、そこから一変し始めて春の2戦目を3着、そこから1着→2着→1着で一気に重賞勝ち馬の座にまで駆け上がってきました。そうですね、“遅れてきた大器”といっておきましょうか。この馬もどんな戦いを演じてくれるのか注目です。 3歳牝馬のあやめ賞を制したマルルットゥもダービーに挑戦します。★マルルットゥ(あやめ賞優勝)「調子は変わりなく来ていますね。2000mが合うかどうかは分かりませんが、これまでのレースぶりからはじっくり動ける距離は戦いやすいのかも。この先の3歳牝馬路線が長い距離になっていきますから、その時のための経験にもなるでしょうからね(佐藤雅彦調教師)」 2歳時から既に何度も重賞に挑んできたマルルットゥ。その昨年は同厩だったアップテンペストの方がより派手な活躍をしていたことでちょっと目立たない存在でしたが、年が明けて急成長、勝ったあやめ賞だけでなくイーハートーブマイル3着・スプリングカップ5着など牡馬とも戦える力を付けてきたように見えます。 3歳牝馬重賞の二冠目・ひまわり賞は1800m、三冠目OROオータムティアラは2000m。それを見据えればここで2000mを経験するのは同世代のライバル達に対してのアドバンテージにもなるでしょう。もちろんここでの上位争いも十分に可能なはず。今季ここまではそれができるだけの好調さがありましたからね。 出走すれば有力馬の一角になると思っていたクロールキックが不在になったこともあって、今年の東北優駿は混戦ムードがより濃くなったのではないでしょうか。 ただ、今回お話を伺った馬たち(優先出走権3頭と3歳の重賞勝ち馬ということでピックアップしました)はいずれも、未経験の距離はともかくとして、ダービーに至る調整は順調に進めてきたという手応えは感じました。今回採り上げなかった中にも“一発”があってもおかしくない馬はもちろんいますし、様々な想いがぶつかるダービーという一戦、見応えのあるものになってくれるような気がします。
2022年06月09日
木曜担当のよこてんです。 『Road to JBC!』という事で採り上げてきている各地のグレードレース。今回は門別競馬場で行われた『北海道スプリントカップ』のお話です。 レースの中の細かい話は古谷さんにお任せするとしてここでは勝ち馬のお話を中心にざっと進めていきましょう。 ということで優勝したのはJRA代表の2番人気ダンシングプリンス号。前走は海外・リヤドダートスプリントを制していた同馬が“日本凱旋レース”を見事に制しました。★北海道スプリントカップ優勝ダンシングプリンス号 この日の門別競馬場は雨の影響で重馬場。走破タイムも前週までとは大きく変わってかなり高速な感じになっていました。しかし騎乗している騎手をはじめ現地関係者が口を揃えていたのが「内ラチ沿いが凄く深い」という点。実際当日だけでなく今週の門別競馬は内ラチ沿いを大きめに空けて走る、そしてそれでも外目から差してくる馬が珍しくはない・・・というコースの傾向でした。 そんな状況がどう影響するか?と懸念されたのがダンシングプリンスでした。同馬はいわゆる逃げ先行タイプ。しかし今回引いていたのは最内枠の1枠1番。通常なら有利とされるだろうインコースなのですが、今回はそれが果たして好材料になるのか・・・? しかし終わってみればそれは全くの杞憂でしたね。スタート自体はそこそこだったダンシングプリンスでしたが、二の脚の速さで主導権を握ると他の先行勢とのポジション争いが決まったと思われたところで進路を外目へ採りました。そこは他のJRA勢の方がより内ラチに近い方にいるような、逃げ馬としては思い切った外目の進路でしたが、先にも触れたようにこの日の門別としてはむしろそこがベスト。いい位置を獲ったなと見ていて思った瞬間でした。 ゴール寸前こそスマートダンディーが上がり3ハロン35秒6の脚で追い詰めて来ましたが、ダンシングプリンス自身も36秒3で仕上げているのですからダンシングプリンスの側からすれば見た目ほど脅威には感じなかったのではないでしょうか。★鞍上の落合玄太騎手、ゴールと同時に大きなガッツポーズ。大きすぎて画角に収まらんかった・・・ 結果として“懸念”の材料は、地元騎手の好判断によりアドバンテージに変わりました。内すぎず外過ぎずのラインを無駄に競り合う事なく、躊躇もせず獲りに行けたのは、当日のコース傾向をよく知っている地元騎手ゆえ、落合騎手ゆえと言って良いのではないか。 2月下旬以来のレースを勝ち切り、その海外での一戦を含んで4連勝・重賞3連勝としたダンシングプリンス。気になる次戦は、宮田調教師によれば「秋のJBCスプリントを目標として、同じコース距離で行われるクラスターCでコースの経験を積みたい」とのこと。また、「前走で海外の左回りの重賞を勝ったからというわけではないけれど左回りの方がより良い走りができるように感じる。脚抜きがいい馬場ならベター」とも言われていました。左回りの盛岡で今回以上の強さを見せつけてくれるのかもしれません。あと2ヶ月ほど先のクラスターカップが楽しみですね。★宮田敬介調教師 今回は敗れる事になった馬たちも、しかし力負けと言うのはまだ早いとも思います。例えば2着スマートダンディーにとっては先行争い・ハナ争いが意外にあっさり収まったところが、3着リュウノユキナは雨が降り続いたための時計が速くなった馬場が、それぞれにとって味方してくれなかったのも確かでは。そのへんは見ていた側としても考慮しておく必要があると思います。★2着スマートダンディーにとってはもっと激しい先行争いがほしかったかも★3着リュウノユキナにとってはもっと深い馬場が良かった感★4着ヒロシゲゴールド このレースの前日に行われた浦和・さきたま杯では8歳牝馬のサルサディオーネが優勝し、東京スプリントでリュウノユキナ以下を退けたシャマルは3着に終わりました。ただこれもシャマルにとっては初めての1400m戦だった点は留意しておくべき点でしょう。 クラスターカップからJBCスプリントへとつながっていくであろう今年のダートスプリント戦線、まだまだ力関係は定まっていないし、まだまだ隠れている主役候補がいそうな気がしますね。 とはいえグダンシングプリンスの走りは見事、鞍上のエスコートも見事だったと思います。繰り返しになりますが盛岡JBCスプリントで同馬が中心として参戦してくれる事を期待しつつ楽しみにしたいです。
2022年06月02日
木曜担当のよこてんです。 今回の話題は『調教師の新記録&大記録誕生!』。5月22日の水沢競馬第7レース、管理するゴーフォーゴールド号が優勝した小西重征調教師はこの勝利が地方競馬通算1915勝目。これは、これまで阿部時男調教師(元・故人)が保持していた“岩手競馬における調教師通算勝利記録”1914勝を超える新記録となりました。★岩手競馬所属調教師通算勝利記録1915勝達成/2022年5月22日水沢7レース 小西重征調教師は約2年前の2020年7月13日、“岩手競馬調教師平地通算勝利記録”というものを更新しています。 通算?平地通算?と分かりづらい部分だと思いますのでこの機会に改めてご説明を。 阿部時男元調教師の『1914勝』は「岩手県競馬組合創設(1964・昭和39年)前の勝利数・けいが競走の勝利数を含む」記録。★2001年12月に開かれた阿部時男調教師の1900勝記念パーティーとそこでの阿部時男調教師 2年前の“新記録”の時の数字は櫻田浩三調教師(元・故人)が持っていた『1843勝』、これは「岩手県競馬組合創設(1964・昭和39年)後の、けいが競走の勝利数を含まない平地のみ」の勝利数の記録でした。★櫻田浩三調教師の1843勝目・ラストウィンとなった2016年4月17日10R(トーホクアロー)★櫻田浩三調教師1800勝達成(2015年6月7日) もうちょっと掘り下げてみましょう。 阿部時男元調教師は2001(平成13)年12月31日をもって定年引退されております。同調教師のデータはNARなどでは「1973(昭和48)年調教師デビュー」となっており、通算勝利数は「1298」ともなっています。 しかし、岩手競馬に残る記録では少なくとも1966(昭和41)には優勝馬調教師欄に「阿部時男」の名が見られるようになっており、1973年以前から調教師として活躍されていたことがうかがえます。★昭和41年の主要競走成績より。阿部時男の名が騎手欄(負担重量の右)・調教師欄(右から二列目)に。同時に「けいがD1.2級」での勝利時は騎手・調教師兼業だったことも分かる(「いわての競馬史」P136-137より) それはどういうことか?という答えというかヒントのひとつが「けいが競走の勝利数を含む」という注釈です。1971(昭和46)年6月までけいが競走を実施していた岩手競馬では同じ頃まで平地・けいがの双方で「騎手・調教師兼業」が認められていました。阿部時男調教師も、ある時は平地の騎手として勝ち、ある時はけいがの騎手として、自身が調教師として管理している馬に乗って勝ち・・・と、残っている記録をそのまま見る限り「一人四役(平地の騎手・調教師、けいがの騎手・調教師)」で活動していたようです。 当時(昭和40年代前半頃まで)はそれがむしろ普通で、例えば小西重征調教師の義父である小西善一朗氏も平地・けいが双方で騎手・調教師を兼ねて活躍されていた記録が残っていますし、「幻の女性騎手」といわれる高橋優子騎手の父である高橋武調教師もけいがの騎手・調教師を兼業されていました(ちなみに母の高橋クニさんは平地の騎手)。 下の画像は岩手競馬がかつて毎年作成していた「競馬手帳」に掲載されていた調教師の勝利記録です。2004年度版から切り出した画像ですが、カッコ内はけいが競走の勝利数とされているもの。その時点ですでに引退されている調教師がほとんどとはいえ(2004年=平成16年)、逆に言えば昔の世代の調教師は平地・けいが兼業が普通だったということですね。★「競馬手帳2004」より 過去の記録を見る限り、1971年のけいが競走廃止後はそれまでけいがを中心に騎乗していた騎手達が平地に転じており、また騎手・調教師の兼業も同年か翌年頃には廃止になっている模様です。地全協のデータで阿部時男調教師の開業が1973年になっているのは、恐らくそのタイミングで平地競馬の調教師専業になったためではないか?と想像します。 ということで阿部時男調教師の記録はけいがを含む、もう少し付け足すならば「騎手・調教師兼業時代の調教師としての勝利数を含む」の1914勝。 一方、櫻田浩三調教師は調教師としては平地競馬専門かつ騎手時代に兼業もしていない(と思われる)ので「平地のみ」の1843勝。 そして今回、小西重征調教師(小西重征師もけいがの調教師の経験無し・騎手調教師兼業も「自分はやっていない」とのご本人談)が、平地のみの勝利数で1915勝を達成した・・・ということになりました。 改めて先ほどの、2004年競馬手帳のデータを見ていただきましょう。第1位に君臨する阿部時男調教師の1914勝。その時点で小西重征調教師は989勝。 阿部時男調教師が引退された時点での現役調教師との差は、その時一番近かった櫻田浩三調教師でも656勝、ほとんどの調教師にとっては900勝とか1000勝とかの差がある、とても届かないと思われたほどの差。小西重征調教師が阿部時男調教師の記録を「他人事のような数字」と表現されていましたが、まさしくそんな感じにも思える“遠い”数字でした。 しかし、一歩一歩、一つ一つ近づいてついに超えた。記録というものはいつかは破られるもの・・・ではありますが、自分などは「とうとうあの記録を!」と感じるものがありますね。 同時に、小西重征調教師も言われていたように「追いついてくる調教師も増えてくると思う」というのもその通りでしょう。 現役では佐々木由則調教師が1651勝、村上実調教師が1527勝。いずれも小西師より少し若い世代ですし、例えばデビューから20年ほどになる佐藤雅彦調教師・三野宮通調教師が1000勝目前ということを思えばいずれ記録に迫る可能性は十分にあるはず。また、デビュー12年の板垣吉則調教師が約870勝に届いているのを見れば2000勝突破も決して夢ではない話になるのではないでしょうか。今回の小西重征師調教師の記録は間違いなく大記録であり前人未踏のものですが、いずれは追いつかれる日が来ることは、それも確かなのだろうと言わざるを得ません。 とはいえ、記録というものはその時・その場で価値が変わってくるもの。阿部時男調教師の1914勝、櫻田浩三調教師の1843勝はもちろんのこと、“いつか誰かに超えられた日”のあとの小西重征調教師の1915勝も、だからといって凄さや価値が薄れるものでもありません。同時に、かつて1914という数字を遙か遠いものと感じたのと同じように、小西重征調教師の1915勝(プラス、師が引退するその時まで積み重ねていくであろう勝利数)もまた、“次の誰か”が近づいてきた時になって、その凄さを改めて感じることになるのでしょう。 そんな次の誰か・・・となってくると自分もその頃まで競馬の仕事をしているのかどうかはなんとも言えないスパンになってきますけども、できればそんな瞬間を見ることができればいいですねえ。 改めて、小西重征調教師新記録達成、おめでとうございました!★小西重征調教師(左)と、騎手時代は小西重征厩舎の主戦だった齋藤雄一調教師(右)。手にしているパネルはIBCラジオ加藤アナ作成
2022年05月26日
木曜担当のよこてんです。 今回はレースから少し離れた話題を。『厩舎オリジナルウェア』のお話です。 大手の牧場であったりJRAの厩舎では以前からオリジナルのウェアを着ている姿をよく見ました。スタッフが皆おそろいのスタイルで働いている姿はなかなかにかっこいいものですよね。門別競馬場なんかだと、新馬戦でデビューする生産馬を応援に来たであろう牧場のスタッフさんたちが揃いのベストを着ていたり・・・という光景もよく目にします。 地方競馬では、やはり門別の厩舎は揃いのウェアを使っているところが多いように感じます。角川厩舎や田中淳厩舎はウェアとメンコも揃えていたり。 岩手競馬でも最近、ウェアを揃える厩舎が目につくようになってきました。ファンの皆さんもパドックで見かけて「お!?」と感じたりされているのではないでしょうか。 一大勢力(?)っぽく感じるのは伊藤和忍厩舎でしょうか。夏用から真冬用まで様々なタイプがあって、パドックで見かける機会も多いのでは。★伊藤和忍厩舎の冬用ロングジャケット(グロム厩務員)★長袖ジップタイプ(キリチ厩務員 ※ポーズをとってもらったわけではありません)★半袖ベストタイプ(鈴木厩務員) 一昨年の調教師200勝達成記念も兼ねて作られたものからのバリエーション展開。伊藤和忍調教師には作成の経緯などを伺っておりますので後ほど。 「○勝記念」で作るパターンが多いようですね。例えば以下の厩舎。★村上実厩舎・村上実調教師1500勝記念(伊藤厩務員)★佐々木由則厩舎・佐々木由則調教師1600勝記念(鈴木厩務員) 佐々木由則厩舎にはポロシャツもあるんですが綺麗に撮れた写真がなかった・・・。 これは木村暁騎手500勝記念を着ている千葉博次厩舎の鈴木厩務員(“鈴木厩務員”がいっぱい出てきていますがすべて別人です)。 ○勝バージョンはあまり長く着ないことがあるのでパドックで見かけたらぜひ激写!をおすすめします。 厩舎ウェアでは、例えば菅原勲厩舎。去年の秋頃から使用している模様。★菅原勲厩舎ウェア(阿部厩務員) 齋藤雄一厩舎も複数バージョンを展開。★白ベストタイプ★紺ベストタイプ(いずれも山田厩務員)★橘友和厩舎ブルゾン(橘友和調教師 ※口取り撮影時なのでマスクをしておりません)パドックで着ているのは見かけないかも 昨年開業した永田幸宏調教師は盛岡開催に移ったあたりで“厩舎ウェア”を作成。背中に大きくロゴの入ったポロシャツを着用するようになりました。★赤ポロバージョン(久留主厩務員)★別バージョン(永田調教師)★こちらは冬用の厚手ブルゾン(志村厩務員) 厩舎開業に合わせてウェア作成・・・は一番いいタイミングですよね。 ということで、伊藤和忍調教師にウェア作成の狙いなどを伺ってみました。「“チーム”としてやっていこうという考えを持っているので、チームワークとか、団結力とか、やっぱりこういうのがあるとイイじゃないですか。こうやって揃いの服を着ることで士気が上がればいいなとも思いますし。あとは、少しでも格好良く見える事で競馬の世界で働いてみようと思ってくれる若い人がいてくれたらいいな・・・とも。 こういうウェアは、馬主さんに作ってもらったものもありますが、オリジナルのは費用は調教師持ち。結構かかりますね・・・。厩舎分だけでなく牧場とかに配る分も含めて・・・50着くらい?作りますから。 スタッフには服を渡しておいて“好きな時に着ればいいよ”ということにしてあります。“揃ってこれを着ろ”という指示は出さないですね。普段の仕事だけでなく、食事に行く時に着ていっても別にいいですよ。目立つかもしれないけど(笑)。 今年の夏はポロシャツを作るつもり。何種類かあれば長く使えますしね」 ちなみにこちらは岩手競馬統一デザインのポロシャツおよびジャケット二種。ポロシャツは、3年くらい経ったのかな?ちょっと色が落ちてきた感も。★夏用ポロシャツ(梅村厩務員)★ウインドブレーカー?ブルゾン?と冬ジャケット 昨年のエンパイアペガサス引退式の際、写真左側の佐藤厩務員が着ているのが冬ジャットで右の熊谷厩務員が着ているのがブルゾンでした。 さらにちなみに昔の支給服。★半袖ジップシャツ(2001年の不来方賞。写っている厩務員さんはどちらも現役)★長袖ブルゾン(96年南部駒賞。福島厩務員が若い!) 胸に「岩競」と文字が入ったジップシャツ、懐かしく思うファンも多いのでは。30年くらい前からあるのかなあ? 半袖のは、現行ポロシャツができるまでは着ている厩務員さんがちらほらいましたが、最近は見なくなったですね。ブルゾンはまだ着ている厩務員さんが少しいます。いずれにせよもしこれを着ている厩務員さんがいたとしたらそれは「大」がつくベテラン。 こうやって厩舎でウェアを揃えよう・・・という気運が、岩手に限らず各地の競馬場で増えてきたように感じるのは、それだけいろいろ余裕ができてきたということなのでしょう。一時はそんなところまでに気を回せなかったですものね。 伊藤和忍調教師が言うようにチームワークを作るのに、また競馬の世界で働いてみたいと感じてもらえる効果もあるでしょう。パドックで見るファンの皆さんも楽しめるのかなと思ったりします。厩舎や厩務員さんのこだわりとかアピールとかもあって、自分が見ていても興味深いです。いろいろなオリジナルウェア、皆さんもパドックで探してみてください。
2022年05月19日
木曜担当のよこてんです。 気がつけばもう5月も半ばになりまして、2022シーズンの春の水沢競馬も6開催中3開催が終了、半分が終わりました。 とはいうものの、3月の特別開催が2開催あったから、実質5開催経過ですね。あと3開催、1ヶ月ちょっと。 水沢通いが長く続いてそろそろ盛岡開催が恋しくなってきましたが(近いから!)、今時期は新緑は綺麗だし遠くの山々の景色も初夏の装いになってきていて、そんな景色を見ながら車を走らせるのはそれなりに楽しくあり気持ちよくもあり・・・ではあります。 さて今回はお題を二つ。まずは木村暁騎手重賞初制覇!の話題。 5月8日に行われた岩手伝統の重賞・シアンモア記念。4番人気に推されていたヴァケーション号が優勝、鞍上の木村暁騎手はこれが自身の重賞初制覇となりました。★シアンモア記念/優勝ヴァケーション号・木村暁騎手 前走の赤松杯から引き続き同馬の手綱をとった木村暁騎手ですが、僅かに及ばず2着に終わった前走の雪辱を見事に果たす差し切り勝ち。M1重賞、レースの格も伝統も文句なしのシアンモア記念、1着賞金1000万円!初めての重賞タイトルとしてこれ以上ない勝利はお見事!ですし、おめでとう!の他に言う言葉はありません。★ゴール直後のヴァケーションと木村暁騎手 ガッツポーズするんじゃないかと思ってレンズを少し上に振りましたが木村暁騎手は何もせずそのままゴール板を通過。あとで聞いてみたら「余計な事をして馬を転ばせたりしたらいけないと思って」といたって真面目な返事が返ってきました。そういえば木村暁騎手の“ゴール直後のガッツポーズ”って見た事がないような気がするなあ。★引き上げてくる時はガッツポーズ★表彰式を待つファンの声援に応える 木村暁騎手は2002年4月20日のデビュー。齋藤雄一騎手(現調教師)と同期になります。デビューも同じ日でしたが初勝利は木村暁騎手の方が早かったですね。★2002年4月20日、デビュー戦の木村暁騎手★同年4月29日に初勝利を挙げました ほぼちょうどデビュー20年での重賞初制覇。なかなか勝てなかったわけですが、それだけの事情もありました。 デビューしてしばらくの間の木村暁騎手は怪我で騎乗できない時期が多かった。改めて調べてみると、デビュー翌年の2003年は7月から11月下旬まで(5ヶ月弱)、2006年は10月以降(3ヶ月)騎乗できず。2007年は特別開催から復帰したものの4月最初の一開催騎乗したのちに長期療養に入って結局この年は復帰なし(8ヶ月弱)。2010年も7月から10月半ばまでの3ヶ月ほど騎乗できなかったり・・・と、離脱している時期が非常に多い。それも成績が上がってきて流れが良くなってくると怪我・・・みたいなところもあって若い頃はホント流れに乗れなかった印象。“デビュー20年・21シーズン目”とはいえそのうち2年分くらいは乗れてなくて、順調にシーズンを過ごせるようになったのはここ10年くらいですからね。★さきの4月24日の4レースでの勝利が地方通算600勝となった木村暁騎手 重賞制覇も決して遠かったわけではなくて、2018年のダイヤモンドカップではエルノヴィオ号に騎乗して2着、昨年の絆カップではゲンキチハヤブサ号に騎乗して2着。エルノヴィオの時はチャイヤプーンやサンエイキャピタルがライバルだったし絆カップの時はキラットダイヤが相手。運もちょっと無かった。★2018年ダイヤモンドカップ2着(エルノヴィオ号)★2021年絆カップ2着(ゲンキチハヤブサ号) その意味では今回は逆に運が向いた面がありました。シアンモア記念の日は村上忍騎手・山本聡哉騎手・高橋悠里騎手・陶文峰騎手の4人が不在となっていて、前走時から手替わりにならざるを得なかった馬が多かった中で引き続きヴァケーション号の手綱を取る事ができた。それはやはり最大の幸運。 そうして向いてきた流れをきっちり掴んで重賞制覇に繋げることができたのは、運や馬の力だけではなくて、木村暁騎手の実力も当然あったでしょう。 今シーズンの木村暁騎手は調子も良いんですよね。先週終了時点でリーディング5位。去年も良かったですけども(最終的にリーディング6位)、今年は去年以上に良い感じに見えます。今回の勝利は、自分は“勝つべくして勝った”と言っていいと思いますね。 ま、ひょうひょうとした木村暁騎手ですからこうやって煽っても乗ってこないでしょう(笑)。まあ今の調子で、怪我なく乗り続けていって欲しいですね。 もうひとつの話題もベテラン騎手のお話。5月9日の水沢4レース、フォーエバーソング号に騎乗して優勝した大坪慎騎手はその勝利で自身の地方競馬通算500勝達成となりました。★大坪慎騎手地方競馬通算500勝達成/5月9日水沢4レース・フォーエバーソング号★デビュー直後の写真が見つからなかったのでちょっと後のものを。2007年、なまはげと一緒の大坪慎騎手★大坪慎騎手の重賞初制覇は2017年の赤松杯、イーグルカザン号。ナムラタイタンを破った衝撃的な勝利でもありました 大坪慎騎手は2000年4月のデビューですから木村暁騎手の2年先輩になりますね。23シーズン目での500勝達成。レース後のコメントで「もう少しペースを上げて勝ち星を増やして、次の区切りはもっと早く達成できれば」と言われておりましたが、600、700と加速していく事を期待しましょう。 騎手の区切りの勝利、大きなものは高橋悠里騎手・坂口裕一騎手の地方通算1000勝が控えています。先週終了時点で高橋悠里騎手は907勝、坂口裕一騎手は944勝。それぞれ昨シーズンと同じくらい勝ち星を獲得できれば今シーズン中に到達する可能性は十分にあります。これが今シーズン中の楽しみ。 そして小西重征調教師。5月10日の9レースを優勝した事で自身の通算勝利数が1914勝、阿部時男調教師の持つ岩手競馬歴代最高勝利数に並びました。あと1勝で新記録。その達成の瞬間も非常に楽しみです。
2022年05月12日
木曜担当のよこてんです。すいません書くのが遅くなりました。木曜日の分を土曜になって更新します。 その木曜日、船橋競馬場で行われたダートマイルのJpnI『かしわ記念』。結果は2番人気の牝馬ショウナンナデシコが優勝。グレードレース化後初の、レース史上としても1990年の第2回以来(優勝フジノダンサー)32年ぶりとなる牝馬によるかしわ記念制覇を達成しました。★第34回かしわ記念/優勝ショウナンナデシコ号★ゴール後のガッツポーズ 思い切ってハナを奪い取り、強豪牡馬の攻勢を凌ぎきっての逃げ切り勝ちは見事なレースでしたが、同馬にとって久しぶりの“逃げ”はどの時点での作戦だったのか? 表彰式でのインタビュー時に鞍上・吉田隼人騎手は「逃げる事も頭にあったが、それを決めたのはスタートが良かったから」というのコメントを残しています。ただそれは“競り合うようなら控える”という消極的な意味というよりは“出遅れでもしない限りは行く”という決意があってのそういうニュアンスかなと感じました。 実際、最内枠から好発を切ったショウナンナデシコ・吉田隼人騎手は周りの様子は一瞬うかがったくらいにして迷う事無くハナを獲りに行っている。それも特に押すでもなく急かすでもなく自然な加速で。ハナで競馬をするというのは最初からの作戦だったのだろうと思います。★好発・好ダッシュでハナを狙うショウナンナデシコ(右端) 相手関係的にも、今回の時点においてマイルの距離で後方からズバッと差し切れるほどの脚を持っている馬はいない。どちらかといえば先行しつつ自分の勝ちパターンに持ち込みたいタイプが多い。機先を制して自分のリズムで戦うのは恐らく理にかなっている。 なので、これも表彰式での吉田騎手のコメントですが、「勝負所では後続の馬の方が手応えが良かった。馬の気持ちが一杯になりそうだった」と振り返っていたのは、実に正直な感想だなと思いました。 こういう形で戦うと決めたなら最大の懸念は力負け、あるいはパワー負け。牡牝のパワーの違いで作戦を崩される可能性を心配していたのでは。 自分も“牡馬にこれだけプレッシャーをかけられたら厳しいだろう”と思いながら見ていて、相手に前に出られたところもあったと思うのですが、それを凌ぎきった。作戦勝ちの面だけでなく、ショウナンナデシコの底力、力量も褒め称えなくてはならないでしょう。 ショウナンナデシコがグレードレースに登場したのは今年1月のTCK女王盃が最初。その時はテオレーマに敗れたものの存在感十分の走りを見せており、次戦のエンプレス杯で1番人気に推されて勝った事に不思議は感じませんでした。その時に書いたこのブログでも『テオレーマやマルシュロレーヌが抜けた後の女王の座に一番近そうなのはこの馬ではないか?という点を覚えておきたいと思います』と書いています。★エンプレス杯優勝時のショウナンナデシコ ただ、そこからグレード3連勝で一気にJpnIまで突き抜けてしまうとまでは想像していませんでした。女王どころか牡馬相手のチャンピオンですものね。 ここまでの戦いを見る限り、2100mのエンプレス杯も勝ってはいますがそれは少し長くて距離レンジはマイルから1800mがベターでしょう。とすると南部杯やJBCレディスクラシックとバッチリ合いますが、さて今後はどこに挑むのでしょうか。 ひとつ懸念があるとすればこの間のローテーションです。近年のかしわ記念優勝馬はフェブラリーステークスからの転戦が一番多くて、そうでなければ川崎記念から、あるいは3月頃のダートグレードからのパターン。一方ショウナンナデシコはグレードレースだけでも1月26日のTCK女王盃から3月2日エンプレス杯、4月13日マリーンカップ、そして5月5日かしわ記念と連戦していますし、その前も昨年秋から月1走ペースで走り続けています。 近年だと2013年のかしわ記念を勝った際のホッコータルマエが、前年11月から8戦目、その年は1月20日の東海S2着→佐賀記念1着→名古屋大賞典1着→アンタレスS1着からのかしわ記念制覇という、今回のショウナンナデシコと似通ったローテーションで来ています。2009年に最初のかしわ記念優勝を果たした時のエスポワールシチーもその年4戦目でしたし、そのこと自体は、その後GI級のレースを勝ちまくるような馬でも下のクラスから上がってきてグレードレースを選べるような賞金を手に入れるまでは少々キツくても走る必要がある・・・という事なのだと思います。ホッコータルマエなんかそんなローテーションで来ていながら同じ年の帝王賞・JBCクラシック・東京大賞典優勝、南部杯2着・JCダート3着で、翌年の川崎記念を勝ってフェブラリーS2着から海外まで行っていますしね。ほんとタフ。 ショウナンナデシコにとってもここまでが“産みの苦しみ”で、ここからはレースを選んでいけるようになるでしょう。その意味でも次戦がどこになるか?には注目したいですね。★引き上げてきてスタンドに向かって?カメラに向かって?「1」のポーズ 一方の牡馬勢。2着ソリストサンダー、3着テイエムサウスダンは現状の力は出しているだろうと思います。ソリストサンダーは海外帰り、テイエムサウスダンはひとハロン長い。それでも積極的に戦ってのこの結果ですから、今回は勝ち馬が優ったということ。★ソリストサンダー(パドック)★テイエムサウスダン(返し馬)★これが南関移籍初戦だったタイムフライヤーは8番人気9着 ただ、昨年のかしわ記念の顔ぶれであったり、今年の3月・4月あたりのグレードレースのそれを見る感じ、以前よりもちょっと手薄になっている印象がありますよね。ダートの一線級がドバイだけでなくサウジも選ぶようになったことでけっこう長い期間不在になる影響、決して小さくないように感じます。 さて、競馬ファンの皆さんはご存じでしょうが、船橋競馬場ではスタンドの全面改築が行われておりまして、3月下旬からその新スタンドA棟をオープンしての開催が始まっています。★正面の入場門は変わっていませんが・・・★中に入ると一変 大きく変わったのはパドック回りで、高低差があって立体感がある構造になっています。高さを変えたり位置を変えたりといろいろな角度を選べるのはお得感がありますよね。★パドック回りは競馬場とは思えない立体感&開放感★かつてのパドック回りが平面的だっただけによけいにイメージが違います ただパドックの、夜になってからの照明の当たり具合はもっと均質であってほしいかな。まあその辺はまだ工事中の部分も残っているという事で。★コース側から見たスタンド。マスコミ控え室がコース脇にあるのはええなあ・・・★かしわ記念の表彰式は工事中のスタンドの下で。特設会場みたいな感じ 名古屋競馬場だったりこの船橋競馬場だったり・・・、南関四場はだいぶ変わったのか。まあ、少し前はこんな風に競馬場の「新しい景色」なんかJRAの競馬場だけしかないと思っていたものが地方競馬でも見られるようになって。隔世の感というとオーバーかもしれませんが、それくらい変わったなという感じがしますね。
2022年05月05日
木曜担当のよこてんです。 まずは、先週行った名古屋競馬場のお話をもう少し。 4月8日に移転オープンとなった新名古屋競馬場。元々の弥富トレセンは40年以上前からあるので全くの新規ではないものの、新設されたスタンド等、“新しい景色”はやはり新鮮。前の名古屋競馬場の面影があまりないだけに余計にそう感じるのかもしれません。★入場門 今風でコンパクト★パドック シンプル。スタンドの壁がやや殺風景にも思えるけど、ファンの方からは見ない角度だし、これでいいのでしょう。★金シャチ競馬けいば&J-PLACEのロゴは右隅につつましく★オープンスペース 雨だったので誰もいませんが、天気が良ければこの辺でのんびりするのもよしでしょう。やぎさんに会いたかった・・・。★スタンド/下から 屋根が、昔の競馬場の「鉄傘」ではなく陸屋根っぽいのが今風な。★スタンド3階から見たコース マスコミ控え室が3階にあるのでその窓から見下ろしたコースです。コース幅30mはやっぱり広く見えますね。 盛岡とか、これまで幅広だったコースが25m。水沢とか少し狭いコースで20m。水沢の1.5倍。JRAの芝コースは30mとか40mとかあるのでそれに比べたら・・・ですが、地方競馬の感覚だとかなり広い。というか「ゴール板が遠い」。 写真を撮る身で言えばコース幅が狭いよりは楽なんだけど、ダート競馬はどうしてもラチ沿いを回ってくるパターンが増えるので構図の変化がつけづらくなるかも、と思ったりします。 そしてコースとスタンドとの間に水路があるのは西日本のデフォルトなのか? そういえば、旧名古屋競馬場の名物?だった「夕方のレースの大逆光」は弥富ではどうなんでしょう?4コーナー側に大きな倉庫があるから大丈夫なのかな・・・。★ホースビューコリドー 中から・外から 「パドックからコースに向かう馬を間近で見る事ができる」という触れ込みのホースビューコリドー。ここから推し馬・推し騎手を応援しているだろうファンの姿もありました。 ただほら、自分にはちょっとピンとこなかったのは、考えてみれば盛岡も水沢もコースサイドにパドックがあって馬場入りする馬をすぐそばで見れるからですな。コース脇にパドックがあるのはJRA・地方含め平地では盛岡・水沢だけなんですよね。★LED照明丸形の灯具のLED。岩崎電気?どんな明るさ?色は?とかフリッカーは?ムラは?とか、そんな事が気になる。 スタンドの中は1階しか見てないですが、こぢんまりしているのは動線が短くなる分楽でもあるのでいいんじゃないでしょうか。売店がねえ。コンビニが入っているんですけども、それほど混んでないだろう自分が行った日も食べ物はお菓子ばかり、飲み物はアルコールばかりみたいな感じで。まあどういう品揃えにするか試行錯誤中ではあるのでしょう。 「機能を絞ったコンパクトな競馬場」は門別競馬場なんかがそうですし、あとは、たとえばオーストラリアの競馬場なんかもシンプルな所が珍しくないので、必要十分であればいいのかなと思ったりします。新名古屋競馬場で気になる部分は無きにしも非ずですが、開催しながら調整したり改善したりしているという事でもありますし、いろいろ落ち着いたら、手頃な、居心地のいい競馬場になるのではないかと思います。★オーストラリア・パケナム競馬場。オーストラリアで2番目に新しい競馬場(市街地にあったものが郊外に移転)ですが、ファンエリアも業務エリアもコンパクト 気になるのは交通手段ですねやっぱり。前回も書きましたが帰り。旧競馬場なら昼間開催の最終までいてあおなみ線で名古屋に出て、東海道新幹線から東北新幹線の最終に間に合ったのですが、弥富だと最終後の無料バスを使うとちょっと際どいんですよね・・・。 さて、5月1日の水沢競馬場では3歳三冠の一冠目となる『ダイヤモンドカップ』が行われます。 前哨戦・スプリングカップを制した重賞2勝馬クロールキックが不在となり、登録があった牝馬のマルルットゥ・ボサノヴァも日高賞に向かうためこちらは自重。“一強ムード”からの一転して混戦模様になった感。 となると。スプリングCの上位馬、2着グットクレンジング、4着サンエイブレーヴが有力視されるわけですが(※3着リュウノガルシアは金沢に移籍)、ここ2戦強い競馬を見せているコイビトサンタ、過去実績からすればもっとやれていいエイシンリュージュらにもチャンスは拡大したのでは。★グットクレンジング(スプリングカップ出走時)★コイビトサンタ(4月18日水沢7R優勝時) ダイヤモンドカップはわりと一強あるいは二強対決な構図が多く今回くらいの混戦ムードなのは久しぶりではないでしょうか。そんな中で一冠目を獲得し、三冠挑戦権を手にするのはどの馬なのか?予想は難しいですが勝敗の行方を想像しがいのあるレースになりそうです。
2022年04月28日
木曜担当のよこてんです。 今回もまずは桜の話題から。水沢競馬場の桜並木は先週満開を迎えました。日曜日は日向にいると暑いくらいの好天にもなり、競馬場内からだけでなく桜並木の向こう側になる土手から桜を眺めている方もたくさんおられました。 今年の桜は、なんというか“一気に来た”感じですね。水沢競馬場が満開になったのと盛岡あたりで満開になったのと、ほぼ同時くらいじゃなかったでしょうか。4月に入って気温の変動が大きかったせいなのか?例年のこの時期は盛岡から水沢に通う道すがらあちこちで満開になっている桜を見るのが楽しみなんですけど、今年は全面的に急に満開になったような感じでしたねえ。 向こう正面の桜並木も火曜日にはもう散り始めていました。つい3月下旬くらいまで雪が降ったりしていたのに、ようやく来た春があっという間に過ぎ去ってしまうような、ちょっとセンチメンタルな感覚になります。 さて、遠征ネタを2件。まず水曜日に大井競馬場で行われたスプリントJpnIII『東京スプリント』。ここから北海道スプリント、クラスターカップ、東京盃からのJBCスプリントという流れができつつあるダートスプリント路線の重要な一戦です。 日中の雨の影響で不良馬場で、レース前には小雨もぱらつくような天候の元で行われたレースは4番人気シャマルが制しました。デビュー8戦目にして初の重賞挑戦だった馬の勝利に。★第33回東京スプリント/優勝シャマル号 ゴール前の攻防が際どかったですねえ。外から伸びるシャマル、その内で食い下がるギシギシ。そして内ラチ沿いから伸びてきたリュウノユキナ。自分も含めリュウノユキナの脚色優勢とみたカメラマンは多かったようですが、勝ったのは外のシャマル。最後はハナ差の大接戦でした。 この日の馬場傾向はある程度前に行けてなお最後の決め手がある馬優勢・直線は外からも来る・・・という印象で、前走がそんな感じの勝ち方だったシャマルにとっては好都合の状況だと思っていました。実際シャマルはそんなレース運びであり最後の伸び脚。 キャリア8戦目なのですが、デビュー戦が昨年3月13日の未勝利戦でしたから、1年と1ヶ月でグレード勝ちまで成長したという事になりますね。 キャリアの浅さはフレッシュなパワーを感じる一方で経験値の積み重ねの点で時に脆さにも繋がるのですが、しかし昨年のこのレースを勝った時のリュウノユキナ、あるいは一昨年の勝馬ジャスティンはいずれもそれが重賞初勝利で、そこからダートスプリント界の中心的存在になっていきました。ここは「キャリアの浅さ=伸び代の大きさ」と見て、シャマル号の次戦以降の戦いに注目するのが正解でしょう。 3着のギシギシには驚かされました。単勝8番人気ながら1番人気・4番人気馬と最後まで互角の戦いを見せましたものね。★最後まで食い下がっていたギシギシ 青森産馬でしたから出馬表の中でなんとなく気にとめてはいたけれど、いや見事な走り。 ギシギシの母ラーニーは岩手で走っていた馬です。2014年9月28日の新馬戦では1番人気に推されながらも3着。その後6戦走って未勝利で、この1シーズンのみで引退。最初の産駒コンチパーティーも岩手で走っていました。★ギシギシの母ラーニー。2014年9月28日の2歳新馬戦出走時 ギシギシもこれが初めてのグレード挑戦にして初めての重賞挑戦。それでこの結果なのだから今後が楽しみになった・・・と言っていいでしょう。 勝ったシャマル、このギシギシ、4着だったルーチェドーロはいずれも4歳馬。ベテラン馬たちに立ち向かう若い馬たちの台頭を予感させるような今年の東京スプリントになったのかもしれません。 遠征ネタをもう一件。名古屋競馬場で行われた『東海クイーンカップ』のお話を。 先日オープンした“新”名古屋競馬場。でも名古屋競馬場と呼ぶよりは「弥富競馬場」と言った方が分かりやすいような。前の競馬場も「土古」と呼ぶ人が多かったですからねえ。新競馬場も弥富と呼び慣れていくような気がする・・・。★弥富の名古屋競馬場。コンパクトと言えばコンパクトですが、十分大きい。コースも幅が広い それはさておき。東海クイーンカップは3歳牝馬の地方競馬全国交流で、グランダムジャパン・3歳シリーズの一戦ともなっています。既に各地の牝馬重賞を転戦してきた馬たち対東海北陸の牝馬重賞でしのぎを削り合ってきた馬たちとの激突。 結果、勝ったのは船橋所属のグラーツィア号でした。2歳時の園田プリンセスカップ以来となる二つ目のタイトルを獲得。★東海クイーンカップ/優勝グラーツィア号★引き上げてきたグラーツィア号、手前の腕は米谷調教師 同馬は門別でデビュー、園田プリンセスカップ優勝、ラブミーチャン記念では2着と2歳時から重賞で活躍していた実績馬。南関に移籍してからこのレースまでの3戦では3着が最高という結果も、2歳時の戦いからすれば今回の勝利がこの馬本来の力と見て良いでしょう。 今のところは右回りの方が結果が出ているので・・・という米谷調教師のお話で、次戦は5月11日の大井・東京プリンセス賞か5月15日水沢の留守杯日高賞かになりそう。総合3位だったグランダムジャパン2歳シーズンの雪辱を狙ってのレース選択にもなっていくようですし、その辺も熟考しながらのローテーションになると思われます。 このレースで1番人気だったのはアップテンペストでした。昨年岩手でデビューして年末に名古屋に移籍、今年になって重賞連勝を挙げるなどここまでの重賞4戦で2勝2着2回。その実績もかわれての1番人気だったのですが、レースでは先行したものの3コーナーあたりで手が動き始めて・・・の11着敗退という結果でした。★アップテンペスト号 パドックにて★一周目のスタンド前を2番手で進むアップテンペスト 大きく敗れた形にはなりましたが、前走から2ヶ月開いて馬体重もプラス11キロ、パドックで見ていても休み明けを感じる気配でもありました。陣営は距離が長い方が良い馬だと判断されているようですし、次戦以降の巻き返しに注目したいですね。 さて弥富の名古屋競馬場。直接近くまで行く公共交通機関がないので“どうやって行くか”はなかなか悩みどころ。今回は、行く時はあおなみ線金城ふ頭駅からタクシーで、帰りは近鉄蟹江駅行きの無料バスで、と異なったルートを使ってみました。★競馬場へは「名古屋駅」「サンアール名古屋(前の名古屋競馬場)」「近鉄蟹江駅」の3ルートの無料バス路線が設定されています。開催日によって時刻が変わるので要注意 鉄道+タクシーはある程度行く時間を選べるし時間も計算しやすい。ただし単価は高い(あおなみ線360円+タクシーが4000円弱)。 帰りの無料バスは、夕方のラッシュ時間帯にかかることもあって時間が読めない怖さあり。今回は最終レース後の近鉄蟹江駅行き最終便に乗ってみましたけど、競馬場を出た所から混んでいて、結局競馬場から駅まで40分かかりました。なお競馬場に行く方向のバスは割とスムーズだそうです。 一番良いのはレンタカーのようですね。時間をある程度フィックスしたいなら金城ふ頭からタクシー。時間に余裕があるなら(帰りにラッシュに捕まっても耐えられるなら)名古屋駅からの無料バスで往復・・・かな。これから行かれる方、ぜひ良いルートを見つけて教えてください。
2022年04月21日
木曜担当のよこてんです。 水沢競馬場にいよいよ桜がやってきました。 自分のSNSで先に書きましたけども、先週末に好天&気温が高い日が続いたおかげか12日になって場内の桜が咲き始めました。 写真は向こう正面の待機所のわきにある桜の木で、水沢競馬場のコース周辺では最初か二番目に咲き始めます。なぜなのか?は謎。陽当たりの具合とかその辺だけ土が良いとか言われますけども、ここと1コーナーの所の木が早く咲く理由はよく分かりません。 恐らく他よりも古い木なのは確かだと思うんですけどもね。もともと田畑だったところに作った競馬場ですし、何か地下水脈みたいなものがあって早く咲くのかも。 その12日には向こう正面の桜並木の木々もだいぶほころんできているのが見えました。ここ2,3日気温が低めで雨がちょっと強いのが心配ではありますが、この感じなら今週末はかなり良い感じの桜の景色を眺める事ができるのでは。 しかし残念ながら今年も一般公開は実施されず・・・となりました。3年連続で無しなのはちょっと残念。今年は各地の桜祭りが再開されているので余計に・・・という気がしないでもない。でも実施されないという事ですから、ファンの皆様にはせめて水沢競馬場まで足を運んでいただいて、スタンドから、あるいは内馬場の公園から(日曜は開放されると思う)桜並木を眺めて楽しんでいただければと思います。 という事で今回は桜並木特集。一昨年もこんな感じのを書いたのですが、まあ綺麗なものは何度見ても良いことだということにして。 昨年の桜並木は4月11~13日の週末にほぼ満開になりました。例年よりも早く咲いて早く終わってしまい、翌週には葉桜になってしまいました。★昨年の桜並木。一般公開があればちょうど満開と日曜日が重なっていたはず★向こう正面のは翌週にはほとんど葉桜になってしまって、そのかわり4コーナーのしだれ桜が綺麗に咲きました 一昨年、2020年は4月12日頃から結構咲いて、翌週を越えて26日まで良い感じの光景を見る事ができました。満開に近づいたあたりからしばらく低めの気温の日が続いたせいでなかなか花が落ちなかったんだと思います。 といってもこの間はずっと無観客開催だったんですよね。希に見るくらい長持ちしたのにお客様はいないという・・・。★2020年。3週間近く綺麗に見えたのは珍しい★桜と早池峰山★1600mのスタート地点の裏側から 2019年は4月20日の週末に満開。この年までは一般公開に合わせて乗馬体験などのイベントも行われていて、桜並木が非常に賑わっておりました。★桜並木が賑わっていた2019年 こういう感じに賑わうというか、ファンの皆さんに間近で楽しんでいただきたいですね。来年こそは・・・。★内馬場の公園は開放されるかな? ところで、イベントの乗馬体験、最近は角馬場で行われていますが以前は桜並木の中を歩くという形で行われたこともありました。馬上から眺めると桜並木が近い!と好評だったようです。結構人に近いところを歩くから、いくら引き馬と言っても今時分はなかなか簡単には実施できないのかもですねえ。★並木の下を歩く乗馬体験、何年間か続いたと思います★2002年、20年前の桜並木。木が若くて小さいですよねえ。昔は並木の下に入る公開はしていなかったような記憶 先週は夏のような暑さに慌てて半袖を出したりしましたが今週末はほどほどな陽気で収まりそう。天気予報的にも17日は好天に恵まれそうですし、ぜひ競馬場に足を運んでいただいて桜を楽しんでいただければと思います。
2022年04月14日
木曜担当のよこてんです。 今回はまず「2022シーズン開幕」の話題から。既に3月11日からスタートしていた春の水沢競馬ですが、この4月3日から年度が替わって2022年度に入りました。幸いなことに雲ひとつ無い好天にも恵まれ、春の陽気の中で、たくさんのお客様の前での開幕セレモニーとなりました。★開幕セレモニーは久々に青空の下に★新シーズンの装飾。ここ数年は白系統が続きましたが今年は青が主張 4月の開幕初日の日ってぐずついた空模様のことが多くて、昨年などは雨で肌寒かったですよね。青空の下での開幕は2019年以来。 当日はケータリングの屋台も出ておりましたが開門の時間帯はそれぞれ行列ができるくらいの賑わいぶり。 去年は、天気が悪かったしまだあまりあちこちに出歩けない雰囲気だったこともあって早く帰る方が多かったりもして、せっかく出ていた屋台も売れ残りがあったという話でしたが、今年は早くから良い感じでさばけていたように見えました。★1300mのスタートを見守るファンの皆さんの姿も多かったですね★新シーズンの最初のレースを制したのはベルシャダンディ・岩本怜騎手 内馬場の公園が開放されていたので久しぶりに行ってみました。少年時代の大谷翔平選手も遊んだと思われる内馬場(遊具は変わっていますが)。こちらもまずまずの賑わい。 やっぱり、スタートが良いお天気で、盛り上がるのは、良い事ですねえ。 売り上げも良くて、前年同期の3日間に対して約129%だったそうです。 そして開幕初日に行われた3歳重賞『スプリングカップ』を制したのは1番人気クロールキック号。3角で早め先頭に立った3番人気グットクレンジングを直線だけで捉えて突き放す快勝。ここからダイヤモンドカップ、東北優駿へと続く春の三歳戦線での最有力馬なのだと、自らの走りで強烈にアピールしてみせましたね。★スプリングカップ/優勝クロールキック 同馬は昨年のホッカイドウ競馬所属で参戦した南部駒賞が2着、岩手に移籍後の寒菊賞で優勝。力量のほどは既に証明済みと言える存在でしたが、冬季に南関に移籍しての戦いの歯車が噛み合わず直前のレースで12着。その辺の影響が心配されもしていた今回でしたけどれども、この勝利でそこもあわせて払拭。この後の戦いへ向けての視界は大きく拡がったと言っていいでしょう。★口取りをパドックで撮影したのは久しぶり。表彰式もパドックを使って行われました しかし、2着グットクレンジングはこれが転入初戦で水沢での実戦は初めて。3着リュウノガルシアや4着サンエイブレーヴはまだ成長途上。それぞれの血統からみても距離が伸びていった時の逆転の可能性はあるはずで、“一強”と見るのはまだ早いかもしれません。 さて、残念なニュースは、今年も水沢競馬場の桜並木の一般公開が行われない・・・との事。一昨年は無観客でしたし、昨年も公開なしとなっていて、今年は見ていただけるかと思っていたのですが。来年こそは間近で見ていただけると思っています。★昨年の向こう正面桜並木の様子 当初は例年よりも早いと言われていた水沢付近の桜の開花ですが、今の時点では例年と同じかやや遅いくらいになりそう。向こう正面の桜並木は恐らく、17日から翌週にかけて見頃になっているのではないかと思います。残念ながらすぐそばではご覧いただけませんが、スタンドからあるいは(開放されるだろう)内馬場から、眺めていただければ・・・。
2022年04月07日
木曜担当のよこてんです。 年度末ですね。3月11日から実質的な新シーズンが始まっている岩手競馬ですが、3月31日までは「2021シーズン」、4月1日からは「2022シーズン」。ここまで、パドック解説等で昨年のレースの事に触れる際に“昨シーズン”と言わず“昨年”と言うように気をつけたりしましたけれど(3月いっぱいは昨年は“昨シーズン”では無いから)、次からは心置きなく昨シーズンと言えます。★空の気配も冬の鈍い色合いから春の明るい色合いに変わってきました 3月29日の前年度終了を受けて発売成績も発表されました。2021年の発売額は約578億4400万円で前年度から40億円増加・対前年比では107.5%と発表されています。 昨シーズンも降雪による取り止めが全レース取止が4日・途中取り止めが4日、だいたい6日半分のレースが無くなり、その中には桐花賞や金杯も含まれていますから、3月開催が1日増えた分と差し引きしてみて取り止めの分の売り上げとしておおよそ10億円くらいがあったのかなと思います。600億には届かなかったかな、という感じ。 ここで他地区の状況を見てみましょう。年度替わりにあわせて発表された主催者さんの発売金額の数字です。■ばんえい/517億9517万3200円(前年比107.12%)※単独開催化後最高■ホッカイドウ競馬/522億9969万2470円(同100.5%)※過去最高■船橋競馬/886億7443万4730円(同126.52%)※過去最高■浦和競馬/662億1749万520円(同105.7%)※過去最高■東京シティ競馬/1828億6471万1820円(同105.7%)■川崎競馬/971億8718万1440円(同106.7%)※過去最高■名古屋けいば/636億5989万8800円(同108.1%)■高知競馬/949億4150万5600円(同111.15%)※過去最高※以上ウェブサイトでの主催者発表による■金沢競馬/313億9552万400円(同117.1%)※主催者発表が見つからなかったので地全協の開催成績より2021年1月~12月の成績より※園田競馬は4月に入って発表、笠松・佐賀は主催者発表見つからず・年度計算だと思うので以下は地全協の開催成績「2021年4月~2022年2月」を参考に。■笠松競馬/178億968万2600円(同61.5%)■兵庫県競馬/1124億1560万2700円(同108.4%)■佐賀競馬/559億51万6900円(同127.5%) 船橋競馬の伸びは開催日数が増えた比重が多く1日あたりでは対前年比111%ほどになります。佐賀競馬はナイター開始でグッと伸びてきた印象。そして高知。900億近くからのさらに11%増は凄いですね。この伸びで行くと2022年度は大井に次いで2位に上がるのでは。★売り上げ絶好調の高知競馬は場内スタンド各所を大規模改修★佐賀競馬も通年ではないもののナイター開催実施が好調 ただ、「過去最高」の発売額となった主催者が多数ある一方、伸び率としては一昨年の140%・150%当たり前!では無くなったように見えます。 細かく数字を見比べたわけではないので感覚というか感触で書きますが、“一極集中”的な感じになってきているような気がします。1日まんべんなく売れると言うよりは大レースに集中する。 例えば、開催本場への入場が再開されてはいるものの以前のように毎日競馬場に通うような習慣は無くなり、ネットで購入する事が多くなっている・・・とする。すると、競馬場に行って“とりあえず”で買っていた馬券をネットでは買わなくなる。そのかわりにメインレースや注目レース・話題のレースに絞る。ゆえに大レースほど売れる・・・という事なのかな、と。 それが進んでいく・より浸透していくと、その場の開催レースの中で、あるいはその日の開催場の中で、“勝ち組”“負け組”のようなものが分かれていく・・・のかもしれません。ここ2年くらいと同じように伸びてくれるのが一番ですけどもね。 まあ、バブルと言われた一昨年からさらに伸びるだけでも十分凄いとは思いますが、2022年度はちょっと注意しておかなくてはならないのかもしれません。 さて、4月になれば気になるのは水沢競馬場の桜の事。つい先日まで雪が積もったりして春なんだか冬なんだか分からないような日が続きましたが、過去の例を見ても4月に入れば一気に春めいてくるものです。 昨年の水沢競馬場・向正面の桜並木は4月11日から13日の開催の頃に見頃を迎えていました。途中天気が崩れた事もあって長くは持たず、翌週の18日には花がだいぶ落ちていましたね。★2021年の桜並木 一昨年、2020年は4月12日から26日くらいまで保ちました。かつて無いほどに長持ちしたのに無観客でね・・・。★2020年は長持ちしたのに無観客で・・・。2011年もそうでしたが、お客様が入れない時が妙に綺麗だったり 2019年は開花が遅くて4月20日の週から。そして雨がちな日が多かった事もあって翌週までは保ちませんでした。 天気が良すぎて気温が上がると散るのが早くなるし、雨が降ったり風が強かったりしたらやっぱり長持ちしないですし、ほんと水もの。 今年の一般公開は、あるのかなどうかなあ・・・。とはいえ春、新シーズンの開幕と同時に桜の具合も非常に気になります。一般公開が無かったとしても、競馬場のスタンドから、あるいは中継の画面から、春の訪れを楽しんでいただけるなら幸いです。
2022年03月31日
木曜担当のよこてんです。 さて今回は新シーズンを盛り上げてくれる転入馬の話題をしてみたいと思います。 4月3日からスタートする2022年シーズン。今年はその初日に行われる3歳重賞・ダイヤモンドカップトライアルの『スプリングカップ』を皮切りとして、翌週4月10日にはシアンモア記念トライアルとなる古馬マイル重賞『赤松杯』、さらにその翌週には留守杯日高賞トライアルの3歳牝馬重賞『あやめ賞』と、シーズン前半戦の主要重賞につながるレースが開幕から目白押しに続きます。 一方で、長年にわたって古馬戦線を支えてきたエンパイアペガサスが昨シーズンをもって引退、また同馬のライバルとしてしのぎを削り合ってきたヒガシウィルウィンは南関東に移籍。昨年・一昨年の活躍馬ランガディアやチャイヤプーンも他地区に移籍しており、気がついてみるとその昨年・一昨年、2020年・21年の古馬ダート主要競走(シアンモア記念・一條記念みちのく大賞典・北上川大賞典・桐花賞)の勝馬が全て不在という状況で迎える新シーズンとなっています。 大混戦、なのか。 改めて感じますよね、5年間にもわたって古馬のトップを、屋台骨を支えてきたエンパイアペガサスの存在の大きさを・・・。 ただ、そんな状況は見方を変えると“どの馬にもチャンスがある”でもあるでしょう。これまで大きなタイトルが獲れずにいた馬たちにチャンスが巡ってくる年になるのか?あるいは一昨年のランガディアのように春に転入して重賞を勝ちまくるような新勢力が現れるのか?勢力図はまだまだ読めないですが、どんなシーズンになるのか?を想像しながら過ごしていくには興味深いこの開幕の春・・・なのかもしれません。 そこで今回はそんな混戦に断を下す!事になるかもしれない新勢力のお話です。まずはヴァケーション。2019年の全日本2歳優駿を制したG1ウイナーが水沢・畠山信一厩舎に転入してきました。 ヴァケーションは2019年の5月に川崎でデビュー、4戦目の平和賞を制すると返す刀で全日本2歳優駿も制覇。明けて3歳春は南関クラシック路線を進み、秋も戸塚記念まで中距離中心に戦いました。この年のダービーグランプリにも登録があったりしましたが、その3歳秋から短距離路線の方に転じて園田・楠賞を制しています。古馬となった昨年はのべ7戦に出走して最高は2着。8月31日の川崎・スパーキングサマーカップ11着が今の時点での最終戦となっています。★土曜日に行われる能力検査に出走予定のヴァケーション 一昨年・去年はコロナの影響で思うように遠征取材できなかったので実馬の写真が手元に無い。戸塚記念あたりは行っておきたかったなあ・・・。 という事で、畠山信一調教師に近況と今後の予定をうかがいました。「こちらに来たのは2月の下旬。調教が始まって、ある程度馬場状態が良くなってにしましょう、と相談してそのタイミングにしていただきました。 レース間隔が空いているからまだ気が入っていないと感じますが、それはある意味よけいな所でスイッチが入らない、無駄に気力を使わない賢い馬なんだということだと思います。休養中もトレッドミルに乗ったりしていたそうですし、どこか不安があって休養していたわけでもないのでね。良い条件のレースとタイミングが合わなくて間隔が空いたというだけで、能検を使って、実戦を使っていけば良くなっていくでしょうから、心配はしていません。 どのレースを使っていくかは能検をクリアしてから、そしてオーナーさんの判断次第ですけども、賞金・斤量を考えると赤松杯に向かうのが、平場のA級戦より斤量が楽なのかなとか考えています」 実戦からは約7ヶ月、最後の勝利からは約1年半経っているだけに、まずは初戦でどんな戦いを見せてくれるかに注目・・・という事になるでしょうが、平和賞-全日本2歳優駿を連勝した時のような走りをまた見せてほしいですよね。 もう一頭は3歳馬から。3月20日の水沢4R、3歳A級戦はこれが転入初戦だったボサノヴァが快勝。3歳牝馬戦線へ向け力強いスタートを切りました。★ボサノヴァ(3月20日水沢4R優勝時) ボサノヴァは昨年5月に門別でデビュー。4月上旬に能検を通過して一ヶ月おいての最初の実戦は8番人気ながら3着、2戦目2着から6月の3戦目で初勝利を挙げました。当初は気性に若さが残ると言われながらも連続好走してみせて、結果も評価も上げていったようです。 門別の上級認定戦を2回使って結果が出なかったことを契機として2歳夏の段階で金沢に移籍、それが功を奏して成績が一変します。移籍後2戦目の重賞『金沢プリンセスカップ』2着、次戦で金沢初勝利を挙げるとその次のレース、昨年11月の『金沢シンデレラカップ』で重賞初制覇。金沢では結果、6戦2勝2着3回3着1回の馬券圏内パーフェクトの成績を残しました。 そして岩手転入初戦。道中は持ったまま、直線も鞍上が後方を確認しながらなお持ったまま・・・で単勝1.0倍の人気に応える楽勝ぶりを見せつけました。 手綱を取った山本聡哉騎手は「馬場状態も悪かったですから無理をさせないように・しないように気をつけました」とレース後のお話。それであの走りなのだから、力量はかなりのものと考えていいでしょう。 岩手転入初戦を終えた同馬について、管理する齋藤雄一調教師にお話をうかがいました。「今回はあやめ賞に向けての前哨戦として、鞍上に感覚を確かめてもらう意味でもね、いろいろ話をしながらレースに挑んだのですが、思っていた以上に強かったし、良い競馬をしてくれたなと思います。 距離は今のところは1400mがベストなんじゃないかなと思っています。ノボジャック産駒なのでね、いずれは短距離指向が出てくるんじゃないかとも想像しているけど、今はあやめ賞から留守杯日高賞の路線をにらんでの今回のマイル戦でした。まずはこの路線で良い結果を残したいですね」 ボサノヴァ号がどれだけやれるか?のひとつの物差しになるのが昨年12月の笠松『ライデンリーダー記念』です。 ボサノヴァは3着で、勝ったのはエムティアンジェ、門別デビューで6戦1勝の成績を残して夏に金沢移籍というボサノヴァと同じようなキャリアの馬。金沢では常にボサノヴァに先着。そして2着だったのがアップテンペスト、昨年の岩手在籍時は重賞『ビギナーズカップ』でカクテルライトの2着、『プリンセスカップ』では遠征勢2頭には敗れたもののカクテルライトには先着して岩手勢最先着の3着の成績を残していたその馬。★アップテンペスト(21年9月21日盛岡6R優勝時) 名古屋に移籍した後のアップテンペストは4戦2勝2着2回、すべてが重賞で、岩手では経験していなかったマイルや1800mでも好走するくらい力を付けてもいます。ですがまあそれはより成長しているであろう最近の話、昨年の時点ではまだそこまででは無かったのかもしれませんが、しかし岩手の重賞で勝ち負けを争っていた段階の同馬と互角に戦っていたわけですから、ボサノヴァの素質も高く評価していいものだ・・・という事には異論がないのではと思います。 昨年度の岩手競馬2歳最優秀馬に選ばれたカクテルライトも牝馬。あやめ賞での対決がまず最初の注目点。そして留守杯日高賞、実施時期が変わって遠征勢が一層強力になった感のあるこのレースでどれだけ戦えるか。未知数の部分はあるものの転入初戦のレースぶりを見ると期待も高まるというものです。 3歳牡馬の方では昨年の『寒菊賞』を制したクロールキックが岩手に戻っています。★クロールキック(21年12月14日寒菊賞優勝時) 所属は昨年と同じ水沢・千葉幸喜厩舎。岩手では南部駒賞2着・寒菊賞優勝、特に寒菊賞では既存勢力に対して抜けた力を見せてもいましたし、3歳牡馬戦線は重賞勝ちの実績を持つこの馬と、寒菊賞で2着、3月11日の春初戦を制して成長を感じさせたサンエイブレーヴが現時点での主役候補という事になりそうです。★サンエイブレーヴ(3月11日水沢5R優勝時)
2022年03月24日
木曜担当のよこてんです。 先日の地震には驚かされました。2011年以来、地震というものに慣れたというか慣らされたというか、“ヤバめの揺れ”“あんまりヤバくない揺れ”みたいなものになんとなく敏感になっているように思っているのですが、先日のはどちらかと言えば“ヤバめ”の方だと感じました。 “大きく揺さぶるような揺れ”が長く続くパターン、3.11の時はそれが長く続きかつどんどん激しくなっていったのを覚えています。なのでちょっとその時の記憶が蘇るような感覚がありました。 普通の“大きめの地震”の場合だと(何がもって「普通」というか?ではありますが)地鳴りの音共に揺れがやってきて、さーっと通り過ぎていってしまうような感じです。だから揺れている最中に「あ、強いピークは過ぎたな」と安心したりもできます。 ですが今回のような長く続く揺れだと「もっと激しくなるかもしれない」と思ったりして、心臓の鼓動が速くなるのを抑える事ができません。 結果的に盛岡あたりとか岩手県内とかでは大きな被害は無かったようですが、宮城・福島は被害が大きかったようで、東北新幹線なども再開見込み不明なくらいの被害があったとのこと。震災から11年経ちましたが、地震というものからなかなか解放してもらえませんね・・・。 余談ですが、3.11の本震と3月9日に起きた前震とされる地震、あの時の「船の上で揺すられるような感覚の揺れ」はちょっと他の地震で感じた事がないものでした。自分は阪神大震災も京都で経験しましたがあの時の揺れの感じとは全く違う。この二つが自分の中での“ヤバい揺れ”のTOP2です。 3月11日からスタートした春の岩手競馬、その11日の14時46分にはパドックにおいて黙祷が捧げられ、11年前の東日本大震災で亡くなられた人々へ改めて追悼の意をあらわしました。★3月11日14時46分、水沢競馬場から三陸の海の方へ向けて黙祷 11年前の東日本大震災で亡くなられた方々、そして先日の地震で亡くなられた方々、改めてご冥福をお祈りいたします。 岩手競馬の話題に戻ります。 当初予定の4日間に昨年末~年始の間の取り止め分を加えた5日間の開催で始まった春競馬。“休み明けでいきなり5日連続開催はツラい”という関係者間の声も聞こえてきましたが、大きな事故も無く乗り切る事ができたのは安心しました。 この開催からは塚本涼人騎手も復帰して、これで久しぶりに全騎手が揃った開催にもなりました。★11日の2レースから復帰した塚本涼人騎手。頬のあたりがずいぶんシュッとしていて「痩せたんじゃない?って言われました」 11日の1レース、1年間のリーディング争いが始まる最初のレースを制したのは村上忍騎手。5日間・計50レースを終えた時点ではしかし、山本聡哉騎手が8勝を挙げて最初の週のトップに立ちました。村上忍騎手は7勝で2位、3位は5勝2着5回で山本政聡騎手、高松亮騎手が5勝2着4回で4位。木村暁騎手が5勝2着3回で5位。昨季も上位だった顔ぶれが順調なスタート。★開幕週8勝を挙げた山本聡哉騎手。「自分の感覚ではまだ8分くらいの身体の動き。でも佐賀で乗っていた分、いつもより動く感じはありますよ」 そう、山本聡哉騎手や高松亮騎手だけでなく高橋悠里騎手、岩本怜騎手、小林凌騎手、菅原辰徳騎手なども積極的なレースを見せていた印象があったのは、冬場に他地区でレースをしていた分の“アドバンテージ”かな?と感じましたね。他の競馬場で経験を積むだけでなく身体や気持ちを緩めない効果もあるのでしょう。★11日の2レースを制した岩本怜騎手。「笠松ではコロナや開催取止があったりして慌ただしかったですが楽しかったです。良い経験になりました」 調教師の方は村上実調教師・飯田弘道調教師が4勝2着4回3着2回の同数、勝率で村上実調教師が1位。しかし4勝3名、3勝4名、2勝8名と勝ち星の上ではまったくの一団。調教師リーディングの趨勢が見えはじめるようになるのはもっと後、盛岡開催が始まる頃になるでしょう。★15日のメインレース「弥生特別」を制したのは村上実厩舎のリリーモントルー。担当・村上朝陽厩務員も大喜び 今シーズンは各調教師さんの管理馬房数に変更が加えられ上限35馬房、一部厩舎は15馬房になりました。昨年までの管理頭数と異なる厩舎もあって、調教師リーディングにも影響があるのでは・・・と思っています。 これは自分のSNSの方に先に書いた話ですけども、2011年をもって廃止された荒尾競馬、そこでトップジョッキーとして活躍されていた牧野孝光騎手の事を覚えておられるファンはまだ多いかと思います。かつて行われていた岩手・九州騎手交流の『M&Kジョッキーズカップ』で何度も岩手に来ただけでなく、2008年には岩手競馬で期間限定騎乗もしましたね。★2008年6月28日、岩手での期間限定騎乗初日の牧野騎手 その牧野元騎手、荒尾競馬廃止後は大手育成牧場で勤められていたのですが、今年から水沢・菅原勲厩舎で厩務員として働かれております。菅原勲調教師と牧野厩務員は騎手時代は同期。岩手での騎乗から14年、荒尾競馬廃止から10年経った今年、岩手で“同期コンビ”結成となりました。 15日の第9レースでは牧野厩務員が担当するイチネンセイ号が優勝して同厩務員の“岩手初勝利”。今後ますますの活躍を期待しております。★イチネンセイを出迎える牧野厩務員。「自分が見ていたところ(※4コーナーの待機所あたり)からはゴールが良く見えなくて。勝ったと思ってなかったよ」と笑った笑顔は昔のまま この5日間は比較的好天だった最初の2日間、雨模様にもなった後半の3日間と天候が分かれ、春から冬に戻ったかのような寒さも残っていましたが、それでも12月頃の寒さに比べれば、それはもう断然暖かい。日差しの暖かさも段違いですものね。乗っている騎手やパドックで馬を曳く厩務員さんたちの表情もやはり緩やかというか、真冬の緊張感が無くて、やっぱり春なんだなあと思います。 コース状態の方は例年のこの時期に比べると時計が速め。春先は砂がモサモサしてパワーを要求される馬場傾向になりがちなのですが、今年はそれほどではない感じに見えます。 恐らくなんですけども、コースの砂がそろそろ末期なんじゃないか。昨年盛岡の砂の入れ替えが行われた時にもそんな事を書きました。砂が使い込まれて粒子が崩れてくると時計が速くなってくるのでは、と。この春の水沢もそんな感じなのではと思います。 3月中くらいは馬の方も仕上がってないからそれほど速い時計はでないでしょうが、4月5月くらいになれば、雨が降れば超高速馬場になるかも・・・とか想像しています。★15日の7レースでは6番人気のマハロモアナ号が優勝、2着に11番人気メイショウケイゼン、3着に8番人気ダイヤモンドブルーが入って3連単138万円の大波乱 予想の方は本当に手こずらされたこの5日間でした。それも開催が進むにつれて力量どおりの結果になっていくはずです。
2022年03月17日
木曜担当のよこてんです。 いよいよ明日11日、岩手競馬が(実質的に)開幕します。昨年~今年も雪による取り止めが何度も発生してなんとなく記憶の輪郭がボヤッとした感じではありましたが、心機一転の春競馬がいよいよスタート!であります。 すでに初日・2日目の枠順も発表されております。いきなり5日連続開催でまずは乗り切るのが大変。とはいえ久しぶりの地元競馬、ファンの皆さんにも楽しんでいただきたいですね。 さて、そんな春競馬の出馬表を見て「お!」と思われた方もおられたのではないでしょうか。昨年10月に負傷して以来、実戦を離れていた塚本涼人騎手が、11日の2レースで復帰します。塚本騎手は先日行われた能力検査にも騎乗していて実戦復帰へむけての準備も進んでいる様に見えます。 という事で今回の最初の話題はその塚本涼人騎手。復帰直前の同騎手に電話でお話をうかがってみました。★塚本涼人騎手、いよいよ復帰します去年からここまでの状況というか様子を聞かせてください「去年の10月に怪我をして、12月の内にはだいぶ良くなってはいたんですがまだ痛みが残っていて。馬に乗り始めたのは今年になってからです」じゃあ調教にはわりと早くから乗っていた?「はい。ですが、いきなり乗り始めたのが良くなかったのか腰のヘルニアっぽくなってしまって・・・」あー、仕事を頑張りすぎたって事ね。「・・・ですねえ。他の厩舎の馬にも乗ったりしてたもので・・・」とはいえ能検も乗ったし、レースでも頑張れそうな感じ?もうやる気満々?「そんな気持ちは感じますね。ここまで来たら頑張るしかないです!」去年は調子が良かったし、ヤングジョッキーも良いところにいたから、怪我したのが残念で。今年は去年の分も取り返せたらいいね「去年は今までよりも良かったですものね。やっぱり取り返したいですね。あとは怪我をしないように、ですね」 電話で声を聞く限りではいつもどおりの塚本涼人騎手。早くレースに乗りたいという気持ちも、けっこう湧き上がってきているんじゃないのかなと感じる雰囲気でした。冬休み明けという事で“しばらく乗ってないハンデ”も若干薄まる部分があるでしょうし、まずは最初の1勝目を楽しみにしたいですね。ファンの皆さんもぜひ応援してください。 もうひとつは残念というか寂しい話題。秋田市にある場外発売所『DIKK秋田』がこの3月で閉館という事で、直前になりましたが足を運んでみました。★こまちに乗って秋田へ。内陸はまだ雪が多いので車ではなく鉄道利用で。乗り鉄じゃないよ DIKK秋田、正式には『秋田場外勝馬投票券発売所』は2015年4月にオープンしました。秋田県には既存の場外発売施設としてテレトラック横手、テレトラック山本がありDIKK秋田は秋田県内三カ所目。しかし秋田市内の中心部近くという立地は盛岡市内中心部にある大通場外・『UMACCO盛岡大通』と並ぶもので、まちなか場外としての期待も大きかったように思います。 しかし残念ながら開設から7年で閉館。岩手競馬の場外発売施設としては最も短命に終わる事になってしまいました(JRA福島競馬場内の発売所は13年間設置されていました)。★DIKK秋田 実は自分はDIKK秋田に来るのは初めてで。こんなに早く無くなるとは思ってなかったから、そのうち山本と併せて行こうと思っているうちに廃止の報が来てしまったような次第・・・。初訪問がラスト訪問になったのは非常に申し訳ない。 秋田駅の西口からバスに乗って10分弱で到着、片道170円。館内はモニターがたくさんあるのは最近の場外発売所らしい感じですね。大きくはないけども手頃な広さで、お客様の数もまずまずなのかなと感じました。★秋田場外の記念馬券には馬と人の岩手色が濃いところ(笑)を敢えてチョイス 秋田とか青森の日本海側は競馬よりも競輪や競艇の方が強い感じで、最近は行ってないので分かりませんけどもボートピア河辺なんか凄く賑わっている印象があります。 だからといって競馬がダメって事は無いとは思うんですけどね。昔のOROパークは秋田ナンバーの車も非常に多かったですし。DIKK秋田でもJRAの馬券が売れたりしたら、また違った未来があったのかな・・・と思ったりします。 コロナ禍の影響も大きそうな場所のような気もするなあ。すぐ近くにホテルがいくつかあって、“ホテルからの近さ”という点ではわりと国内有数と言っていいだけの立地ではあると思う。建物を出たら目の前が銀行(岩手銀行だったり)という点も場外としてはポイントが高い・・・、いや、それをポジティブに言えるのかどうかは今日びはあれかもしれないのかなあ。 DIKK秋田ですが、閉館は3月31日ですが馬券の発売は3月18日、つまりあと一週間で、それ以降は払い戻し業務のみとなります。最後に行っておきたいという方は31日をメドにするよりは18日までに行かれておいた方が良いように思いますよ。 そして明日3月11日は岩手県をはじめ東北・東日本に住むものとしては忘れる事ができない日でもあります。7レースの発走前には黙祷を行うとの事ですのでご来場の皆様、ネットでご覧の皆様も、11年前のあの日の事に想いをはせていただければ。★盛岡の街中はもうほとんど雪が無くなりました。山の方はしかし、ちょっとびっくりするくらい深い雪が残ったままなのでした
2022年03月10日
木曜担当のよこてんです。 今回は岩手から離れて3月2日に川崎競馬場で行われた牝馬のグレードレース『エンプレス杯』のお話を。今年は盛岡でJBCが行われる事でもありキーになりそうなレースを実際に見つつJBCの各レースに備えてみようと思います。 いやしかし川崎競馬場、久しぶりです。佐々木竹見カップのために必ず年に一度は来ていたんですけども、振り返ってみると2年前のその竹見カップ以来。いろいろあったこの間ですが、南関の他の3場にはグレードレースだけでなくヤングジョッキーなんかでも行っていたから、2年も空いたのは川崎だけ。ずいぶん勝手が変わっていた・・・。 という事でエンプレス杯。昨年はマルシュロレーヌが優勝しましたね。同馬は大井・TCK女王盃と川崎・エンプレス杯を連勝、その後の平安ステークス・帝王賞では敗れたものの8月の門別・ブリーダーズゴールドカップを制して海外へと羽ばたいていきました。また2着だったサルサディオーネものちに日本テレビ盃を優勝、これはグレードレース化後の同レースでは初めての牝馬による制覇ともなっています。 今年のエンプレス杯、単勝はショウナンナデシコが前売りの段階から1番人気を譲らない形で、それを追いかけたのが牝馬グレードレースで常に上位を争ってきたサルサディオーネ・レーヌブランシュ、そして昨秋から重賞戦線に顔を出してきたプリティーチャンスでこの3頭はほぼ横並び。クリノフラッシュ・ウェルドーンらは少し差がある感じの5番人気・6番人気あたり・・・というのが戦前の状況。上位をJRA勢が占めつつその間にサルサディオーネが割って入る形でしたが概ね実績どおり戦績どおりかなという印象でした。 そしていつものように結果から先に行きますと、勝ったのはその1番人気ショウナンナデシコでした。2着は逃げたサルサディオーネが食い込みレーヌブランシュが3着。以下4着クリノフラッシュ、5着プリティーチャンスと、結果的には1番人気から5番人気の馬が人気通りに掲示板確保。3着まではそのまま人気順でもありました。★第68回エンプレス杯/優勝ショウナンナデシコ★引き上げてきて破顔一笑の吉田隼人騎手 道中は逃げるサルサディオーネの後ろ、ラチ沿いの3番手あたりを選んだショウナンナデシコでしたが、3コーナー手前で流れが変わった時に一瞬手応えが劣勢になったように見えたのと直線に向いてからもポケットのような位置に入ってしまった事とで、これは出てこれないんじゃないかな?と思いながら見ていたのですが、残り200mを過ぎて内からこじ開けて顔を出してきたと思ったら一瞬で抜け出して1馬身半。これは今回のメンバーの中では頭ひとつ抜けているのかなと感じさせる強さでしたね。★一周目直線、先頭はサルサディオーネでショウナンナデシコは内ラチ沿いを進んでいる 前走のTCK女王盃がグレード初挑戦だった同馬ですが、結果2着だったとはいえテオレーマの、ハマったときは後続の追随を許さない末脚を発揮するあのテオレーマに最後まで食い下がって同タイム・クビ差の走りを見せていたわけですから、それからすればそのテオレーマがいないここならこれくらい走っても不思議はない。加えて今回は、少し苦しい形になりつつもそのロスをはねのけたばかりかまとめて取り返すような強さを持っている事も示しました。 折りしもエンプレス杯が行われたその日にテオレーマの引退が明らかになり、また昨年の覇者であるマルシュロレーヌも2月のサウジカップをラストランとして引退しました。昨年行われた8つの古馬・牝馬グレードレースのうちのべ5戦を制している2頭が抜けた事で牝馬戦線の勢力図は間違いなく変わらざるを得ないわけですけども、その道筋にショウナンナデシコが納まってきたのかなと、そう感じさせる今回の勝利だったのでは。 管理する須貝調教師が所用のためという事でレース後にすぐ競馬場を去られたので次戦以降等のお話を聞く事ができませんでしたが、秋はぜひJBCに来てほしいですね。 しかし2着のサルサディオーネも頑張りますよね。昨年12月のクイーン賞と同じ2着、8歳になってもまだまだ意気軒昂というか牝馬同士なら侮れないスピードを維持しています。★一周目直線、逃げるサルサディオーネ 成績を眺めると時々大きな着順の数字がありますが、それは牡馬と対戦した時かあるいは苦手の右回りでのレースのものなんですよね。“左回りの牝馬グレード”という抜き出し方をすると2年前のエンプレス杯で11着に敗れて以降ですから、ちょうど丸2年かな、馬券対象から外れていない。今回だって勝ち馬のエンジンの掛かりが少し遅ければ逃げ粘っていたかもしれません。実に立派です。 3着のレーヌブランシュはスタートで出遅れたましたが影響はそれほど大きくなかったのでは。並んで追い比べになるとちょっとジリっぽい所がありますし、小回りよりは大きなコースの方が良いタイプ。大井のようなコースがより力を出しやすいだろうとは思います。 4着のクリノフラッシュ。番手で揉まれずすんなり先行・・・というのは同馬の好走パターンだと思うんですよね。最後離された点とこれが自身初めての重賞挑戦だったという点、今回の経験を活かして次戦以降その差を詰めていけるか?ではないでしょうか。 5着のプリティーチャンスにとってはちょっと距離が長かったのかもしれませんし、クイーン賞もそうでしたが落ち着いた流れの展開もこの馬向きではないはずです。あと大回りのコースの方が良さげ。もっと合う条件、力を出し切れる条件が他にありそうな気がします。 今年のエンプレス杯、結果を見れば「1番人気馬快勝」ですが、その1番人気馬であるショウナンナデシコはこれまでとはまた違った強さを感じさせての勝利だったという点、そしてテオレーマやマルシュロレーヌが抜けた後の女王の座に一番近そうなのはこの馬ではないか?という点を覚えておきたいと思います。 そういえば2頭相前後して引き上げてきたショウナンナデシコとサルサディオーネ、鞍上が何か話ながら帰ってきたんだけど、何を話していたんでしょう?「凄い脚だったねえ」とか話していたのかな。
2022年03月03日
木曜担当のよこてんです。 先週の金曜日、盛岡市内において『2021 IWATE KEIBA AWARDS』授賞式が行われました。例年より一ヶ月ほど早いタイミングになったのは競馬の開催日程と県議会の日程の兼ね合いによるものかと思われます。 以前は4月の頭に、特別開催が終わり新年度の開催に替わる間のタイミングでやっていた事がありましたし、もっと前は1月下旬に行われていた時期もありました。近年は3月下旬からの特別開催前のあたりで定着していた感じでしたが、3月上旬から開催が始まる事がレギュラー化するなら、この授賞式も2月に行われる形が続くのかなと思います。 コロナ禍により一昨年は取り止め(後日賞状・盾の授与のみ実施)、昨年は関係者のみで実施という形で行われた『IWATE KEIBA AWARDS』。今年も受賞関係者のみに人数を絞っての実施となりました。来年は、以前のようなファンの皆さんを交えての表彰式が戻ってくるのでしょうか・・・。 タイミング的に参加できなかった受賞者もおり、今年も1時間ちょっとで終了するコンパクトな授賞式となりました。★開会の挨拶を行う達増管理者★騎手表彰関係は村上忍騎手と山本政聡騎手が出席★調教師関係の表彰では板垣吉則調教師・菅原勲調教師★厩務員部門は代表授賞の形を採りました★最優秀ターフホース・ナイトオブナイツ号関係者★ナイトオブナイツ号馬主・星加浩一さん「盛岡は地方競馬で唯一芝コースがある競馬場。芝の馬なのでここに活躍の場を求めてきました」★最優秀牝馬・ゴールデンヒーラー号関係者★ゴールデンヒーラー号馬主・平賀敏男さん「2歳時から楽しみにしていたが、思っていた以上の活躍ぶりが嬉しかった」★最優秀短距離馬・キラットダイヤ号、板垣吉則調教師「新シーズンも昨季以上の活躍をしてくれると期待しています」★2歳最優秀馬・カクテルライト号馬主・長澤茂さん「この馬なら活躍できるから、と小西調教師に奨められた。これからも調教師を信頼してやっていきたい」★3歳最優秀馬・リュウノシンゲン号、菅原勲調教師「まだまだ伸びる馬だと思っています」 年度代表馬となったエンパイアペガサス号は佐藤祐司調教師が欠席だったものの、馬主・厩務員さんらが出席しました。★年度代表馬/4歳以上最優秀馬・エンパイアペガサス号関係者★エンパイアペガサス号馬主・佐藤信廣さん「過去のレースを振り返ってみるといろいろな事が思い出されます。エンパイアペガサスの血筋を繋げていきたい」★山本政聡騎手「騎乗依頼が来たときには“僕でいいのかな?”と正直思いました」 エンパイアペガサスはこれまでも度々年度代表馬の候補になっていて、いや何度も年度代表馬の座についていてもおかしくない実績を挙げてきた馬。ついに年度代表馬になった時には引退という形になりましたが、ようやくこの座に就けた喜びだけでなく“無事に戦い終えた”という安堵感、達成感のようなものも陣営から感じられたように思いましたね。★エンパイアペガサス号の種牡馬カタログ(写真は私が撮ったものです!)★馬事文化賞はIBC岩手放送のラジオ番組『いわて想い出の名馬館』。菅原勲調教師のめっちゃ若い頃の声が流れた さて、気がつけば2月もあと数日、春競馬のスタートまであと2週間ほどになりました。今年の雪の感じは、今のところは昨年よりは雪解けが遅い様に見えますが、それも今週末あたりから気温が上がるようですから一気に進んでいくでしょう。ようやく「冬」から「春」になっていきそうです。
2022年02月24日
木曜担当のよこてんです。 今回は先日発表された2022シーズンの岩手競馬重賞日程の話題として2021シーズンからの変更点等について書いてみたいと思います。 大きく変わったのはやはりJBC関係の部分ですね。11月3日にはJBCの3競走だけでなく2歳芝のジュニアグランプリ、古馬芝の岩手県知事杯OROカップが移動して重賞5競走が集中。またそれぞれのレースの賞金も増額されました。■JBCクラシック・・・1着賞金8000万円→1億円■JBCスプリント・・・同6000万円→8000万円■JBCレディスクラシック・・・同4100万円→6000万円■岩手県知事杯OROカップ・・・9月下旬から11月3日へ、1着賞金1000万円→3000万円■ジュニアグランプリ・・・9月中~下旬から11月3日へ、1着賞金400万円→2000万円 2014年の盛岡JBCの際にも同日に3歳重賞不来方賞と古馬芝の重賞秋嶺賞が行われていましたので“重賞5連発”は今回が初めてではないですが、門別競馬場で行われるJBC2歳優駿と併せて『1日6重賞』となるのはもちろん初めてになりますし、大幅に増額された1着賞金とともにインパクトは十分といえるでしょう。 JBCクラシック・JBCスプリントは12年ぶりに設立当初の1着賞金額に戻った形・JBCレディスクラシックは1着賞金4000万円で設立、JRA京都競馬場で行われた2018年も5000万円でしたので、これがレース史上最高額という事になります。 かつての“1着賞金1億円”時代は2001年のJBC競走スタートから2010年までちょうど10年続きました。それが2011年に減額されて、そして12年ぶりの“復活”。近年の好況を受けての増額というか復活になったわけですけども、この1着賞金額が一過性のものにならず続いていってほしい・・・と思いますね。★2002年盛岡JBCの時のクラシックは1着賞金1億円でした 芝重賞については今季限りの増額という前提。ですがいずれもJpn3並の1着賞金額・・・というかOROカップはマーキュリー・クラスターの両Jpn3よりも高くなりました。 OROカップに関しては近年の勝ち馬・上位馬はJRAの芝G3で好走できていたような馬がほとんどになっていましたからメンバー的には十分釣り合うでしょう。 ジュニアGPは、個人的な感想では若干高いように思わないでもないですが、良い賞金が良いメンバーを集めるのは確かですから、時期が動いた点と併せてこれまでにない好メンバー・これまでにない好レースになれば良いと思います。 また、通常なら芝レースの設定が終わったあとの11月3日まで芝を組む事から、8月21日~9月6日、10月23日~25日ののべ4週間の間『芝競走休催予定期間』が設定されています。2021シーズンも8月下旬の盛岡開催において2週間、芝レースが無い開催が設定されていましたが、2022シーズンは期間を倍にしてJBCデーに備える形になります。★2014盛岡JBCの際は最終レースに芝重賞・秋嶺賞が設定されていました(※重賞としての設定はこの年限り)発走16時15分だったからけっこう暗くなっていた記憶 2014年にもJBCの11月3日に芝重賞を行いましたし、例えば震災の年2011年は11月14日まで、過去には11月下旬まで芝レースを設定していたこともあり、“実績”が無いわけではない11月の芝レースですが、終盤まで良い状態を保てるかどうかは天候等の条件に左右されるのも確か。休催期間を活かして良い状態を・・・と願うばかりです。 なお、OROカップにはJRAマイルチャンピオンシップの、ジュニアGPには朝日杯FSの、それぞれステップ競走ブロック代表選定競走となっていましたが、2022シーズンの扱いがどうなるかは未確認です。OROカップの方はステップ競走に間に合いませんので他のレースが指定されるのかもしれません。 JBC競走およびOROカップ・ジュニアGPがこの日程になったことに伴っての変更もあります。 まず岩手県知事杯OROカップ関連では準重賞・桂樹杯、2021シーズンに新設されたいしがきマイラーズがそれぞれ時期を移動、桂樹杯→いしがきマイラーズ→OROカップの路線を作ります。 ジュニアGP関連でも若駒賞が今季限定でダートマイルから芝マイルとされ、若鮎賞→若駒賞→ジュニアGPの路線を作ります。■桂樹杯・・・8月中旬から9月12日へ移動、いしがきマイラーズのトライアルに■いしがきマイラーズ・・・9月中旬から10月9日へ移動、OROカップのトライアルに■若鮎賞・・・実施時期は変わらず、若駒賞トライアルに■若駒賞・・・10月上旬から9月20日へ移動、ダートマイル→芝マイル、ジュニアGPトライアルに 他にはOROターフスプリント、絆カップ、知床賞、南部駒賞、OROオータムティアラ、ハーベストカップが全体に時期を早める形で、ヴィーナススプリントは時期を遅くする形で移動。この辺はJBC開催とOROカップ・ジュニアGPの移動に伴うローテーション整理の意味合いが強いと思われ、次年度以降は再度調整が加えられるのではないでしょうか。■OROターフスプリント・・・10月下旬から9月27日へ移動■絆カップ・・・11月上旬から9月25日へ移動■知床賞・・・10月下旬から10月2日へ移動■南部駒賞・・・10月下旬から10月16日へ移動■OROオータムティアラ・・・10月下旬から9月18日へ移動■ハーベストカップ・・・10月上旬から9月13日へ移動 シーズン後半に比べて前半の日程変更は少ないですが、大きめなのは栗駒賞が4月24日に移動したこと。早池峰スーパースプリント・岩鷲賞と併せてクラスターカップを目指す夏のスプリント路線を形成していた栗駒賞ですが、近年は栗駒賞-岩鷲賞間の日程が詰まっていた事や、2021シーズンに栗駒賞が盛岡開催に移って“盛岡1400mの栗駒賞”と“盛岡1200mの岩鷲賞”が短期間に連続する、差異を作りづらい状況にもなっていました。栗駒賞が4月の水沢1400mという条件になればコース形態的な違いが生まれるでしょうし、時期的にも“前年の実績馬対転入馬”の勢力図判断にも有益なレースになりそうです。■栗駒賞・・・7月上旬から4月24日へ移動、盛岡ダート1400mから水沢ダート1400mに変更 また、3歳重賞のイーハトーブマイルが8月下旬から5月29日へ、やまびこ賞は7月中旬から8月21日に移動。それぞれ東北優駿・ダービーグランプリの前哨戦的性格を強くする位置に配置されます。■イーハトーブマイル・・・8月下旬から5月29日に移動、盛岡ダート1600mから水沢ダート1600mに変更■やまびこ賞・・・7月中旬から8月21日に移動 イーハトーブマイルは設定当初の9月下旬から11月へ、2021シーズンは8月下旬へと移り変わって今回5月に、また設定当初から盛岡で行われてきたので今回初の水沢での実施になります。“春・夏・秋・冬全ての時期(5月下旬は初夏に近いですけども)”“盛岡・水沢の両方”を経験するレースというのは案外珍しいのではないでしょうか。★2013年の第1回イーハトーブマイルは秋、9月21日に行われていました 1着賞金が増額になったレースが増えたのも注目点です。先に触れたOROカップ・ジュニアGPの他にも、ダービーグランプリが2500万円、シアンモア記念・一條記念みちのく大賞典が1000万円、マーキュリーC・クラスターCの両Jpn3が2800万円に増額される他、地方競馬の全国交流競走、3歳牝馬三冠路線の各レースも増額されています。■マーキュリーカップ・・・1着賞金2300万円→2800万円■クラスターカップ・・・同2300万円→2800万円■ダービーグランプリ・・・同2000万円→2500万円■シアンモア記念・・・同500万円→1000万円■一條記念みちのく大賞典・・・同500万円→1000万円■OROオータムティアラ・・・同500万円→600万円■ビューチフルドリーマーカップ・・・同400万円→600万円■南部駒賞・・・同500万円→600万円■留守杯日高賞・・・同400万円→500万円■ひまわり賞・・・同400万円→500万円■プリンセスカップ・・・同250万円→500万円■オパールカップ・・・同300万円→500万円■せきれい賞・・・同300万円→500万円■ハヤテスプリント・・・同300万円→500万円■OROターフスプリント・・・同300万円→500万円 交流重賞は近年他主催者の賞金増額が活発で、例えばグランダムジャパンの各レースなどは2010年のシリーズ創設時は全国の中で高額だった1着賞金もここ2年ほどは下位になっていた状況。地方競馬交流重賞も同様でした。ダービーグランプリやビューチフルドリーマーカップは“もう一声”欲しい気がしますけども、賞金増額でより強い遠征馬が来てくれればレースもより盛り上がるでしょう。 シアンモア記念・みちのく大賞典は実に20年ぶりの1000万円台復帰になりました。メイセイオペラが勝った98年・99年のシアンモア記念の1着賞金は1500万円、みちのく大賞典は2000万円だったんですけども、それには及ばずとも、この2レースに加えて桐花賞、伝統の一戦と呼ばれるレースに高い賞金がかかるのは良いことです。★2000年にメイセイオペラが勝った時のみちのく大賞典は1着賞金1500万円 他には、既にお気づきの方もおられるでしょうが、一般競走・特別競走の1着賞金も増額されています。この辺はここで詳細を書きませんので岩手競馬公式WEBサイトでご確認ください。3月11日からの春競馬は新シーズンの賞金額でスタートします。 レースに大きな影響を与えそうな変更が賞金額以外にあります。岩手競馬ではクラス分けの格付け賞金の計算として、例えば2021シーズンは在籍馬に関して「2021年3月19日以前の15走分」、転入馬に関しては「通算11開催以前(2021年は8月22日からの盛岡開催)の転入の場合は在籍馬と同じく2021年3月19日以前の20走分」、通算11開催以降の転入馬は「通算11開催初日前日以前(2021年は8月21日)の20走分」の二段階で格付け賞金を計算していました。 つまり前年度から岩手競馬にいる馬(在籍馬)は春の開幕時点で、転入馬は春と夏の転入のタイミングで所属クラスが振り分けられて、その後は成績によって上下するだけでした。 2022シーズンはこれが、在籍馬についても「8月下旬時点での前12走」で再計算されます。春だけではなく夏にも“降級チャンス”が生まれるという事ですね。 「春先は降級馬を狙え」は序盤の馬券戦術ですが、厩舎サイド的にも「手頃なクラスに入る降級馬」を上手く確保しておくことが勝ち星を増やすテクニックなわけで、それが春だけでなく夏にも・・・という事なら調教師リーディングにも影響が出てくるような変更になるのかもしれません。 “既にお気づきの方もおられる”という事では、北上川大賞典の施行距離が2500mから2600mになっているのに気がつかれた方もおられるのでは。 大井・金杯と並ぶ2600mになるのですが、「ダート最長距離重賞」を狙ったというわけではなく、2500mのスタート地点と照明塔の位置関係になにか都合が悪い部分があったから・・・が距離延長の理由な模様です。という事で2022シーズンの北上川大賞典はダート1000mと同じ地点からのスタートになります。 さて、重賞競走一覧をざっと見て、重賞競走の数がずいぶん増えたなと感じました。2017年にのべ49レース(グレードレース込み)になっていた重賞競走数は、翌2018年、準重賞の設定によって重賞38・準重賞12となりました。そこから再格上げだったり新設だったりがあって2021年は重賞45・準重賞7。2022年は重賞48・準重賞7。重賞で増えた分はJBCの3レースとしても一時期より10レース増えた計算になります。 1着賞金が上がってきて以前あったような「1着賞金150万円のM3重賞」もなくなっていますが、一方でA級特別最上位組の1着賞金が120万円になったことで1着賞金150万円の準重賞の立ち位置が微妙に感じます。販売戦略的な側面もあるのでしょうけども、トライアル的なM3は再度整理が必要なのかなと思ったりします。 あとはやはり「シーズン完遂」ですよね。ここ何年かはどこかの重賞が抜けたりしていますから、2022シーズンこそは全重賞が行われたうえで1月の冬休みを迎えることができる・・・という1年になる事を願います。
2022年02月17日
木曜担当のよこてんです。 さてまずは今日10日に行われた調教始め式の話題から。3月の特別開催開幕まで1ヶ月となった本日、盛岡・水沢両競馬場で安全祈願祭と馬場清めの儀式が執り行われました。 春競馬のスタートが早まったことから一昨年までよりも一週間ほど早くに行われるようになったこの調教始め式ですが、今年の盛岡競馬場は昨年の同じ頃に比べると雪自体は少なめに見えます。 2月に入ってからの盛岡はまとまった雪が降ることなく来ていまして、競馬場だけでなく下界の自分の家の周りなどにしてもここのところは雪や氷が徐々に減っているくらいです。北海道は相変わらずの豪雪、日本海側や関東中部方面も今晩から明日にかけて降雪というニュースを見るとちょっと申し訳ない気もしてきますねえ。日本海側で凄く雪が降る時って、北上や水沢あたりは降るけど盛岡は案外降らないパターンが多いんですよね。★昨年の今時期に比べるとこれでも雪自体は少なめ 気温は低めですけどもね。去年も寒かったですが今年もなかなかのもので、去年共々ここ何年かの中ではかなり寒い方に入ると思います。 「雪は少ないけども寒さは厳しい」と言うか「寒さは厳しいけれど雪は少ない」と言うか。言っているのは同じ事なんですけど、よりポジティブに聞こえる方を採っていきたいですね。 いずれにせよ厳しい寒さはまだしばらく続きそうな感じですし、1ヶ月後の開催再開に向けての調教が順調に進んでいってくれることを願うばかりです。★報道陣の取材に応えるのは工藤裕孝調教師(岩手県調騎会理事)。「今年のJBCでは地元から活躍できる馬を一頭でも出せればいいよね。そうなれば岩手競馬ももっと盛り上がると思う。賞金類ももっと上がって、良い馬を入れることができるように、ね」 そして先日の2月8日。佐賀競馬場を訪問しました。佐賀記念と、期間限定騎乗中の山本聡哉騎手・小林凌騎手の騎乗ぶりを見る目的です。「レースの流れとかがやっぱり違いますからね、少し時間がかかったかもしれないけれど、こちらの競馬にもだいぶ馴染んで来ました。“佐賀で○勝する”みたいなものにはこだわらず、勝てるチャンスがあれば逃さないように。あとはしっかり動ける体勢にして地元に戻りたいですね(山本聡哉騎手)」「こちらの毎日は凄く楽しいです。今月いっぱい佐賀で騎乗する予定ですから、残りの期間も頑張ります(小林凌騎手)」★前に山本聡哉騎手、後ろに小林凌騎手。岩手の騎手2名がパドックで前後に並んだシーン 当日は両騎手ともども惜しい結果が多かった!差の無い2着や3着、それも勝ったかと思うようなレースが多くて、できれば勝つところを見たかった自分としても惜しい限りではありましたが、佐賀の地で元気に騎乗する姿を見る事ができたのは良かったです。 佐賀で岩手の騎手が複数同時に期間限定騎乗するのって、10数年前に若手騎手がまとまって来たとき以来?ただ当時の成績を見ると磐手から行った騎手の所属が「岩手」のままになっているので、その頃は「期間限定(短期所属)」という仕組みではなかったかもしれない。★騎手欄の表記が山本聡哉騎手は「山本」、小林凌騎手は「小林」で、岩手の感覚で見るとなんかちょっとあっさりしたように感じます 佐賀記念はJRAのケイアイパープルが優勝。前走の名古屋グランプリではヴェルテックスの末脚に敗れましたがそのヴェルテックスは川崎記念3着でしたし、ここでのケイアイパープルの勝利に不思議はないと思います。小回りを苦にせず早めのスパートもできる地方のコースが合う馬。ダート重賞はこれが4戦目、地方でのそれは2戦目ですが、今後その名を目にする機会が増えていくのではないでしょうか。 1番人気3着のメイショウカズサにとっては乾いた力のいる馬場が負担になったでしょうし、それに過去の成績をみても「冬場を挟んだ休み明け」はイマイチですからね。その結果アメリカンフェイスに、浦和記念では3秒近くあった差を逆転されてしまった・・・という事でしょう。気温が上がるにつれて調子も上がっていくはず。 佐賀のナイター競馬を初めて見ましたが、全体に明るい印象をうけました。カメラの設定でいうと、盛岡と佐賀では佐賀の方が二回りくらい“明るい”(ISO・シャッター速度・絞りの設定的に)んですよね。設備が新しいというだけでなくコースの砂が明るい色ということもあるのかもしれないな・・・とか思って見ていました。 西日本と東日本で砂の色が違うのは仕方が無いところですが、明るい色の砂って良いな~とかちょっと思ったりした佐賀のナイターなのでした。★ランガディアも変わりなく元気そうでしたよ
2022年02月10日
木曜担当のよこてんです。 2021年度の調教師リーディング・三野宮通調教師は調教師としての開業後21シーズン目にして初のリーディング獲得となりました。騎手としても20年以上トップクラスで活躍し続け、旧盛岡競馬場を知る世代にとってはトップジョッキーの一人としても記憶に残っている三野宮師なのですが、その騎手時代も含めて初めてのリーディングでもあります。ということで今回は三野宮通調教師にお話をおうかがいしました・・・のお題です。★三野宮通調教師(2019年撮影)調教師リーディングおめでとうございました。そこでなのですが、近年は常に調教師リーディングの上位の常連になっていたところからのリーディング。このように勝ち星を増やしてきたのは背景にどんな作戦というか工夫があったのでしょうか?「今シーズンは40馬房まで増やして戦えたというのがひとつですね。ご存じだと思いますが数年前に禁止薬物の問題がありました。それで気持ちを落としてしまう、後ろ向きになってしまうのは、そうではないと。だったらやれるうちに、やれるだけやってみよう。馬房も増やせるだけ増やしてみよう。そういうふうに気持ちを切り替えたのが良かったんじゃないのかな。やれるだけのことを思い切ってやってみよう、とね」管理頭数が多いだけでなく勝ち星にも繋がっているのは見事だと思います「今シーズンは連勝してくれる馬が多かったですね。前のシーズンまでなかなか勝てなかった馬が連勝してくれて嬉しかったですし、自分にとっても勉強になりましたね」昨シーズン(2020年)の66勝から81勝に勝ち星を伸ばして勝率は上昇というところも良かったですよね「勝ちを狙う事だけでなく、馬をしっかり出走させることも私たちのできる事だと思っています。馬を預けてくださる馬主さんの協力があってこそですけども、その中でこの成績は、私たちも貢献できたのではないかな」★勝ち馬の写真を馬主さんへ・・・の三野宮師。調教師の仕事も多岐にわたる最近そんな管理馬の中からナイトオブナイツが最優秀ターフホースに選出されました「ナイトオブナイツも“芝が良い馬”だと言うことで知っている調教師さんから紹介された馬です。何ぶん乗り方が難しい馬でね、力はあるんですが仕掛けのタイミングが早いとゴール前で止まったりしてしまう。今は千葉の牧場にリフレッシュに出ていて3月に戻ってくる予定です。当初は水沢のダートを走りながら盛岡の芝に向けて調子を上げていきたいと考えています」★最優秀ターフホースに選ばれたナイトオブナイツ(いしがきマイラーズ優勝時)そのままナイトオブナイツの話にいきますが、昨年は重賞勝ちこそひとつだったものの芝で2勝、終わってみれば芝シーズンを通じて常に上位の活躍。そんな彼の良さはどんなところでしょうか?「まず脚元に不安がなくて丈夫。ただ繊細なところがあって私なんかも調教で落とされたことがありますよ(笑)。その辺は担当の厩務員さんも苦心しながら頑張ってくれたようです。あとは高橋悠里騎手も上手く乗ってくれたんじゃないでしょうか。一緒に戦いながら馬の持ち味を引き出す乗り方をしてくれたね」ところで、三野宮先生はどんなやりかたで馬を集められているのでしょう?「ここ数年は集めるというよりは頼まれる形が多いですね。これまでお付き合いがあった馬主さんだけでなくその馬主さんのつながりとかでね。おかげさまで馬房が空くことはほとんど無くフル回転でした」調教師開業から21年目にしてのリーディング、自分としては“ようやく”というか“とうとう”というか。騎手の頃も知っているだけに感慨深いです「まあ自分はそういうタイプなのかもね(笑)。“トップ獲れたかな”と思うとなにかがあって獲れなかったり。こればっかりは仕方がないのかな(笑)。それはそれとして、今シーズンは厩務員さん達も頑張ってくれて1年間コンスタントにやってこれたのはありがたいですね」三野宮通調教師が仕事の中で大事にされていることは何でしょうか?「まず馬を無事にレースに送り出すこと。そして状態が良い時は逃さずしっかり勝つ、そのためには騎手を変えたりすることも辞さない事ですね。 自分は騎手を考える時、メンバーを見てよりは馬の状態を見ての方が多いです。馬の状態が良い時にどういうレースをするべきか?相手関係に恵まれたりしてたまたま勝つのはその時だけで終わってしまいますからね。馬の状態がこういう時ならどんなレースがいいのか?先に繋がるのか?はいつも考えています」ひとつ追加で。先生の厩舎的に盛岡水沢・芝ダート、どの辺が厩舎的に得意というか合うというか、そんな傾向があったりしますか?「盛岡かな。ダートの短距離を狙う事が多いですし、芝の馬を良く預かるんですよね。芝を目指してくる馬が多いから、ここ何年かは盛岡の方が成績が良いんじゃないかな(※注 2021シーズンは盛岡40勝:水沢41勝でしたが、2020は盛岡41勝:水沢25勝、2019は盛岡35勝:水沢30勝でした)」★三野宮通調教師(右)と三野宮勇元騎手(左)。三野宮勇元騎手は今、大井競馬で調教師補佐となっているここ何年かはずっと上位にいたからこその今年のリーディングです。来季もまた上位で闘われることを期待しています「そうですね。これまで同様、馬を無事にレースに送り出して、勝つべきレースはしっかり勝てるように。やっぱり上の方で争えるようでなければね。頑張ります」 2021シーズンの調教師リーディングは、以前もここで書きましたが、「序盤からリードを拡げていた三野宮通調教師」対「終盤猛追する板垣吉則調教師」の争いが激化する一方となり、2021年の新年が明ける時点で三野宮師79勝対板垣師78勝、残り2日でどちらに転ぶか・・・という状況になっていました。 皆さんご存じのように結果的には1月2日の5レースまで行われて以降打ち切りになったわけですが、その1月2日の5つのレースの中で三野宮師が2勝を挙げたのが大きかった。 そのレース終了時点、三野宮師が81勝、3勝と差を拡げた時点での板垣師の残り出走数は5。つまり5戦4勝しないと順位を逆転できなかったわけです。競馬に何があるか分からない、そこで5戦5勝の結果になってもなんら不思議ではないとはいえ、ギリギリ終盤で挙げた1月2日の2勝は大きな価値があったと思います。★1月2日の5レースを制したカガノワール号。主戦・岩本怜騎手で勝ち取ったこの1勝の価値は小さくなかったはず 最優秀勝利回数調教師としての表彰は受ける事ができなかった三野宮通調教師なのですが、そこは「勝ち星でトップを獲れた事は自分たちの誇り」と前向きに振り返ります。 改めて思い返してみれば、騎手時代も常に10位圏内、トップ5を争いつつ毎年複数の重賞を勝つような位置にいながら、騎手リーディングは菅原勲元騎手・小林俊彦元騎手・佐藤雅彦元騎手に阻まれてついに届きませんでした。騎手時代から通算すればあしかけ40年以上を経ての待望のリーディングは“おめでとうございました”の言葉しかありません。来季もまたこれまでのように上位を争う厩舎としての活躍を期待しています。
2022年02月03日
木曜担当のよこてんです。 今回は遠征騎手のお話という事で、25日に高知競馬場で行われた『全日本新人王争覇戦』と、現在兵庫で期間限定騎乗中の高松亮騎手の騎乗ぶりをお伝えしようと思います。 まず新人王争覇戦。岩手からは当初岩本怜騎手と関本玲花騎手の2名が出場する予定だったのですが、岩本怜騎手は当日騎乗変更となって関本玲花騎手のみの出場となりました。★新人王争覇戦出場騎手集合写真。出場扱いの10名での撮影となりました 今回は変更が多かったので改めて補足しておくと、一番最初に選定された12名から浦和・赤津和希騎手が辞退して愛知・浅野皓大騎手(補欠1位)に変更。その後、金沢・兼子千央騎手が辞退、補欠2位の高知・妹尾将充騎手、同3位の大井・大木天翔騎手も辞退となって高知・濱尚美騎手が出場することになった・・・のがレースの前の週までの動き。 そして当日。岩本怜騎手と東川慎騎手が出場辞退との報があり、地元から井上瑛太騎手・岡遼太郎騎手が騎乗することになりました。 岩本怜騎手・東川慎騎手については詳細は発表されていませんが、恐らく笠松競馬で新型コロナ陽性者が複数出た事による遠征自粛ということだと思われます。遠征自粛→当日騎手が足りなくなって地元で騎乗の順番ではないかと。 岩本怜騎手は一昨年の新人王争覇戦にも出場予定でしたが前年の冬の水沢で負傷して、昨年はレースが実施されなかったために出場できず。“三度目の正直”になるかと思われた今回も出場叶わず。運が悪いというかなんというか・・・。しかしまだもう1年出場できる資格があるし、他の辞退した騎手共々、次回の機会こそしっかり掴んでほしいと願うばかりですね。 そして急遽騎乗となった2名ですが、主催者より「ポイントの対象にはならない」と発表されており、今回の新人王争覇戦は12名ではなく10名で争われたことになります。ということは井上瑛太騎手・岡遼太郎騎手は“出場していない”扱い→次回は正式に出場できる?つまり新人王争覇戦に2回出る?のかな?実質出ていないんだから次は正式に出場できますよね?★第一戦で岩本怜騎手の代わりに騎乗した岡騎手。しかしゼッケンは岩本怜騎手のまま さて当日まで変更が相次いだ今年の全日本新人王争覇戦ですが、レースはこれまでと変わらず白熱したものになりました。 まず第一戦。1番人気はJRA・小林脩斗騎乗のトーセンミラクル、2番人気は高知・多田羅誠也騎手騎乗のスワンダフル、3番人気は関本玲花騎手が騎乗したヴィルセキュリティ号。それら人気上位馬が好位でせめぎ合った結果、直線5番手あたりからヴィルセキュリティが差し切ってゴール。関本玲花騎手が一戦目を制しました。★第一戦優勝は関本玲花騎手! これまでにも高知で何度か騎乗している関本玲花騎手でしたがこれが“高知初勝利”。岩手が冬休みに入って以来の約1ヶ月ぶりの実戦騎乗もこなしてまずはお見事。 第二戦は第一戦とは一転、先行勢が厳しくなる展開に。ここでの1番人気は第一戦同様にJRA・小林脩斗騎乗のジッテ、2番人気はJRA・秋山稔樹騎手騎乗のニシノアマタ、3番人気は佐賀・金山昇馬騎手騎乗のララチャン。そして逃げたのは4番人気、関本玲花騎手騎乗のコジョウザン。3コーナー手前で二番手ニシノアマタがコジョウザンを交わして先頭に立ったのもつかの間、外をまわって来た差し馬勢が先行勢を一気に捉えて、先頭でゴールに飛び込んだのはJRA・泉谷楓真騎手騎乗のルールダーマ、8番人気をひっくり返す勝利。★第二戦優勝はJRA・泉谷楓真騎手 第一戦は6番人気6着だった泉谷楓真騎手なのですが、関本玲花騎手が第2戦で7着に終わり、また他の第一戦上位の騎手もポイントを積み重ねきれず、総合でも泉谷騎手が逆転V。関本玲花騎手はわずか1ポイント差の総合2位。惜しい!結果となりました。★第二戦一周目、ハナに立った関本騎手に秋山騎手が馬体を合わせながら進む「1戦目は手応えの良い馬に上手く付いて行ければ上位が狙えるなと思っていましたが、直線で多田羅騎手の馬が来た時に自分の馬もやる気を出して頑張ってくれた。自分は久しぶりの実戦でヘトヘトでしたが馬が頑張って走ってくれました。 2戦目は、交わされるのが早かったですし、内の方に行かざるを得なくなってしまったのが厳しかったですね。 2戦目で何点取れれば総合で何位になる・・・みたいな事は全く計算していなくて、あとで僅差で2位と聞いて驚きました。あと少し着順が変わっていれば・・・だけど、これも競馬ですからね。高知で初めて勝てました。褒めてください(笑)」 森井美香元騎手以来の“女王”誕生ならず、それも1点差・・・というのは惜しいし残念!ですが、関本騎手が言うとおり、騎手対抗戦は他の騎手との戦いでもありますからね。まずは健闘お疲れ様、ですね。★総合1位の泉谷騎手★関本玲花騎手は1ポイント差の2位★総合3位の多田羅騎手★マスクで分かりづらいけどみんな嬉しそうでした ところで高知競馬場。現在はスタンド1階周辺を全面的に改修中でした。何年か前までの、使われなくなった有人窓口が並ぶ、どうしても“うらぶれた”と感じざるを得なかったイメージはすっかりなくなって、明るくて綺麗で使いやすい競馬場に変貌しつつあります。 ちょうどこの新人王争覇戦を含む開催が高知競馬の1開催売り上げレコードになる78億円というニュースもありました。10年前、2012年度の高知の「シーズン」の売り上げが83億円弱でしたから、言ってみれば10年前の1年分を2週間で稼いだわけだから、これはもう“10年ひと昔”どころではないな。 さて翌日は姫路競馬に移動。期間限定騎乗中の高松亮騎手のレースを見てきました。高松亮騎手は2015年にも兵庫で期間限定騎乗していますがその頃は姫路競馬場が改修中だったため騎乗は全て園田競馬場。今回は逆に全てが姫路競馬場になります。「前に来た時は園田でしか乗ってなかったので姫路は初めて。騎手の顔ぶれもずいぶん変わっている感じがします。初めての競馬場で試行錯誤しています」とは高松亮騎手。高松亮騎手は2月17日までの騎乗なのであと3週間。良い経験・良い結果を得てきてほしいもの。 ところで実は、自分も姫路競馬場は初めてだったんですよ。昔、京都に住んでいた頃には園田には何度か通っていて姫路にも行きたいとは思っていたんですが、京都から姫路は案外遠くて。今の仕事になってからも園田は行く機会があっても姫路は無く・・・なのでした。 現地で岸根アナウンサーと話していたんですが、コンパクトにまとまった競馬場というのがまず非常に今風として、ナイター照明どころか調教用の照明も無い地方競馬場ってだいぶ珍しくなってきましたよね。 姫路競馬場は現地に厩舎が無く調教には使っていない完全輸送競馬。なのでコース脇に立っているのはスタンドとパトロールタワーだけ。コース自体は小さめとはいえ、周りの景色が広々と感じます。 名古屋なんかも調教施設が他にあるから現地には照明が無いんですがもうすぐ変わってしまうし、そうすると浦和くらいになるのかな。 しかし姫路は(も?)寒かった。もうちょっと暖かい時に・・・と思ったけど、1月2月に開催される競馬場だからなあ。2月の下旬くらいならもう少し暖かいか。 今年は高知も寒かったですね。土佐弁でいえば「ひやい」。例年だと明るいうちは上着なしでもいいくらいなんですが今年はしっかり着込まないと寒い。今年は日本中寒い冬になったようです。
2022年01月27日
木曜担当のよこてんです。 岩手競馬は今は冬休み中ですが、2月の18日には年度代表馬はじめ各部門および厩舎関係者の表彰が行われる「2021 IWATE KEIBA AWARDS」が行われる事が発表されました。例年より1ヶ月ほど早い実施ですね。 またこれはまだ正式に発表されていないですが、調教初め(馬場開き)は2月10日に行われる予定のようです。 「2021 IWATE KEIBA AWARDS」コロナ禍の影響で昨年同様に関係者のみの式典となり一般ファンの方の来場ができないのは残念ですけども、岩手競馬も新しい春に向けて徐々に加速していく・・・という2月になりそうです。 雪は相変わらず降り積もりますねえ。なんだかんだいって近年最高レベルの積雪の冬になりそう・・・。 さて、ということで今回は2021シーズンの騎手リーディングを獲得した村上忍騎手のインタビューをお届けしよう・・・というお題。早速進めていきましょう。 騎手リーディング獲得おめでとうございました。3500勝達成でお話をうかがった時に“今年は良い感じでシーズンインできた”と言われていましたが、1年間通してもそんな、良い感じでここまで来た・・・という手応えでしょうか?「その時その時の順位はあまり意識していなくて、自分がしっかり仕事をして、その結果としてどうなっているかだけ。そこはホントにあまり意識しないで過ごしました。まあ最後競馬が中止になったりしましたからなんとも言えない所は正直あるかな。 自分自身そこまでリーディングにこだわっていたわけじゃ無い。馬に恵まれた部分もあっただろうと思います。途中ちょっと勝てない時期があった事への反省点もね。最後はちょっと残念な形で終わってしまいましたが、1年間怪我とかなく順調に乗れていましたから、良い一年だったと言っていいかな」★2021年5月9日 地方競馬通算3500勝達成そんな2021シーズンの大きな成果とすればやはりその3500勝「そうですね。シーズンに入るところで“早いところで達成したいな”と思っていた記録でしたから、それをすんなり達成できた点は素直に喜びたいですね」では4000勝はいかがですか?改めておうかがいしてます「あと350勝くらいですか?今のペースだとあと2年くらい・・・。まあ、2年やれるかどうかだよね(笑)。やれるかどうかなんだけども、やらざるをえない状況になるかもしれないし」やらざるをえない状況ですか(笑)。でもここまできたら目指してほしいです「そうですね、せっかくですから目指して頑張りたいです」★村上忍騎手が期待馬に挙げるマツリダスティール。不来方賞は確かに強かったさて、次のシーズンに向けて村上忍騎手が期待されている馬を何頭か教えていただくとすると、どんな馬が挙がってきますか「まずマツリダスティールですね。ちょっとムラッ気みたいな所を見せて大敗もありましたが、コンスタントに力を発揮してくれれば、もう一皮むけてくれたら古馬と戦うようになっても面白いんじゃないかと思っています。 自厩舎の馬だとオープンの2頭、リリーモントルーとリンシャンカイホウかな。 リリーモントルーは、重賞をもうちょっと使ってみたかった。今季は思うようにローテーションを組めなかったりしたから、来シーズンはそこを上手く進めて重賞に挑んでみたいですね。 リンシャンカイホウは芝の短い所をもう少し使ってみたかったなというのがありますね。芝であればどんな競馬でもできる馬ですからね。 どちらも一つ年を取って7歳・8歳。その辺の力関係が来年どうなるかな・・・ですけどもね」★リンシャンカイホウ。いつも書いていますが村上実調教師と村上忍騎手と、村上朝陽厩務員との「三代重賞制覇」が楽しみ若駒では?「2歳では、自厩舎では無いけどサンエイブレーヴ。水沢に来てからの走りが良かったし、元々身体も良い馬。まだ走りに若さが残っていて、もっと前から期待していたのですがなかなか結果に繋がらなくて。終盤の水沢での走りがちょっと目を見張る感じの所があったから、3歳になってから飛躍してくれないかなと楽しみにしています」★2歳のオープン特別「太夫黒特別」を勝ったサンエイブレーヴ。馬体重が増えている点も「それで走りが重苦しいことは無いから」と村上忍騎手村上忍騎手自身の来シーズンの目標を挙げるとすると「毎年そうなのですが、怪我をしないで1年間無事に乗り切る事。あとは馬との巡り合わせもありますから、そこでどんな結果を残せるかですね。それからこれは自分だけの問題じゃないんですが、ちょっと取り止めが多かったですよね。それをどうしていくか。それは皆で考えるべき事なのでしょうけども」その話が出たのでもうちょっとおうかがいしたいんですけども、先日のような形で取り止めが続いてしまうのって、騎手の立場からするとどうなんですか?モチベーションとか「やっぱりモチベーションは下がってしまいますよね。状況が悪かったから止めざるを得なくなりましたが、自分たちだって競馬はやりたい。そのために馬の状態を仕上げていっているわけですからね。それが突然取り止めとなるとモチベーションを維持するのはなかなか大変だよね」まあやっぱり気持ちが切れますよねえ・・・「ただここ数年の冬はね、雪なんか凄いものね。そういう気候になってきているのだとしたら、もう毎年のことだから、しっかり考えた方が良いなと思いますね。誰も得しないし、お客さんに対しても失礼だし。そこは皆で考えて工夫して、なんとかしたいですね」 村上忍騎手は昨年・一昨年、怪我や騎乗停止等でシーズン中に騎乗していない時期がありました。昨年は怪我で一ヶ月半ほど乗れなかった事もありましたし、この2021シーズンはリーディングという事だけでなく“シーズンを騎乗し切った”事に少なからぬ達成感があるのではないかなと思います。 4000勝に関しては常にわりとぼかし気味(笑)ではあるのですが、今回は前向きなお答えをいただけました。2021シーズンの感じならあと2年ちょっと。その手応えがあったという部分でも175勝を挙げたこのシーズンは良い一年だったのだろう・・・と思いますね。 3月12日からスタートする新シーズン(のリーディング争い)、2021シーズン同様の活躍を期待しています。 さて、次週は予定通りなら高知・新人王争覇戦のお話をお伝えして、その次にはリーディングトレーナー・三野宮通調教師のインタビューをお届けしたいと思っております。
2022年01月20日
木曜担当のよこてんです。 先の1月12日に2021シーズンの岩手競馬各部門表彰馬および厩舎関係等表彰者が発表されました。例年より一ヶ月ほど早い発表となった今回、注目の年度代表馬にはエンパイアペガサス号が選出されました。 同馬はこれまでにも2016年度の3歳最優秀馬、2018年度・2019年度の4歳以上最優秀馬に選出されていて(他に2020年度の特別表彰)、同時にそのたびに年度代表馬の座を争ってきましたが(※年度代表馬は各部門表彰馬の中から選ばれる)、あと一歩の所で逃してきた。8歳となって現役最後の年、ついに4歳以上最優秀馬だけでなく年度代表馬の名誉をも獲得・・・という事になりましたね。 この間の選定の経緯や関係者の反応も逐一見てきて、「エンパイアペガサスは年度代表馬にふさわしい馬なのか、そうではないという事なのか?」は毎年考えさせられるものがあったように思います。 折しもJRAの方面では「マルシュロレーヌの偉業をどう評価すべきか?」という点でSNS上の議論が活発だったように見えました。こういう部門賞であったり年度代表馬であったり、特別賞・特別表彰であったりの選出はなかなか一筋縄ではいかないものがあるのだと思います。どの方面にもすっきり納得の結果・・・という事の方が珍しいようにも思いますね。それはこの稿の後でもう一度触れます。 ようやく、ついに、の年度代表馬。これまで待ち続けた関係者の皆様、おめでとうございました。 2歳最優秀馬にはカクテルライト号が選ばれました。2012年度・ブリリアントロビン以来の牝馬からの選出です。 シーズン終盤は着順を落とす形で終わりましたが、寒菊賞の結果は初の水沢だったという面もあったでしょう。金杯が行われていればもっと良い着順でシーズンを終える事ができていたのではないかと思います。 また本馬は2018年度のチャイヤプーン以来の“岩手デビュー馬ではない2歳最優秀馬”ともなりました。 そもそも今季は、2歳重賞の中で岩手デビュー馬が制したのは若鮎賞・ギャレットのみ。寒菊賞を制し金杯でも有力候補に挙がるはずだったクロールキックもホッカイドウ競馬から移籍してきた馬です。 チャイヤプーンの年は、シーズン終盤になって移籍してきた同馬がそれまでの2歳戦線の活躍馬を寄せ付けなかった事で、岩手では3戦2勝の成績をもって2歳最優秀馬に選ばれたわけですが、今季はその時とはまた少し違った状況に見えます。 そのチャイヤプーンは3歳になってダービーグランプリを制し、今季も岩手で重賞2勝など全国で重賞級の活躍を見せ続けています。カクテルライト号にもさらなる成長を期待したいですね。 3歳最優秀馬はリュウノシンゲン号が選出。2歳最優秀馬に選ばれた昨年に続き2年連続での部門賞獲得となりました。 その昨年は本馬とマツリダスティール・ゴールデンヒーラーで三つ巴の2歳最優秀馬争い。今季もその三頭がそれぞれ力を見せ、不来方賞も結果この三頭が上位を占めています。不来方賞でのマツリダスティールの圧勝はなかなか衝撃的ではありましたが、3歳二冠の本馬の実績は世代の最優秀馬にふさわしいものでしょう。 なお本馬は不来方賞後に移籍しています。11月の楠賞で2着を確保して力量のほどは示していますから、いずれどこかでまた全国に名前が知られるような活躍を見せてくれるのではないかと楽しみにしています。 最優秀ターフホースにはナイトオブナイツ号が選ばれました。 ロードクエストの印象が強烈だった今季の古馬芝戦線の中、せきれい賞2着・岩手県知事杯OROカップでも4着と存在感を見せました。重賞勝ちはいしがきマイラーズ、今季新設のものひとつではありましたが、芝シーズンの開幕からそのラストまで安定した成績を残した点は高く評価されてしかるべきものだと思います。 ゴールデンヒーラー号が最優秀牝馬に選ばれたのはごく順当。 今季は重賞3勝、昨年の三つ巴の活躍を今季も演じて牡馬にも負けない戦いを見せ続けました。この馬に関してはいろいろ付け加えることはない。この先どんな結果を残してくれるか?の方に注目しつつ期待するべき存在のはずです。 それ以上に“順当”と言えるのが最優秀短距離馬に選ばれたキラットダイヤ号でしょう。 転入初戦こそ3着に終わりましたがその後は4連勝、それも2馬身・6馬身・10馬身・10馬身と走る度に着差を拡げていくような圧倒的な走り。 キラットダイヤを管理する板垣吉則調教師の元には昨年の早池峰スーパースプリントを制したコンサートドーレもいましたが、同厩というだけでなく同馬主ということもあってか、今季はキラットダイヤの方を中心に置くローテーション、レース選択だったように見えました。その通りの活躍を見せ、それでいて4歳牝馬(2022年は5歳)・絆カップの時点で通算17戦という、キャリア的にも余力が十分ありそう。新シーズンにはこれまで以上の活躍を・・・と期待したくなりますよね。 ところで最初にも少し触れた年度代表馬や部門賞の選出の話。各方面に納得の結果というのは、意外になかなか難しいと思うんですよね。 「優れた成績を残した馬」なのか、「印象に残った馬」なのか。自分は後者、「その年に最も印象的な活躍をした馬」、“Most Impressive Horse”でいいと考えています。「今年はこの馬の年だった」という馬、いるじゃないですか。必ずしも連戦連勝でなくとも、G1や大レースを勝ちまくっていなくても、1年中話題になり続けそれに見合った走りをしてきた馬。「○○年の馬」と言えば真っ先に名前が挙がってくるような馬。それでいいんじゃないか・・・とは思っています。 しかし、そうするとどうしても個々人それぞれの評価であったり感想であったり視点であったりが、簡単ではない。 では強い弱いで決めよう・・・としてもやっぱり難しい。 例えばリュウノシンゲン。“スプリングカップ・ダイヤモンドカップ・東北優駿と完勝してきた同馬をぶっちぎっているマツリダスティールはもっと強いんじゃないか?”な見方もあって当然。ですが今季の直接対決が不来方賞一度だけでは評価は割れる。なら重賞3勝の方・・・となるのもまた当然でしょう。 加えてこういう選定の過程では“空気”とか“流れ”とか、あるいは“バランス感”みたいなものもどうしても影響してくる様にも感じます。 例えばグランダムジャパンのように路線毎・レース毎にポイントを振って、その獲得ポイント上位馬を表彰対象にするというやり方なら、そういう“感覚的”な部分が介在しづらくなるのではと思います。M1何点、M2・M3は何点。グレードレースや交流競走、地元・遠征でプラスアルファ。レースの格に点数を付けるのは嫌われるかもしれませんが、合理的であり分かりやすいのではないかと考えますがいかがでしょうか。 このことは前にも書いたような気がするのでこの辺に留めます。 改めて、各部門表彰馬の関係者の皆様、おめでとうございました。
2022年01月13日
木曜担当のよこてんです。 一週間前のこのブログで「桐花賞に出走する有力馬の直前情報」とか書いていたのが遠い昔のようです。 結局その桐花賞は、降雪のためにレース取り止めになりました。★12月31日の2レースの状況。30日は晴れ間も見えるくらいだったのに・・・ そして年が明けての1月2日が5レースまで実施して6R以降取り止め、翌3日は全日取り止めとなったので明け3歳の重賞・金杯も取り止めに。桐花賞・金杯共にレース史上初めて“欠番”が出る取り止めとなりました。さらに言えば昨年に続いての“レース取り止め”のままの冬休み入りにも。 31日は降雪が続く事による視界不良・雪と砂の混じった塊が馬の蹄の裏に固まる事による危険。2日・3日は馬場の上の方が溶け出している一方で下の方が固く凍ったままのため、馬の足が滑って危険という事だったようで、それぞれ理由というか原因は若干異なるのかなと思います。★年明けの1月1日に大雪が降った影響もあったようです SNSの方にたくさん意見をいただきましたが、開催時期よりは馬場の排水性が悪い事がより大きな影響をもたらしているのかなと、自分は考えています。 「雪で取り止め・中止」というと、例えば関東方面とか西日本の方とかの方は「ああ、雪が積もるからだな」と思われるかもしれません。 “雪が積もるから取り止め”のパターンは岩手では12月31日の、あるいは今日の川崎のような時ですね。降雪で視界が悪くなるという事もありますが、それよりは蹄に塊が付着する(騎手は「高下駄を履いたような感じ」と言います)のが危険で、馬の故障とかレース中の事故とかの危険性が跳ね上がる。レース間にハローがけをしてもすぐにコースが白くなる・・・くらいの降り方をするとこのパターンになりがちです。 水沢の、水が浮いてくるのはまた違っていて、以前にも書いたかもしれませんが、「夜間の低温では凍っていた馬場内部の水分がハローがけや日中の気温上昇で溶けてしみ出してくる」事によるものです。 つまりコースの砂や路盤の土自体が含んでいる水分・湿気の部分が溶けたり凍ったりしているわけなので、“今まさに雪が降っている”事ではあまり違いが出ません(もちろん馬場に水分が入るという事での影響はあります)。 お隣の国・韓国のソウル競馬場では、マイナス10度以下になる冬期間でもダート競馬を通年でやっていますし、そんな今時期のレース映像を見てもコースに水が浮くような所はあまり見かけません。 ま、ソウルは乾燥していますからね。雪も降るけど少ない。今くらいの時期でも馬場水分量8%とかの、日本の感覚だとカラッカラな砂のようです。気候条件が違うから単純比較にはならないですが、そういう水分量・乾燥具合が影響しそう・・・なヒントにはなるかも。 基本的に水はけがあまり良くないからコースの砂や路盤の中の水分量が一年中多い、冬になると凍ったり溶け出したりする・・・なのでしょうから、水はけが良い馬場であれば状況も変わるかもしれません。 まあ、水沢競馬場ってもともと川縁の田んぼだったところで、標高なんかすぐそばの北上川の水面とほとんど変わらないですからね(水沢駅周辺あたりの街の中心部に比べると競馬場は20mくらい低い)。低湿地の素養があるところだからそもそも“万全な排水”は難しい立地なのかもしれない。とはいうもののなんとか良い解決策を見つけ出してほしいなと思いますね。 という事で、レギュラーシーズン終了により騎手リーディング・調教師リーディング争いも終了。騎手は村上忍騎手が、調教師は三野宮通調教師がリーディングを獲得しました。 1位・2位の差が騎手は2勝差、調教師は1勝差で1月2日・3日に突入する形でしたが、辛うじて行われた2日の全5レースの中では順位は変動せず、それぞれ1位を守って終わりました。 村上忍騎手は2019シーズン以来2年ぶりのリーディング奪回。秋頃にちょっとペースが落ち山本聡哉騎手の猛追を受けたものの、6月に1位になってからは最後までリーディングを譲りませんでした。★村上忍騎手(右・ハーベストカップ優勝時) 三野宮通調教師は開業以来初のリーディング獲得。5年前の2017シーズンは12位でしたが2018年・19年が4位、20年は66勝・5位からの今年は81勝・1位。近年は常にリーディング上位を争う位置に付けていたところからついに1位となりましたね。★三野宮通調教師(左・いしがきマイラーズ優勝時) 村上忍騎手・三野宮通調教師、おめでとうございました! 12月31日はエンパイアペガサスの引退式も行われました。同馬のお話はいずれまとめて書きたいと思っているので、引退式もその時に触れることにしましょう。 最後に改めまして、あけましておめでとうございます。今年も岩手競馬をよろしくお願いいたします。
2022年01月06日
木曜担当のよこてんです。さていよいよ大晦日。桐花賞の日がやってまいりました。先週から取り止めが続いていた水沢競馬ですが12月30日は厳しいコース状況ながらも全レース実施して終了。31日も、決していいコース状態ではないかもしれませんが、30日の段階では競馬ができそうです。 天候急変という事が無いとは言えないのでなんとなく持って回ったような言い方になりますが、今の時点ではひとまずこういう感じで。31日を待ちましょう。 という事で、今回は桐花賞に出走する有力馬の直前の状況をお伝えしてレースに備えようというお題。 まずはエンパイアペガサスです。既報の通り、同馬はこの桐花賞が引退レース。2015年10月のデビューから足かけ7年に渡る現役生活の、最後の戦いとなります。★エンパイアペガサス(北上川大賞典優勝時)「追い切りは水曜日に行いました。先週からの調整過程からすると火曜日ではなく水曜に追い切るのがより適当だろうと考えてのこと。もちろんここまで本数を十分にこなしてきていますし、体勢は整ったと思っています。 これが最後のレース、引退式も行う予定ですが、大事に乗って終わらせるのではなく、最後まできちっとしたレースをしたい。それだけの体勢はできた。良いレースを狙っていきますよ(佐藤祐司調教師)」 最後のレースを戦ってすぐ引退式で、“勝って終わらせる”のは決して容易いことではない・・・とは思いますが、一番いい形での締めくくりを願うのは関係者の皆さんだけでなくファンの皆さんも同様ではないでしょうか。 同厩舎からのもう一頭の出走馬・ゴールデンヒーラーはどうでしょうか?★ゴールデンヒーラー(ひまわり賞優勝時)「クイーン賞はこの馬にとっては初めての、あれだけ砂を被る形のレースになりました。その分動けなかった、持ち味を活かし切れなかったですね。ただ、決して悪い内容ではなかったとも思っています。 今回も楽な相手ではないですが来年以降強い相手と戦っていくためにも先につながるレースを(佐藤祐司調教師)」 昨年のこのレースではエンパイアペガサスの2着だったヒガシウィルウィン。その後もシアンモア記念ではエンパイアペガサスに競り勝ち、みちのく大賞典ではまたしてもエンパイアペガサスの2着・・・と一進一退の攻防を繰り広げてきました。トウケイニセイ記念を制して挑む今回は昨年の雪辱を狙います。★ヒガシウィルウィン(トウケイニセイ記念優勝時)「一度叩いた上積みが大きくて状態は非常に良いですね。追い切りも良い内容でした。昨年の時のような力のいる馬場よりは水が浮くくらいの軽い馬場の方がより良いだろうとは思いますが、特に気にしてはいません(菅原勲調教師)」 エンパイアペガサスの手綱を取るのは山本政聡騎手、ヒガシウィルウィンは山本聡哉騎手。鞍上の“兄弟対決”も当然興味深いところですよね。 一昨年のこのレースを制し年度代表馬にもなったヤマショウブラック。実はその後重賞勝ちはなく白星もひとつだけに留まっているものの、ここまで2シーズン、オープン戦線で見せ場を作ってきました。その一昨年以来二度目の桐花賞はどんな状態で挑むのでしょうか。★ヤマショウブラック(北上川大賞典出走時)「追い切りの時は深い馬場ながらも良い時計が出ていて、状態は良いと感じます。桐花賞を勝った時、3歳の頃に比べると若干勢いはね、見劣るのかもしれませんが、最近のこの馬としては良い状態ではないでしょうか。 軽い馬場の方がいいのは確かでしょうが、今回の追い切りは力のいる馬場状態でもあれだけ動けていましたから、明日の馬場状態次第ですけども、モサモサの砂でも脚を使えるかも。実績のあるコース・距離ですからね。それをきっかけにして上位に食い込んでほしいと思っています(小林俊彦調教師)」 同厩舎も二頭出しです。アーバンキッドについてもお話を伺いました。★アーバンキッド(10月24日OROターフ特別優勝時)「やはり芝で実績があるだけに軽い馬場の方が良い、距離も自分の考えではマイルくらいが良いんだろうとは思いますが、障害を使ってきていたのでスタミナはあると感じますしダートもこなしてくれていますからね。ちょっとジリ脚っぽいところがありますから、その辺、長い距離でも対応してくれるのかもしれませんね(小林俊彦調教師)」 最後はツクバクロオーです。転入初戦のトウケイニセイ記念は3着。約5ヶ月ぶりを叩いての岩手二戦目が桐花賞となります。★ツクバクロオー(トウケイニセイ記念出走時)「馬場状態が良くなかったので追い切りの時計は軽めになっていますが、それまでの中間はしっかり乗っていましたからね。前走後も問題なくきていて叩いた上積みは間違いなくあると感じますね。2400mの重賞で好走しているように距離が伸びるのは苦にならない、むしろプラスでしょう。前走のレースを見ていてもちょっとジリ脚な所があると感じたりもしましたから、2000mの、じっくり動ける競馬の方が良いんじゃないかと思います。良い枠も引けたからあとは馬場状態、軽い馬場の方が良いでしょうね(伊藤和忍調教師)」 前走はマイル、転入直前も高知の1300mや1400mを使ってきていたツクバクロオーですが、ダート2400mの高知のグランプリ・高知県知事賞では昨年2着・一昨年3着の結果を残しています。調教師の言葉通り距離延長が文字通りプラスに働くと見るのが自然なのかもしれませんね。 岩手競馬のグランプリ桐花賞は12月31日の水沢10レース、発走は15時50分。明日も寒い一日になりそうですが、まずは無事に競馬が開催でき、桐花賞までたどり着く事を祈りつつ、そして現地におこしの皆様は寒さに十分お気を付けて。ネットで観戦の皆様は、ぜひたくさん馬券を買っていただければ。 そして2021年は大変お世話になりました。2022年が皆様にとっていい年になりますように。それでは良いお年を!
2021年12月30日
木曜担当のよこてんです。 いろいろ考えていて遅くなりました。今回は、先日の水沢開催での取り止めのお話から。 皆様もご存じのように、19日の水沢競馬が3R以降、翌20日は4R以降のレースが取止となりました。いずれも理由は「走路状況の悪化」。開催当日こそ降雪はなかったものの直前の週末に大雪に見舞われた影響があって、両日とも気温上昇にともなってコース全面に水が浮いてくるような状況になりました。途中のレースを取り止めにしてコース整備をして再開を・・・という努力もされましたが、最終的にはその状態でレースをするのは危険との判断から以降取止という形になりました。★20日の1レース前のコース。この時点ではまだ良かったそうなのですが★取り止めとなった頃にはこれだけ水が浮く状況に★前日の取り止め後もコース整備は続けられたのですが・・・ 昨年も複数日が取り止めになりましたが、猛烈な寒気(気温低下)が続いた事による昨年と、気温が高めだったことによる今年と、少し状況は異なるようです。ただ「取り止め」という結果は同じ。ここ何年か12月の開催が予定通りに進んだ事がなくて、今年こそはなんとかと思っていましたが・・・。 今シーズンは冬の開催リスクを減らすべく年明けの開催が近年より一週間早く終わる日程にしていました。 冬は悪い馬場状態が続いてレースだけでなく調教にもリスクが大きくなる。昨年のような複数日の取り止めになる事こそ珍しいとはいえ1日・2日取り止めになる事はこれまでもしばしばあった。“吹雪の中のレース”などもレースをする方としては危険極まりない状況になります。 桐花賞をいつやっていたか?を見ていただくとわかるんですけども、昭和の頃の桐花賞は12月8日とか11月27日とかに行われていて、岩手競馬の開催自体もその辺で終了していました。 平成に入って開催終了が徐々に遅くなっていって、12月の最後まで開催が行われるようになったのは1990年。年明け1月まで開催が組まれるようになったのは1991年。言ってみれば“30年の歴史”があるわけですけども、そろそろ転機なのかもしれません。 今後どうするかを考えていくとして、まずひとつはハード面。 以前のこの時期の水沢での写真を見比べてみて、今年などは以前よりも浮いた水の量が多いのかな・・・という印象があります。★2000年12月31日の桐花賞の日。水は浮いていますがそんなジャブジャブではない感じ★2008年の12月27日、これだけ降ったのですが、★翌28日はこんな感じ。寒かったのかあまり水が浮いていない★29日、2日後になって気温が上がったのか水が浮いてきました もともと水沢のコースは水はけが良くなくて、冬に限らず夏場でもゲリラ豪雨に見舞われて水がはけなくて取り止めになる・・・という事が近年多くなっています。 コースの排水性を良くすればいいのか?コース外に強力な排水設備を設置すればいいのか?あるいはもっと別の手段なり工法なり施設なりで改良・改善できるのか? 例えばより透水性の高い路盤の構造を研究するとか、いっそコース全体をかさ上げするとか、費用を考えずに書いていますけども、いずれにせよ改良に繋がるハード面の対策があるのかどうか?は考えなくてはならないように思います。 それで足りないなら、あるいはそれは費用的に追い付かないというなら、ソフト面での対応を考えてみることにする。例えば盛岡はこの時期でも開催できるコース状態になるというのなら気温が寒くても盛岡で開催する、年末の開催は諦めて以前のように遅くとも12月2週目くらいでシーズンを終えるようにする、いっそ2011年のように12月一週目まで盛岡で開催してそこで終わりにする。その替わり春~秋の開催日を今より増やす・・・。「真冬は開催しない」という選択肢を採る方が賢明なのかもしれません。 そして今年や昨年のような「馬場状態悪化のため」という取り止めの理由に、なにか客観的な基準は持たせた方が良いようにも思います。砂の水分量とか、ペネトレーターで馬場硬度を計測して判断するとか。簡単な話ではないでしょうが、これこれの基準に対してこういう状況だからできます・できませんと見せるのは、お客様に対して大事だし必要じゃないかなと思います。 やっぱり気温が高くなって、降る雪も以前より湿ったものになっている影響もあるんでしょうね。サラサラの雪なんかホント限られた時期にしか降らなくなりましたし。ちょっと前は湿った重い雪が降り始めると春が近づいたなと感じたものですが、今は年中湿った雪で。 さて、10年前の2011年12月23日、荒尾競馬場が廃止されました。SNSにその話題がたくさん挙がってきていましたのでちょっと振り返ってみましょう。 このブログで書いた事が・・・あったかな?2008年から2010年にかけ、冬季休催中の岩手から荒尾に人馬が移動、荒尾競馬場に滞在しながらレースをする・・・という取り組みがありました。 在厩頭数が減っていた荒尾と冬場競馬がない岩手との「WIN-WIN」の関係を狙ったこの冬季交流、3年間でしたがなかなか目新しいものだったかなと思います。 自分が最後に行ったのは2011年12月1日に行われたLJS荒尾ラウンド。廃止まで一ヶ月を切っていた事もあり、場内にはお別れの装飾があちこちに掲示されていました。 岩手から来たと話すと現地の方は「地震は大変でしたね」と気を遣ってくれるのですが、いやもうすぐ廃止になってしまう方がよほど大変じゃないですか、と、そうはいまさら口にはしなかったですけども、そう思ったものでした。★上2008年・下2011年。廃止直前は場内の食堂も減っていましたね★荒尾名物?パドックのど真ん中の大きな木★これも荒尾名物、たすき馬道を通って引き上げてくる馬。最後の頃は使われなくなっていた模様★裏?荒尾名物、物干し竿にずらっと干されるゼッケン★裏荒尾名物その2、コースを2/3周する厩舎-装鞍所間の馬道 スタンドの上の方に上がればキラキラと輝く有明海が拡がり、その向こうには雲仙普賢岳。冬場にしか行った事がないですけど岩手に比べれば暖かくて、なんとなく波の音を聞きながらレースを見ているような、そんなのどかな空気に包まれる競馬場でした。
2021年12月23日
木曜担当のよこてんです。今回は最近の話題をいくつか。 まずはNHKのドラマ『風の向こうに駆け抜けろ』。きたる18日21時より前編が、25日の同じく21時より後編が放送されます。 競馬場内でも予告映像が流れていたり、あるいは放送関連企画が水沢競馬場で行われると報じられている事でわかるとおり、この番組のロケは水沢競馬場で行われました。 10月下旬の、盛岡開催の裏の水沢でロケをしたとのこと。番組公式サイトのスタッフブログを見ると実況の古川さんが“番組内レース”実況をされている事が書かれていますが、その他にも厩舎関係者や騎手の方々も登場する模様。番組を見つつ、どこがどう“水沢競馬場”でどこに誰が出てくるか?をチェックしてみてください。 この『風の向こうに駆け抜けろ』、原作は2014年に出版された古内一絵さんの小説です。続編の『蒼のファンファーレ』も2017年に出版されていて、今回の『風の向こうに駆け抜けろ』の1年後に始まるドラマが描かれております。 ん?という事は、今回のドラマが好評なら続編も・・・??そうなったらいいなあ。自分としてはぜひ春の桜のシーズンにロケをしていただきたいなあ・・・とか思ったりしますねえ。 先の12月14日には現在ファン投票絶賛募集中の『第46回桐花賞』出走馬ファン投票の中間結果が発表されました。細かい順位は公式ウェブサイトをご覧いただくとして、上位5頭は1位エンパイアペガサス、2位ヒガシウィルウィン、3位マツリダスティール、4位ゴールデンヒーラー、5位パンプキンズという順になっております。 エンパイアペガサス・ヒガシウィルウィンは昨年のファン投票でも中間・最終共に1位・2位、レースでも同様に1着・2着を争いました。 正確に言えば、ファン投票ではエンパイアペガサス1位・ヒガシウィルウィン2位でしたが当日の単勝人気ではヒガシウィルウィンの方が1番人気でエンパイアペガサスは3番人気(※2番人気はフレッチャビアンカ)。そして結果は、エンパイアペガサスがヒガシウィルウィンを2馬身半退けて優勝しています。今年は果たしてどんなファン投票の順位になり、どんなレースになるのか・・・?★昨年の桐花賞。1着エンパイアペガサス、2着ヒガシウィルウィン、3着フレッチャビアンカ もちろん有力視されるのはこの2頭だけではないでしょう。3歳牡馬のマツリダスティール、3歳牝馬のゴールデンヒーラーにも当然注目・・・でしょう。過去には3歳馬がベテラン古馬を退けた例も多い桐花賞です。先に挙げた2頭だけの戦いになるかどうかはまだ即断できませんよね。★ファン投票中間3位マツリダスティール★ファン投票中間4位ゴールデンヒーラー カレンダーを見ると12月30日が木曜日ですね。有力馬たちの直前のお話をこのブログでお伝えできるかもしれません。 さてそして。そのファン投票中間1位であり昨年に続いて2年連続3度目の制覇を目指すエンパイアペガサス号の、桐花賞をもっての引退が発表されました。★北上川大賞典を大差!勝ちしたエンパイアペガサス 前走・北上川大賞典で圧倒的な強さを見せて勝ったりしていてなんとなく忘れがちですけども、エンパイアペガサスは2015年にデビューして今年8歳、桐花賞の翌日には9歳になる馬です。昨年からは基本前半3戦・後半3戦として、一方で叩き良化型でありステイヤーでもある同馬の適性を考慮し狙いのレースを絞り込むローテーションを採ってきました。 本馬を管理する佐藤祐司調教師にはいろいろなお話を聞かせていただいてきましたが、もう一度遠征でタイトルを獲りたい、グレードレースで良い競馬を見せてみたいと目標を挙げつつも、いわゆる“引き際”を良いものにしてあげたい、良い形で競走馬生活を終えさせたいという“目標”もはっきりしてきたように感じていたこの1年ほどでした。 まずは桐花賞を無事に走り終えてから・・・ですけども、無事に競走馬生活を終えて、引退式でファンの皆さんに別れを告げる事ができるのは、エンパイアペガサスにとっても幸せな事かと思います。 いろいろ積もる話もあるでしょう。自分にも聞きはしたもののまだ書いていないエピソードがあったりしますし、その辺は無事引退後に改めて書きたいと思っております。 という事で。桐花賞ファン投票、インターネットでの投票は18日・土曜日の17時までの受付(競馬場・テレトラック等での投票用紙での受付は19日まで)となっておりますので皆様お忘れなく!
2021年12月16日
木曜担当のよこてんです。今回は、12月7日で期間限定騎乗を終えた七夕裕次郎騎手のお話。 5月2日の水沢競馬、1Rからスタートして12月7日の10Rまでほぼちょうど7ヶ月間の岩手での騎乗でした。この間岩手では46勝。南関での勝利とあわせて53勝、減量を1kg減らして▲から△にもなりましたね。 という事で、7日の最終騎乗を終えた後の七夕騎手にお話をうかがいながら、7ヶ月間を振り返ってみましょう。この7ヶ月、騎乗が終わって振り返ってみて、どんな感想?「振り返ってみるとあっという間ですね。もうちょっと居たいなという気持ちは正直あります」★紹介セレモニーでの七夕騎手。なんとなく初々しい感じがする?★岩手での初騎乗は5月2日の1レース、ウインラングロワ号に騎乗して2着★翌3日の10レースで岩手初勝利。パートナーはシャランドール号。岩手での9戦目でした岩手では46勝を挙げました。その勝ち星の数については「来た当初に立てていた目標は越えましたが、乗せていただいた数の割には少ないかな、とも」目標を何勝って言ってたっけ?「最初は“10勝”と言っていて、その次に30勝へ、そして50勝にしていました。岩手で、岩手だけで50勝達成したかったですね」★12月5日の6レース、ステルスブルー号での勝利が岩手46勝目に自分としては取りこぼした分もあったかな・・・な感じ?「そうですね。自分にもうちょっと技術があって取りこぼさなければ60勝は越えてたかな・・・とか思うんですよね。最後の開催も“最後”だって意識があったせいか、ちょっとわちゃわちゃしちゃって」★岩手のラスト騎乗は9着盛岡・水沢と乗ってみて、コースの印象はどんなものになりましたか?「盛岡は広いしコーナーも緩いから乗りやすいですね。広い分安全にも乗れますし。盛岡に慣れて水沢に来て、小回りで2周するコースで乗ると、ちょっと難しいなと改めて感じたりしました」来た当初は“右回りの方が自分に合うかも”とか言っていたけど、それは変わらない?「いや、今は盛岡も水沢も、右回りも左回りもあまり違いは感じないですね。ただ盛岡はとにかく乗りやすくて最高でした」芝はどうだった?良い思い出しか無いんじゃない?「芝では走る馬に乗せてもらえる事が多かったですからね。芝ではけっこう勝たせてもらえたなと」★7月19日のOROターフ特別、ツーエムマイスターで大逃げからの逃げ切り勝ちは9番人気をひっくり返す快勝。徹底先行が見事にハマったレースでしたこの7ヶ月間で思い出に残っている馬を挙げてもらうと?「まず岩手で初勝利を挙げたシャランドール、自分はレースでは乗ってないですけどミンナノヒーロー。あとはツーエム軍団と、ファイントリックですね」けっこうたくさん挙がるね!「ツーエム軍団はみんな大逃げでインパクトの強いレースになったし、芝でも経験を積ませてもらえました。ファイントリックは自厩舎の馬で、重賞を勝てましたからね」★そして自身初の重賞勝ちとなったファイントリック(OROオータムティアラ)★同馬とは共にクイーン賞出走も果たしました岩手のファンへ向けて改めて一言「半年以上の長い間ありがとうございました。岩手はホントみんな暖かいし、街も良いし、凄く居心地の良い環境で乗る事ができました。向こうに戻っても岩手と同じように勝ち星を挙げられたらなと思っています。この経験を活かして頑張っていきます」★ヤングジョッキーズシリーズTR門別★ヤングジョッキーズシリーズTR浦和 7ヶ月、46勝。騎乗数も多かったですし、なかなかインパクトのある、存在感のある7ヶ月間だったなと思うのですが、いかがでしょうか。 すっかり岩手にも馴染んで、もうちょっと居たら良いのになと思うのは確かですが、ただ七夕騎手が南関に乗りに行く時はいつもこんな風に言っていたんですよね。「岩手で腕を上げた事を向こうでアピールしてきたい」と。 だから、まずはそれ。南関に戻って、岩手で頑張った成果を出せるように。で、たまに岩手に乗りに来たり戻ってきたりすればいい。そしてその時にはもうひと回り成長した七夕騎手を見せてほしい。そんな風に思ったりします。まずは7ヶ月間お疲れ様でした!また来てね。
2021年12月09日
木曜担当のよこてんです。今回は先週・今週の話題をお伝えしていこうというお題。時系列順ではないですがまずは地元のお話からいきましょう。11月28日、岩手競馬の舞台は水沢に移りました。6月22日以来の水沢開催。初夏から夏を感じながら・・・というところからの冬の水沢競馬。ずいぶんと時間が経った感覚です。 “景色”も変わりましたからね。今開催からパドックが新装オープン。自分も20年以上見慣れたパドックが様変わり!これまでもちょいちょい変わってはいたんですけど(例えば昔はパドックのコース側にも観戦エリアがあったし、パドックの中には植え込みがあったりもしました)これだけ一気に変わったのは初めてなので新鮮でした。★新装オープンの水沢競馬場パドック★アングルが違いますが旧パドック 面積は以前の約1.5倍、それほど激増したわけではないですが、周回に使える部分は倍近くになった感じで、以前のように“前の馬のお尻と後ろの馬の顔がくっつきそうになるくらい”な距離感は軽減されました。 パドックの素材はゴムチップ舗装、JRAのトレセンや競馬場の馬道に使われているのと同じ素材だそうです。こちらの方が恐らく若干目が細かいとか。盛岡のパドックや装鞍所はシート舗装との事なので盛岡とはまた違う施工。★パドックの舗装。画像が小さいと分かりづらいかな★周回中の前後の間隔が拡がったこともあり、今までのパドックとは違う見栄えに 以前はただの土・砂で、雨や雪が降ったらぬかるんでしまって歩くのが大変でした。雪が降ったときにどういう感じか?はこれからですが、この舗装が季節を問わず使い勝手が良いという事なら装鞍所とか、競馬場と厩舎地区の間の馬道とかにも広げていってもらえればいいなあと思います。 お客様目線では正門が変わったのも大きめの変化では。正門入り口が回転バー式のゲートになって、場所も移動しています。 他の地区の競馬場でよく見られるコインを直接入れるタイプではなく、入場券はこれまで通り紙のものを買って、ゲートだけ通るタイプ。以前だと扉部分を通過するときに密になるという事もあって、間隔を取りやすい回転バー式になったという面もある模様。 この辺も自分が競馬場に来始めた頃からずっと同じでしたから、ぱっと見水沢競馬場じゃない様な感覚が少しありましたね。★スタンド脇の新聞販売ボックスが2社分に。以前は4社分で、使われていないボックスが2つあって。スッキリしましたが昔を思うとちょっと寂しい気も 5ヶ月ぶりに始まった水沢開催ですが、今シーズンは1月の開催期間が減って、年明けの1月3日まで。実質あと1ヶ月ほどという事になります。年末年始は開催も変則になってそもそも慌ただしいですし、残り期間はあっという間に過ぎていきそうな予感です。 毎年恒例・桐花賞の出走馬ファン投票もまもなく始まります。あと1ヶ月の水沢競馬を楽しみ尽くしていただければ幸いです。 さて、次は12月1日に船橋競馬場で行われた牝馬のダートグレードレース『クイーン賞』のお話へ。岩手からゴールデンヒーラー・ファイントリックの2頭が参戦、ゴールデンヒーラーは7着、ファイントリックは6着となりました。★ゴールデンヒーラーの返し馬と、返し馬に向かうファイントリック 2頭ともよく頑張った。というのは、勝ち馬は今回は川崎所属ではありますが前走までJRAオープンだった馬ですし2着のサルサディオーネは実績をいまさら言うまでもないという存在。3着~5着馬も牝馬ダートグレードで上位に入ってくるような馬たちで、4着のディアリッキーは今年の南関の3歳牝馬ではケラススヴィアに次ぐ実績馬ですしね。 そんなメンバーの中で、1着・2着の争いからは差があったものの、またハンデの差もあったものの3着とは1秒前後、そもそも2頭とも初遠征・初グレード、初コース。それを思えばむしろ上々だったのではないか。グレードレースの経験を積めばもっとやれるようになりそうな手応えがある、と思える結果だった・・・とまあ、こんな感じに力を込めると地元馬ひいきと言われそうですけども、初遠征としては悪くない結果だっただろうと思います。 レース後に佐藤祐司調教師にうかがったところでは、ゴールデンヒーラーは一息入れる、ファイントリックは桐花賞を目指してみたいとの事。 この二頭が来年のJBC盛岡、牝馬路線で遠征馬を迎え撃つ様な存在になる、それも決して夢とか想像だけではないなと感じたクイーン賞でした。★優勝したダイアナブライトはこれがJRAから川崎への転入初戦。笹川騎手は初グレード制覇。この後は南関の牝馬グレードを連戦する予定との事
2021年12月02日
木曜担当のよこてんです。今回は盛岡開催ラストを締めくくったLJSのお話です。 しかし最終日、寒かったですね!日曜日がそこそこ寒くて、月曜日は暖かくなって(おかげで霧が出て、取り止めになるレースも・・・)、火曜は案外それほど寒くないのかなと思ったりしたところが。今季一番寒いくらいになりました。★22日は最後の2レースが霧のため取り止めに。山の下の簗川から上がってくるんですよね、霧★そして23日は冷たい冷たいみぞれのような雨。中継の映像はもっと白く・大きく映っていたので「雪?」と思った方も多かったのでは。まあ普通の「雨」ではなかったですね 終日雨という予報ではあったので、せっかくのLJSなのに、盛岡最終日なのに残念だなあとか思っていたんですけども、その程度の覚悟では甘かったですね。雪こそ降らなかったものの冷たいみぞれが降る真冬のような寒さ。一応冬の水沢なみの服装で競馬場に上がっていったのですが、それに雨ガッパを着てちょうどいいくらいに感じるのだからよほど寒かったという事ですよね。雪にならなくて良かった・・・。 そんな天候の中で行われたレディスジョッキーズシリーズでしたが、寒い中で熱い戦いを見せてくれたように思います。★出場騎手紹介セレモニー。盛岡でこの手のセレモニーが行われたのは2年ぶり★集合写真も。これまた久しぶり。やっぱり華やかでいいですね まず第1戦。本馬場入場からレースの頃までみぞれが止んでくれたもののコースは全面水が浮くドロドロの状態。そんな厳しい条件をものともせず1番人気エリーグローリー・川崎の神尾香澄騎手が快勝してみせました。★LJS盛岡第1戦/優勝エリーグローリー・神尾香澄騎手 「スタートしてしばらくは他の馬の出方を見ていたのですが、自分の馬の脚色が違う感じだったので他を待たずにハナに立って、そこからは自分のペースで」と神尾騎手。最後は7馬身差の圧勝はお見事。 ところで神尾騎手、返し馬を見ていたら、マスクも何も付けない素顔のままでコースに出ていた。★マスクって、あれですよ。防寒用のフェイスマスク。冬場の必需品(参考・別府真衣騎手) 寒さに耐えられるかなと心配していたのですが見事耐えきったうえに一着。たいしたものだ。 ちなみに、浦和で神尾騎手に会った際に寒くなかったか聞いてみたところ「めっちゃ寒かったです!」と言っていたから寒いのは確かに寒かった模様。2着の深澤杏花騎手もマスクなしだったんですよね。若いっていいなあ・・・。 続く第2戦。再びみぞれが強まる中でのレースは1番人気ホッコーフウガと2番人気ティーアウリイがゴールまで競り合い続ける激闘となり、結果わずかにホッコーフウガ・佐々木世麗騎手が先着しました。★LJS盛岡第2戦/優勝ホッコーフウガ・佐々木世麗騎手 2頭が本当に馬体を、鼻先を並べたままの接戦で、直後は内のティーアウリイの方が勝っているんじゃないかと思ったんですが、スロー映像を見ると頭の上げ下げでホッコーフウガの鼻先が前に出ていたタイミングがゴールだったという形。 実は、佐々木騎手はレース中にムチを落としていて、最後はムチなしで戦うしかなかったとのこと。一方ティーアウリイに騎乗していた高知の濱騎手はそれに気がついていてチャンスとばかりに競り合いに持ち込んだのだそうです。 レース映像を見直すと、4コーナーあたりでコースにムチが落ちるのが見えていますから、最後の直線はずっとムチ無しだったんですね。濱騎手の目の前を飛んでいったようにも見えるからそりゃ気がつくわね・・・。★並んで引き上げてきた佐々木騎手と濱騎手。この辺ではどちらが勝ったのか互いに確信がなかった模様 佐々木世麗騎手は7月のオパールカップの時にも新人らしからぬ騎乗ぶりを見せていて、結果3着ながらも岩手の調教師さん達に強い印象を残していました。それ以来の岩手での騎乗、今回はダートでしたが、またしても印象に残るレースだったのではないでしょうか。 第1戦で勝った神尾騎手は「地元では1番人気の馬に乗る事なんかほとんど無いですから、人気になるような強い馬に乗れるのが嬉しくて」、第2戦を制した佐々木騎手は「人気の馬に乗るプレッシャーよりも“勝てるチャンスだ!ラッキー!”ですね」とそれぞれ言っておりました。二人とも今年デビューなんですけどもこのキモの座りよう。たいしたものですよね。 奇しくも、今回のLJS直前に、高知の別府真衣騎手と佐賀の岩永千明騎手の引退が発表されました。レディースジョッキーズシリーズの初期から参加していたベテラン騎手が去って行く一方で、10年ぶりに再開されたシリーズの最初の2戦を勝ったのが共に今年デビューの新人騎手。歴史の移り変わりというかバトンタッチというか、そんな盛岡LJSの結果だったようにも思えます。★2011年のLJS荒尾。この年のLJSは出場騎手6名でした 今回のLJSは話題が多いですよね。『女性騎手初の通算1000勝』達成・宮下瞳騎手。『新人女性騎手最多勝』佐々木世麗騎手。そして調教師に転身する別府真衣騎手。東海北陸エリア以外での騎乗が久しぶりとなる深澤杏花騎手。今年の今、再開されるべくして再開されたLJS、でもあったのかもしれません。★宮下瞳騎手は駒子賞や卑弥呼杯の頃を知る唯一の騎手に 浦和の話も書こうと思っていたのですがLJSだけで結構長くなってしまった・・・。次の機会に書けるかな。 さて今週末からは水沢開催がスタート。新装されたパドックもお披露目となります。もろもろお楽しみに!
2021年11月25日
木曜担当のよこてんです。6月下旬からスタートして5ヶ月間にわたって行われてきたロングラン盛岡開催もいよいよ今週末でラスト。という事で今年の盛岡開催を振り返りつつ・・・なお話。 震災の年に5月から12月頭まで盛岡開催が続いた事があるので「史上初」ではないですが、それはあくまで特別な要因でのこと。過去に例が無い形の5ヶ月連続盛岡開催は、盛岡に住んでいる自分は楽な面がありましたが、水沢の関係者の皆さんにはなかなかハードな日割りだったかもしれません。★6月27日盛岡1レース、今年の盛岡最初のレースを制したのはラブロック・関本玲花騎手 そのおかげ・・・という言い方は変かもしれませんが、ここまでの発売額は昨年以上をキープできていて、今週末の盛岡開催3日間が好調なら今週末終了時点で500億円到達の可能性も出てきました。この後の水沢開催は来年3月の特別開催まで含んでのべ28日間ですので、昨年のような取り止めが連続しないかぎりは最終的に昨年度以上の発売額になりそうです。 そう。昨年は、盛岡では雨にたたられて芝のダート変更が何度も起きたり、冬の水沢では雪(というか寒気)での開催取り止めが頻発。ちょっと記憶に無いほどに悪天候にたたられた形のシーズンでした。 その点今年は芝のダート変更は無く、極端な悪天候の影響も6月の水沢で、突然のゲリラ豪雨で一レース取り止めになったくらい。むしろ例年に無く順調です。冬の水沢も、このままの流れでつつがなく進んでほしいですねえ。 一方で騎手の負傷はちょっと多かったかも。現在も塚本涼人騎手が療養中ですが、ここまで全騎手が揃っていた期間はそれほど長くなかったですよね。残りの期間、騎手や馬も何事も無く終わってほしいもの。冬休み中に他地区で騎乗する計画を立てている騎手もいるようですからね。★OROパーク盛岡競馬場開場25周年という年でもありました さて今年の盛岡開催。「ダートは時計がかかり、芝は高速」というシーズンでした。 このブログでも折に触れ書いてきましたが、盛岡開催が始まる前の5月に砂の入れ替えが行われた事で昨年までとは一転“非常に時計がかかるダートコース”の状態でスタート。超高速だった昨年などより1.5秒から2秒遅い印象で、当初は予想にも手こずりました・・・。秋以降は徐々に時計が速めになってきていますがそれでも近年に比べると1秒くらいかかる計算。 芝の方はというと例年より良い状態でシーズンイン。こちらは例年より2秒近く速い高速決着が目立ちました。 例えば昨年の2歳戦、芝1000mで1分を切ったのはのべ6頭でしたが今年はのべ18頭。古馬も含めると、昨年の芝1000m戦で1分を切ったのがのべ48頭に対し今年はのべ81頭になります。雨が少なかったという事もありますが、特に夏頃はどの距離でもスピード重視の高速決着。秋以降は徐々に遅くなってはいるものの、それでも近年より速い時計が出ていました。 芝1000mのレコード57秒7に対して58秒0(OROターフスプリント・クラヴィスオレア)、芝1700mのレコード1分43秒7に対し1分43秒9(7月20日OROターフ特別・ロワアブソリュー)というレコードに迫る好タイムも出ていましたね。★2歳新馬戦の芝1000mを58秒4という好タイムで制したフェルゼンハント。好時計続出の今年の芝でした ダートは基本時計がかかり、芝は逆に時計が速い。予想をする中でデータを比較したりするわけですが、昨年はダートが高速すぎ・芝は遅め、今年はダートが遅くて芝が速すぎと反対方向に大きく振れていて、来年以降のデータ比較が難しくなりそう。 そして冬の水沢はまた重不良でも良馬場より時計が遅くなったりする、これはこれである意味特殊な馬場傾向になりがち。コース形態も全く変わりますし、これまた予想の手がかりを探すのに苦心する事になるんじゃないかなと戦々恐々です。 盛岡開催中の出来事としてはテレトラック石鳥谷のオープンもありました。秋田場外以来6年ぶりの新規テレトラックは既存の競輪場外「クラップ石鳥谷」の中に併設されたもので、“他の公営競技と併設”の形の場外発売所は岩手競馬初でもあります。★テレトラック石鳥谷は9月12日オープン ここであまり詳しい内訳は書けませんが、テレトラック石鳥谷は既存テレトラックの中でも“売れる”方になってきています。国道沿いのアクセスしやすい場所にありますし、エリアによっては競馬場に行くより近くて便利というファンの方もおられるでしょうし、今後より定着して繁盛していってほしいもの。 先日のプリンセスカップをもって今季の岩手での交流重賞が終了しました。盛岡ではのべ11レース、ダートグレードを入れて14レース行われた交流重賞の成績は、今年は1勝13敗という結果になりました。★今年の交流重賞で岩手勢唯一の勝利を挙げたキヨラ(オパールカップ) 唯一岩手所属馬が制したのが盛岡開催最初の交流重賞・オパールカップでのキヨラ。それ以降は全て他地区馬が優勝しており、また水沢での留守杯日高賞も他地区馬が勝っているので通算1勝14敗。結果から見るとキヨラが実に貴重な1勝を挙げてくれましたね。 今年もホッカイドウ勢が強かった。2歳の交流重賞は4戦を全て持っていかれたのをはじめ他地区馬の14勝中7勝がホッカイドウ勢の勝利。まさに猛威を振るわれてしまいました。 さらに言えばキヨラもJRAデビューの馬。「岩手デビュー馬の勝利」という見方をするとなんとゼロという事に・・・。 昨年は岩手の2歳馬が頑張ってくれたし、ダービーグランプリをフレッチャビアンカが勝ったりして“要所を押さえた”感じだったんですけどね。岩手競馬ファンとしてはちょっと寂しい結果になりました。 最後に騎手リーディング・調教師リーディングの動向に触れておきましょう。 先週末終了時点での、まずは騎手リーディング。1位村上忍騎手で153勝、2位は山本聡哉騎手144勝。3位が高松亮騎手121勝、4位山本政聡騎手117勝、5位が高橋悠里騎手112勝となっています。 現時点での6位木村暁騎手が64勝ですので“TOP5”が6位以下を大きく引き離している形。毎週の勝ち星数を見ていてもここのところはTOP5の5人だけで20勝ほど、その週のレースの2/3近くを勝っていますからね。 下のグラフは現在の騎手リーディング5位までの騎手について3月から先週までの勝ち星数の推移を見たものです。 当初1位に立っていた山本聡哉騎手が怪我で戦線を離れたあと村上忍騎手が勝ち星を伸ばして1位に。山本聡哉騎手も復帰後は徐々に勢いを増して最大で22勝差があったところから一時は4勝差まで接近、しかしここ4週ほどは村上忍騎手が週7勝ペースで勝ち星を積んでリードを9まで拡げた・・・という状況。 また3位~5位は、高松亮騎手・山本政聡騎手が一進一退の攻防を繰り広げていたところにここに来て高橋悠里騎手が急接近してきて三つ巴の様相になりつつあります。 もうひとつは現在の調教師リーディングについて同じように見たもの。先週時点で5位が同数で2名いますので計6名の調教師についての推移です。 3月は飯田弘道調教師・三野宮通調教師が他を引き離した戦いを繰り広げていたのですが、5月頃から飯田調教師のペースが落ち三野宮調教師の独走状態に。 しかし、このまま独走するかに見えた三野宮調教師のペースもまた10月頃から落ちてしまって、後続が差を縮めてきているのが現時点になります。 先週終了時点で三野宮通調教師が73勝、2位板垣吉則調教師が67勝、3位佐藤雅彦調教師が66勝。4位伊藤和忍調教師が60勝、5位には57勝で櫻田康二調教師と飯田弘道調教師。7位には佐々木由則調教師が53勝で、8位には菅原勲調教師が49勝で続いていて、調教師リーディングは騎手リーディング以上に激戦・混戦になってきている印象ですね。 リーディングの記録は来年1月3日まで。なので残るは盛岡1週・水沢6週ののべ21日間。“わずか21日”とみるか“21日間も”とみるか。騎手リーディング・調教師リーディングともクライマックスへ向けてその争いが激しくなっていきそうな予感がしますね。 さて、今年の盛岡競馬は今週末の3日間を残すのみとなりましたが、21日・日曜日は10年ぶりに盛岡で行われる北上川大賞典が、また23日の祝日の火曜日、今季の盛岡最終日にはレディスジョッキーズシリーズも開催されます。最後まで見どころ十分の盛岡競馬、ネットで、あるいは現地で、心残りのないようにお楽しみいただければ幸いです。
2021年11月18日
木曜担当のよこてんです。今回は荒谷牧場訪問記・後編、青森から産駒を送り出すウインバリアシオン、そして今年からそこに加わったオールブラッシュのお話を中心に。 ところで金沢JBC。JBCレディスクラシックにサルサディオーネが出走しましたね。3番人気に支持されたのですが結果は残念ながら10着。先週のこのブログでも少し触れましたけども、見た感じ、確かに右回りはね・・・という印象を受けました。★JBC金沢2021でのサルサディオーネ 左回りの南部杯とか来年の盛岡JBCとかで見てみたいですけどねえ。ただ既に7歳、来年8歳とあって繁殖入りも見えてきているようで、来年の今頃まで現役を続けているかどうかはなんとも・・・なようです。 さて、荒谷牧場に戻りましょう。お相手は前編に引き続き荒谷栄一さん。★荒谷さんとウインバリアシオン。放牧地を牝馬が使う時間だったので、離れた裏の方で草を食んでいるところ★美味しいんだからじゃましないでよ!ウインバリアシオンという種馬の良さ。どんなところだと思われますか「オンとオフがきちんと分かっている賢さのある馬。そしてなにより馬格があるのと同時に身体が柔らかいんです。筋肉とか関節とかがね。悪い言い方をすれば“甘ったるい”という事にもなるんだろうけど、そこが柔らかさに繋がっていると思うんです」身体が柔らかい?「種付けの時なんかでも、牝馬が暴れたりして体勢が崩れて“あ、このままだと転ぶ!”と思った所からグッと立ち直ってくるんですよ。普通の馬ならひっくり返ってしまうような所からね。そんなバネを何回も見ている。そういうのはトレーニングとかじゃない、生まれ持ってきた物だろうからね」産駒にもそういう良さが伝わっているんですね「品のある馬が多いと思いますね。ごつい感じの馬より品のある感じの馬の方が動くんじゃないかな。ドスハーツも小さい時から品があったものね。バリコノユメもそうだったし。身体の、筋肉の柔らかさが品の良さとして伝わっているんじゃないかと感じます」★JBCの日の金沢4Rで走っていたマブアロンジェもウインバリアシオンの産駒。青森・野々宮牧場の生産馬ウインバリアシオンと言えば、G1勝ちこそないものの何度も2着に来ていた実績馬。種馬として青森に来るという話は亡くなられた松橋さんも一緒になって熱心にまとめられたのは聞いていましたが、当初はこれだけ走る馬を出す様になるとは正直思っていませんでした「ウインバリアシオン自身は芝だけで活躍したけど子供はダートでも動く・・・というのがまず今の成績の良さに繋がっていると思いますね。産駒全部がコンスタントに走るタイプかというと、そうはならないだろうけども、というかどちらかと言えば当たり外れはあるタイプだろうとは思う」自分が見ていてもむっちりがっちりしている産駒がいるかと思えばちょっと頼りない感じの産駒もいて、印象の幅が広いのかなと思ったりします「ウインバリアシオンは芝の重・不良馬場が得意だったし、走っている姿を見ても地面の捉え方がダートの方が良いんじゃないか?と思うんだよね。盤の捉え方が芝馬のサッサッとした感じじゃなくてグッとくわえ込むような。ダートでももっと走る馬が出てきていいはずです」出そうな気配はありますよね「やっぱり重賞クラスのタイトルがほしいよね。グレードとは言わない、地方の重賞を勝つようになれば周りの見る目ももっと変わってくる。そういう種馬だという目で見て貰えるようになるからね。いずれ出ると思っていますよ」そんなタイトルに近かったのがオタクインパクト(※注・インタビューは道営記念の前でした)です。同馬も荒谷牧場の生産ということでお話をうかがいたいのですが、こちらにいる頃のオタクインパクトはどんな馬でしたか「身体が垢抜けていて“バリアシオン”ぽかった。それでいて馬格もありましたね。生まれた時から期待馬として考えていて、うちにいる時から買いたいという引き合いもあったんですが、セリに出して勝負してみたいから・・・と待っていただくような事もありました」お母さんのネオベリーフェズという馬は?「ショウナンカンプを受胎してオークションに出ていたのを落札したんです。それで生まれたのがエクセルチェイサーでした。こちらでウインバリアシオンを種付けして生まれたのがオタクインパクト。向こうに置いてきた仔(※ライズインザノース。2018年のジュニアグランプリにも来盛)も活躍していましたね。今オタクインパクトの全弟がいますよ」★放牧場にてネオベリーフェズ。荒谷さんの気配を感じて遠くから走ってきた★オタクインパクトの半兄にあたるライズインザノース(18年ジュニアGP)そして今年からオールブラッシュも加わりました「スプリングファームの佐々木君のところに前々から話をいただいていました。サンデーが入っていない血統でね、ウォーエンブレムの仔で、Mr.Prospectorのクロス、3×3でちょっと強烈だけど。実馬を見たらウォーエンブレムに似ている。似ているからこそ種付けは心配したんだよね。来た最初の頃なんかも馬っ気を感じさせなくてね。でも種付けになると毛色に関係なく興味を持ってくれたから良かった」心配は杞憂だったんですね「そしてなおかつ受胎率がいい。凄く良い。これも最初の精虫検査の結果が思わしくなくてね。いろいろ気を揉んだんだけど、最初の種付けで受胎してならば問題ないと。今年は17,8頭付けたんだけど不受胎は3頭かな」★オールブラッシュ。引退からそれほど時間が経っていない事もあって競走馬っぽい表情を見せる“種牡馬オールブラッシュ”の印象はいかがですか「実馬は芝でもいけそうな感じがしますよね。血統的な事からダート中心になっていったんだろうけど、柔らかい感じで“バリバリのダート馬”という印象はない。いかにもスピードがありそうで実際グレードレースも逃げて勝っているからね」何度か盛岡に来ているので見ていましたが、馬格の割にダート馬っぽくない身体つきでしたよね「あと、おとなしい顔をしていていきなり噛みに来る事がある。引き馬している時なんかでもいきなりカツッと来る事があってね。本気で噛んでやろうとしてやっているわけではないと思う。悪さをするつもりじゃなくて、なにかこう、時々湧き出る抑えきれない気持ちみたいな物を持っているんだろうね」★現役競走馬時代のオールブラッシュ(19年南部杯)凄くアメリカンな血統が面白いです。産駒が楽しみですね「自分がミスプロが好きなのもありますし、サンデーが入っていないのもいい。だからバリアシオンの仔に付ける事もできる。そうやって青森の種馬で重ねていける。なによりやはり、ウインバリアシオンやオールブラッシュの仔が八戸市場で買えるとなれば市場も目を惹く様になると思う。そうして青森の馬産を盛り上げていければいいなと思っています」--------------------- ちょうど先日、ホッカイドウ競馬最終日に行われた道営記念でオタクインパクトが2着に食い込みました。ここまで重賞タイトルにはまだ届いていないですがかなり近づいているのは間違いないと思わせる2着。今後の活躍が楽しみですよね。来年の種付けシーズンに間に合うような所で朗報が届けば・・・と都合のいい事を思ったりします。 ウインバリアシオンの生産馬はほとんど全てが青森産で、オタクインパクトは荒谷牧場の、産駒中の現時点での最高賞金を獲得しているドスハーツも青森の清水貞信さんの生産馬。ここにオールブラッシュの産駒も加わっていって、そしていつかウインバリアシオンの仔とオールブラッシュの仔の、“オール青森”な血統の産駒が大活躍する・・・。そんなシーンも想像してみたいですね。★来客をふんふんするオールブラッシュ君。話を聞いているので自分もこれ以上は近づかないの
2021年11月11日
木曜担当のよこてんです。今回は『JBC2021金沢』のお話。 11月3日、夜半から朝にかけてわりとしっかり雨が降っていた金沢でしたが(市街地の方ではホテルの中にいても雨の音が聞こえるくらいちゃんとした雨でした)朝は晴れ。いかにも“JBC日和”と言いたくなるような綺麗な青空が拡がりました。 一週間前くらいの天気予報だと当日は曇りとか雨とかいう予報だったんですけども、近づくにつれて徐々に良い感じに変わっていきました。それでも直前でもせいぜい曇りかなと思っていたのが晴れ。それも上着がいらないくらい、いや半袖でも良いんじゃないかと思うくらいの暖かさ。途中ちょっと通り雨が来ましたけども大きな影響はなかったですし、金沢の関係者の皆さん“持って”ますよね~。自分も門別での「霧男」疑惑をこれで晴らせたかも(笑)。★「JBC」の文字が朝日に輝く入場ゲート★入り口ではミス百万石がお出迎え。来場者には全員プレゼント。JBCオリジナルタオルやレープロ等だったそうです★専門紙の売り子さん達も元気いっぱい★入り口近くの玉寿司さん、最終的にはシャリがなくなるくらいの繁盛だったとのこと。お寿司美味しかったです! 開門は9時半、早くから来て“開門待ち”をされていたお客様もおられたようですが、全体的には三々五々、朝から一気に来場されると言うよりは徐々に増えていった模様。早い時間帯はどちらかというと“ガラガラ”な感じでしたが、JBC前にはパドックの周囲が一杯になるくらいには多くなっていました。 抽選をくぐり抜けてきた皆さんだけあって全体にマナー良く、なにより競馬を楽しもうという雰囲気の観戦風景だったように感じましたね。 さてJBCの話に行ってしまいましょう。まず最初はJBCレディスクラシック。優勝はJRAのテオレーマ号でした。勝ちタイム1分32秒1は従来の時計を0.9秒も縮めるレコードタイム。マリーンカップJpnIIIに続くグレードタイトルがJBCとなりました。★JBCレディスクラシック優勝/テオレーマ 自分の注目は青森産馬サルサディオーネ、そして遠征騎乗の山本聡哉騎手が乗るラインカリーナでした。 サルサディオーネは思い切ってハナを奪い終盤までレースをリードしたものの3~4角で後続に捲られる形で後退。結果は10着でした。★一周目のスタンド前を先頭で通過するサルサディオーネ 矢野騎手は元々右回りはもうひとつ、コースも初めてで、思うような走りができなかった・・・と、レース後に話されていたようです。 一方ラインカリーナは5着で地方勢最先着、それももうひとつくらい着順を上げる事ができそうな脚色で食い込んで来たのだから見せ場十分だったのでは。山本聡哉騎手はレースの後の共同インタビューで「-8kgでしたが身体が絞れて良い状態だという陣営の話。いろいろな経験をしている馬ですが、ここで揉まれる競馬をしてこの結果なら大健闘と言って良いのではないでしょうか」との事。★ラインカリーナと山本聡哉騎手 岩手では2000mのビューチフルドリーマーカップを勝っているラインカリーナですが、元々はマイル前後の距離の方が良い感じの戦績ですからね。単勝11番人気は、前走の10着の影響もあるんでしょうけども、ちょっと人気無さ過ぎだったんじゃないかな。 続くJBCスプリント。1400mで行われるスプリントでしたが、優勝はJRAのレッドルゼル。川田騎手連勝、そしてこちらも1分24秒6、旧レコードを1秒8!も縮める“超レコード”での決着となりました。★JBCスプリント優勝/レッドルゼル 元々今季の金沢は時計が出やすい馬場傾向に加え朝の雨。JBCはレコード決着になるんじゃないか・・・とは現地の関係者の皆さんも感じていたと思うのですが、しかし一気にこれだけ詰めてくるとはまさに「驚愕」ですよねえ。 レッドルゼルという馬も、1200でもマイルでもない1400mが強い馬ですよね。時計が出る馬場と距離。勝てる条件ががっちりハマっていた印象です。 そして、JBCまでのレースが比較的先行有利、いやもう前が止まらないと言ってもいい状況だったところからのスプリントは差し・追い込み決着。大きく出遅れながら2着に食い込んできたサンライズノヴァにも驚きましたけども、やはりG1級になると想像を超える結末になりますね。 その「想像を超える」というフレーズは最後に取っておくべきだったか。 今回のJBC、JRA勢が強力なのはやはりクラシック、帝王賞・東京大賞典・川崎記念の勝ち馬が揃っているだけにやっぱり・・・という見立てになるのが、まず普通というか自然というか、そう思って自分も見ていたのですけども、見事にやられました。★JBCクラシック優勝/ミューチャリー 2周目の4コーナーを回る時になっても良い手応えに見えたミューチャリー。いや、実際はそれほど凄く余力があったわけじゃないんじゃないか?と思うんですよ。しかし2周目の向こう正面あたりからロスを最小限に抑える走りで動くタイミングも絶妙。そして最後は「先頭に立ったからには絶対に譲らない」という気迫。馬もそれにへこたれなかった。人馬一体でもぎ取った勝利だったのではないかなと思います。★吉原騎手のVポーズ。馬が切れてしまったので写真としてはボツやね・・・ JBCクラシック、21回目にして初の地方所属馬優勝。地方騎手の優勝も初めて。サウンドトゥルー以来2頭目の東日本からの勝ち馬ともなりました。 レディスクラシック、スプリントとJRA馬が優勝、それも超速レコード。クラシックもJRA勢か・・・という空気が漂っていたところからの勝利だけに余計に弾けたというか盛り上がったというか。なにより吉原騎手にとっては地元。地元ファンを前にしての劇的Vですから盛り上がらないわけがない。ここまでは静かに見ていたスタンドから大きな声援が上がったのも、それはもう仕方がない。当然ですよね。★もう喜びがあふれまくってしかたないという感じの吉原騎手 自分のSNSでも書きましたけど、来年の盛岡JBCでこれだけのドラマを魅せる事ができるのか?喜ばしいと同時にちょっと考えてしまう優勝劇でした。 このJBCクラシックには岩手からシゲノブ&小林凌騎手が参戦。結果は9着でした。★岩手から遠征したシゲノブと小林凌騎手 現地では個別取材ができなかったのでレース後に電話で飯田弘道調教師にうかがったお話では「結果は9着でしたが、JRA勢はともかく地方他地区の重賞勝ち馬クラスの中でこれだけ戦えた、それも2100mでしたから、健闘してくれたし収穫もあったと思います」との事でした。 全レース終了後にはJBCフラッグ引き継ぎ式が行われ、金沢から来年の開催地である岩手・盛岡へフラッグが手渡されました。 JBC金沢終了。ここからは来年のJBC盛岡へ向けてのカウントダウンが始まります。1年後にどんなドラマが待っているのか?楽しみであり怖くもあり・・・。まず今は、現地の関係者の皆様、出走各馬の関係者の皆様、お疲れ様でした。優勝馬の関係者の皆様、おめでとうございました。来年は盛岡で!
2021年11月04日
青森・東北町にある荒谷牧場。はじめて訪れたのは2003年、いや2002年だったかも。当時既にウォーキングマシーンを設置されていて、早い時期から新しいものを取り入れている牧場という印象がありました。★2003年5月の登録検査の際におじゃました時の一コマ。左に立つのが荒谷栄一さん。奥は先代と松橋さん 最近は直接牧場にお邪魔する機会がなく、しばらくおうかがいできずにいたのですが、荒谷牧場の生産馬・サルサディオーネが日本テレビ盃Jpn2を制しJBCでも有力馬として出走するという機会に、久しぶりに訪ねてみようと考えた次第。 お邪魔するのはもう10年ぶりくらいかもしれない。という事で荒谷牧場・荒谷栄一さんに、牧場の事やサルサディオーネ、お母さんのサルサクイーンの事を話していただきました。★荒谷さん近影。すらっとした体つきは昔と変わらないというと「もうちゃんちゃんこ背負う年だぞ~」と笑われた今更ながら改めてなんですけども、荒谷さんがここで牧場を始められて何年くらいになるんですか「自分は高校を終わってすぐ働き始めたんだけど、その頃は『南部牧場』といったの。オーナーさんが居て、祖父の代からですけども場長という形。自分は牧夫として勤めた。その後、オーナーさんが手放すという事になった時に、なら買い取りますよと。それが荒谷牧場の最初だね。法人化したのが確か平成の元年だった」とすると、約50年を最近というとあれですが、比較的新しい方になるんですね。「そうそう。第1回のダービーグランプリに生産馬が出てさ、自分も水沢まで見に行ったけど、その馬も『南部牧場』の名義だったんだよ(※笠松所属のタカシマリーガル。1番人気に推されたが8着)」昔はアラブの生産が多かったんですか?「いや、昔からサラブレッド。サラブレッドがほとんどだったよ。この辺(七戸)近辺がサラの生産の本場だったのさ。アラブは八戸、あとは十和田・五戸とかの方。この辺は盛田さん(盛田牧場。帝室御賞典時代からの活躍馬多数)、諏訪さん(諏訪牧場。タムロチェリー、ミライヘノツバサなど)、東北牧場(トーホクキングなど岩手にも活躍馬多数)さんはオーナーが変わっても名前はそのままだし、浜中さん(浜中牧場。フエアーウインなど)。この辺はサラブレッドばかりだったね。アラブは預かった馬がいくらかいたくらい」★岩手に戻って4連勝中のスカイルークも荒谷牧場の生産馬サルサディオーネのお話にいきたいのですが、お母さんのサルサクイーンはどういういきさつで荒谷牧場に?「サルサクイーンの馬主さんは、ディオーネも同じですけども、今はJRAの馬主資格も取られているが元々は南関東中心で、サルサクイーンもここに休養に来ていたりしたんです。東京プリンセス賞を勝ったりする力のある馬だったけどそれだけじゃなくて、自分が乗って凄く背中の感じの良い馬だなと思っていたんだよね。繁殖になったらいい仔が出るだろうな・・・とも思っていた。そういう馬だったから繁殖にあがる時にここで、と。もう一頭、アネストという馬、これも同じ馬主さんなんだけど、その馬と一緒にね」ということで荒谷牧場で繁殖生活を始めた「最初の種付けの時は、これだけの馬なんだからヘタな馬は付けられないとアグネスデジタルを選んだ。受胎は上手くいったんだけど次の年に鼻肺炎で流産してしまってね。その後3年くらい受胎しなかったんだよね。北海道の牧場に頼んで種付けしてもらってもダメで。それで、七戸種馬場にキャプテンスティーヴが来た時に当時種馬場にいた獣医さんと相談しながらなんとか受胎させたいと考えて、発情よりも少し早いけど種付けしてみよう、と試してみたところがそれが受胎した(※のちのトガミサクラ)。 つまり普通の馬よりも排卵のタイミングが早い馬だったんでしょうね。普通の馬のつもりで行くとサルサクイーンには遅かったんでしょう。 そして連続で仔がとれないんですね。胎盤の落ちが遅いのでしょう。それで1年おきになってしまう事も分かってきた。それが分かってきて安定して仔が取れるようになりました」そしてゴールドアリュールを付けて生まれたのがサルサディオーネですね。アメリカンなダート血統ですよね「仔は恐らく南関東で走る。だからダートに合う血統。サンデーも入っていないといけないと考えた。お母さんの能力・素質は高いものがあるとずっと思っていたし、それに見合う仔が出るとも思っていた。そこにちょうどゴールドアリュールが、その頃に種付け料が安くなったんですよね。この馬もダート競馬が見直されてきた頃の活躍馬だったでしょう。それで配合して生まれたのがサルサディオーネでした」生まれた頃のサルサディオーネはどんな印象の馬でした?「生まれた時から良い馬だと思ったよ。牧場仲間の間でも評判になるくらいでね。出産の時がね、普通のお産なら肩まで出れば後はすんなり出てくるのさ。でもディオーネの時は腰の所で引っかかってね。へその緒が圧迫されると酸欠になってしまうから介助してお産を済ませたんだけど、腰が引っかかる馬はあまりいないからね」あー、骨量があるというか骨格がしっかりしていたと?「そう。今なんか520~30kgあるからね。それだけになると思った仔だったね」お母さんはどんな馬だったんですか?「サルサクイーンは、人には悪さをしないけど、何か普段と違う事をしようとするとすぐ警戒する馬だった。そして馬に対しては悪い。半端じゃなく悪い。あれだけ放牧地のリーダーじゃないとダメだっていう馬は初めて見たね。 だから最初の仔が生まれた時は、これだけ他の馬にキツく当たる馬が子育てできるんだろうか?と心配したね。もしかしたら子育てを放棄するんじゃないかとまで心配したけど、いざ生まれたら仔を可愛がってよく面倒を見るお母さんだったから安心したよ」そのサルサディオーネが金沢のJBCに出走しますね「見て分かるとおり、成績は“サウスポー”だからね。右回りではどうなのかとは思うけど、これだけ活躍してくれている馬だし、頑張って、そして無事に走ってほしいね」------------------------------------------ 昨年もJBCレディスクラシックに出走したサルサディオーネでしたが、荒谷さんは門別・JBC2歳優駿に出走したオタクインパクトの方へ、門別競馬場の方に行っていたそうだ。「両方から招待状が来たんだけど去年は門別に行ったんだよね。今年はどうなのかな。金沢に行く事も考えてみようかな」 その今年の金沢・JBCレディスクラシックには当初サルサディオーネの半妹サルサレイアも登録がありましたが残念ながら回避。“姉妹出走”はかなわなくなりました。しかしサルサディオーネは地方勢の主力としてJRA勢に挑む事になるでしょう。 今年の金沢JBCには自分も行く予定。現地で荒谷さんにお会いできたならば、サルサディオーネのレースぶりについておうかがいしてみたいですね。 荒谷牧場編はもう少し続きます。既に青森から活躍馬を送り出しているウインバリアシオンと今年から青森にやってきたオールブラッシュ、この二頭の種馬とその産駒への期待。次週はJBCのお話になるでしょうから“荒谷牧場・後編”は再来週をお待ちください。
2021年10月28日
木曜担当のよこてんです。 いや、急に寒くなってきましたね!つい先々週のころは上着がいらないどころか半袖でも外を歩けるくらい、それでちょっと汗ばむくらいだったのが今やもう夕方以降は上着がないと寒いですし家ではストーブを使わないといけません。★17日の岩手山初冠雪。「初」にしては下の方まで・・・。 17日には岩手山の初冠雪が観測されました。ニュースを見ると「昨年と同じ日」とあるんですけども、去年は雲が多くて盛岡から岩手山が見えたのは朝方の一瞬だったような。そして例年の“初冠雪”というと山頂付近にちょっと積もっているのが見えて、それも天候によっては午後には消えていたり・・・なんですが、今年の場合は山頂付近だけでなく中腹近くまでしっかり積もっているのが見えました。もう冬が目の前まで来ているような感じがしましたね。 なんか今年は、夏の次がいきなり冬!な感じで調子が狂いますねえ・・・。今がこの調子なら本当の“冬”はどうなるんだろうか。去年みたいなことにならなければいいのですが・・・。 さて、10月19日の盛岡4R、菅原勲調教師が管理するコーチェラ号が優勝し、同調教師はこの勝利が地方競馬通算500勝達成となりました。★2021年10月19日盛岡4R/優勝コーチェラ号 菅原勲調教師はオータムセールに行っていたために口取り写真に師の姿はありませんでしたが、その替わり、手綱を取った山本聡哉騎手をはじめ騎手たちが多数参加。記念の口取りを盛り上げました。 口取りの前に「1」と「3」と「10」のゼッケンを持って現れた山本聡哉騎手。どうするのかと思ってみていると「10」のゼッケンを折りたたんで「0」だけにして、「1・3・0」の並びに。そう「イ・サ・オ」。勲調教師はいないけれども「イサオ愛」が確かに感じられる口取りになったのでは。★「ちゃんとイ・サ・オって読めますか?」「読める読める!」 菅原勲調教師は2012年4月の開業ですので今季がちょうど10シーズン目になります。年数でいうと9年半くらいでの500勝はかなり速い方で、最近だと板垣吉則調教師が8シーズン目に達成していてこれが“最速”になるのかと思いますが、それに次ぐくらいの速い達成ではないでしょうか。 10年で500勝、1年で50勝ずつ・・・といってもなかなかそうはいかないものですからね。見事な成績・実績だと思います。 もうひとつの話題は、今季の岩手のシーズンもだいぶ押し詰まってきましたね・・・なお話を。 お手元に今季の「レーシングスケジュール」(折りたたみのハンディ日程表)がある方は見ていただくと分かりやすいですが、今季の重賞・準重賞の日程、全部で4面分に渡って掲載されているのが、先週の知床賞を終えていよいよ最後の1面に入ってきました。 6月下旬からのロングラン開催となった盛岡競馬もあと1ヶ月ほど、その後の水沢開催も、今季は年明け1月3日でいったん終了ですので1ヶ月ちょっと。残る重賞は盛岡6レース・水沢4レースとなりました。 盛岡開催になって重賞・準重賞が毎週2つある週がほとんどだったんですよね。先週末がなんか妙にのんびりしているな・・・と感じたのですが、振り返ってみると2ヶ月ぶりくらいに「重賞が一つしか無い週」だからなのでした。 そんな慌ただしい週も今週末ので終わり(かな?)。次開催以降は一週間に重賞一つのペースになりますし、重賞が無い週もあります!この先はいままでよりも時間がゆっくり進む感じになるのかもしれません。 そんな残りの重賞をざっと眺めてみましょう。まず今週末。3歳牝馬の『OROオータムティアラ』、芝1000mの地方全国交流重賞『OROターフスプリント』が行われます。 いずれも申し込みメンバーがでているのでそれに沿ってみていくと、OROオータムティアラはやはりゴールデンヒーラーが中心になるでしょう。ここに来て力を付けてきたホワイトプライドがどこまで迫れるか?★ゴールデンヒーラー(ひまわり賞優勝時) OROターフスプリントは遠征馬6頭が登場予定。直近の成績は様々な遠征勢ですがいずれも芝短距離実績はしっかりしており侮れない存在と考えるべきでしょう。地元勢は、前哨戦を制したリンシャンカイホウが登場せず、とすればそのハーベストC2着にして昨年のこのレースの覇者であるツーエムマイスターが大将格。ズアーやゲンキチハヤブサ、シャドウパーティーらも軽視禁物と言いたいですね。★ツーエムマイスター(7月19日OROターフ特別優勝時) 10月31日の2歳重賞『南部駒賞』。これも他地区予定馬が出ています。今のところは“岩手対北海道”の構図になりそうですね。 知床賞を勝ったマックスレジェンドはここには出走してこないと思われますが、しかしジュニアGPを勝ったモリデンブラックや門別のイノセントカップを勝ったレディーアーサーの重賞勝ち馬だけでなく重賞上位馬、あるいは重賞上位で戦っている馬と互角に走っている馬などもいて層の厚さは相当なものに見えます。 一方岩手勢はビギナーズC・若駒賞を制したカクテルライトが大将格。ただ同馬は門別デビュー馬、6月の門別の重賞・栄冠賞では14着に終わっています。その後岩手でどれだけ力を付けたか?がカギになるのでしょう。★カクテルライト(若駒賞優勝時) 11月に入って7日の『絆カップ』。今年は条件が変わって1200mのスプリント戦になりました。ここには岩鷲賞などスプリント重賞3勝を挙げているキラットダイヤが向かう模様です。これまでの戦いぶりを見る限り同馬がでてくれば素直に有力視でしょう。★キラットダイヤ(岩鷲賞優勝時) 11月14日の2歳牝馬・地方全国交流の『プリンセスカップ』。これまではずっと水沢で行われていましたが今年は盛岡に舞台を変えての実施。 このレースも“岩手対北海道”になりがちで、そうなると構図は南部駒賞と似通ってくるだろうと想像されるのですが、盛岡で行われる事でフルゲート頭数も増えますし、南関勢、あるいは西日本からの出走馬もあるかもしれません。そうなると勢力図も変化してきそう。 盛岡開催最後の重賞は11月21日の『北上川大賞典』。ここにはエンパイアペガサスが連覇を狙って登場すると思われます。 マーキュリーカップ後は休養していた同馬ですが既に帰厩しており、A級特別を叩いて北上川大賞典-桐花賞のルートを進む事になるのではないでしょうか。北上川大賞典を勝つ事ができたならば同レース3連覇(※2019年はレースが無かったため、2018・2020に続く形)。まずは休み明け初戦の走りに注目・・・ですね。★エンパイアペガサス(一條記念みちのく大賞典優勝時) 水沢開催では古馬重賞2つ・2歳重賞2つが行われます。12月6日の『トウケイニセイ記念』は開催割の変更に伴ってシーズンラストの重賞の位置からこれまでの白嶺賞の場所に入ってきました。位置づけは、桐花賞前の最後の古馬重賞ですが、どうなるのかな。北上川大賞典組とトウケイニセイ記念組とが暮れのグランプリ、12月31日の『桐花賞』に向かう事になるのでしょうが、ちょっと読みづらい部分ではあります。 2歳重賞、12月14日の『寒菊賞』から年明け1月3日の『金杯』のラインは例年通り。今季は、ですので金杯がシーズンラストを締めくくる戦いとなりますね。例年、南部駒賞までとはちょっと違った勢力図になったりもしますので、来春に向けての新勢力の登場にも期待しつつ、シーズンを終える一戦・・・と考えたいですね。
2021年10月21日
全508件 (508件中 51-100件目)