ダトニケ熱い小説

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ポコメタン第五話



 でも、そんなヒサ子ちゃんには強い味方がいます。四年生のフトシ君です。元彼ではなく、普通に血の通ったお兄ちゃんです。お家でヒサ子ちゃんが叱られているとお兄ちゃんが必ずかばってあげます。叱る、というよりストレス発散に近い怒鳴り方をするお母さんは大きな声を出せるならフトシだろうがヒサ子だろうが、どちらでもかまわないといった感じのようです。ただ、最後には、かばったフトシ君が泣いてしまうのがパターンになっています。そして、そのお兄ちゃんをヒサ子ちゃんがなぐさめるのもパターン化しつつあります。

 通学路を登校時、犬をみつけるとフトシ君はヒサ子ちゃんの手を引っ張って走ってくれます。犬は必ず追いかけてきます。そして、きまって犬の頭をヒサ子ちゃんが、なでてあげます。その間にお兄ちゃんは大また歩きで電柱に隠れ、その影から引きつった無表情をチラつかせます。ここまで、だいたいシナリオ通りです。

 ある日の朝、突然お兄ちゃんのおなかが痛くなりました。学校へ行く前でしたが、夫婦喧嘩を始めた二人には言えません。「お母さんとお父さん大丈夫かな」と両親を心配する小学二年生に「僕、おなか痛い」とは言えません。四人家族の中の三人を同時に心配させたくないからです。しかも最近はお兄ちゃんらしいところを見せてないからです。いや、魅せてないからです。

 教室で一時間目の授業を受けているとドンドコドンドコと、痛くなってきました。

 すると、廊下をガラクタが風で転がされているような音が聞こえてきました。そうです。久々に登場するポコメタンです。

 フトシ君はポコメタンに「大丈夫かい?」と声をかけられて、少しだけ安堵をもらったような気になりました。苦痛の中で無理に笑みを見せるだけで精一杯で、答えることはできませんでした。ポコメタンの自己紹介が聞こえているのか、それとも痛みが一瞬だけ隠れたのか、さわやかに目を輝かせました。

 心が優しい子にしか見えないロボット。逆に言えば心の優しいフトシ君みたいな子には姿をみせるのです。

 ポコメタンはホースを取り出そうとはしませんでした。ただ、利き腕の右手でフトシ君のおなかをさすってあげようとしましたが、フトシ君は苦痛をこらえながら言いました。

「ぼ、僕のことはいいよ。妹のおなかはデリケートなんだ。妹たのむよ」自己紹介を聞いたときの、あの一瞬の笑みはヒサ子のことを思い出したからでした。

 うなずいたつもりでポコメタンはドラム缶のボディを手でガンッと叩きました。「がってんでい!」

 その言葉、どこでおぼえたのでしょう。

 ところがヒサ子ちゃんの教室を覗いても誰もいません。

 今日のヒサ子ちゃんはおなかの調子が抜群に良くて、校庭でドッヂボールをして汗を流していたのです。体育の授業に参加していたのです。

 いくらさがしてもヒサ子ちゃんは見つかりませんでした。あたりまえです。オナラ信号や危険信号が点滅していないから位置が分からないのです。でも、ヒサ子ちゃんを見つけたい理由はお兄ちゃんのことを伝えるためでした。

 一時間目が終了の鐘が鳴る前に救急車がきました。

 まさか、ヒサ子ちゃんが怪我を?いえ、翌日、彼女はきちんと登校しました。ただ、一人ででした。しかし、いつもの放し飼いの犬が校門までついてきたので、けっこう楽しかったようです。

 少し早めに校舎に入ると教室を目指さずに職員室に向かいました。そして、お父さんが書いてくれた手紙を渡しました。その内容はこうです。「昨日は大変迷惑をかけました。フトシのことですが、家内が長期旅行にでてしまったため付き添いができません。私は仕事で手が離せないので、ヒサ子を盲腸で入院したフトシに付き添わせたいのでヒサ子の担任の先生に、そのことを伝えていただきたいのです。あと、私どもの親戚関係には内緒にしていてください。なんせ家内は実家のほうが旅行先なものですから。よろしくおねがいいたします」

 読み終えた先生はヒサ子ちゃんの顔を見ると、お付き添いとかできる?大丈夫?と聞きました。、

「いつも、家族のこと心配してますから大丈夫です。お母さんは木曜の九時のドラマの時間には帰ってくるはずです。おばあちゃんと見る番組が合わないから。それに心配事が多いほうがあたしの体調はいいんです。安心ばっかりしていると、おなかが痛くなっちゃいますから」


 ポコメタンの体の仕組みも変わってるけど、ヒサ子ちゃんの体も変わっているね。将来、だらしない旦那さんを持っちゃうタイプかもしれないね。いや、そういうことをパターンで言っちゃぁいけないね。

 危険信号のランプが初めて灯ったことにポコメタンはフトシ君に感謝しています。実は故障しているのかな?と、少し不安になっていたからです。みんながそれぞれ感謝しています。心配させられることが感謝の対象となるのはちょっと寂しい気がしますが。


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