螺旋の旋律 ~SPIRAL~

螺旋の旋律 ~SPIRAL~

~Case:4~

理由


1週間前。
ここは『セイクリッド』。隣国『レーヴァテイン』の襲撃を受けていた。
戦っているのは『セイクリッド』軍の兵士だけではない。
ローディス王、セシリア王妃までもが国民を守るために戦っていた。
国内で最も高い魔力を持つローディス王が防御魔法で国全体を覆い、セシリア王妃と魔導兵達がそれをサポートしている。

王は「・・・『紫野』殿を呼んでくれ」と兵士に伝えた。
それから数分後、黒い法衣に、黒のマントを羽織った、黒髪の女性が王の前に現れた。
彼女の名は『紫野』。この世界でも五指に入るとされる魔導師である。

王は『紫野』にこう告げた。
「これから国内に避難命令を通達する。国民全員を転送魔法でここから友好国の『フィーリオン』に転送する。
 向こうの王からも受け入れに関しては同意を得ている。『紫野』殿、あなたにはリディアを異世界『ガーデン』に転送していただきたい。」
『紫野』は驚愕した。何しろ「異世界に自分以外の者を転送する」というのはかなりの大魔法である。
それkは『紫野』ほどの術者であっても、全魔力の9割近くを消費するほどなのだ。
もっともそれは『紫野』のおよそ10数倍の魔力を誇る王であっても例外ではないのだが。

しばらくして、『紫野』は王に、術を発動する手はずが整ったことを伝えた。
王はリディアを呼び寄せ、リディアを『ガーデン』に転送する旨を伝えた。
当然の事ながらリディアは拒んだが、王と王妃の説得により、『ガーデン』に行くことを決めた。
そして、そのままリディアは『紫野』の転送魔法によって『ガーデン』に向かった。
それを確認した王は、シグルドを呼び寄せ、
「お主も『ガーデン』に行け。」と命じた。
シグルドは「私も『セイクリッド』を守るために戦います!」と言ったが、王に、
「リディアのことを守ってやって欲しい」と言われ、「はい・・・分かりました!」と答えた。
そして、自らの転移魔法でリディアの後を追った。
「行ったか・・・」王はそう言うと、
「現在より全国民に避難を命ずる!」と言い、兵士達に対しても、
「おまえ達も早く避難の準備を。今から『フィーリオン』への転送魔法の魔法陣を展開する。国民達をその上に誘導してくれ。完了したら私とセシリア、魔導兵達で『フィーリオン』へと転送する。」と伝えた。



1時間後。転送魔法による、国民の転送を開始した。
それは一度に1600人程度しか転送できなかったが、陣を地面に描いた状態であることが、魔力の消費を軽減していたため、少ない国民を転送する時間を短縮させることができた。

さらに1時間後。
「国民の転送、完了しました。」と魔導兵の1人が言った。
「そうか。ならば次は兵達を避難させる。すぐに準備を。」王は兵士達の脱出の準備を始めた。
「ここは我々がくい止めます。先に王様と王妃様が脱出してください!」と数名の兵士が言った。
しかし王は、
「それはできない。国民を守るのが王たる私の役目だ。君達が先に脱出しなさい。これは命令だ!」
と言って、兵士達を諭した。そして、
「心配はない。君達を全員脱出させたら、私たちもこの陣を壊してからそちらに行く。国民達を頼む。」
そう言って、兵士達を脱出させた。さらに、
「偉大なる光の防壁よ、我らの命を守りたまえ。」
防御魔法を発動させ、陣を壊し、『偽兵の魔法陣』を敷いた後、
「私たちも行くか。」と言って、
「異なる所をつなぐ者よ、我らを我らが望むところへ送りたまえ。」
転送の呪文を唱え、王と王妃は『フィーリオン』へと向かった。


1時間後。
「くっ・・・人の気配すらしない・・・遅かったか・・・」
『レーヴァテイン』の兵である『輝刃』と『レン・アバーズトル』が『セイクリッド』に侵攻したときには、国内の人民は全て転送されていた。
リディアを転送した陣も破壊されたあとだった。
「ちっ・・・もう少し早く攻め込めていれば・・・」『輝刃』はそう言って悔しそうに舌を鳴らした。
レンは破壊された陣を見て、
「・・・!『ガーデン』への魔法陣ですか!くっ・・・どうやら一足遅かったようですね・・・。」
そう言った時、レンの配下の兵士が、
「どうやら、この陣でこの国の姫を転送したようです。」と伝えた。
「そうですか・・・。それならば」そう言ってレンは、
「言葉を操りし精霊よ、我が望む。かの者の言葉を封じたまえ。」と呪文を唱えた。
「くくく・・・。これであのお姫様は言葉を話すことはできません。そう自由には動けないはずですよ。」
そう言ってレンは笑った。

その時、転送の途中だったリディアの首に、禍々しい光がまとわりついた。
「何これ・・・声が・・・出・・・ない・・・」リディアは声が出せなくなった。


異世界と現行世界の狭間――
そこには、リディアの転送によって魔力のほとんどを使い果たした『紫野』がいた。
その傍にもう一人少年もいた。
「・・・さすがに、『ガーデン』に到着する時間までずらすとなると、かなりの魔力を消費してしまったわね・・・しばらく力は使えない・・・。後は任せたわよ、『ロエン』。」
『紫野』は『ガーデン』と『グロリアラント』の狭間でそう言って眠りについた。
「わかりました。『マスター』。」
『ロエン』と呼ばれた者は、そう言って頷いた。




一週間後。世界の狭間にて。

「厄介なことになってるわね・・・」
ある程度の魔力を回復した『紫野』は、『グロリアラント』の戦況を見ながら言った。

その頃、『セイクリッド』は、『レーヴァテイン』の襲撃によって混乱していた。
「陥落するのも、時間の問題かも知れない・・・。皆は無事に脱出できたのかしら・・・」
『紫野』はそう言った。

「こちらの状況はどうかしら。」
そう言って『紫野』は、『通常世界』の方に目をやった。
こちらの世界では、眞那とリディアが接触していた。
「どうやら、空間転送は成功したみたいね。よかった・・・」
そう言って『紫野』は再び目を閉じた。


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