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【内容】財閥会長の運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く編集者・杉村三郎は、義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。妹の梨子が父親の思い出を本にして、犯人を見つけるきっかけにしたいというのだ。しかし姉の聡美は出版に反対している。聡美は三郎に、幼い頃の“誘拐”事件と、父の死に対する疑念を打ち明けるが、妹には内緒にしてほしいと訴えた。姉妹の相反する思いに突き動かされるように、梶田の人生をたどり直す三郎だったが…。 【感想】宮部さんの現代モノ。事件や人の足跡をたどるストーリー多いですが、これもそう。先日読んだ『楽園』や『火車』と同じ手法ですね。事件に関係する人物の取り巻く状況や、家庭環境、交際範囲、過去、と徐々に明らかに、なりぐいぐい読ませてくれました。『楽園』よりも、ラストの締めが軽めだったかな。恋愛のゴタゴタの方に比重が行ってしまった感じ。それに主人公の杉村一家の家庭風景や、妻がいまいち親しみにくい。宮部さんの描く女性は、悪いタチの人も、お嬢様っぽい人も、どっちもなんだかいけすかないのがおもしろいです。続編に『名もなき毒』。
2009年06月30日
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このミステリーがすごい 2008年版 国内編 第7位 【内容】ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。 【このミステリーが凄い】 より紹介文自転車ロードレースを舞台に描かれるスポーツ・サスペンス たまに近藤史恵のブログを読んでいるのだが、数年前からツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなど、ヨーロッパの自転車ロードレースについての記述をよく見かけるようになった。スタートしてからゴールまで、何十日もかかるレースを熱心に観戦して、選手の情報などにも詳しいのである。そうこうしているうちに登場したのが本作だった。ロードレースを見るうちにネタを思いついたのか、あるいは逆なのか。おそらく前者だと思うけれど、いやはやよくもまあ、自分の趣味をこれだけの小説に昇華させたものである。 目立つことの重圧に耐えられず、陸上競技をやめた白石誓が見出したのは自転車ロードレースの世界だった。プロチームに所属した誓は徐々に力を発揮し、ついに国内最大級のレース、ツール・ド・ジャポンのメンバーに選ばれる。だが彼の役割はチームのエースである石尾豪を勝たせるためのアシスト役にあった。ある区間で監督に命じられたまま集団を飛び出した誓は、その後の展開に恵まれ区間優勝を遂げる。日程が進み、誓にも石尾と同様に総合優勝のチャンスが巡ってきた。だが誓は命じられるまま、自分の自転車の車輪とパンクした石尾の車輪を交換するのだった。 自らの勝利を捨ててまでアシストに徹する誓に、強豪のスペインチームが興味をもつ。そのころ誓は石尾の黒い噂を聞く。エースの座を脅かす若手が現われると潰しにかかるというのだ。現に石尾が絡んだレース中の事故で、若手が再起不能の怪我を負ったという。誓が不安な気持ちで向かった初の海外レースで悲劇が起こる。 一人のエースの為に戦うロードレースという特殊な競技の本質と、犠牲という作品のテーマが不可分に結びついた作品である。チームメイトのアシストによって栄光をつかむエースの責任と矜持など、一面的に論じられない、さまざまな人間の思惑が、レースを通じて浮き彫りにされていく。【感想】初読の作家さんが続いてます。近年の「このミス」ランクインの作品に絞って読んでます。さすが10以内ランクインの作品は、どれも、おもしろいです。この『サクリファイス』は、まず、カタカナの表題が意味が分からず、関心を持ちにくかったのですが、紹介文を読んで惹かれました。スポーツ界が舞台というと、以前、雫井脩介さんの『栄光一途』で、柔道界のドーピングがテーマの小説を読みました。スポーツ界の闇ネタというと、ドーピングとか妬みや嫉妬、、などを想像しますが、まさにそういう内容でした。ところが『サクリファイス』は、そういう、ドロドロや体育界系の熱血!的なものを感じさせません。いえ。そういうのは確かに渦巻いているのですが、主人公の周りであるけど、本人はそういうのに無関心なんですね。主人公の誓が、そもそも、俺が俺がというタイプではないのです。「トップでテープを切ることに意味があると思えない。」なんとクールなストイックな言葉。でも、冷めているとか、嫌味じゃないんですね。トップは居心地が悪いということのよう。 ある意味、力がある者だけが言える言葉です。彼はアシストに徹し、チームプレイやエースを立てることが、自分には合っている、そのほうが自由で心地よいと思っている。いまどきの、ガツガツしてない草食系な感じです。自転車ロードレースは、競輪とも違うんですね。チームで戦う、でも、孤独なスポーツでもあり、ホントになじみの無い競技だと感じました。それで、淡々と話が進み、サラッと読めるんですが、ラストが突然ドラマチックでした。爽やかで、キリッとした一冊。サクリファイス:【意味】1 いけにえ, ささげ物;(神に)いけにえを差し出すこと, 供犠 ・ human sacrifice 人身御供(ひとみごくう). 2 犠牲;犠牲的行為 ・ by [at] the sacrifice of …を犠牲にして ・ fall a sacrifice to war 戦争の犠牲になる ・ make a sacrifice of ... …を犠牲にする
2009年06月29日
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このミステリーがすごい 2008年版 国内編 第8位【内容】「模倣犯」事件から9年が経った。事件のショックから立ち直れずにいるフリーライター・前畑滋子のもとに、荻谷敏子という女性が現れる。12歳で死んだ息子に関する、不思議な依頼だった。少年は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたという―。 【このミステリーが凄い】 より紹介文『模倣犯』から9年ーいままた不可解な事件が前畑慈子の眼前に・・・。本書「このミステリーが凄い 2002年版」で堂々トップを飾ったのが『模倣犯』だった。連続殺人を実行し、マスコミを利用した劇場型犯罪をもくろむ快楽殺人者を正面から描いた傑作から9年、あの事件を最後まで関わり深く傷ついたフリーライター前畑慈子が再登場するのが本作である。 ようやくライター稼業を再始動させた前畑のもとに、萩谷敏子と名乗る中年の女性から奇妙な申し入れがあった。交通事故で亡くなった息子の等が、ときおり未来を予知した絵を描いていたので、話を聞いて欲しいというのだ。確かにひと月前に敏子の話に合致する出来事があった。もらい火で家を半焼した土井崎という夫婦が、16年前に娘を殺し家の床下に埋めたと、警察に出頭してきた。そして自供どおり、当時15歳だった長女・茜が発見されたという事件だった。 等の能力には半信半疑の敏子だったが、別の絵を見て凍りつく。あの快楽殺人者が殺した被害者たちの死体を埋めた別荘の庭の絵があったのだ。慈子は萩谷親子と土井崎家の接点を見つけようと、調査を開始する。すると、非行に走る子供を、思い余って殺してしまったという単純に思われた事件の背後に、意外な事情が隠されていたことが明らかになっていく。 作者が実際に観た夢をモチーフにしたという作品だ。すでに等少年は死亡しているが、『龍は眠る』や『クロスファイア』で描かれた超能力者ゆえの悲しみや悲劇というテーマが通奏低音のように作品を通じて流れている。ある事情により母と子の2人でひっそりと暮してきた萩谷家、娘を殺したことを胸に秘め、永井年月苦しみぬいてきた土井崎家、いまだあの事件の傷が癒えない慈子夫婦。三者三様の家族問題がサイコメトラーと過去の殺人を組み合わせたメインプロットに溶け込んでいく。重いテーマを内包した作品だが、ほのかに明るさの見えるラストに救われる。【感想】宮部さんの本には、はずれがないなあという再確認でした。とはいえ、一番好きなのは時代物で、次に現代もの、ファンタジーはあまり好みではないのですが。『模倣犯』6年前でしたっけ。映画化もされてSMAP中居くんが主演でしたね。あの頃、中居くんは『砂の器』とかえらくシリアス系ドラマに出ていましたね。『模倣犯』の続編といえるこの『楽園』は、親子関係の闇について考えさせられました。娘を殺してしまったという土井崎夫妻の心情が、すごく気になりました。物語では、自供後、時効が成立しているので、夫妻は姿をくらましているので、前畑慈子はなかなか会えず、話を聞くことができません。夫妻はその瞬間何を思ったか?何がそれ(子殺し)に駆り立てたのか?どういう環境でどうして、娘は非行少女になってしまったのか?「じゃあ、あんたは、家族にひとり、余計者、厄介者がいた場合に、どうしろっていうんです。更正させようとは考えずに、切り捨てればいいっていうんですか。」事件を調査している前畑が、ある団体職員に投げかけられる言葉です。普通に善良な親が、普通に子供を産み育てていて、どうして子供が非行に走ってしまうのか?子育てで、何かが欠落してしまっていたのか。それは愛情の欠落なのか。親側とすれば愛情をもって育てているつもりでも、子供には届かないことがある。兄弟がいて、えこひいきを感じたり、認めてもらえないと感じたり。。ボタンの掛け違い、タイミングのずれ。小言ばかりではいけないけど、叱ることも必要で、甘やかしてもいけないし、厳しすぎてもいけない。裕福すぎても貧乏すぎても幸せとはいえないかもしれない。あー、やっぱり、人を育てるって大変なことだ。大して覚悟もなく親になって、のほほんと暮しているけれど、いいのかなとかと思ったり、これくらいでいいのかなと思ったり。親子、肉親を巡る事件がニュースを騒がすこの頃なので、怖いです。
2009年06月27日

商品の説明ニューヨーク州北部、マローンの農場に住む少年アルマンゾの物語。アルマンゾは九歳、学校へ行くよりも、父さんの農場の手伝いをして、牛や馬といっしょにいるほうが楽しいのです。子牛を訓練したり、すばらしく大きなカボチャを実らせていくうちに、彼もまた、やがて、父さんと同じ農夫になろうと決心します。 小学校中級以上。感想オヤスミ前のの読書タイム、一時中断していましたが、復活です。この『農場の少年』は、 私の売り込み&根回し「おもしろくて、子供の頃、ママが大好きな本だったんだよ~」が功を奏しました。しめしめ。。昨夜、完読。ラストの章は、アルマンゾ少年の子供ながらも夢の叶うところ。最後の文章を読み終わると、息子君は、「え~、これで終わり~?このあとどうなるの?続きが読みたい、知りたいよ!」大変な嘆きぶりでした。「アルマンゾに会って、話がしてみたいよ!」その言葉には、ハッとさせられました。まさに、どんなに多くの子供たちがそう思ったことでしょうか。ローラに会ってみたい、色々聞いてみたい、旅は大変じゃないの?アルマンゾに会ってみたい、農場ってそんなに楽しいの?そう、忘れてしまいましたが、子供の頃の自分もそんな風に思っていた筈です。ローラの本を読んでいる間、どれほど、息子くんはごちそうにウットリしたことか!種まきしたり、取り入れしたり、家畜の世話をし、大掃除をし、ジャガイモで火傷したり、丸太運びで丸太の下敷きになったり、凍った湖に落っこちたり。そして、子馬。アルマンゾはとにかく子馬に近づきたくて、遠くからため息をついてます。今の子は、労働なんてしなくていい、欲しいものはすぐ手に入る、お小遣いは当然もらうもの、ですから、ものの価値もわからない。かくいう、大人の自分だって似たり寄ったりですが。「この金に、何がつまっているか分かるかい、ぼうず。」お祭りで一杯のジュースを買うために、5セント玉を貰おうとするアルマンゾに父さんがいいます。「これは、労働だよ。 種をまき、鍬をいれ、間引きをし、取り入れ、脱穀し、束ねる、それがみんなコレに詰まっている。金を使うときは、そのことをよく覚えておくんだ。」ローラ・シリーズは、私の宝物でした。実際の現実生活では得られない、大切なことが一杯詰まっている本。貴重な体験を、読書を通じて味わって欲しいです。福音館ローラのものがたりと 初めて出会った本。小学生中学年の頃に夢中になりました。最近では、ローラのかあさん"キャロライン"の少女時代の物語、ローラの娘ローズの物語も刊行しています。【インガルス一家の物語 全5冊】★ローラシリーズ《前半》・『大きな森の小さな家』インガルス一家の物語1・『大草原の小さな家』インガルス一家の物語2・『プラム・クリークの土手で』インガルス一家の物語3・『シルバー・レイクの岸辺で』インガルス一家の物語4・『農場の少年』インガルス一家の物語5 「今から100年以上前,北アメリカがまだ開けていなかったころ,大森林や大草原でのきびしい開拓生活のなかで成長していった少女ローラとその家族の物語。大自然の脅威に立ちむかい丸太小屋づくり,井戸掘りと一歩一歩生活を切りひらいていく一家の,たくましく優しい姿が,ローラの目を通して克明に描かれます。 【クワイナー一家の物語 全4冊】★ローラの母 キャロラインシリーズ・『ブルックフィールドの小さな家クワイナー一家の物語1』・『十字路の小さな町クワイナー一家の物語2』・『森の小さな開拓地クワイナー一家の物語3』・『コンコード・ヒルの上でクワイナー一家の物語4』 「大草原の小さな家」の著者ローラの母さん,キャロラインの少女時代を描くシリーズ。厳しい暮らしの中でも希望を失わない一家が,さまざまな人との出会いの中で困難を乗り越えていきます。
2009年06月27日
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このミステリーがすごい 2008年版 国内編 第10位 第8回本格ミステリ大賞 候補作【内容】バイト雑誌を立ち読みしていたビンボー大学生・結城は、ひとりの少女から声をかけられて……。この夏、鮮烈なミステリーがはじまる 期待の新鋭が描く究極の殺人ゲーム。 【このミステリーが凄い】 より紹介文現実離れした設定に登場人物、連続殺人・・・ミステリーに淫した問題作 これで米沢穂信は、4年連続のランキング入りとなった。()すでに常連作家と言っていいだろう。ただし本作はこれまでの青春ミステリーとはおもむきが違った作品なのでご注意を。 女にモテる為には車を買わなくてはと決心し、アルバイト雑誌をめくっていた大学生の結城はびっくりする。なんと時給十一万二千円という破格のアルバイトを見つけたのだ。その時給に吸い寄せられたのは結城だけではなかった。人里離れた山道の奥にある施設に集まった十二人の男女。彼らが要求されたことは、施設の地下にある〈暗鬼館〉の中で七日間を過ごすことだった。ただしその間の行動は逐一モニタリングされ、しかも途中で滞在をやめることはできないという条件だった。〈暗鬼館〉の個室に落ち着いた結城だったが、各部屋に殺人事件で使われるアイテムが用意されていることを知る。彼の場合は火掻き棒だった。さらに個別に与えられたカードキーにはノックスの十戒をもじったような文章が書かれていた。ラウンジで自己紹介をした後、部屋に戻った結城は新しい書類が用意されていることを知る。そこには〈暗鬼館〉で過ごす上のより細かいルールとボーナスに関する規定が書かれていた。人を殺した者には犯人ボーナスが、殺害された者には被害者ボーナスが、正しい犯人を指摘した者には探偵ボーナスが支給されるというのだ。そして霊安室に納められた十個の柩。こうして殺人ゲームの巻くが開く。 現実離れした究極のクローズド・サークル、特殊なルールに縛られた‐記号的な登場人物達、彼らの間で巻き起こる連続殺人事件。 これまでなんとかリアルに見せようとしてきた先人の苦労や、外部からのツッコミを逆手にとって、平然とミステリーに〈淫して〉みました、という作者からのメッセージが伝わる問題作だ。 【感想】おもしろかった。ありえない設定の中での殺人ゲーム。おもしろいというと不穏当かもしれませんが。大好きな、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』、 貴志祐介さんの『クリムゾンの迷宮』、綾辻行人さんの館シリーズ 系です童謡の”見立て”こそなかったですが、登場人物が集められた施設には、12人のインディアン人形がラウンジに飾られている。殺害方法と凶器がそれぞれ配られているのが、”見立て”に相当するようです。不条理な空間での筋書きなのに、そんなのあり?とか、騙された感はなかったです。人物も多いのに混同することもなく。最期まで、全然結末が見えませんでした。ホントに誰もいなくなってしまうのか、主人公の結城はどうなるのか。初読なので、他作品はわかりませんが、米沢さん作品の中では異色なようですね。これまでは、北村薫さんの流れの、”日常の中の不可解な謎を解く本格ミステリ論理の小説”が主だったそうですね。四年連続ランク入りという、これまた人気の常連作家さん、他作品も読みたいです。タイトル、どういう意味かな~と全然わかりませんでした。館に「インしてみる」ではなくて、英題は"THE INCITE MILL"。incite:引き起こす、煽動する、刺激する。mill:水車場、製粉所、ひきうす。【このミス履歴】 近年毎年トップ20以内にランクイン『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位(2009年度版では、対象期間内に新作が無かったためランクインせず)『心あたりのある者は』(短編集『遠まわりする雛』所収)第60回日本推理作家協会賞短編部門の候補作 2007年〈古典部〉シリーズの短篇作品他『儚い羊たちの祝宴』
2009年06月25日
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このミステリがすごい 2007年版 国内編 第3位 第7回本格ミステリ大賞受賞作【内容】人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作。【このミステリーが凄い】 より紹介文相次いで母親を失った二組の家族の隠された秘密とは昨年末から今年にかけてもっとも活躍したひとりと断言してもさしつかえない作家が道尾秀介である。一昨年、『背の眼』で第五回ホラーサスペンス大賞で、次点にあたる特別賞を受賞してデビューした折から、ある縁もあって秘かに注目していたのだが、三位の本作と共に二作がランクインするとは驚いた。米澤穂信と一、ニを争う有力な新人作家と言って良いだろう(2007年記述)。 母親の咲枝を癌で亡くした小学校五年生の我茂凰介。鳳介と父親の洋一郎との二人暮しが始まった。そんな一家に、さまざまな気遣いをしてくれたのが水城一家である。父親の水城徹と洋一郎は大学医学部や大学院を通じての同級生だった。徹は大学に残り研究員となり、洋一郎は同じ大学の付属病院に勤務していた。さらに妻同士も、また鳳介と徹の娘亜紀も同学年で、両家は深い関係で結ばれていた。 母親の葬儀の日以来、鳳介の脳裏に奇妙な映像が浮かぶようになっていた。格子で半ば塞がれた部屋の向こう側に、汗ばんだ身体で蠢く二つの裸体と、少年の姿が見えるのだ。そして自分の右手には、何か禍々しいものが入った瓶が。 一方、水城一家も深刻な問題を抱えていた。徹が勤めに出ている妻の恵の浮気を疑っていたのだ。そんなおり、恵は徹が残業している研究室の屋上から飛び降り自殺をしてしまう。 母親の自殺にショックを受けた亜紀も、自殺を図ろうとしたのか、車の前に飛び出し重傷を負う。亜紀もまた、母親の滋賀きっかけとなり、封印していたらしい忌まわしい記憶を呼び起こしてしまうのだ。 洋一郎の心配をよそに薬物依存症になりかけていく徹。父親たちへの拭いがたい不信に取り憑かれてしまう鳳介と亜紀。妻であり母親である存在を失った二つの家族はどこに行こうとしているのか。 無理なく埋められた伏線、読者の目を眩ませる巧妙なミスディレクションなど、じつに精密に組み立てられた本格ミステリーである。主に子供の目を通して語られる二つの家族の物語が、はたしてどこに着地するのか、予測できる者は少ないだろう。母親の死や虐待というもっともきつい経験に苛まれる子供心理をいきいきとした筆致で描きながら、それらすべてをあっという驚くプロットに収斂させる腕前は見事。【感想】読みやすかったです。注目の道尾秀介さん、初読でした。予想していたのより、とても軽かった,印象です。母が亡くなり、父の状態も崩れだす、、という家族崩壊系。でも、陰惨さはなく、淡々としていて、それぞれの苦悩があまり深くないので読んでいて、辛くなることはない。東野圭吾さんの『白夜行』天堂荒太さんの『永遠の仔』などと比べると、作家さんのタッチで、同じ題材も、随分変わるものだなあ、と感じました。最新の『カラスの親指』と『ラットマン』も楽しみです。『背の眼』 『向日葵の咲かない夏』 『骸の爪』 『片眼の猿』 『ソロモンの犬』 『シャドウ』 『ラットマン』 『カラスの親指』『鬼の跫音』『龍神の雨』
2009年06月24日
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「刀城言耶」シリーズ 第3弾このミステリーがすごい 2008年版 国内編 第5位 【内容】奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。犯人は現場から消えた長寿郎なのか?しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、いずれも首無し死体で見つかる。古く伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか―。 【このミステリーが凄い】より紹介文土俗的な素材を題材にホラー小説と本格ミステリを融合させた力作ホラー小説と本格ミステリの両ジャンルを行き来し、ジャンル横断的な作品を書き続けているのが三津田信三です。一部マニアからの評価は高かったのだが、あまりにもおどろおどろしい設定や、民俗学的な蘊蓄がうるさく感じられるきらいもあり、一般的な人気をつかむまでには到らなかった、というのが現状だろう。だが本作によって、ハードな謎解きと土俗的ホラーを融合させた三津田作品に注目が集まることは間違いない。奥多摩媛首村の旧家、秘守一族には古来より代々伝わる〈婚舎の集い〉という儀式があった。当主の長男が23歳になると、三人の花嫁候補の中から一人を選ぶという秘儀である。だが儀式の最中、候補の一人が首なし死体で発見され、秘守一族の筆頭である一守家の長男、儀式を行っていた長寿郎が姿をくらましてしまう。儀式の場となった山中は密室状態で、長寿郎が逃亡した形跡も無い。一守家に成り代わり跡目を狙おうと、画策を試みる欲深い人間たちを嘲笑うかのように、第二、第三の殺人事件が発生する。古来より秘守家に祟りをもたらし続ける淡首様の怨霊の仕業なのだろうか。 『厭魅(まじもの)の如き憑くもの 』 『凶鳥の如き忌むもの』に続く、放浪の怪奇幻想作家、刀城言耶が探偵を勤めるシリーズの三作目である。横溝正史が薄味に感じられるほど、土俗的な味付けが濃い。しかし首なし死体をめぐり何故首を切らなければならなかったのかという絶妙な理由付けなど、本格ミステリーの骨格はきちんとしている。なかでも驚くのが怒涛の謎解きだ。事件を巡る二十一の謎を列挙し、ある事実の反転がきっかけで、数々の謎がドミノ倒しのように連鎖して、綺麗に解決していくのである。いやはや、お見事の一言だ。固有名詞に癖があるわりに人物が没個性で会話が平坦という弱点はあるが、今年の本格の収穫であることは間違いない。【感想】幸いにも図書館で借りることが出来、つづけて3作品読むことができました。特長なのは、語り手が交替しながら一人称で語ってる点です。異なる視点から、事件を語っていて、結果的にその文中にヒントがあるという感じ。今回は、事件の現場で刀城言耶探偵は登場しませんでしたね。謎解きの場面で”刀城言耶”が登場しますけど。。(・。・)そうそう、<首(顔がわからない)のない遺体>の、いろんなケースが勉強になりました。(ネタバレになります→)読後、そんなのあり?と疑問だったのは、跡取りを殺された家族(被害者サイド)と、犯人(加害者)との暗黙の提携です。一連の事件は、旧家の抱える「祟り」を防ぐ秘策・秘密によって起きたようなものです。死んでしまった者は秘密ごと墓に葬ってお終い、で良いということなんですかねぇ。犯人は野放しなのに?家族が「この遺体は、妃女子です。」とか「長寿郎ではありません。」とか、ちゃんと真実を述べれば、なんてことなかったでしょうに。ま、それが小説の仕掛けなんですよね。長年の「祟り」との戦い、家の存続、残された跡取りの命など考慮して目をつぶっちゃったってことか。犯人は短時間で、随分思いきった綱渡りな手を使ってます。その後の判断もすばやくてびっくりです。このシリーズは、いつか文庫で揃えたいです。何回も繰り返し読んで楽しめそうです。「刀城言耶」シリーズ 第一弾 『厭魅の如き憑くもの』 第二弾 『凶鳥(まがとり)の如き忌むもの』 第三弾 『首無(くびなし)の如き祟るもの 』 第四弾 『山魔(やまんま)の如き嗤うもの』 短編集 『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』第五弾 『水魑(みずち)の如き沈むもの 』シリーズ以外『忌館』『凶宅』
2009年06月21日
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「刀城言耶」シリーズ 第4弾このミステリーがすごい 2009年版 国内編 第8位 【内容】忌み山で人目を避けるように暮らしていた一家が忽然と消えた。「しろじぞうさま、のーぼる」一人目の犠牲者が出た。「くろじぞうさま、さーぐる」二人目の犠牲者―。村に残る「六地蔵様」の見立て殺人なのか、ならばどうして…「あかじぞうさま、こーもる」そして…。六地蔵様にまつわる奇妙な童唄、消失と惨劇の忌み山。そこで刀城言耶が「見た」ものとは…。『首無の如き祟るもの』に続く渾身の書き下ろし長編。 【このミステリーが凄い】より紹介文ホラーと民俗学的なテイストを加えた本格ミステリー本格ミステリーの器にホラー小説的な要素を盛り込み、さらに民俗学的なテイストを加えた作品を書き続けているのが、三津田信三です。平成に甦った横溝正史の世界ともいえようが、おどろどろしさと終盤における謎解きはご本家以上といっても過言ではない。 2008年度「このミス」5位にランクインした『首無の如き祟るもの』に続き、今年は8位と、二年続けてのベストテン入りは立派。本格ミステリーのジャンルにおいて、常連という地盤を固めつつあるのではないか。 奥多摩を流れる媛首川の源流域の神戸地区。その他の林業を司る郷木家には、三山の里宮から奥宮までを単独で礼拝する「成人参り」という二十歳を迎えた男子の通過儀礼があった。郷木家の四男の靖美(のぶよし)は東京から故郷に戻り「成人参り」に挑む。だが道中、靖美に数々の怪異が襲い掛かる。道に迷った靖美は忌み山として恐れられている平山に足を踏み入れ、山中に住む一家に宿をかりることになった。彼ら五人は郷木家と因縁のある錬炭家に連なる家族だった。ところが翌朝、家の入口のすべてが内側から戸締りがされていたにもかかわらず、一家全員が消えていたのだった。 郷木靖美が体験した顛末を記した手記に興を惹かれた怪異蒐集家にして作家の刀城言耶は、さっそく現地に赴く。だが待っていたのは、六地蔵を歌った童歌とおりの連続殺人事件だった。マリー・セレクト号を思わせるような失踪事件と、童歌を利用した見立て殺人に加え、顔の無い死体の謎も設定されている。また前作と違い、刀城言耶の登場シーンが多いのもファンにとって嬉しいところだろう。例によって未解決の謎が箇条書きで列挙される。そしてその数々の謎が、ある手がかりをきっかけに、怒涛のように次々と解明されていくのである。さらに最終版にもサプライズが用意されているなど、実に欲張りな謎解きが楽しめる。【感想】村の見取り絵図と、旧家の人物関係図がないのが残念。『厭魅』が文庫化の際、それらが付いたことを思うに、文庫待ちか。是非とも、絵図と関係図を添付願います! 「忌み山」へ「成人参り」した、郷木靖美。この人の恐怖ぶりが、冒頭怖かったです。まさにホラー! 「それに会ってしまったら、これをあげなさい。」祖母が渡してくれた木の実。それって、何?!そして、山で出会ってしまったのは。この靖美さん、生い立ちもいろいろ考えるに、お気の毒です。屈強な兄たち、物静かな自分。冒頭でホラー、締めに理性的な事件の解明。消えた一家の行方及び正体、連続殺人の犯人の動機や方法論。刀城探偵の独断場は、芝居がかった所はなく、探偵はひとり。シンプルです。 最初は、素人の介入に頑固だった警部が、すっかり彼を認めているのがちょっと嬉しいです。刀城の父親が、いずれシリーズに出てきたりするんですかね。そんなこともこの先たのしみです。『厭魅』よりも、民俗的蘊蓄が薄まったようです。盛り込まれてはしても自然なので苦にならないです。読みやすく、でも、読み応えは充分でした。地元に伝わる地蔵のわらべ歌に見立てた連続殺人事件は、横溝の『悪魔の手毬歌』などを彷彿。全部で6人の筈が、途中で一気に3人を片付けちゃうという荒業も気になりませんでした。「刀城言耶」シリーズ 第一弾 『厭魅の如き憑くもの』 第二弾 『凶鳥(まがとり)の如き忌むもの』 第三弾 『首無(くびなし)の如き祟るもの 』 第四弾 『山魔(やまんま)の如き嗤うもの』 短編集 『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』第五弾 『水魑(みずち)の如き沈むもの 』シリーズ以外『忌館』『凶宅』
2009年06月20日
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刀城言耶シリーズの第1弾【内容】神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1弾 長編。 【感想】三津田信三さんは昨今「このミステリーがすごい!」にランク入りしている、今をときめくミステリー作家さんですが、はじめて読みました。とってもツボにはまりました。シリーズものが好きなのもありますが、是非、他の作品も読みたくて仕方ありません。なんとか入手できないか考え中です。時代は終戦直後。閉鎖的で因習的な田舎。村内で勢力を二分する旧家。村のシステムには憑き物が現存。聖とも邪とも決めかねる地元神の伝承。「横溝正史」か「京極夏彦」かの香り漂う小説世界。冒頭に、村の見取り絵図と、旧家の人物関係図があるのが、嬉しいはじまりです。入り組んだ人物関係を理解するのに苦労させてくれるのが、祖母・母・孫娘と、代々「サギリ」という名前の登場人物です。また『犬神家の一族』的、胡散臭い人物、スケキヨのごとし覆面した顔に傷のある男、「黒子」という出自不明の人物。実は旧家の関係者なんだろう、そのうちに出自が明らかになるんだろうと。章毎に、登場人物の一人称手記です。違う人物に交替してはなしが進みます。 《氷と炎のシリーズ》ほどの語り手の数ではないですが。ほんの2~3人です。・黒子犯人説 謎の覆面男・多重人格犯人説 キーワードは双子・長老犯人説 etc,,読んでいるうち、犯人はこの人かな~と想像できるのがおもしろいですね。でも、すっかりだまされちゃいました。いわゆる、どんでんがえし。読み返してみれば、確かにヒントがあったんですね。基本的にホラーは苦手で、横溝作品や、京極作品は好きですが、お化け屋敷は怖くて入れませんし、ホラー映画も絶対に観ません。それでも、こうしたジャンルに惹かれちゃうのは、なんでですかね。日本的な、因習に囚われて、禍々しい雰囲気にどうも惹かれてしまうタチなんでしょう。でも、ただのホラーならポイしますが、これらはちゃんとミステリで、知的好奇心も満たしてくれる。そしてホラーとしての醍醐味も余韻もちゃんと味わわせてくれました。本格ミステリとホラーの融合、納得でした。「刀城言耶」シリーズ 第一弾 『厭魅の如き憑くもの』 第二弾 『凶鳥(まがとり)の如き忌むもの』 第三弾 『首無(くびなし)の如き祟るもの 』 第四弾 『山魔(やまんま)の如き嗤うもの』 短編集 『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』シリーズ以外『忌館』『凶宅』
2009年06月19日
著者インタビュー「巷説百物語シリーズ」の第四弾 はじまりの百物語、シリーズ最重要作 上方を追われて江戸で双六売りをしている又市は、ある事件から損料屋の仕事を手伝うことになる。損料屋とは今でいうレンタル業。しかしモノを貸した賃料をもらうのではなく、使われたことで「損」をした分をお金でいただくという理屈の商売。又市に声を掛けてきた「ゑんま屋」はモノだけでなく「恨み」の損も請け負うというという。かくして又市は仲間たちとともに奇想による「仕掛け」の数々で「恨み」の損を晴らしていく。江戸時代の妖怪本『桃山人夜話 絵本百物語』(竹原春泉・画)に登場する妖怪たちをモチーフにした『巷説百物語』第4弾は、シリーズの「前史」ともいえる作品。【目次】寝肥 /周防大蟆 /二口女 /かみなり /山地乳 /旧鼠シリーズ1、2作目が江戸時代、三作目は明治時代と時代が下がったが、4作目は時代的に遡る。小股潜りの又市が駆け出しの頃の話です。 上方を追われた又市は、相棒の林蔵とともに江戸で、惚れていた女が人を殺めてしまったことから、銭で埋まらぬ損を引き受ける裏の損料屋「ゑんま屋」の一党と関りを持つことになる。「ゑんま屋」が引き受けた事件の解決のため、又市が毎回仕掛けを考案しますが、後の作品では完璧なイメージの強い又市も、駆け出しの頃は信念と現実のギャップに憤りを感じ、葛藤しています。妖怪の仕業ということで、丸く収める大仕掛けが見どころのシリーズですが、仕掛けがそんなにうまくいくだろうかと、実に苦しい。持ち出された妖怪や怪事もかなり無理やりのこじつけです。ですが、だからこそ駆け出しで青い青いと言われる又市が精根傾けたものとしてのリアリティーがあります。洗練された仕掛けの対極です。 後半では、シリーズに関る人物がぽつぽつと登場します。最後の二編「山地乳」「旧鼠」は稲荷坂の祇右衛門との苦しい戦いです。祇右衛門は江戸の最下層の非人たちを欲しいままに操り、何度殺されても甦って来る怪物です。又市の過去が漸くあきらかになりました。こうして、-五鈷鈴をもってりんと鈴をならし、口上「御行奉偽ーー」が生まれたんですね。 またシリーズを読み返したくなるけれど、そうすると、他のが読めなくなりそうなのが難点。なんといっても抜群に読み応えがあるため、他本を読む余力がなくなるのです。
2009年06月18日
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原作本幽晦との境界が、破れている。内部の薄明が昏黒に洩れている。ならばそこから夜が染みて来る…。生まれてこのかた笑ったこともない生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み顔崩れても凛として正しさを失わない女、岩―「四谷怪談」は今、極限の愛の物語へと昇華する!第二十五回泉鏡花文学賞受賞作。 DVD 第25回泉鏡花文学賞を受賞 1997年(平成9年)第118回直木賞候補作品 1998年(平成10年)「このミステリがすごい 7位 国内編 1998年版」【あらすじ】世捨て人然として貧乏長屋の片隅でひっそりと暮らす浪人・境野伊右衛門(唐沢寿明)は、御行乞食・又市(香川照之)の計らいで、民谷家の娘・岩(小雪)と縁組みし、その家督を継ぐ。岩は病のせいで美しい顔に醜い傷を負っていたが、卑屈さなど微塵もない気丈な女だった。最初こそ、感情を表さない夫に苛立ちを募らせる岩だったが、伊右衛門の誠実な心根が伝わるに連れて、2人は次第に心を通わせて行く。しかし、かねてより岩に執心していた筆頭与力・伊東喜兵衛(椎名桔平)は、そんな2人を苦々しく思っていた…。【感想】京極堂シリーズ、又市シリーズ、百鬼夜行など、いろいろ読んできて、ようやく『嗤う伊右衛門』です。又市が登場するというので読みました。四谷怪談のイメージがあまりにも強く、きっと妖怪譚で京極さんらしいアレンジのおはなしだろうと思ってました。妖怪譚なのではなく一組の男女の愛の物語、でした。江戸時代の人の心理が分かる筈もないんですが、辛い経緯をもつ浪人と、疱瘡で顔が崩れたかつて評判の美人、という独特なケース。夫婦以外の人物も複雑な心理を抱えていてそれらが絡み合ってました。でも、このお話では、さすがの又市も後手後手です。シリーズのようなサッパリスッキリな、「御行奉る。」--りん--という風にはいきませんね。伊右衛門自身で、カタをつけてしまった。。風変わりで、壮絶で。芸術的敷居の高さを感じてたせいで、これまで何度かチャレンジしては読破挫折。今回ようやく読めました。読んでみれば、そんなことはなかったです。ただ、始めの、伊右衛門が真っ暗な蚊帳の中で座ってのウダウダした文章が辛いです。その後、婿入りのはなしなど始まると大丈夫でした。又市シリーズになじんだおかげです。又市役は、映画では香川照之さん、ドラマDVDでは渡部篤郎さんです。ちょっと、イメージがどちらも違うのですが、仕方ないですね。【映画化】監督 蜷川幸雄 出演 唐沢寿明 小雪 香川照之 池内博之 椎名桔平 【京極夏彦 読書感想】 『姑獲鳥の夏』 『 魍魎の匣』 『狂骨の夢』 『鉄鼠の檻』 『絡新婦の理』 『塗仏の宴 宴の支度』 『塗仏の宴 宴の始末』 『陰摩羅鬼の瑕』 『邪魅の雫』 『巷説百物語』 『続巷説百物語』 『後巷説百物語』 『前巷説百物語』 『嗤う伊右衛門』
2009年06月18日
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ミステリチャンネル1位早川書房 日本SF大賞 2005年 第3位 このミステリーがすごい 2006年 国内編 第16位 本の雑誌 ベスト10 2005年第2位【内容】地球温暖化防止のため、急速に森林都市に生まれ変わった東京。しかし、そこは理想郷ではなかった。月刊Newtypeで連載され、各メディアで話題を呼んだ超大作。【感想】表紙に惹かれたのと、近未来の設定が面白そうで読んでみました。初の池上栄一作品。東京は、環境バランスを無視した緑地化政策のため、地上は人々が生活できる場所ではなくなり、人々は高層大地(アトラス)を積み上げて、そこに移り住んでいます。地上は熱帯化し、大スコールに襲われると全て流される。けれど、全ての人口が高層大地に移り住めるのではなく、地上に残された人々は格差社会へ憤り、反乱軍(メタル・エイジ)を形成する。経済は(カーボ)炭素経済社会に変わってます。世界はCO2が経済を支配する時代。CO2の排出量で通貨や税金が左右され、如何にCO2を削減するかにマネーの流れが変わる時代です。「カーボ(炭素)ビジネスゲーム」の描写は、秀逸でした。米のサブプライムローンの破綻、現代の大不況時代、マネーゲーム社会の崩壊した今、この「シャングリ・ラ」で描かれている「カーボビジネス」の経済破綻ドラマは、まさにいまの先取りです。貴志祐介さんの『新世界より』に、甲乙つけがたいおもしろさかと思いつつ読んでいたんですが。、ちょっと違ってた~。途中からなんでもありの漫画風になったしまったような。もう少し真実味や、リアリティが欲しかったですね。残念で、惜しいという感じです。 『新世界より』読書感想作りこまれていて、面白い設定です。もの足りないのは、人間描写やドラマが希薄なこと。東京の副都心が彼方此方出てきて、近未来、日本が自然に支配されて苦労する姿はおもしろいです。「ターミネーター」や「マトリックス」といった機械文明と戦うテーマの映画と対照的、人類は、進化した森林、気温、天気、といった、すっかり住みにくくしてしまった環境と共存できるか。地球に存続できるか、という問いかけが基本にあるのですよね。ヒロインの育ての親がニューハーフだったり、呪術やら、日本の古来の神武天皇のクローンに末裔やら、。それらも良いとしても、複雑な人間関係と登場人物の数のため、あえて心理描写などはカットしたのですかね。ヒロインが、育ての親の裏切りや、宿命やら、出生の秘密やら知っていくのにも、大して悩まない。軽く怒ったり、戦ったり、どんどん話が進みます。環境を壊し、経済も破綻、ひどい状況を引き起こしてても、誰もちっとも反省の色も見えなず、また東京は何度も再生する町だ、と明るい未来を信じちゃう。なんとも軽くて強い。登場人物はなかなかユニークで、一番強烈なのは水蛭子(ヒルコ)。ムカデを食べるだの、なにか予言するたびに語尾に「ぎゃぁあああぁああぁ」というので参りました(汗)。ヒロインはセーラー服で、刃のついたブーメランでダイヤモンドのブーツを履いて、政府軍と戦う。”萌え”キャラ。いわゆるジェットコースターの面白さ。好みとしては、もうちょっと重厚さが欲しいところでした。SFファンタジー要素が盛りだくさん。アニメ化やコミックというのは納得です。 最後まで読まずにはいられない。世界観に圧倒されました。スピード感溢れる娯楽作でした。今、話題の『テンペスト』は、『シャングリ・ラ』の欠点を補う内容とのこと。小説として高い成熟度だそうです。【コミック】 【アニメ】2009年4月より放送中。全24話予定アニメサイト【著者】池上永一 プロフィール1970年 沖縄県石垣市出身。1994年 早稲田大学在学中『バガージマヌパナス』で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。98年『風車祭(カジマヤー)』直木賞候補。沖縄の伝承と現代が融合した豊かな物語世界の紡ぎ手。
2009年06月18日
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【内容】航空会社の組織と腐敗、尾巣鷹山日航機墜落事故(85年)を描く【映画化】2009年10月24日公開。『ホワイト・アウト』の若松節朗監督 主演:渡辺謙。『白い巨塔』『華麗なる一族』など、ドラマ化など数々のヒット作を世に送った作家・山崎豊子のベストセラー『沈まぬ太陽』が今秋映画化。渡辺謙 主人公・恩地元三浦友和 恩地元の“宿敵”行天四郎松雪泰子 客室乗務員 行天の愛人鈴木京香 恩地の妻石坂浩二 航空会社社長【あらすじ】アフリカ編:国民航空のエリート社員、恩地元は労働組合委員長に指名され、会社初のストライキで待遇改善を勝ち取る。その後、中東のカラチ、テヘラン、ナイロビ勤務と、10年におよぶ「懲罰人事」にあう。尾巣鷹山編:1985年8月12日、国民航空の羽田発大阪行きのジャンボ機が墜落、520人が犠牲となる。窓際族だった恩地は救援隊員として現地入りし、遺族の「お世話係」で奔走。会長室編: 事故後の立て直しのため、利根川総理は関西紡績の国見正之を国民航空会長に迎える。国見は組合の統合のため、恩地を「会長室部長」に抜擢、改革に乗り出す。『沈まぬ太陽』は、1985年に実際に起きた日本航空ジャンボ機墜落事故とその前後の同社の内紛を題材にした「モデル小説」。作中の航空会社は日本航空を思わせる「国民航空」で、鶴ならぬ桜がトレードマークになっている。主人公の恩地のモデルは、日本航空労組の元委員長で、途上国勤務を約10年間続けさせられた故・小倉寛太郎氏。一部の事故の遺族は実名で登場するなど、「フィクション」と「ノンフィクション」の間をねらった手法をとったことで、迫真のドラマとなった。映画化には、角川映画と日航との確執が取りざたされている。連載中は『週刊○○』が機内では配布中止された。【感想】『華麗なる一族』で、キムタク演じる主人公が、父からの冷たい仕打ちに耐えつつも必死に夢の実現に奔走するドラマで、理不尽な目に合う主人公を見ていると。胸が苦しい思いをしたものです。山崎さんの小説はどれも重厚なイメージがあり、これまで読んだことがなかったのですが、自分もそろそろ大人な?小説も読めるかなと、チャレンジしました。この『沈まぬ太陽』でも、主人公がこれでもかという会社からの理不尽な仕打ちにあいます。それでも、よく耐えて会社を辞めないでいることに、当時の会社人の不屈の根性に感心。アフリカで孤独な主人公、、渡辺謙さん絵になりそう~。まだバブルが来る前、団塊の世代のつよさに脱帽です。 一方の、会社側のあまりの金権腐敗に、呆れ果てました。今でこそ、政治家も逮捕されるようになりましたが、当時は政治家と吊るんで、ウン百万もの札束を、簡単に集めたりばら撒いてたんですね。(フィクションということですが、ホントだったんだろうな、と思っちゃいます。)ほんとに会社の経営陣の意識というのはここまで腐ってたんだろうかと。主人公が、「空の安全」「社員の待遇」の改善に心砕いているのに。 やっと、日本への帰国がかなってしかも新会長の秘書に抜擢され、ようやく会社も生まれ変るのかと思ったら、あまりに深い組織の腐敗はちょっとやそっとじゃ改善されないのが浮き彫りに。それでも、いつまでもそんな企業のあり方は通用しないのがラストの方で伺えました。モデルとされている航空会社からは、当時猛反発をうけたようですが。映画化の企画もなかなかスンナリ進まなかったそうですね。会社として何を一番大事に経営しなければいけないか。社員は使い捨てではない。今現在は、本に描かれたようなことのないよう願います。安心して飛行機に乗れなくなりますよ。同じ、尾巣鷹山航空機事故を取り上げた小説で、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」もありますね。こちらも映画化され、監督は『突入せよ!「あさま山荘」事件』『魍魎の匣』の原田眞人監督 2008年公開 主演は堤真一さん。「クライマーズ・ハイ」 読書感想『不毛地帯』ドラマ化だそうですね。2009年10月スタート。主演に唐沢寿明 フジ系木曜22時 フジテレビ開局50周年記念ドラマのラスト。こちらはどんなおはなしなんでしょう~。「運命の人」という新刊が出ているんですよね。
2009年06月16日

『ターミネーター4』[監]マック・G[脚]マイケル・フェリスほか[出]クリスチャン・ベール サム・ワーシングトン アントン・エルチン ブライス・ダラス・ハワード ヘレナ・ボナム=カーター[配給会社] 2009米/ソニー[上映時間] 115分■見どころ 人類と機械との壮絶な戦いを描く人気SFアクションの新シリーズとなる3部作の第1弾。ジェームズ・キャメロンが生み出した大ヒットシリーズの第4作で、新たな主演に「ダークナイト」のクリスチャン・ベールが主人公ジョン・コナー、監督は「チャーリーズ・エンジェル」のマックG。公式サイト▼『超映画批評』『ターミネーター4』70点(100点満点中)マックG監督インタビュー「ターミネーター4」をより楽しむためのキーワード集■こんな話2018年、軍事コンピューター、スカイネット率いる機械軍と人類の戦いは最後の時を迎えつつあった。抵抗軍のリーダー、ジョンは記憶喪失のマーカスという男と出会い、2人はスカイネットの活動の核心に迫ってゆく。■感想 ネタバレちょいあります↓待望のシリーズ最新作「ターミネーター4」。<審判の日>を阻止するために奔走したコナー親子たちの戦いを描いた前3部作に対し、<審判の日>以降の未来世界が舞台となる新3部作。前3部作を見ずに見ても楽しめる映画ですが、当然ながら、ある程度の基礎知識を入れて見た方がより楽しめるでしょうね。重要人物その1: ジョン・コナーの父 カイル・リース新シリーズでは、いろんなテーマがあるでしょうが、一番は、ジョン・コナーの父、カイル・リースがどんな風に描かれているのかなんかは、とても気になるところでした。マイケル・ビーンに似ているのか、とか。何も知らない父カイルと全てを知っているジョンの出会いとか、ね。新シリーズでは、若いカイルがどのように戦士になっていくのか、1作目の『ターミネーター』のマイケル・ビーンに繋がっていくのが楽しみですね。監督談では、「新3部作は、未来には2度と戻れないにもかかわらず、過去へと旅立つ決意をするに至ったカイルの心の変化、軌跡を描く映画でもあるんだ」だそう。時系列的におかしな、若い頃の父に会うという話では、東野圭吾の「トキオ 時生」も良かったです。「スター・ウォーズ」も連想しちゃう人もいるんじゃないですかね~。人気シリーズの続編、父の代のドラマに膨らませちゃうパターン。重要人物その2: 謎の男マーカス新キャラクターです。物語の途中、ジョンが出会う、シュワちゃん的な存在ですよね。「魂というものは人間のどこに宿っているのか」という哲学的な疑問が、本作のテーマだそうなので、その辺を体現している人。でも、映画をみてすぐには、そんなテーマがあったのか~というのはあんまりわかりません。機械と戦うおはなしよね~ぐらい。「マトリックス」とおんなじよね~。とか。 言ってみれば、ネオみたいな存在じゃないですか。実際、こっちが主役でもおかしくないですよ。そんなシナリオも当初はあったらしいですよね。ジョンの死後に、抵抗軍を引っ張っていくマーカスって。でも、製作の初期段階、クリスチャンベイルの出演時間が当初5分しかなかったという話は、はあ?ですし。そんなことになったら、全然ちがう話になっちゃう!今作は、前シリーズをすごい研究したそう。脚本も練りに練ったそうですね。ジョンに排除されそうになるマーカスは、ちょっと可哀そうだなあと感じましたよ。マーカスは、はじめ敵か味方か謎です。見終わってみれば、目覚めてからは、失った記憶を探していたんだね、とわかる。二度目のチャンスというキーワードがしばしば出てくる。自分が、あんなこと、人間と機械のハイブリッドになっていたなんて。「マトリックス」のネオが知った真実は、世界が機械に支配されていた(自己の外)。マーカスが知った真実は、自分が機械に支配されていた(自己の内)。どっちも嫌ですねぇ。『T2』の少年ジョンは、機械のシュワちゃんに、会った事の無い父を重ねてなついたり、別れを悲しんでました。ジョンVSマーカスではそんな心の交友なんてない。まあ、でも、それまでに、ジョンには"審判の日”があったわけだし。長い戦いの日々もあったわけだし。傷ついたジョンを、見るマーカスとカイルとスター。 あのシーンを見て感じたのは、ジョンはほんとに救世主になるんだろうなということ。ターミネーターシリーズでは、回毎に登場するターミネーターは、それが呼び物ではありつつもラストには最期を遂げました。『T1』でのシュワちゃんしかり。『T2』でのシュワちゃん&「T-1000」しかり。『T3』でのシュワちゃん&女性版しかり。新シリーズではいかに。重要人物その3: ジョン・コナー『T2』のエドワード・ファーロング、『T3』のニック・スタールに続く三代目のジョン・コナー役は『ダークナイト』のクリスチャン・ベイル。今回、主役なんだけど脇役みたい。マーカスやカイル・リースの方が注目度が高かった。でも、クリスチャン・ベールって、いつもそんな位置づけみたいなんですよね。もちろん、もともと、とても存在感ありで。不思議なオーラのカリスマ性のある役者さん、すごい注目です~。『T3』で、グズグズのダメダメ、尻つぼみになってしまった感がありましたが、新シリーズで生き返った感じです。今後はスカイネット・ウォーズですね。大きなシステムと戦う人類。続編も是非とも見たいですよ。こういうのに、飽きてなければ。今時期なら、同じSFアクション大作の『トランスフォーマー』や『スター・トレック』に負けないでね。重要人物その4: シュワちゃんこの人は登場するのか?見てのお楽しみですよね~。重要人物その5: ジョンの妻 ケイト妻のケイト役は『T3』のクレア・デインズからブライス・ダラス・ハワードにバトンタッチ。ジョンの母、サラ・コナーの存在はシリーズの要でしたが、もう出演もなくなり、残念ですが、仕方ないです。 今後は、このジョンの妻がサラ的存在になっていくんでしょう。だって、妊娠している設定ですから、すでに母なる象徴です。 それに、『T3』でシュワちゃんが言ってました。「俺をここに送ったのは、ジョンではない。妻のケイトだ。」「ジョンは送ることができなかった。」「ジョンを殺したのは、俺だ。」この辺に、どんな風につなげるんですか、マック・G監督。秋葉原大好き~と、ノリノリなのも良いですが、シリーズが続くよう、しっかりお願いしますね~。三部作と銘打っても、興行成績次第ではすぐ打ち切りになりがちですからねぇ。
2009年06月15日
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【内容】「居眠り心中」十四歳の銀次は、木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがることになる。やがて店の跡取り藤一郎に縁談が起こり、話は順調にまとまりそうになるのだが、なんと女中のおはるのお腹に藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と藤一郎に近づかないようにと店を出されることに…。しばらくして、銀次は藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、おはるがいるはずの家で銀次が見たものは…。「影牢」 いまはもうない岡田屋の、もと番頭の松五郎のもとに、磯部という武士が訪ねる。磯部は岡田屋の娘、お千代を見習いに預かっていたことがある。岡田屋に何が起こったか、松五郎の語り。「布団部屋」 酒屋の兼子屋は、代々、奉公人の躾がうまいことで評判だった。そんな兼子屋でひとりの奉公人が亡くなった。後を受けて妹のおゆうが奉公にやってきた。「梅の雨降る」 大工の箕吉の姉、おえんが亡くなった。長患いだった。箕吉は子供の頃からのことを回想する。おえんがおかしくなるきっかけは、料理屋の奉公を断られてからからだった。「安達家の鬼」 筆と墨を商う笹屋のご隠居が亡くなった。「さっき聞き取り損ねた最期の言葉が、きっとお義母さまの”鬼”の名前だったのだ、ああ、とうとうちゃんと名前を教えてはいただけなかった。」嫁のわたしは、脈絡もなく考えていると、ジンワリ涙が出てきました。「女の首」 太郎はひとりぼっちになった。母一人子一人だったところが、このたび母が亡くなったからだ。手先が器用な太郎の行く末を案じて、差配人さん夫婦は奉公先に袋物の店を紹介してくれた。その晩、太郎は不思議な夢を見た。「時雨鬼」 お信は、以前世話になった「奉公人口入所」にかけこんだ。五年前、天涯孤独になった自分の奉公先を親身になって考えてくれた主人を訪ねたのだ。聞きたいこと、相談に乗って欲しいことがあったのだが、奥から出てきたのは主人の女房だった。「灰神楽」 本所本町の十手持ち 政五郎のもとへ、奉公人が刃傷沙汰を起こしたので来て欲しいという遣いがきた。「蜆塚」「要は知らん顔していることだ。」亡き父の友人の見舞いに、蜆汁をとどけた。向島の寮で静養中の、呉服問屋「小河屋」の番頭だった松兵衛は言う。亡父も同じ体験をしたというはなしで、10~20年ごとに目の前に現われる、不思議な人たちの話、。【感想】宮部さんの時代モノ。この『あやし』は、抜群によかったです。「安達原の鬼」は、が一番良かったかな。「蜆塚」も、江戸時代の日本にこの人たちがいたのかな、と想像すると好きな吸血鬼ジャンルを彷彿させられて、楽しかったです。
2009年06月12日

『重力ピエロ』映画サイトオフィシャルチャンネル▼『超映画批評』『重力ピエロ』75点(100点満点中)[監]森淳一[原]伊坂幸太郎[企][脚]相沢友子[音]渡辺善太郎[歌]S.R.S[出]加瀬亮 岡田将生 小日向文世 鈴木京香 吉高由里子 岡田義徳 渡部篤郎人気作家・伊坂幸太郎の直木賞候補になった同名ベストセラーを映画化。大学院で遺伝子の研究をする兄の泉水と、自分がピカソの生まれ変わりだと思っている弟の春。2人は、仙台の街で起こる連続放火事件と、現場近くに必ず残されるグラフィティアートの関連性に気付き、事件の謎解きに乗り出すが、そのことで24年前から今へと繋がる家族の謎が明らかになっていく。監督は「Laundry」の森淳一。感想:伊坂さんの「重力ピエロ」の映画化。すごく見たいとおもってまして、見にいけてホントに良かったです。いい具合に、本の細かいところは忘れていて、おはなしに没頭できました。泉水(いずみ)と春、どちらも英語にすると「スプリング」。「あなたたちは、兄弟だから」当たり前のことでも、母の言葉には気持ちがこもっている。「ふたりで、遊んできたのか」そうだと言うと、うれしそうな顔をする父。地味な父と美しい母、地味な兄と美しい弟。一見普通な家族。彼らの子供時代からのエピソードが織り込まれながら、現在進行形の放火事件と落書きアートの話が進んでいきます。家族愛、人間愛、重いテーマも絡めたお話。内面の葛藤と、憎しみ苦しみが、燃え盛る火のよう。加瀬さんの表情にはひきこまれました。火には 浄化の作用があり、人は火に癒される。とてもおだやかなラストの風景でした。あの結末や決着は、良いかどうかは分かりませんが。あとあと、彼らが苦しむことにならなければ良いとだけ思いました。彼らと、ジョーダン・バットだけが知っている。それでよいかと。ところで、岡田君。いつも、かわいくて明るくて、イケメンなのに普通っぽイ男の子のイメージでしたが、こんな、内に闇を抱えた役がきたんですね。迫力面はもう少しかなと思いましたが。こんな風な、影のある表情をすると、イケメンがぶりが上がりますよ~。華がありますよね。原作本は良い、印象に残る言葉がいっぱい出てきます。映画でも、いくつか使われてました。「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」 「世間が許さなくても、おれたち家族が許せば良いんだ」「お前以上に、このことを深遠に考えられる奴はいない。他の野次馬や裁判官なんかの言うことなんて、どうでもいい。」「兄ちゃんと、僕は最強なんだ」「俺たちは最強の家族だ。」「いつも楽しそうにしていれば、地球の重力なんて関係なくなるんだよ」■ 映画化重力ピエロ(2009)フィッシュストーリー(2009) ラッシュライフ(2009) Sweet Rain 死神の精度(2007) アヒルと鴨のコインロッカー(2006) ■ 伊坂幸太郎 本感想『死神の精度』 『オーデュポンの祈り』 『魔王』 『重力のピエロ』 『アヒルと鴨のコインロッカー』 『陽気なギャングが地球を回す』
2009年06月08日
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第130回 直木賞受賞作「巷説百物語シリーズ」の第三弾 【目次】赤えいの魚/天火/手負蛇/山男/五位の光/風の神 明治10年。無類の珍談奇談好きである東京警視庁一等巡査の矢作剣之進は、仲間と共に薬研堀の九十九庵を訪れる。維新から十年、町並みも世情も変わりゆく中、いまだ江戸が残るその庵の主は一白翁と名乗る老爺。かつて怪異譚を集めて諸国を巡ったという、博学にして無欲なる世棄て人である。若者に乞われて隠居が語る、怪しく、悲しい昔話。胸の裡によみがえるは、鈴の音と、忘れえぬあの声…御行奉為―。「五位の光」由良公房卿には、3~4歳頃の奇妙な記憶があった。不思議な青い光に包まれ他情景。自分を抱いている女の前にひれ伏す男。女は乳母か母なのか。やがて自分は男に手渡され、女は青鷺となって飛び立った。男は実の父だが、その事については問うても何も語らない。47歳となった今、あの不思議はなんだったのか、知りたい。感想:憑き物落としの中善寺秋彦の「京極堂シリーズ」は長編、「巷説百物語シリーズ」は短編です。又市一派に、いつのまにか、すっかりはまってしまいました。それで、本書の『後 巷説百物語』を読み終わって、もう、又市たちに会えないのかと、どうにもさびしい思いにかられました。いつのまにやら、すっかり彼等に魅了されたのです。『後巷説百物語』は、前二作『巷説百物語』『続巷説百物語』から時代が下り、明治です。かつて、山岡百介は、又市一派の仕掛けの協力者でした。けれど、闇の世界の彼らとの一線を感じていました。昼の世界の自分が半端者であることに、負い目を感じつつ。ある大仕掛けをきっかけに一派とは疎遠。又市から託された少女との隠居生活を送っています。時代が変われど、奇妙な出来事は無くならないようで、彼の知識を頼りに東京警視庁一等巡査の矢作剣之進が仲間と訪れてきました。又市らの仕掛けのような解決方法はもはや通用しない時代、又市らの不在に、寂寥感が漂います。。京極さんのおかげで、日本の〈妖怪〉がひとつの文化のように思えるようになりました。ありえない超常現象と片付けるのではなく、妖怪化した形には、人の意識や恐れや汚れや生活様式、、、様々な要素がギュッと凝縮しているのだと。「妖怪大戦争」や「ゲゲゲの鬼太郎」といった映画も人気で、〈妖怪〉が見直されているようですね。そんな理屈も勉強になりますが、ただストーリーの仕掛けを楽しむことも、そこに描かれた人物を楽しむことも出来ます。なんともすばらしいシリーズに出会えて幸せです。もうこのシリーズは読めないのか、と一時寂しかったんですが、うれしいことに『前巷説百物語』というのがあるのですね。そちらは又市の若い頃のはなしで、御行になるきっかけとか分かるようですね。『嗤う伊右衛門』では、又市のお母さんの壮絶な死が描かれているとか。スピンオフというか、あちこちで繋がっているので面白いですね。現在『西巷説百物語』が連載中とのこと。そちらも楽しみです。今後もこのシリーズが続くことを願います。【京極夏彦 読書感想】 『姑獲鳥の夏』 『 魍魎の匣』 『狂骨の夢』 『鉄鼠の檻』 『絡新婦の理』 『塗仏の宴 宴の支度』 『塗仏の宴 宴の始末』 『陰摩羅鬼の瑕』 『邪魅の雫』 『巷説百物語』 『続巷説百物語』 『後巷説百物語』 『前巷説百物語』
2009年06月03日
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「巷説百物語シリーズ」の第二弾 【目次】野鉄砲/狐者異/飛縁魔/死神―或は七人みさき/老人火 巧緻に練りあげられた仕掛けやからくりを駆使し、江戸の世にはびこる悪人たちを始末する札撒き御行(おんぎょう)の又市らの活躍を描いた『巷説百物語』の第2弾。 本書は、前回の単なる続編ではない。前作の7つのストーリーの間に、本書各話がそれぞれ差し挟まれている。レギュラー陣の過去も語られる。作者山岡百介の視点から描かれ、怪事件そのものに焦点が当てられていた前作に比べ、物語としての奥行きが増している。昼の世界にいる百介と闇の世界にいる又市たちの話。「野鉄砲」事触れの治平の過去が明らかに。百介は、実兄である八王子同心・山岡軍八郎から、額に 石つぶてがめり込んで死んだ同僚の事件について、相談を受ける。「狐者異」山猫廻しのおぎんの出生が明らかに。大悪党・稲荷坂の祗右衛門が晒し首になった。彼は過去にも二度、斬首された、不死身の男であるらしい。生首見物に来ていた百介は、おぎんと会う。 彼女は生首を見て「まだ生きるつもりかえ」と謎の言葉を残す。 「飛縁魔」「船幽霊」「死神」では、それぞれ短編として独立しつつ、土佐の祟り神「七人みさき」をキーワードに複雑に絡みあう。前作で名前のみの登場だったおぎんの育ての親・御燈(みあかし)の小右衛門がキーマンとしていよいよ登場。一国をゆるがす大仕掛けで一気にクライマックスへ。最終話「老人火」で待ち構える結末。 【京極夏彦 読書感想】 『姑獲鳥の夏』 『 魍魎の匣』 『狂骨の夢』 『鉄鼠の檻』 『絡新婦の理』 『塗仏の宴 宴の支度』 『塗仏の宴 宴の始末』 『陰摩羅鬼の瑕』 『邪魅の雫』 『巷説百物語』 『続巷説百物語』 『後巷説百物語』 『前巷説百物語』
2009年06月03日
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「巷説百物語シリーズ」の第一弾 妖怪時代小説の金字塔【目次】小豆洗い/白蔵主/舞首/芝右衛門狸/塩の長司/柳女/帷子辻 「小豆洗い」ある僧が嵐を避けて山小屋に泊まる。同宿する人々が暇つぶしと称して順に怪談を披露するが、僧は過剰な反応を示し揚げ句に外に逃げ出し、死んでしまう。「白蔵主」祠の横で休む男がひとり。男は、かつて狐釣りの名人で、散々殺しては銭を儲けていた。雄も雌も親も子も、祠周囲の狐という狐を殺した者だった。男にはかつて好きな女がいた。昔の回想をしているところ、狐の面をつけた女が現われ、狐の祟りか怨念かと腰を抜かす。面を取った女は、この近くの寺近辺で、最近追いはぎが出没し、物騒なのだという話をする。「舞首」・鬼虎の悪五朗・・・大酒飲みの博打うち。異常な女狂い・黒達磨の小三太・・賭場の侠客頭・首切りの又重・・・凶悪な人斬り世間を脅かしていた、三人の凶悪な男が首なし遺体で見つかった。誰が誰を殺し、どういういきさつでこうなったのか。「芝右衛門狸」芝居小屋裏で幼女の遺体が見つかった。浄瑠璃人形のように綺麗な顔が、縦にまっぷたつに割られていた。事件後、幼女の家の庭先に毎夜狸が出没、幼女の祖父と意気投合。人語がわかる狸だという噂が流れ、10日目に、自分がその狸だという爺が現われる。京都大阪では辻斬りが世間を騒がしていた。「塩の長司」馬飼長者という豪農の家。痩せ馬をひいたひとりの男が、浜に流れ着き下男として働き出した。どこの馬の骨とも分からない男だったが、馬の扱いに長け、真面目なところを見込まれて、ひとり娘の婿のおさまったのが20年前。ところが最近この二代目長次郎の人柄が変わったという。「柳女」北品川宿の柳屋という旅籠。主人の吉兵衛は、10年で4人の妻と3人の子供を失った。このたび、5人の妻を迎えることなった。「帷子辻」京都の帷子辻で、三度、女の腐乱死体が突如出現した。<シリーズ紹介>・『巷説百物語』『続巷説百物語』幕末、御行の又市らの暗躍。偶然彼らの仕掛に巻き込まれた戯作者志望の若者・山岡百介を中心にして描く。・『後巷説百物語』2003年第130回直木賞受賞明治時代、巷で騒がれる奇妙な事件を解決しようとする4人の男たちと、彼らに知恵を貸す「一白翁」こと山岡百介の昔語りで物語は進む。・『前巷説百物語』山岡百介と出会う前の又市たちの話。***『絵本百物語』***作品中に登場する妖怪たちの出典は、江戸時代の絵師:竹原春泉による日本画集『絵本百物語』。もともと人間の醜い心を風刺した画集である。その”業”を見据える又市の姿が、たんなる勧善懲悪の時代劇ではない深みを物語に与えている。泉鏡花賞受賞作『嗤う伊右衛門』にも登場する小股潜りの又市が、江戸の世を舞台に悪党を退治する時代小説の第1弾。デビュー作『姑獲鳥の夏』に始まる「憑き物落とし」中禅寺秋彦が活躍する作品群とは、また味わいの異なる妖怪シリーズ。どうにも立ちゆかない事態を「妖怪」のしわざとして収める。著者自身の言葉を借りれば、本作は、難事件を「妖怪」と名づけて払い落とす中禅寺のシリーズの「裏返し」なのだそう。 京極ワールドの特徴は、妖怪の不気味さ、謎解きの意外さ、物語を逸脱して語られる蘊蓄。そして、癖のある“レギュラー出演者”たちが織りなすアンサンブル。胡散臭いレギュラー陣が、毎回毎回、見事などんでん返しを演出する。【京極夏彦 読書感想】 『姑獲鳥の夏』 『 魍魎の匣』 『狂骨の夢』 『鉄鼠の檻』 『絡新婦の理』 『塗仏の宴 宴の支度』 『塗仏の宴 宴の始末』 『陰摩羅鬼の瑕』 『邪魅の雫』 『巷説百物語』 『続巷説百物語』 『後巷説百物語』 『前巷説百物語』
2009年06月03日
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【内容】17歳のおちかは、実家で起きたある事件をきっかけに、ぴたりと他人に心を閉ざしてしまった。ふさぎ込む日々を、江戸で三島屋という店を構える叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働くことでやり過ごしている。そんなある日、叔父・伊兵衛はおちかを呼ぶと、これから訪ねてくるという客の対応を任せて出かけてしまう。おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。いつしか次々に訪れる人々の話は、おちかの心を少しずつ溶かし始めて…哀切にして不可思議。宮部みゆきの「百物語」、ここに始まる。 【感想】宮部さんの時代モノということで、楽しみに読みました。途中までは、とてもよかったのですが、最後のほうは、すこーし無理やりかな~、な解決に感じてしまいました。主人公が偽善的と言えばそうかもしれないけど、普通レベルでしょう。理解できますし、自分だって同じくらい偽善者ぶって暮しているし。この百物語は、シリーズ化されるらしいですね。一年に五話をまとめて単行本とし、今後19年間に亘って百物語を完成させる予定とか。 なんとも、壮大なライフワークですね。継続、楽しみです。
2009年06月01日
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