ダトニケ熱い小説

ダトニケ熱い小説

後編



 ちょっとした喜びと共に、わずかな安堵感が胸を楽にしてくれた。すると、なんで自分はドラえもんのネタをだしたのだろうかと、考えてしまった。気の緩みで飛んでしまって思い出せない。

 どーしても思い出せなくなった六本木は、昨日ほとんど寝ないで考えた図面を頭の中で開いた。

「ちょっと早いですが、先ほど少しだけ触れた校長、教頭の話をしましょう。校長先生が一人一人の生徒を知ることはとても難しいことです。でも実際は知らなくても学校では何の支障もきたせません。ところが、なんらかの事件に生徒がまきこまれたりすると必ずといっていいほど校長先生が記者会見の場で『とても真面目で挨拶のできる生徒でした』とか、言っています。」

 生徒の首が校長に向く。六本木がわざとらしく鼻の下を伸ばして校長を見たから生徒達もつられたのだ。歌丸師匠が楽太郎に「はらぐろ」ネタでも使ったあとのような顔に。

「そんな会見のとき『本当にその生徒のこと知っているの』と疑問に思います。実際問題、どうでもいい話かもしれませんが、おそらくはその担任と学年主任、部活の顧問の先生が呼び出されてその子についての話をすることになると思うのです。だから、学年主任の視線で校長先生も生徒と関わりを持ちなさいよ。というわけではありません。むしろ、逆です。生徒と担任の関係をしっかり把握しなければならないと思うのです。一方的に担任の意見や、学年主任の総評だけを聞いて、うんうんと頷くだけではなく、生徒がささやく先生に対する陰口や悪口を聞いて双方、四方の意見、というより情報という見方で学校を把握していかなければなりません」

 そうなれば、と一呼吸おいて続けた。「普段から真実を語っているのはどの人間かということが分かってくると思うのです。生徒の身に何かあった場合に、当たり前のような台詞をズラズラと並べるだけではなく、事前にその事件等を防ぐには現状がどうなっているかをトップの目と決断が必要と思うのです。警察よろしく事件が起きてから動くのではなく、一人一人の精神性がどうなっているかを把握しておいてフライングさながらの対策を行っていかなければと思うのです。一番の問題はその事件を起こす側にあるわけです。その起こす側というのは可能性としてはこの学校全員がもっているわけなんです」

 遠くを見るように生徒が並ぶ後ろの列の父兄に向かって両手を合わせて「お母さん方には大変失礼ですがあくまで可能性の問題ですから」

 だから、と続けた。「おとなしくて成績はそこそこだからこの子は安心と、たかをくくらないで、この生徒にはこういう一面がある。こんなすばらしいものを持っている。というふうに生徒を認めることが大切と思います。そうやって認めているうちに生徒のほうから心を開き、最終的には情報公開のように把握させてくれるのではないでしょうか。グレて、反抗的な生徒もいますが、それはそれで素直に表現しているのではないでしょうかね」

 若い先生がかたまった列で何個かの笑顔が小さく頷いたことに六本木は満足した。が気は抜かぬよう最後の締めにとりかかる。

「ということです。そして、教頭先生の役割はズバリ!学校で掛かる経費の全てを管理し、公開するということです。中間管理職にあてはまるのかどうかは大工の私にはわかりませんが、委員会という形にして生徒主体で領収書の管理から、金の字が付くものは歩も銀も何もかも裏返して、全てを公表することを目的として仕事をしてもらう。そんなことがあったら一切の不正はできないはずです」

 つづく


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