D・N小説 ホワイトデー(もらいもの)





「(お前、明日梨紅に何やるつもりなんだ?)」


不意にダークが呟いてきた。

そう、明日はホワイトデー。

チョコを貰ったお返しをしなければならない。

ここのところ一週間はそれで頭が一杯だった大助。

期限は明日に迫っている。

それなのに、実をいえばまだ決まっていなかった。

一つ思いついたことはあるにはあったのだが、それを渡していいのかどうか迷っているのが今の状況だった。


「(何迷ってんだよ?決めたんだろ?ならそれでいいじゃねぇか。)」


「・・・。」


黙っている大助に、何か勘づいたのか、ダークが不気味な笑みを浮かべた。


「(はは~ん・・・そっかお前照れてんだな!勇気が出ないんだろ?なぁ?)」


その言葉に大助の肩がびくっと震える。


「(何びびってんだよっ!そんなんさっさと渡しちまえばいいんだよ、大助。)」


「うん・・・」









そして、明日。



緊張のせいか早くに目が覚めた大助は、どうせならと、早く学校へ向かうことにした。

いつもと違う朝の風景に、新鮮さを感じながら、大助はゆっくり歩いた。

学校に着けば、サッカー部などの部活の朝練の声が聞こえた。

誰もいない教室に入り、大助は梨紅さんの机の側に立つ。


(梨紅さん・・・受け取ってくれるかな?)


小さく呟いた言葉はダークにすら届かなかった。

大助は、気持ちを落ち着かせようと、屋上へと向かった。

途中の階段で、ここで自分は彼女に貰ったのだと、少し照れながら、屋上のドアを開けた。

気持ちのよい心地よい風が、大助の身体に当たる。


「うわぁ~気持ちいい~」


知らず知らずの内に大助はそう声に出して叫んでいた。

屋上のフェンスに手を置きながら、大助はダークに聞いた。


「そういえば、ダークは原田さんに何か渡すの?」


「(はっ!?お前なぁ・・・味はともかく、気持ちは嬉しかったからな。一応、あげようかなと。)」

「何を?」

「(そんなの決まってるだろ?キスだよキス。)」

「え////////!!!!!!!!」

「(お前・・・そんなに照れることじゃないだろが!!!)」

「だ・・・だって・・・それって・・・また・・・僕が・・・」

「(ああそうか?俺=お前だもんな?そっか・・・仕方ねぇな・・・デートで勘弁するか。)」

「で・・・・!?」

「(だから、なんだってお前はそこまで露骨に照れるんだよっ!)」




「朝っぱらから仲がいいね。」


ダークとのやり取り中に割って入った声。

いつのまにそこにいたのか、それは『日渡』だった。

「ひっ日渡くんっ!?」

「やあ。別に盗み聞きをするつもりはなかったんだけど。そこで休んでいたら、君が来たから。」

「・・・そう・・なの。」

「じゃあ、僕はこれで。」


去っていく日渡を大助は、慌てて引き留めた。


「あっ!待って、日渡くんっ!!」

「・・・何か?」

「あの・・・前の時・・・バレタインデーの時、梨紅さんの居場所教えてくれて本当にありがとう////もし、日渡くんが教えてくれなかったら僕、きっと梨紅さんの気持ち知らないままだったから。」

「そんなこと・・・別に改めて礼を言うことのものじゃない。」

「そう?でも、僕にとっては本当に、嬉しかったんだよ。だから・・・これ、お礼というにはほど遠いものだけど、受け取ってくれないかな?」

そういって大助が、日渡に渡したものは、小さな袋だった。


少しだけ、目の前に渡されたソレと大助の顔を交互に見つめ、そっと受け取った。

紐をほどいて、中のものを取りだした。

それは、お守りだった。願いを叶えるためのお守り。

思いも寄らないプレゼントに日渡は驚いた。


「これは・・・?」

「見ての通り、お守りだよ。願いが叶うって云われてる。本当の願いが。」

「俺の願いは、君を・・・ダークを捕らえることだ。」

「それは・・・知ってる。だけど・・・僕は時々思うんだ。日渡くんの本当の願いはソレとは違うんじゃないかって。何かは知らない。だけど、願いは別にあるって思う。だから、願うよ、僕は、本当の日渡くんの願いが叶うようにって。」


日渡は、真剣に話す大助から目線を外し、一言も発さずに、その場を去っていった。

暫くして、ダークが大助に声を掛けてきた。

「(お前・・・いつのまにそんなの用意してたんだ?)」

「うん・・・本当はずっと前から。だけど、渡すきっかけが掴めなかったんだ。よかった、受け取って貰えて。」

「(はぁ・・・お前ってどうして・・・ってそれはそうともうすぐ朝のHR始まるんじゃないか?)」

「わっ!?本当だ!!!もうこんな時間!?」

急いで、駆けていく大助を見ながら、ダークは一言呟いた。





『お前の優しさがいつか・・・この因縁の鎖も癒すんだろうか・・・』





放課後になり、大助は部活に向かおうとしてる梨紅を呼び止めた。

周りに誰もいないことを確認しての行動だった。

「梨紅さんっ!」

「何?丹羽くん?」

「これ・・・バレンタインデーのお返しなんだ!もし・・・よかったら・・・受け取って・・・・!!」

「え・・・////私に・・・ ?」

「うんっ」

顔を真っ赤にしながら、梨紅は大助から差し出された両手ぐらいの箱を受け取った。

「・・・開けても・・・いい?」

「いいよ。気に入るかどうか分からないけど・・・」

綺麗に包装されているのを剥がして、出てきたのは、アンティークな箱形のオルゴールだった。


「これ・・・!?いいの!?こんな素敵なの貰っても!?」

「梨紅さんだから、持っていてもらいたいんだ。僕もそれと同じもの持ってるんだ。昔、母さんに貰って・・・それね、二つで対になってるんだ。ずっと片割れ探して・・・やっと見つけたんだ。」

「二つで一つ・・・なんか素敵だね。・・・嬉しい。丹羽くん、ありがとう。絶対絶対大切にするねっv私・・・本当に嬉しい・・・ありがとう////」


その梨紅の笑顔だけで、ここ数日悩んでいた大助の心をすっと取り除いてしまった。

渡してよかったと、大助は心からそう思った。






ダークもまたその夜、梨紗を訪ねた。

夜のひとときのデートを楽しんだのだった。








ホワイトデー。


それがたとえ、人間が創り出したものだとしても、この日があったことを僕は感謝する。



ありがとう。



大好きだよ、梨紅さんv





あとがき
なんだ、この最後の言葉?
意味不明だな(オイ
バレンタインデーもホワイトデーもチョコ会社の策略だもんなぁ(ぉ
ともあれ、何とか書けました~無理矢理間に合わせた感がバレバレですが・・・
はは・・・でも本当に書けてよかった・・・浮かんだときに本当に書いておけばよかったとどれだけ後悔したか・・・。
これも、どうぞ。フリーですので持って帰って下さいませv
次は・・・なんだろう?なんかイベント事あったけ?
なければ、次は・・・そうだなぁ・・・20のお題に挑戦してみようかなぁ?
それでは☆


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