ダトニケ熱い小説

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ポコメタン第三話



 お葬式です。

 ポコメタンの姿は誰にも見えないのですが、そこにいるっていうことで、幽霊に近いかもしれません。

 そんなポコメタンは本当に「ドキッ」っとすることになります。

 お寺の本堂はバスケットボールのコートほどの広さでした。畳が敷き詰められていて、中央の辺りにキンキラキンの和風シャンデリアと言いたくなるような、それにしては大きすぎるものが、ぶらさがっています。その真下に厚い座布団が敷いてあります。和尚さんが座る場所です。

 その場所を中心にして向かい合うように左右の紫色の薄い座布団に正座した人たちが誰一人、ニコリとせず座っています。お葬式の雰囲気はバスケットボールとは違います。センターサークルの位置に和尚さんの頭がありますが何かのひょうしにジャンプしたとしても和尚さんの頭を取り合いになることはありません。


 ふすまが開いて和尚さんが入ってきました。まだ中年といった感じの和尚さんです。

 ポコメタンはそのふすまのすぐ脇にいたので、ちょっと驚いて、和尚さんを見上げました。もっと驚いたことに、和尚さんはこちらをジーっと見ているのです。見られているポコメタンは考えました。「和尚さんは修行しているから透明ロボットが見えているのかな。ひょっとして、バレちゃってる?」そう思っているうちに和尚さんは、皆さんに向き、顔の前で手刀を作り一礼をしてから真ん中の厚い座布団に向かって歩を進めました。

 お経が始まりました。ポコメタンはホッとしました。お経を読む前に「そこに何かいるっ!!かーつっ!!!」とかいって、おはらいのターゲットにされるかと思って内心ドキドキしていたからです。しかし、これからは仕事に集中しなければなりません。

 今日のお葬式でポコメタンを必要としている人はまだいません。

 お経を読む和尚さんがこちらを見てくる感じがするポコメタンは、自意識過剰なのでしょうか。いえ、やはり見ているのは確かなのです。

 ビビリぎみのポコメタンはその場にいるのが苦痛になってきました。正座が辛いのではありません。「和尚」と、呼び捨てにしたくなるほどプレッシャーをかけられている気がしているからです。

 そんなことを考えていると、だれかのお母さんでしょうか、下唇を噛んで肩を震わせている女の人がいます。

 ポコメタンは解放されたされた思いで立ち上がり、さっそく仕事にとりかかります。冠婚葬祭では大人も子供もありません。

 そのお母さんの顔はスッキリしたようでいて、でも、まだ神妙な顔をしています。お葬式だから屁が引っ込んだくらいで喜びを顔に表すはずはありあません。

 一つ仕事を終えて戻ろうと思いましたが、ためらいました。視線が怖かったからです。ポコメタンは大きな太鼓を見つけました。で、和尚さんから見えないようにその太鼓の後ろに座って待機することにしました。

 すると、もう和尚さんの視線は感じません。ポコメタンは「なーんだナマクラぼうずか」と言葉使いを悪くしながらもホッとしました。

 でも、さっきまでポコメタンが座っていた所をチラチラと見ています。そこには、だれもいません。ただ、小さいテーブルにおぼん(トレイ)が置いてあって、その上に重なった白い封筒があるだけです。香典というやつです。

 葬儀屋さんの司会でお葬式はまもなく終わります。

「それでは、遺族代表としまして、このお寺の住職でもあります鈴木*朗様に……」葬儀屋さんがいうと和尚さんは衣をはずして自分の父親の写真の前で紙を広げて読み上げはじめました。

和尚さんはポコメタンに気付いていたのではなく、香典の厚みと枚数が気になっていただけなのでした。


 お金を使うことも、貯めることもしないポコメタン。

 葬祭となると喪主や家族は悲しむだけではなく計算をたしなむことも必要なのです。  


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