ダトニケ熱い小説

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ポコメタン第一話




 四郎君が教科書の字も読めないほど、おなかがいたくなりました。いつも、下級生のめんどうみが良い小学四年生です。

 そんな四郎君は恥ずかしがりやで、発言も質問するのも得意ではありません。でも心の中ではいろいろ考えています。「オナラだな……。ううぅ、痛い。実が出るのかな、いや、今朝、あれだけ出したから、それは違う」と、おなかの痛みにもだえていると、廊下でブリキのバケツが転がっているような音が聞こえてきました。だんだんと、音が近づいてきているようです。教室の前まできたのかと思うほど音が大きくなってきました。それで、つい、廊下に目をやってしまいました。ところがクラスの誰一人として気にしている生徒はいませんでした。

 みんなが、それだけ授業に集中しているからなのかというと、そうではありません。ガラガラガラ。と、出入り口が開きました。四郎君は赤いドラム缶が教室に入ってくるのを見て、一瞬、おなかの痛みを忘れるほどびっくりしました。ところが、もっとびっくりしてしまったことが教室に広がっています。生徒も先生も手と足、それに大きな目と口がついた赤いドラム缶が歩いて教室に入ってくることに気付いてないようだからです。

「コワガラナクテモ、イイヨ。ボク、ポコメタン。オナラヲスイコムノガ、シゴト。キミ二ダケシカ、ミエテナイヨ。ボクラノ、ハナシモ、キコエテナイヨ」

「ポ、ポコメタン?なんで、かたことの日本語なの?」なぜか四郎君は目の前まできた、変なロボットに怖さを感じませんでした。不思議と、気の優しい外国人くらいにしか感じないのです。逆に安心すら感じます。

「カタコト?アア、ソウカ」ポコメタンは一人(一機?)で納得したふうに言うと、口元にあるボタンを押しました。すると、「これで、普通に聞こえるかい?」坊ちゃん刈りの幼稚園児が出すような高い声でポコメタンは聞き返してきました。

「ふ、普通だけど、なんか異様だね」

 四郎君の言葉にポコメタンは一時、動きが止まったあと、またボタンに手を伸ばしました。しかし、四郎君は、またカタコトに戻るよりはましだと思って言いなおしました。

「ごめん、ごめん。異様なほどにいい声だっていうことだよ。ほんと、テレビのヒーローみたいだよ」

 ポコメタンはまた動きが止まりました。どうやら照れているようです。ドラム缶の体がわずかに膨れたようだからです。もともと赤いので色ではわかりません。しかし、感情があるのは分かる気がします。でも、もしもドラム缶の中にコンピューターが入っていて、読み込むのが遅いだけっだったなら残念です。いえ、ポコメタンは間違いなくやさしいロボットなのです。ただ……。ちょっとだけドジなロボットでもあります。

「四郎君、話が長引いてしまったけど、おなかが苦しいのをなおしてあげるよ」ポコメタンはそう言って、背中からメガホンみたいなものが付いているホースを取り出しました。そして、そのメガホンの部分を四郎君のおなかにあてました。

こうやってオナラを吸い取るのです。ホースはドラム缶の体につながっています。

 四郎君はキョトンとした顔をしています。オナラを抜かれたからではありませんでした。

「ちょっと、ポコメタン。気持ちはありがたいけど、話しているうちにオナラが引っ込んじゃったみたい。おなかも痛くないし」

 今度は少し長い時間、動きが止まりました。

「これが初仕事だったのに……」ポコメタンのオクターブは三つくらい下がっているようでした。

「でも、結果オーライじゃん。オナラでなかったし」

 教室から出ていったポコメタンの足音は、もう四郎君には届いていません。仕事が終わった瞬間にポコメタンの記憶はその人から、なくなってしまうからです。

 オナラを我慢する次の生徒が待っています。ポコメタンとしての初仕事は空振りでしたが、学校に一人しかいないポコメタンには次々に仕事があります。

 ちょうど、隣のクラスで女の子がプルプル震えています。さっそく教室に入り、その女の子に近づいて、背中に背負ったホースを握りました。オナラをメガホンで吸ってやればいいのですが、四郎君とのやりとりにテンションを落としていて、片付け方を雑にしてしまったために、ホースが背中に引っ掛かっていてはずれてきません。

 無理に取ろうとすればホースは破けてしまいます。

 そうこうしているうちにターゲットの女の子の顔が真っ赤になっていました。我慢しきれなくて、オナラをしてしまったのです。

 ポコメタンはあせりました。が、なんとかホースがとれました。本当はおなかから採るのですが、もうシャバ(体外)に出てしまっていました。が運よくスカシッ屁だったのでシャバに出たオナラをメガホンで吸い込みました。

 スカシッ屁だけに臭いはきつかったようですが、無音だったので、女の子はクラスの笑いものにならなくてすみました。

 とりあえず、結果オーライです。

 だけど、また不完全燃焼の仕事だったようで。ポコメタンは、また立ち尽くしていました。廊下までの後姿もホースを背負った赤いドラム缶にはかわりないですが、少し足取りが遅く、寂しそうです。


 どんな仕事でもはじめから成功するとは限らないよ。次はがんばれ、ポコメタン!


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