ダトニケ熱い小説

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ポコメタン第二話



 それは、プールや海に何度も行ったのがわかる茶色い顔をしている子がいっぱいいるからです。しかし、中には教室の隅でロールプレイグゲームの話に夢中の二人の片方のように真っ白い子も少なくはありません。休み中、部屋でテレビゲームに没頭していたのでしょう。おや、一緒に話している子を
誰か、別のお友達がポンと肩をたたきました。「焼けたね」と言われて、つい、苦笑いを返しています。それは、今、一緒にゲームの話しをしている真っ白い子よりも先に進むほどゲームばっかりしていて、日焼けをした記憶がなかったからです。ただ単に、もともと自黒(ジグロ)なだけなのです。

 そんな三年三組の教室で、きわだって焼けた色の子がいます。その真っ黒い子はミチコちゃんです。このクラスではミチコちゃんの話題でもちきりです。わざわざ隣のクラスから見に来る生徒もいるほどです。

「ハワイって外人しかいないんでしょ」女子、男子から質問攻めにあっています。「ミチコちゃん、ミチコちゃん。ワイキキってハワイなの」ここぞとばかりに素朴な疑問を投げかける子もいます。

 どんなことを聞かれてもミチコちゃんは、とっても気分がいいです。みんなが自分の周りに次々に集まってくるからです。いつもは、ちょっと意地悪で人を集めることが得意だったから、自然に集まってくることに喜びを感じているからです。

 でも、一つだけ不安なことがあります。向こうでの食べ物や飲み物が合わなかったのでしょうか。おなかの調子が良くありません。

 隣の席のひろみちゃんが優しく、心配してくれます。

 算数の時間、ミチコちゃんのおしりがムズムズしてきました。オナラがしたいのです。

「それでは次の問題を……、こんがり焼けたミチコさん。おねがいしますよ」先生もやはり目がいってしまうのでしょう。

「ミチコちゃん、名前を呼ばれているよ。ここの(問い3)の割り算だよ」ひろみちゃんは、別のページを開いているミチコちゃんに教えてあげました。おしりが崩壊寸前で、先生の話に集中していなかったのです。

 ミチコちゃんは少し驚いて、急いで起立しました。と同時に。

 プフーン。

 あまり高い音ではありませんでしたが、屁以外の音には聞こえません。ミチコちゃんは、徐々に赤面してきました。

 みんな、大笑いです。先生もおなかを抱えています。つられてガスが溜まったわけではありません。おかしいから笑っているだけです。  

 隣のひろみちゃんだけは心配な顔をしています。

 でも、ミチコちゃんは急に笑顔になりました。なった、というより作ったという笑顔です。

「やーねー。ひろみちゃんったらー、オナラなんかしちゃってー。私がしたと勘違いされるじゃなーい。私まで恥ずかしいわよ。隣なんだから、いちばん臭うのよ」


 次の日からひろみちゃんは三日も学校を休みました。それは、恥ずかしいからではありませんでした。

 校門までお母さんに連れられて、ひろみちゃんはようやく学校にきました。教室に入ると誰も挨拶をしてくれません。男子は鼻をつまんだりしています。女子は口をきかないだけではなく、目すら合わせません。その中心にミチコちゃんがいることは分かっていました。泣きたくなりながらも、ひろみちゃんは「やっぱり」と心の中で思って、涙をこらえるのに必死になりました。

 逆に、元気ハツラツ色黒々のミチコちゃんはおなかの調子がすっかり良くなったようです。給食をおかわりするほどです。

 昼休みの後の五時間目、ミチコちゃんがまたおなかをかかえています。給食の食べすぎでしょうか。それとも、ひろみちゃんと口をきくな、と濡れ衣がばれるのを恐れてみんなを操作したバチがあたったのでしょうか。キリキリとしてきて、おなかの痛みがおさまる気配がありません。

「では、ここから先をひろみさん読んでください」

 プリリ。

 ミチコちゃんは国語の教科書に顔をうずめました。先生の声にびっくりしてつい、もれちゃったのです。ひろみちゃんは、起立していたので見下ろすようにミチコちゃんに視線を向けました。そして、朗読には必要のないことを言いました。

「先生すみません。あたし、またオナラしちゃいました」

 なんと、博美ちゃんは自分をいじめのターゲットにした中心人物、ミチコちゃんをかばってあげたのです。

 ミチコちゃんは思わずないてしまいました。

 しかし、うれしくて感動したから泣いているわけではありません。

 なんだか濃い臭いがしてきました。

「ウンチまででちゃったんだもーん。うえーん」

 国語の教科書を涙でにじませるミチコちゃんの机の前にポコメタンが立っていました。

 ひろみちゃんと同じで、いくらポコメタンと言えども、ウンチまでをかばうことはできないのです。

 この前のオナラに、まに合わなかったのは休みボケしていたからでした。だから、いじわるなミチコちゃんでも急いで駆けつけてきたのです。しかし、ホースに手をかけた直前でオナラセンサーが赤信号を灯したのです。

 ポコメタンにもルールがあって、赤は絶対に止まれなのです。

 ポコメタンが信号を無視して、ウンチまで引き受けてしまったら、普通の人には見えないポコメタンの体の中に入ったウンチだけがプカプカと空中を浮いて、みんなに見えてしまうからです。


 透明人間のように仕事することがポコメタンのルールなのです。だから見えないことをいいことに、給食をつまみ食いすることなどもご法度なのです。


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